前(節)へ   次(節)へ
平成17年度観光の状況

Topics 


平成17年度の観光をめぐるトピックス
■ 訪日外国人旅行者が昨年に続き過去最高を更新
■ 世界から高い注目を集めた「愛・地球博」の開催
■ 訪日外国人旅行者に対する査証(ビザ)の緩和措置
■ 中国、韓国との観光交流促進のための連携の強化
■ 順調に回復する日本人海外旅行者
■ わたしの旅~日本の歴史と文化をたずねて~2005
■ 青少年交流の促進
■ 「外国人から見た観光まちづくり懇談会」の開催
■ 訪日外国人旅行者が昨年に続き過去最高を更新
我が国では、観光立国の実現に向け、日本を訪れる外国人旅行者を2010年までに倍増させて1,000万人にするという目標を達成するため、平成15年度から、官民一体となって訪日促進キャンペーンであるビジット・ジャパン・キャンペーン(以下「VJC」という。)を実施している。
VJCを開始して以来、訪日外国人旅行者数は、平成15年前半にはイラク戦争やSARSの影響を受けて減少したものの、その後はプラスに転じ順調に推移している。
平成17年の訪日外国人旅行者数については、上半期が対日感情の悪化等により伸びが鈍化したものの、後半は訪日査証の緩和措置の効果や愛・地球博の開催によって復調した結果、前年比9.6%増(約59万人増)の672.8万人となり、過去最高となった。
平成18年においても引き続き、2010年に1,000万人という目標達成に向けて、「日中観光交流年」、「日豪交流年」、「日本・シンガポール観光交流年」、青少年交流の拡大に向けた取組等を積極的に展開することとしている。

▼訪日外国人旅行者数の推移



■ 世界から高い注目を集めた「愛・地球博」の開催
平成17年3月25日から9月25日までの185日間にわたって開催された愛・地球博(2005年日本国際博覧会)は、当初目標の1,500万人を大きく上回る約2,205万人が来場し、成功裏に閉幕した。
愛・地球博は21世紀最初の、しかも我が国にとっては昭和45年(1970年)の大阪万博以来35年ぶりとなる総合的な博覧会として開催され、国内で開催した博覧会としては史上最大となる121か国(日本を含む)及び4国際機関の参加を得た。
博覧会を貫くテーマとして「自然の叡智」を掲げ、ロボット等の最先端技術や冷凍マンモス等、創意工夫を凝らした展示を通じて自然の仕組みを学び、地球的課題を克服し持続可能な社会を創生していくための様々な取組に関するメッセージを来場者及び世界に向けて強く発信することができた。また、期間中に開催されたナショナルデー(国の日)・スペシャルデー(国際機関の日)等の多彩なイベントは、国際親善・国際交流の舞台ともなり、海外から多くの旅行者等が日本を訪れると同時に、多くの日本人が効率よく各国の歴史や文化に触れることができるなど、博覧会は相互理解を深める大変有意義な場となった。
博覧会期間中に、5回の外国人来場者数調査を行った結果をみると、外国人来場者の国・地域別の割合は、最も多かったのが台湾からの来場者で全外国人来場者数の18.8%、次いで韓国からの来場者で15.7%、3番目に多かったのがアメリカで13.0%であった。また、総来場者数に対する外国人来場者数平均比率は4.6%であり、期間中を通しての外国人来場者数は約100万人と推計され、博覧会のメッセージが多くの外国人に広く受け入れられる機会となった。

▼「愛・地球博」会場風景




▼多くの外国人旅行者等が来場



■ 訪日外国人旅行者に対する査証(ビザ)の緩和措置
愛・地球博が開催された2005年には、アジア各国・地域に対し、次のとおり査証の緩和措置が図られた。
(1)韓国
1)愛・地球博開催期間に合わせた短期滞在査証免除
2005年は日韓国交正常化40周年に当たり、「日韓友情年」「日韓共同訪問の年」として、日韓二国間関係の発展と人的交流の促進のため、また愛・地球博の成功という観点から、博覧会開催期間に合わせ、2005年3月1日から9月30日までの間、短期滞在目的の韓国人訪日者に対し査証免除を実施した。その後、2005年10月1日から2006年2月28日まで同措置を暫定的に延長し、それまでの実施状況等を踏まえ、2006年3月1日以降は、期間限定なしに実施することとした。
(2)台湾
1)愛・地球博開催期間に合わせた短期滞在査証免除
愛・地球博開催期間に合わせ、2005年3月11日から9月25日までの間、短期滞在目的の台湾からの訪日者に対し査証免除を実施した。博覧会終了後も査証免除を可能とする「出入国管理及び難民認定法」(入管法)の特例法が2005年8月に成立し、査証免除措置が継続されることとなった。
(3)中国(台湾、香港を除く。)
1)訪日団体観光旅行の査証発給対象地域の拡大
中国国民の訪日団体観光旅行は、2000年6月に日中両国政府間で実施要領が取り交わされ、同年9月より、北京市、上海市、広東省に居住する中国国民を対象に、訪日団体観光査証が発給されることとなった。
次いで2004年9月15日からは、訪日団体観光旅行の査証発給対象地域として、新たに天津市、山東省、遼寧省、江蘇省、浙江省が追加され、これにより潜在的な訪日団体観光旅行の市場規模は、従来の1億1千万人から3億7千万人と約3.4倍に拡大した。
さらに2005年7月25日より訪日団体観光旅行の査証発給対象地域を中国全土に拡大し、潜在的な訪日団体観光旅行の市場規模が一気に約13億人へと拡大したことから、今後の団体観光旅行者の増大が期待されている。

▼主な査証緩和措置




▼中国団体観光査証発給の全土拡大に伴うレセプション



■ 中国、韓国との観光交流促進のための連携の強化
1.中国との連携の強化の取組
平成17年7月2日に日中観光交流セミナーを北京市で開催し、日本側から北側国土交通大臣、中国側から邵&ki;偉(しょう・きい)中国国家旅游局長が出席し、「日本国国土交通省と中華人民共和国国家旅游局との間の観光交流と協力の一層の強化についての協議議事録」の署名が行われ、団体観光査証発給地域の全土拡大に合わせて、日中両国の観光交流促進のために協力することを確認した。
2.韓国との連携の強化の取組
北側国土交通大臣は、韓国最大の旅行見本市である「第18回韓国国際観光展(KOTFA2005)」の開催期間中の平成17年6月4日に韓国を訪問し、鄭東采(チョン・ドンチェ)韓国文化観光部長官と両国間の観光交流拡大について会談した。
両国は、日韓関係の状況が観光交流に及ぼしている影響に留意し、両国民が互いの国を訪れる観光客を温かく歓迎する雰囲気を醸成することが両国間の観光交流の拡大と両国関係の発展に重要との認識で一致し、国交正常化40周年を記念した「日韓友情年2005」、「日韓共同訪問の年」の各種事業を予定通り実施すること等4項目を盛り込んだ「日韓観光交流拡大に関する日韓観光担当大臣の共同声明」を発表した。

▼日中会談




▼日韓会談



■ 順調に回復する日本人海外旅行者
平成17年の日本人海外旅行者数は、1,740万人となり、過去最高であった平成12年に次いで2番目に多かった。月別にみると1月から4月は前年同期と比べて増加しているが、5月以降は総じて減少傾向であった。
平成17年4月までの対前年同月比の増加は、新型肺炎(SARS)の流行による海外旅行の手控えが続いていた反動に加え、円高の進行により、海外旅行に割安感が働いたものと考えられる。また、中部国際空港が同年2月17日に開港し、航空座席の供給が増加したため、海外旅行の需要を押し上げた。
同年5月からは竹島領有権をめぐる日韓間の対立や中国各地で発生した反日デモの影響により、中韓両国への旅行を避ける傾向が強まった。その他マイナス要因としては、バリ島テロ事件(10月1日)、パリ暴動(10月27日発生)、ヨルダンテロ事件(11月9日)等が挙げられる。
平成17年は、中国・韓国への旅行が低迷したのとは逆に、台湾への旅行が好調に推移し、初めて100万人を突破し107万人となった。

▼日本人海外旅行者数の推移(平成17年月別)



■ わたしの旅~日本の歴史と文化をたずねて~2005
我が国は長い歴史を有し、また、歴史と風土が育てた優れた伝統文化や生活様式が各地に息づいている。
平成17年4月、小泉内閣総理大臣から、日本人や来日した外国人が、このような日本の歴史や文化を理解するため、各地域の文化や歴史を知るための旅のプランを公募してはどうかとの提案があった。
これを踏まえ、日本人自身や日本を訪れる外国人が、日本の歴史や文化の全体像を理解したり、日本文化の特色をより深く理解することができるよう、「旅」を通じて日本の歴史と文化を訪ねる「わたしの旅」プランが広く募集された。
「旅」は、一人一人がそれぞれの考えや思いを持って行うものであり、そのような考えや思い等が旅の内容を一層魅力あるものにする。今回の募集では、多彩で特色ある旅プランを集めたいとの思いから、応募者が持っている旅に対する考えや思い等も教えてもらうことにし、特に「わたしの旅」と銘打って実施された。
平成17年6月末から同年8月にかけて募集したところ、786プランの応募があった。河合隼雄文化庁長官を委員長とする選考委員会において選考した結果、その中から、提案者の思いが詰まった魅力的な105プランが100選として選定された。さらにその中から、「大賞」1プラン、「特別賞」9プランが選定された。
今回選定された105プランが広く活用されるよう、ホームページによる情報提供や都道府県等に対する周知等の広報活動を行ってきている。
また、「わたしの旅」に係るパンフレットを作成し、その意義や具体的ルートについて広く周知を図るとともに、関係省庁、旅行業団体等からなる検討委員会を開催し、「わたしの旅」応募プランを生かした旅行振興方策を検討しているところである。さらに、特別賞受賞プランの一つである「ひな街道を行く」については、旅行業関係者や一般参加者等によるモニターツアーを実施し、旅行商品化の可能性について検証したところである。今後は、これらの成果を踏まえ、関係者の協力を得ながら、応募プランを生かした具体的な取組を進めていくこととしている。
今回の100選の選定及びその活用により、日本人自身が失われつつある日本各地の歴史や文化を再発見することで、文化芸術活動の創造や保存継承に向けた気運が高まったり、日本を訪れる外国人に日本の歴史や文化を知ってもらい、国際文化交流が更に促進されることが期待される。

▼わたしの旅パンフレット



■ 青少年交流の促進
訪日教育旅行の促進は、若年層の交流拡大による国際相互理解の増進、訪日外国人旅行者の増加(訪日リピーターの育成)、国際理解教育の推進及び国際交流を通じた地域振興に役立つと考えられている。
そこで平成17年7月より7回にわたって、関係省庁及び関係団体等の参加を得て、「訪日教育旅行の促進のための検討会」を開催し、同年9月に報告書を取りまとめた。報告書では訪日教育旅行の現状や特徴を明らかにし、訪日教育旅行促進に向けた課題を分析するとともに、これらの課題解決の具体的方策について言及している。
今後、報告書の趣旨を踏まえ、関係者と連携しながら地域における協議会を立ち上げ、訪日する若年層の倍増計画である「フレンドシップ・ジャパン・プラン」の実施、「訪日教育旅行受入マニュアル」「訪日教育旅行ガイドブック」の作成等を通じて、官民挙げた青少年交流促進の取組を支援していくこととしている。

▼「訪日教育旅行の促進のための検討会報告書」のポイント



■ 「外国人から見た観光まちづくり懇談会」の開催
これからの観光やまちづくりに大切なのは、「女性にとって美しく、高齢者にとって安心で、外国人にとって分かりやすい」ことであるという観点から、小泉内閣総理大臣の発案の下、日本の各地域で観光振興やまちづくりに取り組んでいる外国人から、日本人が気付かない日本の魅力や大切にすべき景観・伝統・文化、日本人が改善すべき点等について、日本人とは違った新鮮な視点から意見やアドバイスをもらうことを目的として、「外国人から見た観光まちづくり懇談会」を開催した。
(1)第1回外国人から見た観光まちづくり懇談会
平成18年2月9日、官邸において、小泉内閣総理大臣、安倍内閣官房長官、北側国土交通大臣が出席し、また、アドバイザーとして、河合隼雄文化庁長官、木村尚三郎東京大学名誉教授、伊藤滋早稲田大学教授・慶應義塾大学大学院客員教授の出席の下、日本に在住して各地で観光振興やまちづくりに取り組んでいる外国人の方々10名を招いて開催した。外国人からは、和気あいあいとした雰囲気の中、有意義で具体的な意見が多数あった。
(2)第2回外国人から見た観光まちづくり懇談会
平成18年3月22日、都内ホテルにおいて、北側国土交通大臣、伊藤滋早稲田大学教授・慶應義塾大学大学院客員教授、観光関係事業者が出席の下、外国人9名を招いて開催した。外国人の日本人とは違った新鮮な視点からの意見を、観光関係事業者の方々に聞いてもらい、また、双方からの活発な意見交換が行われ、今後の具体的な取組にも参考になる意見が多数あった。

▼第1回懇談会の風景



前(節)へ   次(節)へ
All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport