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平成17年度観光の状況

第2章 観光の現状

第4節 旅行の経済に与える影響

1 旅行消費の経済効果に関する調査、推計


旅行・観光産業は、旅行業を中心として、運輸業、宿泊業、飲食業等幅広い産業に関連する非常に裾野の広い産業であり、他産業への需要創出効果や雇用創出効果等の経済効果は非常に大きいことから、21世紀の我が国の有力な成長産業の一つとして大きな期待と関心を集めている。
このような社会の動向を踏まえ、旅行・観光産業の重要性等を明らかにするため、平成15年度から、旅行消費額の推計について、承認統計「旅行・観光消費動向調査」を実施するとともに、旅行消費の経済効果についての世界標準的な統計手法であるTSA(Tourism Satellite Account)にのっとり、旅行・観光産業による経済波及効果を推計する「旅行・観光産業の経済効果に関する調査研究」を実施してきている。

  (1) 平成16年度の旅行消費額の推計

平成16年度の国民の旅行消費額(含海外分)は、28兆21百億円となり、対前年度比4.7%の伸びとなった。内訳は、国民の旅行消費額(国内分)が22兆88百億円、国民の海外旅行の旅行消費額(海外分)が5兆33百億円である。特に、後者については、平成16年度の日本人の海外旅行者数が1,744万人と対前年度比31.9%の伸びとなったことから、前年度の4兆24百億円から25.6%と大幅な伸びを示した。
訪日外国人旅行消費額についても、平成16年度の訪日外国人数が629万人と対前年度比17.4%の伸びとなったことから、1兆58百億円となり、前年度の1兆36百億円から16.5%と大幅な伸びを示した(表2‐4‐1図2‐4‐2)。

表2-4-1 我が国における旅行消費額推計結果




図2-4-2 我が国における旅行消費額推計結果




  (2) 平成16年度の旅行消費額の経済効果

平成16年度の国内の旅行消費額(国民の旅行消費額(国内分)+訪日外国人旅行消費額)は24兆46百億円であり、これによる直接の雇用創出効果は235万人と推計される。
上記旅行消費がもたらす生産波及効果(直接効果を含む。)は55兆44百億円(付加価値効果は29兆66百億円)。これにより475万人の雇用創出効果があると推計される。これは、それぞれ我が国の国内生産額の5.8%(付加価値効果に対応する国内総生産(GDP)の5.9%)、総就業者数の7.3%に相当する(図2‐4‐3)。

図2-4-3 我が国の経済への貢献(経済波及効果)



前年度と比較すると、生産波及効果は85百億円、付加価値効果は29百億円、雇用効果は3万人の増加であるが、これは日本人の海外旅行の消費額(国内分)増加や訪日外国人旅行消費額の増加という国際観光の増加が寄与したものと考えられる。

  (3) 旅行産業の日本経済への貢献

旅行消費が生み出す旅行・観光産業の直接効果の付加価値12.3兆円は、GDPの2.4%を占めるが、これは農林水産業の1.3%、一般機械の2.0%よりも高く、輸送用機械の2.8%、食料品の2.4%に匹敵する数字である(図2‐4‐4)。

図2-4-4 産業間の付加価値比較



また、旅行・観光産業の直接雇用者数235万人は総雇用者数の3.6%を占めるが、これは輸送用機械の1.7%、一般機械の2.0%、食料品の2.4%よりも大きい(図2‐4‐5)。

図2-4-5 産業間の雇用者数比較




  (4) 外国人旅行者消費比率の国際比較

我が国の旅行・観光産業の旅行消費額における外国人旅行者消費比率は、平成16年度は6.5%であったが、諸外国に比べると著しく低水準にあり、例えば米国では15%、オーストラリア、スウェーデンでは20%台前半、フランスでは36%、スイス、スペイン、オーストリアに至っては50%前後の水準にある。
また、主要観光国における観光GDPのGDPに占める比率を比較すると、我が国の比率は1.9%であり、最も低いことが分かる。
観光産業の雇用についても、我が国の比率は2.8%であり、主要観光国と比較して、我が国は最も低い比率になっていることが分かる(図2‐4‐6図2‐4‐7図2‐4‐8)。

図2-4-6 諸外国における旅行消費額の国内・海外比率




図2-4-7 観光GDPの国際間比較  図2-4-8 観光産業雇用の国際間比較



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