平成17年度観光の状況
第3章 訪日促進を中心とする国際観光交流促進施策
第8節 世界の国々との観光交流強化の取組
1 二国間の取組
日韓両国の観光振興における協力体制の強化を目的とし、両国政府の観光当局や観光関係の団体・企業と共同で日韓観光振興協議会を毎年定期的に開催している。平成17年11月には20回目の協議会が韓国・光州にて開催され、同年が日韓国交正常化40周年「日韓共同訪問の年」としたことを受け、「日韓共同訪問の年」関連事業の実施状況について総括的な議論が行われた。その議論の結果、1)地方自治体間交流の再活性化を図るため、市民同士の交流を軸とした取組を促進する。2)地方の観光魅力を積極的に宣伝し、韓国から地方空港への路線を生かした各地域への旅行を促進する。また、羽田・金浦間を結ぶチャーター便や成田・仁川路線を活用した気軽な週末旅行等都市観光の促進を図る。3)若者の旅行の増加を図るため、若者の個人旅行、学生の団体旅行やワーキングホリデーの活用等を促進する。4)両国は、サッカー、ゴルフ等のスポーツ交流や歴史をたどるイベント(例えば朝鮮通信使)、映画等文化を通じた交流を促進する。また、本年の「日韓共同訪問の年」事業の成果を生かし、両国が来年も共同タイトルの下、これらの交流に係る行事を開催する。5)両国間の観光交流の拡大を促進する観点から、新たな表彰制度(日韓観光交流大賞)を設ける。これらについて両国で意見が一致し、その内容を盛り込んだ「日韓の観光交流の促進に関する日韓観光当局者間の覚書」を両国代表間で交わすなど、翌年以降の両国の観光交流の拡大に向けた具体的な施策の推進に有意義な成果が得られた。
日米間の観光交流については、平成14年4月に扇国土交通大臣とエバンス商務長官の間で締結された観光交流拡大に関する日米間の了解覚書に基づき、米国商務省ほかの関係者との間で日米観光交流促進協議会ワーキンググループを開催しており、これまで、VJCを活用した米国人の訪日旅行の促進や同時多発テロ以降低迷が続いた日本人の訪米旅行需要の喚起等、両国が抱える喫緊の課題について協議を行ってきた。
平成17年7月14日には、東京において、同ワーキンググループの準備会合が行われ、米国側は平成16年には375万人であった訪米日本人旅行者を今後4年間で480万人とすることを目標に、新たにメディアキャンペーンを開始することとした。日本とイギリス向けに合計980万ドルの予算が確保されており、日米の業界関係者の意見を踏まえ、配分額を決定する旨の報告がなされた。
また、日米相互の観光交流促進に向け民間の活力を最大限に引き出すために、関連する民間企業間の実務的・継続的対話を促す、より効率的なメカニズムが必要であることについて認識が一致した。
これを受けて民間企業のメンバーを主体とするサブ・コミッティーが設置され、平成18年5月にワシントンD.C.で開催が予定されている次回の本会合に向け、様々な課題につき活発な議論が行われてきている。
日加間の観光交流については、日加官民観光定期協議を定期的に開催し、幅広い意見交換を行ってきており、平成18年1月25日には、愛知県名古屋市において、両国の観光当局及び旅行業界、航空会社等の関係者が出席して、第10回目となる協議を行った。
協議では、今後の日加間の観光交流促進に関する諸課題について、活発な意見交換が行われ、以下の具体的な施策に取り組むことで日加両国の意見が一致した。
・国内航空便の座席確保の容易化等ハイシーズン対策を含め、国内旅行の利便性の向上に努めるとともに、新たな旅行目的地の開発とそのPRを行う。
・姉妹都市を契機とした市民同士の交流等の拡大に資する先進的な事例の発掘・紹介を行い、地方都市交流を促進する。
・未来を担う若者世代間の交流の重要性に注目し、学生間交流に係る受入体制の整備等を通じて教育旅行の活性化を図る。
・青少年交流の活性化に向け、値打ち感のある旅行商品の開発を行う。
・相手国からの旅行客を誘致するための広範なプロモーション活動を、従前に増して積極的に実施する。
・著名人を活用して、幅広い旅行者層に対し、観光地としての魅力をPRする。
・日本の横浜とカナダのバンクーバーとの間に初の定期航路が開設されてから120年目に当たる2007年を「日加観光交流年」として定め、共同キャンペーン活動の実施等により、両国国民の相互交流の機運を高めるため、実務者間での議論を速やかに開始する。
日豪両国間の観光交流促進を目的として、日豪観光交流促進協議を定期的に開催しているが、平成17年5月に岐阜県高山市において、両国政府の観光当局や観光関係団体・企業が出席して第6回目の協議を実施した。協議後共同声明が発表され、青少年交流の拡大、観光親善大使の活用等、日豪両国が協力して事業を進めていくことが確認された。
日露間の観光交流においては、平成17年11月21日に、プーチン大統領訪日の際の成果文書としての「観光分野における日本国政府とロシア連邦政府との間の協力の強化に関するプログラム」に署名がなされたことを受け、同日、第1回日露観光交流促進協議会が東京で開催された。
同協議会においては、旅行者の安全、旅行者保護、観光客の出入国に関する諸問題、旅行博への出展をはじめとする両国の観光客誘致に向けたプロモーション施策等について意見交換が行われた。あわせて、今後の協力に向けた枠組みについても話し合われ、両国の業界間の協力を強化するとともに、両国内に作業部会を設置し、業界間の調整及び平成18年中に予定されている次回の日露観光交流促進協議会の開催に向けた準備を行うこととした。
これを受け、訪日ロシア人旅行者の数は平成17年では年間6万人強にとどまっているものの、市場の潜在的成長力に着目し、ロシア連邦観光局、連邦航空局等の支援の下にモスクワ市で開催される初の国際旅行博「intourmarket 2006」に日本ブースを出展するとともに、モスクワ市、サンクトペテルブルク市において訪日セミナーを開催した(平成18年3月)。
中国国民訪日団体観光旅行は、平成12年6月の日中合意に基づき、同年9月から、北京市、上海市、広東省の2市1省の居住者を対象に、団体観光取扱契約を結んだ日中双方の指定旅行会社(日本側63社、中国側21社)が取り扱う5人以上概ね40人までの団体観光旅行として開始された。
さらに、平成16年9月に、査証発給対象地域として、天津市、遼寧省、山東省、江蘇省、浙江省が追加された。また、平成17年7月には査証発給対象地域が中国全土に拡大され、指定旅行会社数についても平成17年12月現在日本側139社、中国側229社となっている。
これらの措置により日本を訪れた団体観光客は、平成17年12月末現在で、累計187,744名に上っている(表3‐8‐1)。
表3-8-1 中国からの発地域別訪日団体観光参加者数(帰国報告ベース)
他方、本制度が我が国への不法入国の手段として悪用されることのないよう、適宜、必要な措置を講じていくこととしている。我が国の指定旅行会社には、失踪者等の発生数に応じ課されるペナルティポイントに応じて、一定期間、旅行の取扱いができなくなる制度の導入等、制度発足当初から失踪者対策を講じてきており、失踪者対策の強化を図ってきている。その結果として、失踪率は、0.29%(累計542名)となっている。
さらに、平成16年9月の両国の指定旅行会社の追加指定を期に、我が国の指定旅行会社に対して運用してきたペナルティ制度を中国側の指定旅行会社に対しても運用することとし、また、平成17年7月の査証発給対象地域が中国全土に拡大された際に、我が国の指定旅行会社には、加重措置の導入等ペナルティ制度の運用改正を行うなど、より一層効果的な失踪者対策を実施したところであり、今後とも、中国国民訪日団体観光旅行が我が国の良好な公安・治安の確保と両立しつつ健全に発展するよう、適宜、必要な措置を講ずることとしている。
(7) 二国間経済連携協定に基づく観光協力への対応 |
世界における自由貿易等の推進の枠組みとして、二国間の協定が数多く締結されている状況の下、我が国においてもシンガポールとの経済連携協定が平成14年1月に署名、同年11月に発効されたのに続いて、メキシコとの間でも、平成16年9月に署名された。また、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア及びチリとの経済連携協定締結に向け政府間交渉を行っているところであり、このうちタイ、フィリピン、マレーシアについては、両国首脳間で大筋合意に至っており、観光関連業の海外展開を推進する観点から、相手国における内外差別の見直し等、サービス分野の自由化や、人的交流の拡大の観点から観光協力の推進に努めているところである。
|
|