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平成17年度観光の状況
第5章 魅力ある観光地の形成
第3節 文化遺産の保存と観光への活用
1 文化財の保護
(1) 文化財保護
文化財は、我が国の歴史、文化等の正しい理解のために欠くことができないものであり、また、将来の文化の向上発展の基礎となるものであることから、その適切な保存・活用を図ることが極めて重要である。国は、貴重な国民の財産である文化財を保護するため、「文化財保護法」に基づき、建造物、絵画、彫刻等の有形文化財を国宝・重要文化財に、演劇、音楽、工芸技術等の無形文化財を重要無形文化財に、農具や漁猟用具、祭りや民俗芸能、民俗技術等の民俗文化財を重要有形・無形民俗文化財に、遺跡、名勝地、動植物等を史跡・名勝・天然記念物に指定するほか、人と自然のかかわりの中で作り出された棚田や里山等の文化的景観を重要文化的景観に、歴史的な集落・街並みを重要伝統的建造物群保存地区として選定するなどして、その適切な保存・活用を図っている。重要無形文化財の指定に当たっては、併せて保持者、保持団体を認定している。
そのほか、国立博物館等における国宝・重要文化財の公開に加え、公私立の歴史的民俗資料館等において地域の民俗文化財等の保存・活用を図っているほか、史跡や歴史的建造物等の整備・活用を推進している。
COLUMN 4 無形文化遺産条約の発効
平成17年11月25日、「人類の口承及び無形遺産に関する傑作」の一つとして「歌舞伎」が宣言された。この「傑作宣言」は、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)がその加盟各国に無形文化遺産の保護・継承・発展を呼びかけて平成13年から行っているもので、これまで、世界各国の口承、芸能、社会的慣習、儀式、祭礼行事、自然万物に関する知識、伝統工芸技術等が宣言されている。我が国からは「歌舞伎」以外にも「能楽」と「人形浄瑠璃文楽」が、それぞれ平成13年と平成15年に宣言されている。これらによって、我が国の伝統文化の素晴らしさが世界の人々に伝わり、今後、日本の伝統文化に関心を持った人々が、日本を訪れるきっかけにつながることが期待される。
世界各国の無形文化遺産は、近代化や経済発展等に伴う生活様式の変化等により、急速に失われたり、伝統が薄れたりしつつあると言われている。このため、「傑作宣言」と並行して、平成13年秋からユネスコが中心となって国際約束の策定が始められ、我が国の主導的な協力により平成15年10月にユネスコ総会において「無形文化遺産の保護に関する条約」が採択された。我が国は3番目の締約国となったが、本年1月、締約国数が発効要件(30か国)を満たし、条約は4月に発効するに至った。この条約の発効により、これからは「傑作宣言」の精神が条約の下で生かされることとなる。
我が国は、昭和25年から文化財保護法により世界に先駆けて無形文化財の保護に努めてきたが、今後も無形文化遺産の国際的な保護等が進展し、身近にある貴重で多様な無形文化遺産が次世代に継承されて行くよう努めることとしている。
(2) 文化財保護強調週間と文化財防火デーの実施
1)文化財保護強調週間
「文化の日」を中心に実施する教育・文化週間(昭和34年9月4日閣議了解)の一環として、毎年11月1日から7日を「文化財保護強調週間」とし、各都道府県の教育委員会と連携しながら、国民一人一人が文化財を国民共有の財産として愛護するよう、積極的に広報活動を行うとともに、その気運の醸成を図っている。平成17年度は、文化財所有者、関係機関・団体等の協力の下、文化財愛護思想の高揚のための展覧会や芸能発表会、史跡めぐり等の各種行事及び広報活動が行われた。
2)文化財防火デー
1月26日を「文化財防火デー」とし、この日を中心として文化財を火災・震災等の災害から守るため、各市町村消防本部、各都道府県・市町村の教育委員会、文化財所有者等と連携し、全国的に文化財防火運動を展開した。平成17年度は、国分寺(山口県防府市)において大規模な防火訓練を実施したのをはじめ、全国各地の文化財所在地において防火訓練や防災対策等の各種行事が行われた。
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