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平成17年度観光の状況
第5章 魅力ある観光地の形成
第4節 世界遺産の保存と観光への活用
2 日本の世界遺産の状況と観光への活用
平成18年1月現在、我が国は、10件が文化遺産として世界遺産に登録されている。
各々の世界遺産においては、案内板や説明板の設置等観光客に世界遺産としての価値を分かりやすく伝えるための整備を行っている。
平成18年1月現在、自然遺産としては、3件が登録されている(
表5‐4‐1
)。これらについては、管理計画に基づき、入山者の増加に対応した保全対策を実施するなど、保護・管理を行うとともに、世界遺産センター(屋久島、白神山地)等において、遺産地域の管理、調査研究及び普及啓発等を実施した。
表5-4-1 世界遺産一覧表に記載された日本の自然遺産
COLUMN 5 知床世界自然遺産
知床は極めて原始性の高い自然景観と豊富な野生生物によって形成されている多様な生態系が残された地域であり、その類い希な自然は多くの観光客を魅了してきた。また、野生動植物の観察から、登山、シーカヤック、釣り、流氷観察等、海から山までを含んだ様々な自然体験を行うことができるのも知床の特徴である。
流氷が育む豊かな海洋生態系と原始性の高い陸域生態系の相互関係に特徴があること、シマフクロウ、シレトコスミレ等の希少な種やサケ科魚類、海棲哺乳類等の重要な生息・生育地であるとともに、オオワシ、オジロワシ等の国際的希少種の重要な繁殖地や越冬地となっており、これらの種の存続に不可欠な地域であることが評価され、「知床」は平成17年7月に国内で3番目の世界自然遺産に登録された。世界遺産登録に伴い、更に多くの観光客が知床を訪れるようになった。平成17年7月から同年10月までの観光客の入り込み数は、斜里では約117万人と、前年と比べて約17%増加し、羅臼町でも約59万人と約8%増加した。特に知床国立公園の代表的な景勝地である知床五湖には多くの観光客が訪れ、賑わいを見せる一方、車道の渋滞やトイレ待ちの長い列等の問題が生じており、知床が持つ原生的な雰囲気が損なわれることが懸念されている。
人類共通の宝となった知床ならではの原生的な自然環境を、将来の世代の人たちにも引き継ぐとともに、楽しんでもらうために、自然に対して負荷を与えずに自然をより深く楽しめるエコツーリズムの推進が重要であり、ガイドラインの策定や漁業・農業等の地域産業との連携を始めとした様々な先駆的な取組が始まっている。
また、知床周辺には、阿寒、釧路湿原の両国立公園やラムサール条約登録湿地となった濤沸湖や野付半島・野付湾等、国際的にも高い評価を得ている自然環境を楽しめる場所が多く存在している。これら地域の特性を生かした当地ならではの自然体験型の「スローツーリズム」の発展が大きく期待されている。
▲海上から臨む知床半島
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