平成19年度観光の状況
第II部 平成18年度の観光の状況及び施策
第2章 国際競争力の高い魅力ある観光地の形成
第1節 国際競争力の高い魅力ある観光地の形成
1 地方公共団体と観光事業者その他の関係者との連携による観光地の特性を生かした良質なサービスの提供の確保 |
各地域の住民が主体となって地域の自然、歴史や文化等の特色や魅力を生かした積極的な観光地づくりを進めていくことが重要であることから、観光地の活性化に取り組む「民間」の活動を支援する「観光ルネサンス補助制度」で、平成19年度は新規に10件を選定した(平成17年度からの継続案件との合計は22件)(図II-2-1-1)。
また、地域の幅広い関係者が一体となって取り組む観光を軸とした地域づくりの立ち上げ段階を支援する「観光地域づくり実践プラン」についても、平成19年度に新たに8地域を選定している(合計で45地域)(図II-2-1-1)。
図II-2-1-1 観光ルネサンス補助制度・観光地域づくり実践プラン選定地域
さらに、それぞれの地域の自然、歴史、文化等の特色を生かし、幅広い関係者が連携して、内外観光客の宿泊旅行回数・滞在日数の拡大を目指し、2泊3日以上の滞在型観光を促進する観光圏の形成を促進するため、第169回国会に「観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律案」を提出し、平成20年5月16日に成立した。
なお、日本人の国内旅行や外国人の訪日旅行を促進するため、地域の観光まちづくりに関する優れた事例を選定し「滞在力のあるまち」、「外国人で賑わうまち」として掲載した事例集を取りまとめ、内外に情報発信した。
海外の観光地との競争に勝ち抜けるような観光魅力を創出するとともに、地域における集客力を相乗的に高めるためには、地域の魅力ある観光資源を広域的にネットワークすることが重要である。そこで、県境を越えた広域的な推進体制の下、モデルルートの開発、魅力ある観光資源の広域的ネットワーク化等を積極的かつ計画的に推進している地域を選定し支援することとし、平成19年度は九州内の2地域を選定した。
平成17年10月に設立された「中部広域観光推進協議会」は、平成18年に本格的に活動を開始し、協議会のより一層の充実を図るべく平成19年4月には6名の専任事務局体制となった。
同年8月には、「訪日教育旅行の促進」を目的に、ミッション団(団長:岐阜県知事)を中国の北京市・天津市に派遣しトップセールスを行った。引き続き、同年11月には、両市から教育関係者を中部の観光施設、学校に招き、中部の魅力をPRした。また、同年9月には、有識者と当協議会委員で構成する「中部観光戦略会議」を設置し、今後の事業推進に反映させるため、観光客誘致のための目標を定めるとともに、情報発信の在り方や地域観光資源と連携した広域観光ネットワークの形成等の具体的な取組方策を取りまとめた「中部の観光戦略(ビジョン)」を策定することとし、今後も広域連携による中部の観光地域としての認知度向上を引き続き図ることとしている。
▲【中国教育関係者招聘事業】中国教育関係者による学校視察の様子(ファムトリップの一環として実施)
地域一体となった観光地づくりによって観光振興を図るためには、自身の知識と経験を生かして地域の牽引役となるプロデューサー的人材が不可欠である。そのため、観光地域づくりの取組を企画・演出するとともに、必要な調整や合意形成を図り、具体的に集客効果を地域に還元することができる人材を育成・選定し、地域への橋渡しを行う「観光地域プロデューサー」モデル事業を実施し、魅力ある観光地づくりと地域の経済・雇用の活性化を推進している。
平成19年度においては、千葉県富津市、東京都台東区、富山県立山町、山梨県富士河口湖町、静岡県伊豆の国市の5地域のモデル地域を選定し、5名の「観光地域プロデューサー」を決定した。
旅行者ニーズの多様化を踏まえ、地域固有の資源を活用した魅力ある旅行商品の創出・流通により、新たな旅行需要の創出と地域の活性化を図る観点から、地域の観光魅力を熟知した地元の観光関係者と旅行会社の連携・協働を促進するための施策を開始した。
具体的には、地方ブロックごとに「観光カリスマ」や学識経験者、旅行会社等からなる「観光まちづくりアドバイザリー会議」を立ち上げ、地域の要請に応じて観光まちづくりに関するアドバイスを行うとともに、地方ブロックごとに1から3地域を選定して集中的な支援を行っており、平成19年度においては、「ニューツーリズム創出・流通促進事業」とも連携し、「観光まちづくりコンサルティング事業」を実施した。
今後も引き続き実施することとしている。
(5) 観光・集客サービス、地域資源の活用への支援 |
旅行者のニーズや地域の観光資源の特性を踏まえて新サービスを提供する先導的な取組を支援するため、「ビジネス性実証支援事業」を実施し、7件を選定した。また、地域の特色ある産業等を観光・集客資源として活用した地域ぐるみの取組を支援するため、平成19年度から新たに「広域・総合観光集客サービス支援事業」を実施し、13件を選定した。
あわせて、全国の先進地域において調査を実施、地域資源を核とした取組からその成功・失敗要因を抽出・類型化し「先進99地域の取組に学ぶ-観光・集客力向上への手引き」として取りまとめるとともに、観光・集客サービスの質の向上を図るための全国観光地における観光客満足度の測定・分析や、体験交流サービスのビジネス化に向けた研究会を開催した。
また、観光資源等の地域の特徴ある産業資源(地域資源)は、商品・サービスの差別化・高付加価値の有効な要素となり得るものであり、こうした地域の強みを生かした産業を形成・発展させていくことが重要である。このため、平成19年度より「中小企業地域資源活用プログラム」を創設し、地域資源を活用して、新たな商品・サービスを開発し、その市場化に取り組む中小企業を総合的に支援しており、今後も引き続き実施することとしている。
構造改革特区では、これまでに1,000件の特区計画を認定し、観光振興に資する様々な計画が実施されているところである。
また、「山梨県、静岡県と複数の運輸支局等の管轄にまたがる『富士山』ナンバーの導入」に関する特区提案については、平成19年10月9日に構造改革特別区域推進本部において、管轄をまたがるナンバーの設定を全国で措置することが決定された。平成20年秋頃に『富士山』ナンバーを導入することとなり、PR効果による観光振興への寄与が期待されている。
地域再生においても、これまでに1,009件(市町村合併等により現在999件)の地域再生計画を認定しており、「観光に関する人材の育成」や「外国人観光客の訪日促進と魅力ある観光地・観光産業の創出」等の支援措置が盛り込まれた「地域の交流・連携推進プログラム」を反映した「地域再生基本方針」に基づき、地域の特性に応じた観光振興に資する様々な取組を支援している。
2 宿泊施設、食事施設、案内施設その他の旅行に関連する施設及び公共施設の整備 |
旅館業を営む者は、「生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律」に基づき、都道府県ごとに生活衛生同業組合を組織し、衛生施設の改善や経営健全化のための自主的活動を行っており、国においても全国及び都道府県の生活衛生営業指導センターの行う経営指導事業等について助成を行っている。
また、ホテル・旅館に対しては、国民生活金融公庫、沖縄振興開発金融公庫及び中小企業金融公庫において、それぞれ一定の条件を満たすものに対して長期かつ低利の融資を行っている。
さらに、訪日外国人に対する接遇の向上の観点から、ホテル・旅館のうち、外国人の宿泊に適するものとして一定の基準を満たした施設については、「国際観光ホテル整備法」に基づき登録を行い、登録を受けたホテル・旅館に対しては、地方税の不均一課税(平成18年3月末現在で登録ホテル・旅館が存在する589市町村中273市町村が軽減規定を設けている)が適用されるほか、一定条件を満たしたものに対しては、外国語放送設備、高速通信設備の導入に係る課税の特例措置が適用される。また、日本政策投資銀行において、外国人の宿泊に適するものとして一定の基準を満たした施設に対して、長期かつ低利の融資を行っている。
地域の自立と活性化を図るため、平成19年8月に「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律」が施行され、地域発意の計画に基づき、広域的な経済活動等を支える基盤整備と地域づくりに対するソフト面での支援等を一体的に促進するための交付金制度(地域自立・活性化交付金)の創設等の措置が講じられた。
初年度である平成19年度には、「世界遺産等の国際的な観光資源を生かした広域観光の活性化」(6地域)や「半島地域、過疎地域等の条件不利地域と高速交通網等のアクセス強化による広域観光の活性化」(10地域)等を事業目的とした、23府県37地域に対して「地域自立・活性化交付金」を交付した(図II-2-1-2)。
図II-2-1-2 地域自立・活性化交付金による支援
地域の創意工夫を生かしたまちづくりを推進するため、まちづくり交付金の活用により、観光振興や観光交流促進等のまちづくりの目標に沿ったハード事業(観光交流センター、情報板の整備等)からソフト事業(観光パンフレット作成、ライトアップ事業等)まで幅広い事業を支援した。以上のような取組を、今後も引き続き実施することとしている。
地域活性化の核の形成やまちなみを整備することにより地域の魅力の向上を図るため、本荘中央地区(秋田県由利本荘市)等において土地区画整理事業の施工者と住民等が協力したまちづくり委員会等の設置・運営、地域の特性に応じた公共施設のグレードアップ等に支援を行い、地域独自の個性ある観光都市の形成を促進した。
今後も引き続き実施していくこととしている
良好な街なみを形成して景観を改善するため、地方公共団体及び街づくり協定を結んだ住民が協力して、住宅等の外観の修景、電線の地中化、道路、公園等の地区施設等の整備改善を行う「街なみ環境整備事業」を実施した。平成19年度においては138地区で「街なみ環境整備事業」を実施した。
▲街なみ環境整備事業による住宅等の外観の修景、電線の地中化等の実施事例【今井町地区(奈良県橿原市)】
(6) 都市再生・地域再生に資する市街地再開発事業の推進 |
駅周辺を始めとした中心市街地等において、地域の観光の拠点となる商業施設等の建築物や、道路、広場等の公共施設の整備を行うことにより、観光地にふさわしい魅力ある都市空間の形成を促進した。
今後も引き続き実施していくこととしている。
住民と連携しつつ、周辺の環境と調和した防護柵の設置や道路緑化等の景観に配慮した道路整備を推進した。引き続き景観に配慮した道路整備を実施することとしている。
多様な主体による協働の下、道を舞台に、地域資源や個性を生かした美しい国土景観の形成を図り、観光の振興や地域の活性化に寄与することを目的とする「日本風景街道」を推進した。
具体的には、平成19年4月に「日本風景街道戦略会議」(委員長:奥田碩日本経団連名誉会長)において取りまとめられた提言を踏まえ、同年9月より、各地方ブロックごとに設置された「風景街道地方協議会」において風景街道の登録受付を開始した。平成20年1月末時点で、93ルートが登録されている。
以上のような取組を、今後も引き続き実施することとしている。
観光地における交通渋滞や路上駐車の増加といった問題の解決に向け、一般車両の利用を制限し、歩行者と公共交通機関が優先的に通行できるようにするトランジットモールや、観光地周辺で自動車からバス等他の交通機関に転換させるパーク&ライド等の社会実験を行った。
今後も引き続き実施することとしている。
親水レクリエーションの促進を図るため、「総合水系環境整備事業」等により、河川の高水敷等を公園、緑地、運動場、カヌーポート等に利用するための諸施設の整備を実施した。
また、「川の森づくり」、「都市の川を活用した賑わいの創出」、「清澄な水が流れる川の復活」、「地域の歴史文化の薫る川づくり」等のかわまちづくり整備を推進したほか、地域の民間提案等に基づき河川敷地をオープンカフェ等として利用する社会実験を実施することで河川空間を活用したふれあいの場やにぎわいの創出を図った。
さらに、ダムを生かした水源地域の自立的、継続的な活性化を図るため「ダム水源地域ビジョン」の策定・推進を図っている。策定が完了した100ダムで同ビジョン推進が図られており、8ダムで策定作業に取り組んでいる。また、「総合水系環境整備事業」によりダム湖及びダム湖周辺の環境整備を実施した。
今後も引き続き実施することとしている。
砂浜の保全・回復、海辺を利用しやすくするための施設や環境の整備、海辺へのアクセスに配慮した施設の整備等、海岸利用の増進に資する取組を推進するとともに、「災害関連緊急大規模漂着流木等処理対策事業」の対象に「漂着ゴミ」を拡充するなど、関係機関と緊密な連携を図りながら、漂流・漂着ゴミに対する実効的な対策を推進し、観光資源としての海岸の魅力向上を図った。
また、海岸の整備と併せ、背後地における公園、道路等の整備を計画的・一体的に行うことにより、地域住民が海と親しみ、集い、憩える場としてコースタル・コミュニティ・ゾーン(C.C.Z.)の整備を推進した。さらに、マリーナ等の整備と連携しつつ、大規模なビーチ、遊歩道等の整備を重点的に促進する「ビーチ利用促進モデル事業」の実施地区を選定するとともに、海水浴と森林浴を同時に楽しめるなど潤いある生活環境の整備として、「白砂青松」で代表される「自然豊かな海と森の整備対策事業」の実施地区を24箇所選定し、整備を推進した。
都市の中の水路は観光資源としても大きな可能性を有しており、水路の保全・再生に向け、全国7箇所のモデル地域(船橋市、横浜市、厚木市、大津市、堺市、神戸市、北九州市)において、下水処理水、雨水、地下水等の活用による平常時の流量の回復、水質改善のための水路整備、維持管理及び活用方策に関する計画策定、具体的な設計、施工等を推進した。今後も、これらの取組を引き続き実施することとしている。
都市景観や防災性の向上、安全で快適な通行空間の確保、歴史的まちなみの保全等を図るため、「無電柱化推進計画」(平成16年~平成20年)に基づき、幹線道路に加えて、主要な非幹線道路を含めた面的な無電柱化を推進し、電柱・電線の無い良好な街並み景観の形成を図った。今後も引き続き実施していく。
▲無電柱化されたまちなみ(三重県伊勢市)(整備前)
▲無電柱化されたまちなみ(三重県伊勢市)(整備後)
|
|