平成19年度観光の状況
第II部 平成18年度の観光の状況及び施策
第2章 国際競争力の高い魅力ある観光地の形成
第2節 観光資源の活用による地域の特性を生かした魅力ある観光地の形成
文化財は、我が国の歴史、文化等の正しい理解のために欠くことができないものであり、また、将来の文化の向上・発展の基礎となるものであることから、その適切な保存・活用を図ることが極めて重要である。国は、貴重な国民の財産である文化財を保護するため、「文化財保護法」に基づき、建造物、絵画、彫刻等の有形文化財を国宝、重要文化財や登録有形文化財に、演劇、音楽、工芸技術等の無形文化財を重要無形文化財に、農具や漁猟用具、祭りや民俗芸能、民俗技術等の民俗文化財を重要有形・無形民俗文化財や登録有形民俗文化財に、遺跡、名勝地、動植物等を史跡、名勝、天然記念物や登録記念物に指定・登録するほか、人と自然のかかわりの中で作り出された棚田や里山等を重要文化的景観に、歴史的な集落・まちなみを重要伝統的建造物群保存地区として選定するなどして、その適切な保存・活用を図っている。
特に、地域の歴史的・文化的シンボルである史跡等については、城の石垣や古墳石室の修理といった保存のための整備、建物復元・遺構の露出展示やガイダンス施設の設置といった整備を行い、その魅力を高めることで、地域の観光資源として活用されており、平成19年度は五稜郭等で整備を行った。
また、我が国の歴史を理解する上で極めて重要な街道、水路等のうち往時のたたずまいを残しているものを「歴史の道」として選び、それに沿う地域を一体のものとして保存・整備し、活用を図っており、平成19年度は奥州街道等で整備を行った。
そのほか、国立博物館等における国宝・重要文化財の公開に加え、公私立の歴史的民俗資料館等において地域の民俗文化財等の保存・活用を図っている。
顕著な普遍的価値を有する文化遺産、自然遺産を人類全体のための遺産として保護していこうとする考えに基づきユネスコ総会で採択された「世界遺産条約」により、我が国では日本の文化財を世界遺産へ登録するとともに、国際的な世界遺産の保護に関する取組を進めている。
平成19年7月には、「石見銀山遺跡とその文化的景観」が世界遺産一覧表に記載された。また、平成20年2月には国立西洋美術館(本館)を含む「ル・コルビュジエの建築と都市計画」について、日本、フランス等6か国共同で推薦書を提出した。
我が国の世界遺産暫定一覧表については、平成19年1月に「富士山」等4件を追加し、8件となっており、さらに、平成19年9月及び同年12月に地方公共団体から提出された提案書に基づき、「文化審議会文化財分科会世界文化遺産特別委員会」における調査・審議を経て追加を行っていく。
観光資源保護等の観点から、募金活動や寄付を通じた民間の自主的参加を得て、歴史的価値を有する文化遺産や良好な自然環境を有する土地等を取得するなどし、それらの適正な管理、保全及び活用を図る必要がある。
(財)日本ナショナルトラストにおいては、平成19年4月に旧安田楠雄邸(東京都文京区)を一般公開し、また平成19年11月に四国鉄道文化館(愛媛県西条市)を開館するとともに、「地域遺産の活用に向けた今後の体制の在り方検討委員会」を設置し、地域遺産の活用方策及び今後のナショナルトラスト運動推進のための体制の在り方について検討している。
「第25回ナショナルトラスト全国大会(東京)」には全国各地の関係者約350名が参加し、シンポジウム等を通じて自然環境保全活動等の一層の推進が図られた。ナショナルトラスト活動による企業遊休地等を活用した環境保全及び環境教育活動推進に向けた調査の実施等、普及啓発のための政策を講じた。
ナショナルトラスト活動を行う法人に対する寄付について税制優遇措置を講じているなど、今後もナショナルトラスト運動推進に関する支援を行っていくこととする。
2 歴史的風土に関する観光資源の保護、育成及び開発 |
(1) 歴史的風土の保存による魅力ある国づくりの推進 |
京都市、奈良市、鎌倉市等の古都における歴史的風土を保存するため、「古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法」に基づき、「歴史的風土保存区域」(平成20年3月末現在32地区20,083ha)が指定されており、特に枢要な部分については、「歴史的風土特別保存地区」として都市計画に定められている(平成20年3月末現在60地区6,428.4ha)。
なお、奈良県高市郡明日香村においては、「明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法」に基づき、明日香村の全域が「第1種歴史的風土保存地区」(125.6ha)及び「第2種歴史的風土保存地区」(2,278.4ha)として都市計画に定められている。
これらの地域においては、宅地の造成等の行為を規制するとともに、「古都保存統合補助事業」の実施により、地方公共団体による土地の買入れや歴史的風土保存のための施設整備を支援した。
(2) 地域の観光の拠点となる都市公園の整備の推進 |
観光資源となる遺跡、城址、樹林等の地域の歴史・文化・自然的資産及び景観形成上優れた建造物を生かし、観光振興の拠点となる都市公園の整備を推進した。また、都市における樹林地の保全や湿地・干潟の再生・創出等により、多様な生物の生息生育基盤や身近な自然と触れ合う場を確保するなど、自然と共生する魅力的な都市の実現を図るため、自然再生緑地の整備を推進した。
国家的記念事業や我が国固有の優れた文化的資産の保存・活用及び一の都府県を越える見地から国が設置する国営公園については、首里城の復元を行っている「国営沖縄記念公園」を始めとする16箇所で開園しており、全国で約3,000万人が利用した。
▲国営沖縄記念公園首里城地区(首里城祭の様子)
歴史上重要な幹線道路として利用され、特に重要な歴史的・文化的価値を持つ道路を対象に選定した「歴史国道」について、その保存・復元・活用を図り、併せて地域からの情報発信を行うことにより、歴史文化を軸とした魅力的な地域づくりを推進しており、平成19年度においては6箇所で歩道の整備や道路の美装化等を実施した。
登録有形文化財や登録記念物に登録されている歴史的価値を有する砂防関係施設について、文化財に相応しい適切な維持管理、周辺の一体的整備等を実施し、豊かな自然環境と地域を守り続けてきた砂防関係施設を核とした地域活性化を推進した。今後は、自然の復元の一環を担ってきたこのような施設を地域の観光資源の核と位置付け、新たな交流の場の形成に資する取組を推進していく。
▲登録有形文化財に登録されている白岩砂防えん堤(富山県常願寺川水系)立山カルデラの砂防事業の根幹となる施設
▲立山カルデラを望む(白岩砂防えん堤上流部)立山カルデラ砂防体験学習会
3 優れた自然の風景地に関する観光資源の保護、育成及び開発 |
自然公園は、我が国の優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることを目的として「自然公園法」に基づき指定される公園で、国立公園、国定公園、都道府県立自然公園の3種類がある。これらの公園は我が国の主要な観光地としても重要な役割を果たしている。
1)公園計画の見直し等
自然公園の保護及び適正な利用を図るため、公園の区域や計画を定めており、概ね5年を目途に見直し作業を実施している。平成19年度には、丹後半島の海岸部、世屋高原及び大江山連峰から成る19,023haの地域を「丹後天橋立大江山国定公園」として指定したほか、「日光国立公園」の尾瀬地域と会津駒ヶ岳及び田代山・帝釈山周辺地域を併せた37,200haの地域を「尾瀬国立公園」として指定した。国定公園では17年ぶり、国立公園では20年ぶりとなる新規指定であり、これで我が国の国立公園の数は29、国定公園の数は56となった。また、「西表国立公園」における石垣島地域の公園区域への編入とそれに伴う「西表石垣国立公園」への名称変更を始めとして、国立公園4公園、国定公園4公園において公園区域及び公園計画の見直しを行った。
2)保護と管理
国立・国定公園の優れた自然の風景地のうち、特にその風致の維持を図る必要のある地域を、特別地域として指定し、各種一定の行為を規制している(図II-2-2-1)。
図II-2-2-1 日本全国の国立・国定公園の配置図
国立・国定公園の特別地域の中でも、公園の核心的な景観地については、「特別保護地区」として指定し、最も厳しい保護規制を行っている。その面積は、全国立公園面積の13.2%、全国定公園面積の4.9%である。また、我が国の周辺海域には、熱帯魚、サンゴ、海草等の海中生物を主体とする優れた海中景観が存在する。このため、海中公園地区制度が設けられ、その保護と適正な利用が図られている(表II-2-2-2、表II-2-2-3)。
表II-2-2-2 自然公園の地域別面積
表II-2-2-3 国立・国定公園の海中公園地区
国立・国定公園内で自然の風景地の保護と適正な利用を図ることを目的として、公益法人や特定非営利活動法人(以下「NPO法人」という)を、その申請により公園管理団体として指定し、自然の風景地の管理、公園利用施設の維持管理、公園内の自然情報の収集・提供等に係る市民等の自発的な活動を推進している。平成19年度末までに、国立公園(知床国立公園等)で4団体を指定している。
さらに保護・管理のため以下の事業を実施した。
1)国立公園等の貴重な自然環境を有する地域において、野生動植物の保護、里地里山の保 全、サンゴを食害するオニヒトデの駆除等の「国立公園等民間活用特定自然環境保全活動(グリーンワーカー)事業」を行っている。
▲グリーンワーカー(オニヒトデ駆除)西表石垣国立公園
2)8月第1日曜日の「自然公園クリーンデー」に全国の自然公園で一斉に美化清掃活動を行うなど、関係地方公共団体等と協力し清掃活動を行った。
▲クリーンデー(阿寒国立公園)
3)さらに、(財)自然公園財団を始めとする関係機関により、自然公園内での歩道、便所、休憩所等の公共的施設の清掃、補修のほか、利用最盛期に集中する自動車の整理、美化清掃活動、公園施設等の維持管理、利用者に対する自然保護思想の普及啓発等の事業が行われている。
3)乗入れ規制地区の指定等
「自然公園法」により、国立公園又は国定公園の特別地域のうち環境大臣が指定する区域においては、野生動植物の生息・生育環境への被害を防止するため、スノーモービル、オフロード車、モーターボート等の乗入れが規制されている。
また、国立公園内においては、「国立公園内における自動車利用適正化要綱」に基づき、地方環境事務所、地元警察署等で構成する連絡協議会において、道路交通環境に応じた規制方法を検討し、一般車両通行止め等の交通規制を行って、観光地の交通安全の確保、環境保全に努めている。
このほか、平成19年9月より吉野熊野国立公園の西大台地区において、原生的な自然を有する地域を一定のルールとコントロールの下で持続的に利用するため、立入り人数等を調整する利用調整地区の運用を開始した。
4)広範な関係者による保全管理
広範な関係者の参加による魅力的な国立公園づくりを推進するために、全国4箇所(尾瀬・上信越高原・白山・西表石垣)でモデル事業を実施するとともに、有識者の意見も踏まえて、参加型管理運営を各地で実践するための事例集を作成した。
5)国立公園・国定公園における利用のための施設の整備
自然環境の保全に配慮しつつ、自然とのふれあいを求める国民のニーズにこたえ、安全で快適な利用を推進するため、平成19年度には全国29の国立公園において、国立公園の主要な入口における情報提供施設、山岳地域の適正な利用を推進するための登山道、利用拠点における良好な景観形成、その他利用の基幹となる施設の整備を進めるとともに、失われた自然を取り戻すための自然再生事業を実施した。
また、国と地方の協力の下、自然とのふれあいの場の整備や自然環境の保全・再生を進めるため、平成19年度には、39都道府県において策定された「自然環境整備計画」に位置付けられた国定公園の整備、国指定鳥獣保護区における自然再生事業及び長距離自然歩道の整備について「自然環境整備交付金」を交付した。
6)長距離自然歩道の整備
自然公園や文化財を有機的に結ぶ長距離自然歩道について、平成19年度においても引き続き、北海道、東北、首都圏、東海、中部北陸、近畿、中国、四国、九州の各長距離自然歩道において四季を通じて安全で快適に利用できるよう配慮しつつ整備を進めた。長距離自然歩道の計画総延長は約26,000kmに及んでおり、平成18年には5,956万人が長距離自然歩道を利用した。
7)利用者への指導等の推進、情報発信
国立・国定公園の保護と適正な利用のため、自然公園指導員約3,000名を委嘱し、利用者に自然保護思想や利用マナーの普及啓発、安全利用等に関する指導等の推進を図った。また、地方環境事務所等において約1,800名のパークボランティアの養成及びその活動に対する支援を全国24国立公園等40地区で実施した。
また、国立公園の魅力や制度を紹介するパンフレットを作成・配布するとともに、国立公園を紹介するホームページを新たに作成した。
世界遺産条約に基づき、平成20年2月現在で、3件の世界自然遺産が登録されている(表II-2-2-4)。
表II-2-2-4 日本の世界自然遺産
屋久島、白神山地、知床の世界自然遺産については、管理計画に基づき、入山者の増加に対応した保全対策を実施するなど、保護・管理を行った。特に、平成17年に登録された知床については、平成19年12月に海域管理計画を策定するとともに、平成20年2月に登録後の保全状況に関する調査団を招へいするなど登録に際して世界遺産委員会から勧告のあった事項について適切に対応し、同地域の自然環境の適正な保全に向けた取組を進めた。
また、世界遺産センター(屋久島、白神山地)等において、遺産地域の管理、調査研究及び普及啓発等を実施した。
(3) 優れた自然の風景地を生かした地域づくりの推進 |
1) 自然保護思想の普及
1)「自然に親しむ運動」等を通じて、自然と触れ合う各種活動を実施したほか、自然公園法制定50周年を機に、従来の「自然公園大会」を一新し、「自然公園ふれあい全国大会」として瀬戸内海国立公園六甲地域(兵庫県)において開催した。
2)小中学生に自然保護の大切さを学ぶ機会を提供する「子どもパークレンジャー」を実施した。
3)「ラムサール条約湿地」に関する普及啓発を図るなど、湿地の保全と賢明な利用を推進するとともに、「国指定鳥獣保護区」において、野生鳥獣の生態等に関する普及啓発等を行った。
4)「希少野生動植物種」について、捕獲及び譲渡等の規制を行った。特にアホウドリ、トキ、ツシマヤマネコ等については、「保護増殖事業計画」に基づき個体の繁殖促進や生息地の整備等を行った。
5)日本の生態系等に被害を及ぼし、又は及ぼすおそれがある「特定外来生物」の輸入、飼養等の規制や防除を行うとともに、外来生物の輸入規制等に関する普及啓発を実施した。
2)森林等の観光への活用
森林環境教育、健康づくり等の森林利用に対応した多様な森林の整備を推進するため、森林空間総合整備事業を実施し、教育関連施設、健康増進施設等と連携を図った森林の整備を行った。また、風景等が優れ、自然探勝、ハイキング、キャンプ等の森林レクリエーション利用に供すること等を目的とする森林については保健保安林として、名勝、旧跡の風致の保存を目的とする森林については風致保安林として、平成19年3月末現在、合わせて72万haを指定している。さらに、観光地の周辺の森林において、山崩れ、雪崩等の災害を防止するため、周辺の景観に配慮しつつ、治山事業等を実施し、安全の向上と併せて観光資源の質的向上に寄与した。
国有林野では、自然休養林等の「レクリエーションの森」を人と森林とのふれあいの場として積極的に提供した。また、国民による森づくり活動の場を提供する「ふれあいの森」、学校等による体験活動・学習活動の場を提供する「遊々の森」の設定・活用を推進した。このほか、優れた自然環境を有する森林については、保護林として設定あるいはその拡充を行い、適切な管理を行った。さらに、「世界自然遺産」に登録されている屋久島、白神山地、知床の保全対策並びに「世界文化遺産」と一体となった景観を形成する森林の景観回復対策を講じた。
3)海の観光への活用
生態系や自然景観等周辺の自然環境に配慮した海岸整備を行う「エコ・コースト事業」を49箇所で実施した。
今後も引き続き実施することとしている。
4)北海道の美しい自然景観の観光への活用
北海道では地域の活動団体が主体となり、行政と連携し、「美しい景観」、「活力ある地域」、「魅力ある観光空間」づくりを行う「シーニックバイウェイ北海道」を推進している。
5)生物多様性の保全と持続可能な利用
生物多様性の保全と持続可能な利用のための基本計画である生物多様性国家戦略について、「第三次生物多様性国家戦略」を平成19年11月に閣議決定した。
大規模自転車道の整備を行うとともに、川の親水施設、港湾緑地等とサイクリングロードの連携を始め、自転車と他の交通機関の連携を強化する各種施策を総合的に推進することにより、全国15箇所の「サイクルツアー推進モデル地区」においてサイクリングツアーを振興し、地域の特性を生かした魅力ある観光地の形成を図った。
今後も引き続き実施することとする。
歩きやすさに十分配慮しつつ、周辺景観や地域の個性を生かした歩行者専用道路等を整備する「ウォーキング・トレイル事業」として、休憩施設やデザイン等を工夫した案内標識、来訪者の発着拠点となる駐車場等を整備している。
平成19年度には8箇所で整備を実施しており、歩行者専用道路の整備及びベンチ等の休憩施設の整備等を実施した。
本事業は、今後も引き続き実施することとしている。
4 良好な景観に関する観光資源の保護、育成及び開発 |
平成19年度に「景観形成総合支援事業」を創設し、地域の景観上重要であって、特に交流人口の拡大の効果が大きく見込まれる「景観法」に基づく景観重要建造物及び景観重要樹木の保全、活用を中心とした取組の支援を行った。
地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないものである文化的景観について、特に重要なものとして新たに「アイヌの伝統と近代開拓による沙流川流域の文化的景観」(北海道沙流郡平取町)等5件の重要文化的景観の選定を行った。そのほか、全国各地に所在する文化的景観に関する調査、保存計画策定、整備や普及・啓発事業に対し補助を行った。
今後も、文化的景観に関する保護の取組を引き続き行うこととしている。
良好な都市環境の形成を図るため、「都市緑地法」に基づき、都市計画に「特別緑地保全地区」を定めている(平成19年3月末現在381地区約5,500ha(近郊緑地特別保全地区を含む))。これらの地区において、宅地の造成等の行為を規制することで自然的環境の保全を図るとともに、「緑地保全等統合補助事業」等により、地方公共団体による土地の買入れや保全利用のための施設整備の機動的な実施を支援した。
山麓斜面に市街地が近接している神戸市等において、景観に配慮した砂防関係施設等の整備を実施するとともに、土砂災害に対する安全性を高め緑豊かな都市環境と景観を保全・創出する取組を行った。
今後もこれらの取組を引き続き実施することとしている。
5 温泉その他文化、産業等に関する観光資源の保護、育成及び開発 |
平成19年3月末現在における全国の温泉ゆう出源泉数は、28,154箇所(うち自噴するもの5,122箇所、動力によるもの14,115箇所、未利用のもの8,917箇所)、ゆう出量は1日換算約400万トンに及んでいる。
また、温泉地は全国に3,157箇所あり、温泉を利用する宿泊施設数は15,024施設である。温泉の利用等に当たっては、「温泉法」に基づき温泉の枯渇を防止し、将来にわたって有効に利用し得るよう温泉の掘削、増掘又は動力装置の設置等の行為について規制を加え、その保護がなされており、都道府県等に対し今後も引き続き適切な助言を行うこととする。
さらに、温泉利用の効果が十分期待され、健全な保養地として大いに活用される温泉地を「温泉法」に基づき、「国民保養温泉地」として環境大臣が指定しており、平成20年3月末現在、91箇所が指定されている。
地域伝統芸能等を活用し、地域の特色を生かした観光の振興を図るため、平成19年7月28日・29日の2日間、長野県松本市において開催された「第15回地域伝統芸能全国フェスティバル」について後援を行った。
我が国で実施される最高水準の舞台芸術公演(音楽・舞踊・演劇・伝統芸能・大衆芸能の各分野延べ414件)を支援することにより、舞台芸術の創造を活性化させ、日本の文化に親しむことができる機会の増加に寄与した。
本支援事業は、今後も引き続き実施することとしている。
国立劇場(国立劇場・国立演芸場・国立能楽堂・国立文楽劇場・国立劇場おきなわ)において歌舞伎・演芸・能楽・文楽・組踊等の伝統芸能を各種の演出や技法を尊重しながら、努めて古典伝承のままの姿で公開するとともに、新国立劇場において国際的に比肩しうる高い水準のオペラ・バレエ・現代舞踊・演劇等の自主制作の公演を行い、国民に舞台芸術の魅力を発信する拠点としての取組を推進した。
この取組は今後も引き続き実施することとしている。
次世代へ伝統文化の継承を図ることを目的に、都道府県が地域の個性豊かな伝統文化の一体的・総合的な保存・活用のためのマスタープランを策定し、これに基づき、伝統文化保護団体等が実施する伝承者の養成、用具等の整備、映像記録等の作成等の事業を支援する「ふるさと文化再興事業」として山形県米沢市の「梓山獅子踊」等への支援や、子どもたちに対し、土・日曜日等において、学校・文化施設等を拠点とし、我が国の伝統に根ざした文化を計画的、継続的に体験・修得できる機会を提供する
「伝統文化こども教室事業」として大阪府交野市の「伝統文化交野箏曲こども教室」等への支援を実施した。
今後も、引き続き施策の展開を図っていくこととしている。
(6) 国民の各種文化活動の発表、競演、交流の場の提供 |
日頃の国民の文化活動の取組の成果を全国規模で発表する機会を提供する国内最大級の文化の祭典である「国民文化祭」を都道府県との共催で開催することにより、地域間の交流の活発化、開催地の特色ある文化の全国発信等の成果に加え、出演者、観客等を含めた観光客の誘致に一定の成果を上げている。
平成19年度は、「第22回国民文化祭・とくしま2007」(愛称:おどる国文祭)を、平成19年10月27日から11月4日の9日間にわたり、徳島県内全24市町村において開催し、「阿波踊り」や「阿波人形浄瑠璃」を始めとする徳島県の特色ある文化を生かした各種イベントを実施した。
▲「国民文化祭・とくしま2007」オープニングフェスティバルで披露された300人による「阿波踊り」
1)みなと振興交付金
知恵と工夫を凝らし、地域の活性化に寄与する「みなと」の振興を図る港湾所在市町村等の取組を支援する「みなと振興交付金」を創設し、平成19年度末現在、14プロジェクト(17港湾)の「みなと振興計画」を認定している。
今後も引き続き、「みなと」の振興を通じて地域の活性化を図る港湾所在市町村等の取組を支援することとしている。
2)運河の魅力再発見プロジェクト
地域が「運河」の魅力を再発見し、独自の知恵や工夫により、周辺地域のコミュニティ基盤や観光基盤、さらには災害時の緊急輸送基盤としての機能等、「運河」を核とした魅力ある地域づくりへの取組を国が支援する「運河の魅力再発見プロジェクト」を平成19年度に創設し、同年度末現在、10件のプロジェクトを認定している。
今後も引き続き、地域の個性を生かした水辺のにぎわい空間づくりや水上ネットワークの構築等を通じて「運河」を核とした魅力ある地域づくりへの取組を支援することとしている。
3)NPO等との協働によるみなとまちづくりの推進
住民参加の下でみなとや海岸を活用した観光等の情報提供、産直市やフリーマーケット等の物販、各種イベントの開催等が行われる「みなとオアシス」の全国展開を推進し、みなとのにぎわい交流拠点の形成を支援している。平成20年3月現在で35港が「みなとオアシス」に登録されている(図II-2-2-5)。
図II-2-2-5 みなとオアシスの全国展開の推進
このほか、住民参加型のみなとまちづくりを行う上で、市町村による地域の担い手の育成や、市町村と地域の担い手との協働を支援している。引き続き、NPO法人等との協働によるみなとまちづくりを推進していく。
4)みなとの博物館ネットワーク・フォーラムの展開
みなとや海洋の果たす役割、歴史を紹介するとともに交流や学習の場として重要な役割を果たしている水族館や海事博物館等を始めとする「みなとの博物館」を活性化させる「みなとの博物館ネットワーク・フォーラム」の活動に協力した。今後も引き続き同フォーラムの活動に協力していくこととしている。
我が国の映画水準の向上、新人監督等の育成、地域の活性化等を目的とした映画製作への支援(22件)を行うとともに、優れた記録映画(3件)及び映画界への功労者の表彰(5名)を実施した。
また、日本映画が国内外においてより多くの上映機会に恵まれ、文化の発信・交流の媒体としての役割を果たし海外にも市場が広がるよう、国内における上映・映画祭への支援(延べ95件)や海外への発信支援(4箇所)を実施した。
観光による離島地域の経済の活性化を図ることを目的として、観光資源が十分に開発・活用されていない離島において、魅力的な観光資源の開発、観光ルートの設定とともに、モニターツアーによる検証を行う「離島ツアー交流推進事業」を長崎県宇久島、高島、黒島、小値賀島、野崎島を対象に実施した。また、離島における海洋性気候等の恵まれた環境を活用したアイランドテラピー(健康増進ニーズに対応する保養・療養活動等)の推進や都市と離島住民との大規模な交流イベント「アイランダー」の開催等による離島観光情報のPRを行い、今後も引き続き実施することとしている。さらに、離島航路事業者、旅行業者、交通事業者、地域住民等多様な主体と連携し、地域が一体となった離島地域の観光交流促進を図った。
引き続き、離島地域の観光交流を促進していく。
▲堂崎教会(世界遺産の暫定リストに追加されている)「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の教会の一つ
▲アース・セレブレーション2007(佐渡島)
半島地域の自立的発展等を目指し、多様な自然・文化資源の活用による観光を通じた半島地域の活性化等を図るため、体験観光やまちづくりに取り組む地域づくり団体等に対し、半島地域の観光資源やそれらを生かした活動を行っている団体の事例等に関する情報提供や助言等の支援を行った。
また、半島ならではの魅力を情報発信するためのホームページを開設するとともに、体験観光の促進等をテーマにした「半島地域づくりフォーラム in 宇土天草」を宇土天草地域(熊本県)で開催した。
平成18年11月に変更した豪雪地帯対策基本計画に基づき、地域の自然や生活、文化を生かした観光を振興することとしている。新潟県、長野県においてはNPO法人が主体となって「広域的な雪処理の担い手確保と地域体験交流を兼ねた新たな仕組みづくり」をテーマに、「越後雪かき道場」を実施した。
今後、年間を通じた雪国と他の地域との多様な交流の推進を図ることとしている。
首都圏及び近畿圏においては、関係省庁及び関係都府県が連携して、「都市環境インフラのグランドデザイン」を策定し(首都圏:平成16年3月、近畿圏:平成18年8月)、自然とふれあう場の提供や観光地等の環境を構成する自然環境の保全等に関する取組を行っている。
首都圏においては、本グランドデザインに基づき、自然とのふれあい資源の情報や自然環境の保全等に関する取組情報等を広く首都圏住民に提供することを目的とした「都市環境インフラデータベース」(http://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/infra-db/top.html)を平成19年7月にホームページ上で公開した。
近畿圏においては、本グランドデザインに基づき設置した行政や市民団体からなるワーキンググループにおいて、観光名所として名高い「嵐山」周辺で竹林の手入れ不足等の地域課題を抽出し、歴史・文化的価値を有する地域環境の保全や観光資源の創出に向けた取組の検討を行った。
リゾート施設の利用促進、人材の育成等のソフト面の充実、地域間交流の促進等に向けた取組を行っているリゾート地域の事例調査を行い、関係地方自治体等に対し、情報提供を行った。
自然環境にやさしく美しいみなとへの変革を図るため、水質・底質を改善する汚泥しゅんせつや覆砂、港湾の親水性を高め良好な環境を創造する干潟・藻場等の積極的な保全・再生・創出のほか、海浜及び緑地の整備を推進した。平成19年度は、堺泉北港等において緑地の整備、広島港等において干潟等の整備を実施した。
今後も引き続き緑地や干潟等の整備を実施していくこととしている。
2)港湾景観の形成
港湾において人々が憩い集う、美しく快適な空間を形成するため、港湾が持つ景観資源を活用し、また、陸側だけでなく海からの景観にも配慮した港湾空間を創出した。また、海に開かれた親水性を有し、海の環境や景観を享受できる緑地の整備を平成19年度は堺泉北港等で推進した。
今後も引き続き港湾景観の形成を図っていくこととしている。
海洋性レクリエーションの振興と公共水域の適正な利用促進を図るため、プレジャーボートの活動拠点となる小型船舶の簡易な係留・保管施設(ボートパーク)の整備を推進した。
また、第三セクターや民間事業者が行うマリーナ整備に対して、日本政策投資銀行等による長期・低金利の融資等の支援を行っている。
このほか、放置艇の解消をひとつの目的として、港湾法に基づき、港湾区域等におけるプレジャーボートの放置等禁止区域の指定を促進し、公共水域等の適正な管理を推進するとともに、係留・保管場所等の情報提供サイトである「海覧版~プレジャーボート保管場所情報~」(http://www.kairanban21.jp/)を公開し、安全、快適かつ適正なプレジャーボートの利用環境の整備を行った。
既存のマリーナ等を活用したマリンレジャーの拠点である「海の駅」の設置・推進を支援した。また、ネットワークを生かしたイベント等の取組を通じ、「海の駅」間の連携強化及び地域の観光振興を図った(図II-2-2-6)。
図II-2-2-6 海の駅一覧(平成20年3月31日現在
(17) 美しい風景の撮影スポットの近傍の駐車場に関する情報提供 |
安全・快適に駐車できる駐車場と美しい風景の撮影スポットについて、当該駐車場の利用促進や国民への情報提供実施のため、平成19年度末までに約1,500箇所の駐車場を選定し、撮影スポットに係る情報を発信した。
今後も引き続き実施していくこととしている。
(18) 観光資源としての河川環境の保全・創出及び活用 |
汚濁した底泥のしゅんせつや浄化用水の導入等を実施した。また、緊急に水環境の改善を図る必要のある河川等においては、河川管理者や下水道管理者ばかりでなく、地方公共団体や地域住民等を含めた流域の関係者が一体となって水環境改善に取り組むため、「第二期水環境改善緊急行動計画(清流ルネッサンスII)」を実施した。
また、地域の暮らしや歴史・文化との調和にも配慮し、生物の良好な生息・生育・繁殖環境及び多様な河川景観を保全・創出する多自然川づくりを実施した。
今後もこれらの取組を引き続き実施していくこととしている。
(19) 水辺における環境学習・自然体験活動の推進 |
地域の身近な水辺における環境学習・自然体験活動を推進するため、市民団体や教育関係者、河川管理者等が連携して、子どもの水辺を登録する『「子どもの水辺」再発見プロジェクト』を推進しており、子どもの水辺における活動に必要な機材の貸出しや学習プログラムの紹介等を総合的に支援した。また、自然体験活動を充実したものとするために必要な場合において、水辺に近づきやすくする河岸の整備等を行う「水辺の楽校プロジェクト」を推進しており、これまでに269箇所が登録された(平成19年度は8箇所が登録)。
また、近年、カヌーやラフティングを始めとした水面利用や川での自然体験活動が活発化、多様化していることを踏まえ、全国の川で活動する市民団体等で構成されるNPO法人「川に学ぶ体験活動協議会(RAC)」と連携し、川で安全に活動するための指導者の育成を推進した。さらに、「急な水難事故防止のためのアクションプラン」を策定し、普及啓発を行った。
今後もこれらの取組を引き続き実施していくこととしている。
みなとの良好な自然環境の市民による利活用を促進し、自然環境の大切さを学ぶ機会の充実を図るため、自治体やNPO法人等が行う自然体験・環境教育活動の場ともなる藻場・干潟等の整備を行うとともに、児童や親子を対象とした「海辺の自然学校」や、楽しく安全に活動するための知識と技術を習得する「海辺の達人養成講座」を推進し、平成19年においては千葉港等で実施した。
また、全国の海辺や海で活動する団体や個人により構成されるNPO法人等と連携し、海辺の自然体験・環境学習を推進した。
このほか、教育関係者、海岸管理者等の連携により、世代間の交流の場、自然・体験活動の場、マリンスポーツの場として青少年が利用しやすい海岸づくりを図るため、「いきいき・海の子・浜づくり」を32箇所で実施した。
▲【海辺の自然学校】カヌーによる体験学習の様子
▲【海辺の達人養成講座】スノーケリングの技術講習の様子
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