前(節)へ   次(節)へ
第I部 平成23年度の観光の状況

第3章 東日本大震災の影響と復興

第1節 東日本大震災が観光分野に与えた影響

1 訪日外国人旅行者数の動向


 訪日外国人旅行者数については、平成23年2月までは前年を上回る推移を示していたものの、東日本大震災が発生した同年3月は前年同月比49.7%と大幅に減少した。特に、震災発生前(平成23年3月1~11日)は前年同期比104%であったが、震災発生後(平成23年3月12~31日)は前年同期比27%と大幅に減少した。平成23年の訪日外国人旅行者数は622万人となり、過去最高の861万人を記録した平成22年の72.2%にとどまった。特に、震災直後の平成23年4月については前年同月比37.5%となり、単月の減少幅としては過去最大であった(図I-3-1-1)。

図I-3-1-1 訪日外国人旅行者数の推移


 しかし、平成23年5月以降は、前年同月比の減少幅は徐々に縮小し、訪日外国人旅行者数は回復基調にあると言える。
 震災直後は、訪日旅行への不安が大きかったことや各国が自国民に対し我が国への渡航の自粛、延期や我が国からの退避を求める情報を発出したこと等が訪日外国人旅行者数の動向に大きく影響していたと思われる。しかし、その後、我が国から海外への正確な情報発信や、主要国政府への働きかけ等により、訪日旅行への不安が軽減されてきたものと考えられる。
 訪日外国人旅行者の宿泊者数(延べ人数)について前年同月比の推移を地方別に見ると、震災直後に全ての地方で大幅に減少した後、各地方で徐々に回復しており、中でも、九州地方や沖縄は全国平均に先行して回復している。しかし、東北地方は大きく減少したままであり、全国的には回復基調にある中で、東北地方は依然として厳しい状況に置かれていることが分かる(図I-3-1-2)。

図I-3-1-2 訪日外国人旅行者の地方別宿泊者数の前年同月比推移


 五大市場(韓国、中国、台湾、アメリカ、香港)からの訪日外国人旅行者数の前年同月比の推移を国・地域別に見ると、韓国の回復が遅れている(図I-3-1-3)。これは、韓国においては未だに原子力発電所事故に関する報道が多いため、放射能の影響に対する不安が他国に比べ強く残っていると推察されること、円高・ウォン安が続いていることが原因と考えられる。このため、韓国市場については、安全・安心を伝えるための発信を効果的に行うなど、韓国人消費者の心情に応じたきめ細かな対応が必要と考えられる。

図I-3-1-3 五大市場(韓国、中国、台湾、アメリカ、香港)からの訪日外国人旅行者数の前年同月比、前々年同月比推移


前(節)へ   次(節)へ
All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport