前(節)へ   次(節)へ
第I部 平成23年度の観光の状況

第3章 東日本大震災の影響と復興

第1節 東日本大震災が観光分野に与えた影響

2 日本人国内宿泊者数の動向


 日本人国内宿泊者数(延べ人数。以下同じ)については、平成23年3月は前年同月比74.2%となった。平成23年4月以降は、前年同月比の減少幅は徐々に縮小し、同年12月は前年同月比102.7%にまで持ち直しており、日本人国内宿泊者数もまた回復してきていると言える(図I-3-1-4)。

図I-3-1-4 日本人国内宿泊者数の推移


 なお、平成23年の日本人国内宿泊者数は(※)3億968万人となり、平成22年と比較すると95.9%にとどまった。
 日本人国内宿泊者数の前年同月比の推移について、震災の被害が特に大きかった岩手県、宮城県、福島県(以下、東北三県)と全国を比較すると、東北三県の(※)ビジネス客中心の宿泊施設については、平成23年4月以降一貫して大きな増加傾向を示している。これは、震災からの復旧・復興の関係者や被災者が多く宿泊したためと推察される。東北三県の(※)観光客中心の宿泊施設については、震災直後にはビジネス客中心の宿泊施設と同様の宿泊需要があったと思われ、増加傾向を示しているが、平成23年7月以降は減少に転じている。これは、順次被災者の仮設住宅への入居等が進んだことなどが影響していると考えられるが、その一方で、観光需要は十分に回復していない状況が見て取れる(図I-3-1-5)。

図I-3-1-5 日本人国内宿泊者数の前年同月比の比較(東北三県)


 また、同一施設における一人あたり平均宿泊数を見ると、例年は沖縄県、東京都、京都府が上位を占めているが、平成23年4~6月期においては福島県をはじめとする東北三県と茨城県が上位を占めており、震災からの復旧・復興の関係者や被災者がこれらの県に長期滞在したことが影響していると推察される(図I-3-1-6)。

図I-3-1-6 同一施設における1人あたり平均宿泊数


 東北三県を除く東北各県の日本人国内宿泊者数の前年同月比の推移を見ると、観光客中心の宿泊施設については、一時的に復旧・復興需要があったと考えられる東北三県に比べ、震災直後から厳しい状況に置かれていた様子が伺える。しかし、全体的な推移としては回復傾向にあり、次第に観光需要が回復している様子が見て取れる。ビジネス客中心の宿泊施設については、東北三県に見られた復旧・復興需要が発生していない様子が伺える(図I-3-1-7図I-3-1-8)。

図I-3-1-7 観光客中心の宿泊施設の日本人国内宿泊者数の前年同月比の比較(東北各県)



図I-3-1-8 ビジネス客中心の宿泊施設の日本人国内宿泊者数の前年同月比の比較(東北各県)


 同様に北関東三県(茨城県、栃木県、群馬県)について見ると、観光客中心の宿泊施設については、特に平成23年6月までは全国平均と比べて大きな影響を受けていた様子が見て取れる。一方、ビジネス客中心の宿泊施設については、茨城県のみが全国を大きく上回る水準で推移しているが、これは、復旧・復興の関係者が、茨城県内に宿泊したためと推察される(図I-3-1-9図I-3-1-10)。

図I-3-1-9 観光客中心の宿泊施設の日本人国内宿泊者数の前年同月比の比較(関東地方)



図I-3-1-10 ビジネス客中心の宿泊施設の日本人国内宿泊者数の前年同月比の比較(関東地方)


 日本人国内宿泊者数の前年同月比について地方別に見ると、東北については先に述べたように復旧・復興需要が発生した様子が見て取れるものの、地理的に被災地に近接している関東地方やビジネス目的より観光目的が宿泊理由の多くを占めている北海道、沖縄については、震災発生直後に全国平均に比べ宿泊者数が大きく減少している様子が分かる。一方、近畿、四国、九州の各地方については、全国平均と比較しても、宿泊者数の減少幅が相対的に小さかった様子が見て取れ、東日本大震災が各地方の日本人国内宿泊者数に与えた影響は、相対的に西日本の方が小さかった傾向が認められる(図I-3-1-11)。

図I-3-1-11 日本人国内宿泊数の地方別宿泊者数の前年同月比推移


 以上見てきたように、震災直後に大きく落ち込んだ訪日外国人旅行者数や日本人国内旅行宿泊者数は、西日本が先行しつつ、全国的には回復してきていることが確認できる。この回復基調は、世界旅行ツーリズム協議会(World Travel and Tourism Council(以下、「WTTC」))が想定した我が国の観光分野の復興シナリオの予想を上回っている。しかし、同時に、東北地方については、一部に復旧・復興需要は認められるものの、観光需要については十分回復していないことが分かる。このため、引き続き、全国的に観光需要を喚起するための取組を講じていく必要がある。特に東北地方については、国内外から多くの観光客が訪れるための取組を進め、復興を支えていく必要がある。

(※) 
1 観光庁「宿泊旅行統計調査」による。
2 従業員数10人以上の宿泊施設の実績。
3 平成22年の数値は確定値、平成23年の数値は暫定値を使用。
(※) 
1 ビジネス客中心の宿泊施設とは「観光目的の宿泊者が50%未満」の宿泊施設である。
2 観光客中心の宿泊施設とは「観光目的の宿泊者が50%以上」の宿泊施設である。

前(節)へ   次(節)へ
All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport