第II部 平成23年度の観光の状況及び施策
第4章 国際観光の振興
第1節 外国人観光旅客の来訪の促進
1 我が国の観光魅力の重点的かつ効果的な発信
外国人旅行者の拡大は、日本人と外国人の交流の機会を通じた相互理解の増進により、国家間の外交を補完し、安全保障に貢献する。また、我が国の人口が減少する中、経済成長著しい周辺諸国からの人の流入の拡大によって、地域経済の活性化、雇用機会創出の効果がある。
このため、平成15年度から海外における日本の観光魅力の発信や訪日旅行商品の造成支援等を行うビジット・ジャパン事業の取組を官民一体で推進してきている。平成15年に521万人であった訪日外国人旅行者は順調に増加し、平成22年は過去最大の861万人を記録した。平成23年は東日本大震災等の影響もあり、622万人となったが、震災後は、着実な回復を見せている。
ビジット・ジャパン事業では、15の国・地域(韓国、台湾、中国、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インド、オーストラリア、米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、ロシア)を重点市場とし、訪日旅行促進のためのプロモーションを実施した。消費者向け事業としては、主に海外メディアの日本への招請・取材支援、海外の旅行雑誌等による広告宣伝、ウェブサイトによる情報発信、海外の旅行博覧会への出展等を行い、旅行目的地としての日本の関心を高め、訪日旅行需要の喚起を図った。また、海外の旅行会社向け事業としては、海外旅行会社担当者の日本への招請や国内の旅行会社等との商談会の実施による魅力的な訪日旅行商品の造成・販売支援並びに青少年交流の拡大に向けた訪日教育旅行の誘致等を行った。
3) ビジット・ジャパン事業における具体的な取組の例 |
平成23年度のビジット・ジャパン事業として、例えば、韓国市場においては、J-ROUTEと銘打った多様な旅行者のニーズに合わせた新たな訪日旅行ルートを、様々な広告媒体を活用してPRした。中国市場においては、中国人が好む日本の観光資源の旬な情報を、実際に訪日旅行を満喫した中国人旅行者の声と合わせて露出することで、訪日旅行意向の喚起のみならず、震災後の訪日旅行の安心感の醸成につながるプロモーションを行った。また、消費者の口コミの影響力の大きさも踏まえ、「Facebook」等のソーシャルネットワークサービスを活用した訪日旅行に関する情報発信も様々な市場で行った。
外国人旅行者の受入体制の構築や外国人に対する日本の魅力の発信といった努力に公的評価を付与することにより、訪日促進の諸活動の裾野を更に広げ、一層の外国人旅行者の訪日を推進するため、他の関係者の手本となる優れた取組を行い、「VISIT JAPAN大使」選定委員会において選定された62名を「VISIT JAPAN大使」に任命している。
「知的財産推進計画2011」(平成23年6月3日、知的財産戦略本部決定)のクールジャパン戦略においては、クールジャパンをテーマとした訪日観光ルートの開発の推進をはじめとして、コンテンツや観光、食等との連携により、日本の魅力を発信することとしている。同戦略に基づき、ビジット・ジャパン事業との連携を進めた。
日本政府観光局は、訪日外国人旅行者の多い国・地域に13の海外事務所を設置しており、政府観光局として旅行業界、メディア等現地関係者への働きかけや、ビジット・ジャパン事業の海外現地マネジメント等を行うこととしている。このため、北京事務所の拡充を行うなど、海外におけるプロモーション体制の強化を図っている。
また、旅行目的地としての日本の認知度向上を図るとともに、訪日旅行者の旅行計画の検討や各種予約等をサポートするため、12言語(英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語、フランス語、ドイツ語、タイ語、ロシア語、ポルトガル語、イタリア語、スペイン語、アラビア語)による訪日旅行情報のポータルサイト(http://www.jnto.go.jp)の運営を行っており、情報発信に大きな効果を発揮している。
平成23年度は、特に、東日本大震災後の風評被害対策のみならず、日本の地方自治体が地場産業や地域経済の再生を目的として、在外公館施設を活用する「地方の魅力発信プロジェクト」を立ち上げ、実施した(平成23年度は10件の実施)。
宮城県震災復興PRイベント(在サンフランシスコ日本国総領事館)
観光がもたらす経済効果は我が国の復興に向けて大きな力となることから、東日本大震災以降、大幅に減少した訪日外国人旅行者数を震災前の水準に回復させ、さらに増加させるため、大使館、総領事館等の在外公館においても、関係機関と連携し、各国の行き過ぎた渡航規制の見直しの当局への働きかけや、我が国への渡航の安全性に関する海外への情報発信を積極的に行っている。具体的には、観光庁や日本政府観光局、地方公共団体、現地の日系企業や旅行会社と連携しながら、観光展をはじめとする集客力の高い海外でのイベントに日本ブースを出展し、震災からの復興や我が国の観光、物産の魅力を発信している。また、映像資料やテレビCMなども活用しながら現地マスメディア、インターネットを通じ、我が国の伝統及び現代文化、先端技術や美しい自然、地方の魅力等を総合的に紹介している。
各地方運輸局等においては、地方公共団体や地域の広域連携組織等が行う外国人旅行者の訪日促進のための取組と連携して、地域固有の観光魅力を海外に発信するとともに、地域への魅力的な訪日旅行商品の造成等を支援するビジット・ジャパン地方連携事業を実施している。
駐日各国大使及び外交団を対象に、地方自治体と共催で地方視察プログラムを実施し、地方独自の文化、伝統、産業、自然環境等我が国の多様性に富む魅力を知ってもらうよう取り組んでいる。特に、平成23年度は東日本大震災の被災地の復興支援、観光促進、風評被害対策の観点から、10月6日~8日に駐日各国大使が岩手県及び宮城県を視察した。また、10月26日~27日に福島県、12月7日~8日には兵庫県を駐日外交団が訪問した。引き続き、地方視察プログラムを実施することとしている。
駐日各国大使の地方視察プログラム(岩手県)
駐日外交団の地方視察プログラム(福島県)
地域レベルの国際交流・国際協力を一層推進することを目的として、駐日外交団に対して各地方公共団体がそれぞれの特色・施策に関する情報を発信するセミナーを開催するとともに、姉妹友好都市交流等国際交流活動のための地方公共団体関係者間及び地方公共団体関係者と駐日外交団のネットワーク作りを支援する事業を行っている。また、重要外交政策の最新情報、国際会議誘致、外国要人の地方訪問等の各種情報提供を積極的に行っている。さらに、我が国の大使・総領事が一時帰国時に地方公共団体等を訪問し(平成23年度は56件実施)、最新の任国情報等を提供している。
第9回地域の魅力発信セミナー(地方公共団体のプレゼンテーション)
芸術家、文化人等、文化に携わる者を、一定期間「文化交流使」に指名し、世界の人々の日本文化への理解の深化や、日本と外国の文化人のネットワークの形成・強化につながる活動を展開している(文化交流使ホームページ:http://www.bunka.go.jp/kokusaibunka/bunkakouryu/index.html)。
また、在外公館や(独)国際交流基金による、公演、展示、映画祭といった文化交流事業を通じ、アニメや漫画といったポップカルチャーへの関心を糸口として、日本の文化や社会に対する理解を深め、日本への信頼へとつなげていくための努力を行っている。また各国との外交上の節目の年には、文化事業を含めた大規模かつ総合的な周年事業を政府関係機関や民間団体・企業等と連携して行い、重点的な文化発信を行うことで、より一層効果的な対日理解と交流促進を目指している。平成23年には、日本とドイツとの間で「日独交流150周年」、またクウェートとの間で「日本クウェート国交樹立50周年」、バルト三国との間で「日バルト三国新たな外交関係開設20周年」を行った。
農林水産物・食品の輸出促進のため、海外の食品見本市へのジャパンパビリオン設置による商談の場を提供し、日本産品の新たな販路拡大を図るため、潜在的需要が見込まれる国・地域においてアンテナショップを設置した。海外外食事業者を通じた日本食・日本食材等の普及活動等も実施した。これらの取組により、海外への日本食・日本食材等の普及に努めた。また、ビジット・ジャパン事業において、韓国、中国など海外各国で訪日観光プロモーションを実施した際に、パンフレットやDVDを活用し、日本の魅力の一つとして日本食の紹介を実施した。
加えて、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により、諸外国において我が国食品に対する輸入規制が強化され、輸出に落ち込みが生じた。そのことから、食品の輸出を回復し、再び拡大するため、政府一体となって我が国が実施している安全確保のための措置等について情報提供を行う等、輸入規制撤廃・緩和の働きかけを実施するとともに、我が国の食品の信頼回復に向けた情報発信等を実施した。
日本文化の総合的・集中的発信のため、伝統文化・芸術に加えて、近年世界的に高い人気を誇るアニメ、漫画、ファッションなどのポップカルチャーも、より深い対日理解や対日関心につなげる主要な手段の一つとして活用している。例えば、海外の日本ポップカルチャーイベントであるフランスの「JAPAN EXPO」やイタリアの「ロミックス」等の機会に、日本語・日本文化紹介ブースを設け事業を実施した。また平成19年に創設された国際漫画賞は今年で第5回を迎え、30の国と地域から145の作品の応募を得て、審査の結果、最優秀賞はスペインから応募のあった作品(米国出版)に授与され、優秀賞は台湾、タイ、中国から応募があった3作品に授与された(国際漫画賞HPにて試読可能:http://manga-award.jp)。
国際漫画賞授賞式
(10) 和のコンテンツの情報発信及びネットワーク化 |
我が国の高品質で本物の「和」の地域資源を海外の富裕層に情報発信していくとともに、我が国のブランド価値向上を図ることを目的とした「ラグジュアリー・トラベル・マーケット」の整備を推進した。具体的には、我が国の潜在的なプレミアム・コンテンツの発掘を行い、発掘したコンテンツを海外の商談会で情報発信を行った。また、海外バイヤー・メディアを招へいし、海外富裕層向けの日本の地域資源に関する調査を行った。
平成21年2月に、外国人向けに特化した新テレビ国際放送が開始され、伝統文化やポップカルチャーなど、日本の魅力を発信する多彩な番組が英語で放送されている。平成23年度においては、世界各国における視聴世帯数の更なる拡大及び認知度向上等の取組を行った(平成24年3月末時点の視聴可能世帯数は約1億5,400万世帯)。
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