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第II部 平成23年度の観光の状況及び施策

第5章 観光旅行の促進のための環境の整備

第5節 新たな観光旅行の分野の開拓

2 各ニューツーリズムの推進



  (1) エコツーリズムの推進

 エコツーリズムによる地域活性化のための人材・プログラムづくりと、自然資源の保全活用に係る施設整備を含む基盤づくりを一体的に実施した。

  (2) グリーン・ツーリズムの推進

 グリーン・ツーリズムの普及拡大を図るため、都市と農山漁村との交流を図る集落ぐるみの多様な取組に対する支援や地域資源を活用した交流拠点の整備に対する支援を実施した。特に、東日本大震災で被災した農山漁村の早期復興に向け、復興ツーリズムによる交流やボランティア活動への参加を促進した。

  (3) 文化観光の推進

 我が国には、世界遺産を始め独自の歴史に根差した文化財、多彩なまつりや伝統芸能等の無形文化遺産が全国各地に多数存在するほか、国内外の秀逸な作品を紹介する美術館・博物館等の文化施設やアートフェスティバルがあり、文化的な観光資源の宝庫となっている。
 また、我が国の映画・アニメ・ゲーム等のメディア芸術、食文化等も「クールジャパン」と呼ばれ国際的に注目を集めている。
 なお、映像を通じて地域の資源を広く紹介することを目的に、日本最大の国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア」内に設立した観光部門「旅シヨーット!プロジェクト」を通じて、旅をテーマにした作品を全国各地から作募集し、その中から入選作品を選考した。さらに、その入選作品の中から国土交通大臣賞を表彰し、その後、国内外の短編映画祭などで上映した。

  (4) 産業観光の推進

 我が国産業の近代化を物語る歴史的建造物等である「近代化産業遺産」について取りまとめた冊子や、産業観光を実施している事業所等の情報を掲載したポータルサイト「日本のものづくりの現場を探訪しよう」(ホームページアドレス:http://sangyou.nihon-kankou.or.jp/monodukuri.html)によって広く情報発信を行い、産業観光の推進による地域経済活性化を図った。
 また、国際競争力のある集客・交流サービス産業を構築するため、地域の特色ある伝統工芸、食、旅館等を集客・交流資源として活用した広域的かつ総合的に行われる取組を支援する「地域集客・交流産業活性化支援事業」を実施し、地域の「産業観光」への取組を支援した。
 さらに、各地において、歴史的・文化的価値のある工場等やその遺構、あるいは現代の最先端技術に触れる産業観光への取組が行われている。平成23年10月に、北海道函館市において開催された「全国産業観光フォーラム」について後援を行うなど関係者の連携による産業観光の推進を図っている。

  (5) 医療と連携した観光の推進

 訪日外国人3,000万人プロジェクトの実現に向けて、海外における訪日プロモーションとともに、日本国内における次世代成長分野の育成などによる新たな訪日メニューの創出が求められている。「国際医療交流(外国人患者の受入れ)」は「新成長戦略」(平成22年6月18日閣議決定)においても21の国家戦略プロジェクトのひとつに位置づけられており、国際交流や国際貢献、更には地域経済の活性化に資するものとして積極的に取り組んでいる。
 平成23年度は「インバウンド医療観光に関する研究会」を引き続き開催し、日本における外国人患者等の受入環境に係る課題の抽出と具体的な課題解決方法の提示を行った。また、コーディネーターの質の向上に資する資料を作成するとともに、受入のモデルを検討することで、外国人患者等が日本に安心して訪問できる環境を整備した。

  (6) スポーツ観光の推進

 地域のハイレベルな「観るスポーツ」(プロリーグ等)や世代を超えて人気を集める「するスポーツ」(マラソンやウォーキング等)、地域をあげてスポーツイベントを誘致・支援する「支えるスポーツ」の3つを柱とするスポーツ資源を活用し、訪日外国人旅行者の増加、国内観光振興につなげるスポーツ観光を推進する。そのため、関係省庁、スポーツ関係団体、観光関係団体、企業等が一同に会した「スポーツツーリズム推進連絡会議」において、今後のスポーツ観光推進についての方向性を示した「スポーツツーリズム推進基本方針」を平成23年6月に策定した。基本方針で示されたオールジャパンのスポーツツーリズム推進連携組織について、平成24年4月の設立に向けた勉強会を重ねるとともに、広報活動の一環として、世界的・全国的に活躍するスポーツ選手・元選手を「スポーツ観光マイスター」に任命し、スポーツ観光の機運醸成を図った。
 また、スポーツ団体、関係省庁が連携し、東日本大震災後、我が国で開催予定であったものの、延期、中止されようとしていた国際スポーツイベントの開催の維持に努めた。さらに、スポーツ観光人材育成研修を全国で開催し、スポーツ観光の普及を図るとともに、顧客満足度の高いスポーツ観光の旅行商品造成を進めるためのモニターツアー調査を実施し、その継続性や消費額等の経済効果について検証した。

  (7) 船旅の魅力向上の推進

 国内旅客航路における、船旅の魅力向上に向けて、国・旅客船業界・旅行業界・地域の関係者等が連携して、情報発信の強化やニーズに合った商品開発・販売促進の取組等の展開を進めている。
 これまで、「船から見る風景100選」を発表し、ホームページやDVD等を通じて、船上からの景色等を写真とコメントで紹介し、船旅の魅力を様々な角度から発信した。また、旅行業界との連携策として、旅行業者の企画・販売担当者を対象とした「体験航海(ファムトリップ)」を実施し、旅行業界に向けて国内旅客航路のPR活動を行った。
 外航クルーズについては、(社)日本外航客船協会が、良質のクルーズ商品及びサービスの提供を目的とした「クルーズ・オブ・ザ・イヤー」を平成20年度から実施し、外航クルーズの魅力の理解を促進するための取組を積極的に支援している。
 また、旅客の乗降、待合い等の利便性快適性を向上させるため、我が国における観光圏の玄関口となる旅客船ターミナルの整備を推進している。

郵船クルーズ(株) 飛鳥II



  (8) 都市と農山漁村の共生・対流の推進

 都市と農山漁村それぞれに住む人々がお互いの地域の魅力を分かち合い、理解を深めるため、「人・もの・情報」の行き来を活発にする都市と農山漁村との交流を推進した。
 具体的には、農山漁村での小学生を対象とした宿泊体験活動を推進する「子ども農山漁村交流プロジェクト」を実施するとともに、「オーライ!ニッポン大賞」等として優良事例を表彰することにより、都市と農山漁村との交流を促進する国民的な運動を推進した。
 また、都市と農山漁村の交流による地域の観光振興、活性化等に貢献している24の取組を「食と地域の『絆』づくり」の優良事例として選定した。
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