P.2.1 地下埋設物モデル

地下埋設物とは、ユーティリティネットワークなどのサービスの一部となる又は地表の構造物を支える、地表下に埋め込まれた構築物又は構造物をいう。

[出典: OGC 19-081]

地下埋設物の記述には、i-URのUrban Objectモジュールに定義された、uro:UtilityNetworkElementを継承する地物型を使用する。

CityGMLには地下埋設物に該当する地物型は定義されていないため、i-URでは、欧州連合の空間データ基盤「Infrastructure for Spatial Information in Europe(INSPIRE)」において策定されたユーティリティネットワークの標準仕様「INSPIRE Data Specification on Utility and Government Services – Technical Guidelines」(https://inspire.ec.europa.eu/Themes/136/2892 )を参考に、地下埋設物を表現する地物型を定義している。

uro:UtilityNetworkElementは、地下埋設物を表す最上位の地物型であり、CityGMLの都市設備(frn:CityFurniture)を継承し、定義されている。さらに、uro:UtilityNetworkElementを継承する3つの地物型が定義され、これらが地下埋設物のネットワークを形成する。

uro:UtilityLinkは、ネットワークのリンクであり、これを継承するケーブル(uro:Cable)、管路(uro:Pipe)及びダクト(uro:Duct)に区分される。管路とは、電気、水道、ガス、電力、通信等を格納または輸送する管である。ダクトとは、ケーブルや管路を格納し、これらを保護する構造物である。

uro:UtilityNodeは、ネットワークのノードであり、これを継承する制御設備(uro:Appurtenance)が定義されている。制御設備とは、リンクとリンクのつながりを制御する設備であり、バルブや制水栓等の弁栓類がこれに該当する。また、変圧器や開閉器等の地上に設置された設備を含む。

uro:UtilityNodeContainerは、uro:UtilityNodeを格納し、自らもネットワークのノードとなることができる地物型である。uro:UtilityNodeContainerは、これを継承するマンホール(uro:Manhole)及びハンドホール(uro:Handhole)の二つの地物型に区分される。マンホールとは、地下に埋設された管理施設の設置・撤去・操作・修理・点検・管理を目的に人が出入りできるように地上に設置された縦孔であり、ハンドホールとは、地中に埋設された設備の操作・修理・点検・管理を目的に地上に設置された縦孔である。ハンドホールは、人の通行は想定されていない。

標準製品仕様書では、地下埋設物の表現に必要な地物型等をCityGML及びi-URより抽出し、LODごとに、含むべき地物型、各地物型の空間属性の型、取得基準、取得方法及び補足を定めた「地下埋設物モデル」を定義する(P-1)。
地下埋設物モデルのLODは、LOD0からLOD4までを対象とする。

P-1 — 地下埋設物モデルの概要

LOD0は、2次元のGISデータと同様の表現であり、地下埋設物の形状を点、線又は面で表現する。高さは0となる。

LOD1は、地下埋設物の形状を、立体により表現する。地下埋設物の外周の正射影を地表から地下埋設物の下端まで下向きに押し出した立体として表現する。

LOD2は、管路の場合は、管路の外周の正射影を、埋設された深さから、地下埋設物の径の長さを下向きに押し出した立体として表現する。なお、LOD0、LOD1及びLOD2では、複数まとまって埋設されている管路は、一本の線又は立体としてまとめて表現される。

マンホールの場合は、マンホール本体の上方からの正射影の外周を、地表面からマンホールの深さで下向きに押し出した立体を作成する。マンホール本体の外周は、マンホールの規格により定まる外径とマンホールの中心をもとに推定してよい。「マンホールの中心」とは、原典資料から入手できるマンホール本体又はマンホールの蓋の中心を指す。

マンホール本体の中心とマンホール蓋の中心が異なる場合で、マンホール蓋の中心を使用して外周を推定する場合は、推定した外周とマンホール本体の外周が異なることに留意する必要がある。例えば、P-2の左図のように、マンホール本体の片側が傾斜している場合は、マンホール蓋の中心とマンホール本体の中心が異なる。そのため、マンホール蓋の中心から推定した外周とこれを押し出して作成する立体は、マンホール本体の外周やこれを押し出して作成する立体と異なる。マンホール蓋の中心から推定した外周を押し出して作成する立体は、マンホール本体を包含する立体にはならない。P-2右図のように、マンホール本体が円筒形の場合は、マンホール蓋の中心とマンホール本体の中心が一致するため、推定により作成した外周とこれを押し出して作成する立体も一致する。

P-2 — マンホールの取得の差異

LOD3は、地下埋設物の外側の形状を詳細な面の集まりとして表現する。複数まとまって埋設されている地下埋設物も、個々の形状が再現される。例えば、横断面の形状が変化するマンホールは、その変化を表現する(P-3)。

P-3 — 地下埋設物モデル(LOD3)における横断面形状の再現イメージ(マンホール)

LOD4は、地下埋設物の形状を、LOD3による外側の形状に加え、地下埋設物の内側の形状も面の集まりとして表現する(P-4)。

P-4 — 地下埋設物モデル(LOD4)における内部の表現イメージ