団塊ジュニア世代の住宅ニーズに関する調査研究
◆要旨
H13年3月に閣議決定された第八期住宅整備五箇年計画(国土交通省住宅局)においては、市場を重視した施策の基本的方向、多様なニーズへの対応、少子社会を支える居住環境の整備などをうたっている。そのため、団塊世代に次いで総人口に占める割合が大きく、今後の住宅市場のマジョリティを占め、かつこれからの子育てを行う可能性が高い『団塊ジュニア世代』の居住環境に対するニーズに対応して、住宅政策の今後の方向性を考えていく必要がある。
そこで本研究では、この団塊ジュニア世代の住宅に関するニーズを把握するため、団塊世代及び団塊ジュニア世代の世代特性をそれぞれ整理するとともに、特に、団塊ジュニア世代について彼らの住宅に対する意識を探るアンケート調査を実施し、あわせて住宅と関連の深い事項を中心とした団塊ジュニア世代のライフスタイルに関するアンケート調査を実施した。
団塊世代(1947年〜1949年生まれ)の特徴は、以下のことが挙げられる。
・ 人口構成上他の世代に比べて突出した割合を占める
・ 社会人になるタイミングで大都市に集中
・ 若年世代に比べて豊富な金融資産を保有
・ ライフステージに応じた住み替えにより住宅市場に大きなインパクト
団塊ジュニア世代(1973年〜1980年生まれ)の特徴は、以下のことが挙げられる。
・ 人口構成上団塊世代に次ぐ割合を占める
・ 団塊世代に比べて首都圏生まれが多い
・ 住宅取得資金の大半を住宅ローンや親からの援助等に頼らざるを得ない
団塊ジュニア世代の住宅に対するニーズに関する調査を実施した。その結果、団塊ジュニア世代と一括りにいっても、性別、配偶者の有無、子供の有無、親と同居別居等、家族類型によって住宅に対する価値観や意識が多様であり、彼らの住宅に対するニーズは多様かつ複雑であることが改めて認められた。
しかしながら、ある程度の「傾向」は確認された。年収と住宅変更内容では、たとえば独身男性は収入が多いほど持家への変更を希望するが、独身女性は賃貸住宅の借り換えを予定している者が過半を占めている。また、転居経験のある者の移動実態と居住地域の志向をみると、郊外部に居住していた独身者は都心寄り地域への転居を選択する例が多く、独身者と家族を持つ世帯を比較すると、家族をもつ世帯のほうが同距離圏内での移動の割合が高く、「地縁」を重視する傾向がみられた。
団塊ジュニア世代の住宅に対する多様な価値観や意識に対応して、住宅市場においても、多様な選択肢の提供が今後一層求められよう。
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