ユビキタス社会に対応した都市交通支援システムに関する研究II
−中小鉄道事業者が導入しやすい簡易型ICカードシステムに関する調査
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◆要旨
近年、交通系ICカードは、大量の通勤・通学等の利用者を効率的にさばくとともに、相互乗り入れの進展などにより複雑化している大都市圏の鉄道運賃体系の下、瞬時にこれらの複雑な運賃計算などを行うことにより、利用者を運賃計算などの煩雑さから開放することなどの利便性から、大都市圏の鉄道事業者を中心に急速に普及が進んでいる。
一方で、ICカードシステムの設備整備のためには多大な資金が必要なこともあり、中小事業者での普及が遅れていることから、導入事業者と未導入事業者の二極化が見られるようになってきている。しかしながら、大・中都市近郊の中小鉄道事業者においては、比較的利用者が多い一方で、無人駅を抱えていることなどから、大都市圏の鉄道事業者と同様なICカードシステムを導入することが困難な場合も考えられるものの、導入・普及を図ることによって、飛躍的に利便性が向上する事業者も存在すると思われる。このような中小鉄道事業者への導入を図ることが交通系ICカードシステムのさらなる普及のための次の課題と考えられる。特に、利用客の多い大・中都市郊外の中小鉄道事業者では、ICカードシステム導入時を想定した場合に、運用上の課題や問題点も他の事業者に比べて、多く、複雑であることが予想される。
本調査では、このような都市鉄道の端末交通手段である都市郊外型の中小鉄道事業者が交通系ICカードシステムを導入する上で、比較的容易に導入できる機器として、ハンディ型のICカードリーダーライターなどの簡易型のICカード機器の有効性を評価するとともに、導入時を想定した運用の流れを確認し、導入にあたっての課題を抽出し考察することで、運用上の課題・改善すべき点を明らかにする。
本調査が、中小鉄道事業者への交通系ICカードの普及の助けとなり、鉄道利用者の利便性向上に役立つことを期待する。
本調査の実施に当たっては、「マルチモーダルITS委員会」を開催し、名古屋大学 森川教授、千葉工業大学 赤羽教授、愛媛大学 羽藤助教授、慶応義塾大学大学院 植原講師にご指導頂いた。また、豊田市、愛知環状鉄道株式会社、交通エコロジー・モビリティ財団、株式会社NTTデータ、サクサ株式会社をはじめとする関係の方々から多大な協力を賜った。
本報告書発刊に当たり、ここに厚く感謝の意を表したい。
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