国土交通省 国土交通研究政策所 Policy Research Institute for Land, Infrastructure, Transport and Tourism

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 国土交通政策研究所は、国土交通省におけるシンクタンクとして、内部部局による企画・立案機能を支援するとともに、 政策研究の場の提供や研究成果の発信を通じ、国土交通分野における政策形成に幅広く寄与することを使命としています。
  

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 ● 報告書概要


 地域に根ざした社会資本整備のあり方に関する研究

◆要旨

 我が国は、人口減少・少子高齢社会の本格的な進展期を迎えることとなり、成熟社会として経済社会を充実していくことが必要となってきている。また、公共事業に対する投資余力が減少傾向にある中で、社会資本についても、より効率的・効果的な整備が必要となってきている。
 本研究は、土木遺産に指定され、期待される本来的な機能を長期間にわたって発揮し、さらには地域のシンボルとして地域風土の形成に寄与している現存の社会資本について、隅田川に架かる【永代橋・清洲橋】、及び大阪市中之島に架かる【大江橋・淀屋橋】を事例として、その整備の背景や過程等についての整理をとおして、今後、地域に根ざした社会資本の整備を進める上で、参考となりうる要素について検討を行ったものである。
 【永代橋・清洲橋】は、関東大震災により壊滅的な被害が発生した後の、帝都復興事業により架設された橋梁である。また、【大江橋・淀屋橋】は、大阪市への人口集中が激化する背景において、第一次大阪都市計画事業により架橋されたものである。いずれも、経済社会情勢により、都市計画に大きな動きがあった社会的背景の下で整備が進められている。
 整備に当たり、帝都復興計画においては後藤新平・太田圓三ら、また第一次大阪都市計画事業においては関一・武田五一らによって、それぞれの橋梁の重点的な整備が進められた。すなわち、【永代橋・清洲橋】は、帝都復興及び我が国の橋梁技術発展のシンボルとして、また【大江橋・淀屋橋】は水都大阪の中心を代表する橋梁として、「総合的な視点から重点化」がなされ、その「明確な理念と意志決定」の下に「優れた検討体制が確保」されて、設計・検討が進められた。特に、経済社会情勢が逼迫していた当時に社会資本の持つ機能の複合性に配慮し、橋梁を、都市美の重要な構成要素として位置づけたことは特筆に値する。
 上述のような背景の下に整備がなされた各事例は、竣工から70年以上を経て今もなお本来的な機能を発揮し、さらに文化・学術的な方面からだけでなく、広く市民からも高く評価され、地域を代表する風景として存在している。
 本研究における調査をとおして、地域に根ざした社会資本整備に向けて、「整備に当たっての理念と意志決定の明確化」と「説明・実行責任を伴う優れた検討体制の確保」が必要であるという考察結果が得られた。
 さらに、今後の社会資本整備において、社会資本単体だけでなく、周囲の空間を考慮した総合的な視点が重要であることを指摘した。また、より多様で高度な社会資本サービスの提供の実現に向けては、社会資本が有する「時間」的側面と「空間」的側面に着目し、本来的な機能以外にどのような活用方策を取ることができるのかという問題意識が、今後、重要視されるべきであることを指摘した。


◆キーワード

地域に根ざした社会資本、土木遺産、橋梁、機能の複合

◆発行

国土交通政策研究第54号/平成17年7月

◆在庫

在庫有(重量:295g 厚さ:6mm) 報告書を郵送希望の方はこちら

◆詳細

詳細(PDF:13.5MB)

◆事後評価

内部評価シート(PDF:12KB)
有識者評価シート(PDF:12KB)