国土交通省
 歩行者の頭部保護基準導入に係るパブリックコメントの
 募集結果について
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平成14年11月14日
<連絡先>
自動車交通局技術安全部
技術企画課(内線42255)

電話:03-5253-8111(代表)


 

 国土交通省では、歩行者が交通事故に遭遇した場合に死亡や重傷にいたる可能性の高い歩行者の頭部への被害を軽減するため、乗用車等のボンネットに歩行者の頭部が衝突した場合の衝撃を低減させる歩行者頭部保護基準を導入することとし、平成14年9月9日に、道路運送車両の保安基準の改正についての意見募集を行いました。その結果、8通のご意見を頂きましたので、内容を集約し、これらに対する国土交通省の考え方を別添のとおり取りまとめ、公表いたします。なお、本基準の導入に反対するご意見はありませんでした。今後、国土交通省では、頂いたご意見を踏まえ、歩行者の頭部保護基準の導入について、近日中に、道路運送車両の保安基準の一部改正を行う予定です。

(意見の種類とそれぞれの件数)

  1. 基準の内容に関するもの    (4件)
  2. 基準の適用範囲に関するもの (4件)
  3. 基準の適用時期に関するもの (6件)
  4. その他               (3件)
    合計                (17件)
     注:1通の意見に複数の意見が含まれている場合があります。また、本改正案に直接関係ないと思われるご意見については割愛させていただきました。


歩行者頭部保護基準の導入に係る意見と
それに対する国土交通省の考え方

(別添)

1.基準の内容に関するもの

(頂いた御意見)
 試験領域について、被害者が大人である場合、頭部はフロントガラスに衝突する場合が多いため、ボンネット上は全てを子供用の3.5kgのインパクタでテストすべきである。(1件)
(国土交通省の考え方)
 基準の策定にあたっては国際調和にも配慮することとしており、歩行者頭部保護基準については、基準の国際調和を目指して各国の専門家により国際的な統一基準案が検討されているIHRA(International Harmonized Research Activities:国際研究調和活動)での歩行者保護基準案をベースとしています。IHRAの議論では、交通事故の実態において、ボンネットの前方に子供の頭部が、後方に大人の頭部が衝突する確率が高いことから、ボンネットを2つの領域に分け、子供領域は3.5kg、大人領域は4.5kgのインパクタで試験すべきとしています。このため、本基準案において、ボンネット上を2つの領域に分けて基準を設けることとしたものです。

(頂いた御意見)
 大人頭部インパクタと子供頭部インパクタの対象エリアの境界部分やボンネットの縁の部分等技術的対応の厳しい部分は試験対象からはずすべきである。(1件)
(国土交通省の考え方)
 ご指摘の技術的に対応の難しい部分については、基準案にあるとおり、試験エリアの1/3の部分の頭部傷害値(HIC)を対応の難しさを考慮した基準とすることとしています。

(頂いた御意見)
 基準案の試験におけるヘッドインパクタの衝突スピードは、欧州の自動車業界の自主基準案に比べて遅く、不十分ではないか。(1件)
(国土交通省の考え方)
 基準案におけるインパクタ速度は、歩行者と自動車の衝突速度を実際の事故の約7割をカバーできる40km/hとし、ボンネット形状の分類毎にIHRAにおいて求められた衝突速度とインパクタ速度の比から定めたものです。なお、インパクタ速度は欧州メーカーの自主基準案のものより低くなっていますが、衝突角度が異なり、ボンネットに垂直な方向の速度成分で比較するとより厳しい基準となっている等、難易度を比較することは難しいと考えています。

(頂いた御意見)
 歩行者の脚部保護に関する基準も策定すべきではないか。(1件)
(国土交通省の考え方)
 歩行者の脚部の負傷については、対策及びその評価方法が確立されておらず、現時点での基準化は困難であると考えています。歩行者脚部保護基準については、国際調和基準を策定する国連のECE/WP29/GRSP/歩行者保護インフォーマルグループにおいて策定することとされており、これに併せて基準化することを検討しています。

2.基準の適用範囲に関するもの

(頂いた御意見)
 欧州の自動車業界の自主基準案では、歩行者保護基準の対象は乗用車については2.5t以下の自動車となっている。基準の国際調和の観点及び技術的な困難性から、本基準案の対象車種のうち乗用車については、車両総重量2.5t以下とするべき。(4件)
(国土交通省の考え方)
 基準の策定にあたっては国際調和にも配慮することとしており、歩行者頭部保護基準については、IHRAでの歩行者保護基準案をベースとしています。IHRAの議論においては車両総重量2.5t以下の乗用車を対象としていますが、試験方法の検討のための前面形状の検討においては車両総重量2.5t超の自動車を含めていること、試験方法が適当であるか否かの判断に意味を持つ車両前面形状が乗用車の場合2.5tの上下において大きな差がないことから、乗用車については重量区分を設けることなく対象とすることが妥当であると考えています。

3.基準の適用時期に関するもの

(頂いた御意見)
 輸入車メーカーは、既存のボディに新型エンジンを搭載するもの等は「新型生産車」とはみなしていないことから、「新型生産車」の定義を、歩行者保護に関係する部分が変更されたもののみ等緩和するよう希望する。(1件)
(国土交通省の考え方)
 基準の適用を新型生産車からとしたのは、大きな設計の変更のある機会に合わせて基準への適合を求めるためです。「新型エンジンの搭載」はこれまでも大きな変更に当たるとしており、本基準においても適用の対象とすることが妥当と考えています。

(頂いた御意見)
 継続生産車の適用時期について、欧州の自動車業界の自主基準案では、2010年-80%、2011年-90%、2012年-100%の基準適合を求めており、同様の規定とすべき。また、通常の継続車適用時期(乗用車:2010年9月1日、特殊な車型の車両グループ:2012年9月1日)以降も、一型式につき年間2,500台までは適合免除とすることを提案する。(2件)
(国土交通省の考え方)
  •  適用時期を車両台数の販売達成率によって定めることは、総量における削減を目的とする燃費基準のような基準と異なり、1台毎の安全性の確保を目的とする本基準の性格には馴染まず、また、基準適合性の判断が認証後の販売の段階に至るまで行えない等実施上の問題もあることから、適当でないと考えます。
  •  基準案では技術的対応が難しいと思われる車種については、2年間の経過措置を設けることにより、配慮しています。
  •  新型車への適用から継続生産車への適用までの経過措置については、モデルの一般的な寿命と安全対策の必要性とのバランスの上で定めるべきであり、その意味において5年は妥当であると考えています。

(頂いた御意見)
 4輪駆動車やハイブリット車への装着時期の猶予は不要ではないか。(1件)
(国土交通省の考え方)
 高い耐久性が要求される車(SUV、貨物車)及びハイブリット車については、それぞれ以下の技術的理由から基準への対応が困難であるため、適用時期に2年間の猶予を持たせることが適当であると考えています。

【高い耐久性が要求される車(SUV、貨物車)】
 高い耐久性が要求される車(SUV、貨物車)は悪路走行を想定して設計されたものであり、高い車体強度が求められることから、ボンネットについてもある程度以上の強度が求められ、容易に柔らかくすることが出来ない。

【ハイブリット車】
 本基準に適合するためには、ボンネットとその下のエンジン等の構成要素との間に、ある程度以上のスペースを確保することが必要であるが、ハイブリット車は、ボンネット内に、エンジン等の通常の機構に加え、ハイブリットシステムを納めているため、スペースの確保が難しい。

(頂いた御意見)
 基準(案)で適用時期が緩和されている「車高の極めて低い車」「高い耐久性が要求される車(SUV・貨物車)」とは、「車両のどの部分の高さが何mm以下のもの」「高い耐久性とはどのような構造を持つもの」をそれぞれ具体的に定義するべき。(1件)
(国土交通省の考え方)
 適用時期の異なる「車高の極めて低い車」等については、定量的に定義することとしています。

(頂いた御意見)
 グローバルテクニカルレギュレーション(GTR)が施行されるまでは、欧州要件の頭部保護要件を満たす車両は保安基準を満たしているとみなし、保安基準を満たす車両は欧州要件の頭部保護要件を満たしていると相互にみなすことを提案する。(1件)
(国土交通省の考え方)
 現時点での欧州の自主基準案及び我が国の基準案を比較する限り、技術的に同等とみなすことは困難と考えます。

4.その他

(頂いた御意見)
 将来の基準検討に際しては、今回の基準案をベースに国際調和に配慮して推進すべき。(2件)
(国土交通省の考え方)
 本基準案はIHRAでの議論を踏まえたものであり、基準の国際調和に十分配慮しています。今後、国連のECE/WP29/GRSP/歩行者保護インフォーマルグループの場において、本基準案が国際基準となるよう積極的に提案していきます。

(頂いた御意見)
 四輪駆動車等に装着している動物よけは、日本では必要ないため、禁止すべきではないか。(1件)
(国土交通省の考え方)
 今後、頭部に引き続き、歩行者の脚部を保護する基準を検討することとしており、その中で検討したいと思います。


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