国土交通省
 マンションの建替えに向けた合意形成に関するマニュアル
 (案)及びマンションの建替えか修繕かを判断するための
 マニュアル(案)に関するパブリックコメントの募集結果に
 ついて
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平成15年1月27日
<連絡先>
住宅局市街地建築課
(内線39643、39644)

電話:03-5253-8111(代表)


 

 国土交通省では、平成14年12月16日から平成14年12月24日までの期間において、「マンションの建替えに向けた合意形成に関するマニュアル(案)」、及び「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル(案)」に関するパブリックコメントの募集を行いました。その結果、重複内容を除き前者について27件、後者について22件の御意見を頂きました。頂いた御意見の概要及び国土交通省の考え方をとりまとめましたので、公表いたします。


マンションの建替えに向けた合意形成に関するマニュアル(案)
に対する主なパブリックコメントとその対応

  1. 全体構成について

    『目次及び全体構成について』

    (頂いた御意見)

     原案は、目次をみても全体構成がわかりにくいので、章番号などをつけて欲しい。また、マニュアルという言葉が全体、建替え決議まで、建替え決議と何度も出てくるのは分かりにくい。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、「第1章 建替え決議までの合意形成の進め方」、「第2章 建替え決議後の合意形成の進め方」、「参考 マンション建替えに関する資料・各論」とし、全体の構成をわかりやすく修正しました。

  2. 建替え決議までの合意形成の進め方について

    『原案1頁 合意形成に関わる主体について』

    (頂いた御意見)

     最初の図がわかりにくい。3頁以降の「合意形成の基本プロセス」と一体化してよいのではないか。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、「マンション建替えに向けた合意形成に関わる主体」は削除し、原案の「建替え決議までの合意形成の基本プロセス」を「建替え決議までの合意形成の基本的進め方」と修正し、その中に合意形成の主体に関わる必要事項を含めるように整理しました。

    『原案3頁 合意形成の段階について』

    (頂いた御意見)
     ・各段階の活動主体が誰であるかが明確に分かるように表記して欲しい。また、各段階の「目標」と「内容」を分けて整理して欲しい。
     ・「建替え決議までの合意形成の進め方」に含まれているのに、建替え決議後の実施段階があるのはおかしい。
    (国土交通省の考え方)
     ・ご趣旨を踏まえ、活動主体が有志であるのか管理組合であるのかが明確に分かるように表記しました。また、各段階の「目標」と「内容」を分けて整理しました。
     ・建替え決議後の実施段階は削除しました。

    『原案5頁 基本的進め方のフロー図について』

    (頂いた御意見)

     各段階の活動内容などがこのフロー図でも分かるようにして欲しい。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、フロー図の上段に、各段階の活動内容を簡潔に整理して加筆しました。

    『原案9頁 建替えの提起について』

    (頂いた御意見)

     建替えを提起するためには、具体的にどのような資料を準備して、何を決議の議案とするのかをよりわかりやすく整理して欲しい。また、「建替えの提起」と次の「検討組織の設置」に同じような内容が重複して書かれているので、どちらかに詳しく書くなどの整理をして欲しい。
    (国土交通省の考え方)
     ・ご趣旨を踏まえ再考した結果、建替えの提起については、「勉強会から理事会への提起」と「理事会から管理組合集会への議案としての提起」の二つがあることから、この2段階で表記することとしました。前者については、勉強会での検討成果をまとめて理事会に対し管理組合として建替え検討の必要性を提起すること、後者については、理事会が集会の議事として具体に提起し議決をえる必要がある事項として、組織の設置と活動費用の拠出を挙げ、それぞれの考え方と議決の多数決要件について詳述するように修正しました。
     ・「建替えの提起」と次の「検討組織の設置」に同じような内容が重複している点については、「建替えの提起」の方で重点的に触れるように修正しました。

    『原案10頁 検討組織の設置について』

    (頂いた御意見)

     検討組織として「改善問題検討委員会」と「建替え検討委員会」の二つが示されており、検討段階における建替えの高まりにつれて、前者から後者へと改組することが説明されているが、改組にあたっては決議を必要とするのか? 現実的に建替え推進決議までの検討段階の中で、スムーズに改組ができるかどうか疑問である。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ再考した結果、検討段階は、修繕・改修との比較等により建替えの必要性を検討する段階であることから、途中で改組することなく建替えの必要性や構想の検討を行い、この検討段階の最終目標である「建替え推進決議」において建替えの必要性を決議することが適切であると考えるに至り、途中で改組することに関わる記述は全て削除しました。これにあわせて、検討委員会を「建替え・修繕検討委員会」という名称にするとともに、設置運営細則も見直しました。

    『原案10〜11頁 検討組織の参加者の適切な選定について』

    (頂いた御意見)

     10頁のゴシックのリード文や11頁では、リーダーや主要役員が先にありきで、このコアメンバーが他のメンバーを公募で集めると示されているが、逆ではないか。
    (国土交通省の考え方)
     ご指摘の通りですので、理事会が公募で募り、その中から主要役員やリーダーを選ぶと修正しました。

    『原案12頁 検討委員会の運営細則について』

    (頂いた御意見)

     理事会の諮問機関である検討委員会の運営細則に「第6条 管理組合との関係」として管理組合の決定事項を記述するのは適切ではないと考えられる。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、「第6条 管理組合への報告義務等」とし、検討委員会からみた視点で記述するよう修正しました。また、運営細則を設置運営細則と改めました。

    『原案14頁 専門家の選定における候補者の選定について』

    (頂いた御意見)

     多くの候補者が挙げられているが、こんな多数の専門家に協力を得なければいけないのかと読み間違えられる危険がある。もう少し依頼内容や専門家を整理することができないか。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、列挙した専門家の中から必要に応じて、専門家を1者または複数者を選定する方法を示すとともに、それぞれのメリット・デメリットを明記しました。

    『原案15頁 専門家の選定における候補者の決定について』

    (頂いた御意見)

     候補者の選定方法としてプロポーザル方式が挙げられているが、プロポーザル方式は候補者の中から依頼する専門家を決定する方法ではないのか。
    (国土交通省の考え方)
     ご指摘の通りですので、プロポーザル方式は専門家を決定する方法のところに記述するように修正しました。これにあわせて、候補者の抽出方法と最終的な決定方法を明確に整理しました。

    『原案17頁〜 建替えの必要性の検討について』

    (頂いた御意見)

     検討段階においては、「建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」を使いながら建替えの必要性を確認することが最大のテーマであることをより分かるような構成にして欲しい。
    (国土交通省の考え方)
     ご指摘の通りですので、本マニュアルでは、修正版で「[7]建替え構想の策定と建替えか修繕・改修かの検討」とタイトルを修正するとともに、別途作成する「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」を用いてこの手順を行うことを明記し、ここでは「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」の手順の概要を説明することにしました。

    『原案19頁〜 建替えの可能性・構想の検討について』

    (頂いた御意見)

     この段階における構想計画とはどのような位置づけのものかを明確にして欲しい。建替えの必要性を認めた上で建替え計画に向けての原案に近いものなのか、建替えの必要性を確認するために修繕・改修と費用や改善効果を比較するのに必要な建替え構想であるのか、どちらか?
    (国土交通省の考え方)
     検討段階における建替えの構想は、建替えの必要性を確認するために修繕・改修と費用や改善効果を比較するのに必要な建替え構想であると考えております。このため、建替えの構想の検討は、建替えか修繕・改修かの検討と一体化し、「[7]建替え構想の策定と建替えか修繕・改修かの検討」とし、その概要を示すのみとし、詳細については「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」の中で詳述することにしました。

    『原案21頁 建替え方針の確認について』

    (頂いた御意見)

     建替え推進を決議するのに集会の議事として提起する必要のある内容が示されているが、大切なところであるので、より分かりやすく整理して示して欲しい。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、整理して記述しました。組織の設置と活動費用の拠出を挙げ、それぞれの考え方と議決要件(定数)について詳述するようにしました。

    『原案22頁建替え方針の確認と原案23頁推進組織の設置の関係について』

    (頂いた御意見)

     検討段階と同様、同じような内容が重複して書かれているので、どちらかに詳しく書くなどの整理をして欲しい。
    (国土交通省の考え方)
     「建替え方針の確認」を「建替え推進決議」とし、ご趣旨を踏まえ、そちらの方で重点的に触れるように修正しました。

    『原案22頁 建替え方針の確認における修繕積立金からの検討費用の拠出について』

    (頂いた御意見)

     建替え決議の際に必要とされる資料の作成のために流用することを、規約改正によって可能とする方法があるとの記載があるが、建替え不参加者のある場合は、この権利をまもるために、決議可決後に建替え組合結成の時、すみやかに、流用した総額を清算すべきであることを付け加えるべき。建替え不参加者がその時点まで払い続けてきた修繕積立金を一部といえども建替え参加者のために流用することは、公平を欠く。流用した額の清算をマニュアルに明記し、修繕積立金は、建替え関連費用には使わないことを、はっきりさせておくことが大切である。
    (国土交通省の考え方)
     ・建替え決議後に管理組合の解散に併せて修繕積立金の残額を建替え決議に参加した全員(建替え決議の賛成者等の建替え参加者ではない)で清算するべきとしていますから、建替え不参加者も清算金を受けることができます。
     ・なお、建替え決議に向けた検討費用を修繕積立金から支出することができることは判決により確定している事実であり、規約改正及びその取り崩しについて4分の3以上の同意が得られている以上、その残額を精算すれば良いと考えます。このため、建替え検討のための取り崩した相当額を建替え不参加者に対して清算し、修繕積立金は、建替え関連費用には使わないことを明記する必要はないと考えます。

    『原案23頁 優良建築物等整備事業の補助を受ける要件について』

    (頂いた御意見)

     優良建築物等整備事業(【資料F】参照)の補助を受けるためには、「普通決議において、建替えの推進について区分所有者及び議決権の各5分の4以上の賛成が得られていることが要件となります。」とあるが、「普通決議において・・・各分の4以上の賛成」というのは誤解を招く。普通決議を集会の議決とすべきである。
    (国土交通省の考え方)
     ご指摘のとおり、修正致しました。

    『原案24頁 推進委員会の運営細則について』

    (頂いた御意見)

     検討委員会の運営細則と同様、「第6条 管理組合との関係」として管理組合の決定事項を記述するのは適切ではないと考えられる。また、計画段階なので、組織も計画委員会とするのはどうか。推進組織とするのであれば、この段階も推進段階として方が分かりやすい。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、検討委員会の運営細則と同様の考え方で修正しました。また、組織は計画組織、計画委員会としました。なお、運営細則を設置運営細則と改めました。

    『原案26頁〜 専門家・事業協力者について』

    (頂いた御意見)

     ・専門家と事業協力者とが「専門家・事業協力者」とセットで表記されているが、ここでいう事業協力者は何を指すのかが不明。建設会社であれば、それを事業協力者と呼ぶのはおかしい。事業協力者はデベロッパーのみとすべき。このため、専門家と事業協力者を全て一体的に「専門家・事業協力者」と表記すべきではない。
     ・専門家による支援が基本で、保留床などの新設が可能な場合については事業協力者であるデベロッパーが関わるとすべきである。デベロッパー参加による保留床を生む建替えが今後も主流であるような錯覚を受けてしまう危険がある。
     ・また、プロポーザルの扱いも検討段階の専門家の選定の場合と同様に修正すべき。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、専門家と事業協力者を峻別し、前者の関わりが基本であるような表現にしました。また、計画段階では、専門家をまず選定し、保留床の現実性がある場合にはデベロッパーを選定しその予定販売戸数や価格や採算性の検討を行うという構成に修正しました。

    『原案37頁 建替え決議の招集通知について』

    (頂いた御意見)

     「招集通知には、会議の目的たる議案の要領(「建替え決議について」という旨)を示すほか、以下の事項も定めなければならないとされています。」とあるが、会議の目的たる事項のみを通知すれば足りるものと誤解される恐れがある。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、「会議の目的たる事項(「建替え決議について」という旨)と議案の要領(建替え決議で定めるべき事項(第62条第2項各号・後出(2)参照))を示すほか、以下の事項も定めて示さなければならないとされています。」と正確に記述するようにしました。

    『原案38頁〜 専門家・事業協力者向け編について』

    (頂いた御意見)

     専門家・事業協力者向け編の内容は、ほとんどが管理組合向け編と重複し、管理組合と逆の立場で記述している部分が多い。整理が必要ではないか。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、「専門家・事業協力者向け編」を削除し、専門家等の関わり方のポイントは、管理組合向けを中心とした本文中にトピックス的に囲みで記述するよう修正し、読みやすくしました。

  3. 建替え決議後の合意形成の進め方について

    『原案52頁 事業実施の基本フロー』について

    (頂いた御意見)

     ・建替え決議までの合意形成の段階と同じように、事業実施段階もいくつかの段階に分類して示すことができないか検討して欲しい。その方が、一般の区分所有者には分かりやすいと思われる。
     ・52頁のフロー図について、事業の流れが一直線で分かるように記述して欲しい。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえて検討した結果、「建替組合の設立段階」「権利変換段階」「工事実施段階」「再入居・新管理組合の設立段階」に区分して整理しました。これにあわせて本文の順番も整合をとるように調整しています。

    『原案53頁 建替組合の設立』について

    (頂いた御意見)

     組合の総会において、審査委員3人以上を選任する必要があると示されているが、何をするための審査委員であるかの説明をして欲しい。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、説明を加えました。

    『原案55頁 建替組合の設立認可』について

    (頂いた御意見)

     都道府県知事による設立認可の基準に、「その他基本方針に照らして適切なものであること」と示されているが、この説明をして欲しい。
    (国土交通省の考え方)
     建替え円滑化法第4条の規定に基づき国土交通大臣が定めた、マンションの建替えの円滑化等に関する基本方針に照らして適切なものであることと正確に記すとともに、参考として【資料J】を設けて、マンションの建替えの円滑化等に関する基本方針の内容を紹介するようにしました。

    『原案64頁 権利変換における(2)組合員以外の権利者の同意』について

    (頂いた御意見)

     「※賠償責任保険」を「※経済的損失に起因する賠償損害を担保する賠償責任保険(マンション建替事業賠償責任保険)」と明記もしくは注釈を付け加える必要がある。
    (国土交通省の考え方)
     「マンション建替事業の施行に伴う経済的損失に起因する賠償損害を担保する賠償責任保険」と正確に記述しました。

  4. 参考資料について

    『資料D :団地の建替えについて』について

    (頂いた御意見)

     原案84頁に、「建替え決議において定めるべき項目のうち、「新たに建築する建物の設計の概要」については、「当該建物の当該団地内における位置」についても示す必要があります。」とあるが、団地の1棟の建替えにおいて、団地管理組合で承認決議を得ることを予定している場合でも、法律上、当該建替え棟の建替え決議において定めるべき者とされている事項は、その他の場合とは区別されない。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、当該棟の建替え決議において、「当該建物の当該団地内における位置」を示す旨の表現は除致し、団地の承認決議において、それを通知する必要がある旨を以下のようにつけ加えました。「集会を招集する際には、当該集会の会日より2ヶ月以上前に、団地内のどの棟の建替えについて承認決議を求めるのかを示した第35条に規定する「議案の要領」と第69条第4項に規定する「新たに建築する建物の設計の概要」を示した招集通知を発する必要があります。この場合、他の棟の区分所有者は、建物を団地内のどのような位置に建築するかについて強い関心を抱くと考えられますので、新建物の団地内の位置関係についても明示して通知しなければならないものとされています。」

    (頂いた御意見)
     原案85頁の「団地内の一部の建替えにおける敷地持分の扱い」の第1パラグラフについて、「団地内の一部の建物が建替えにより従前よりも規模や戸数が増加した場合、当該棟以外の建物との間で、団地全体共用部分の共用持分や敷地の共有持分等の調整を行う必要があります。」とあるが、共有持分の調整を行うのが原則であると受け取られることになり不適切ではないか。また、第2パラグラフについて、区分所有法上、敷地の権利の共有持分等が専有部分の床面積の割合に従って定められるという原則はないので、前段の表現は不適切である。第3パラグラフが原則であるという書きぶりにすべきではないか。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、「団地全体共用部分の共有持分や敷地の共有持分等は、一般的には、専有部分の床面積の割合に従って定められている場合が多いため、一部の建物の建替え後も均衡を維持するためには、建替え棟とそれ以外の棟との間で、各共有持分等の調整を行う必要が生じることがあるが、この場合、団地建物所有者の「全員合意」を条件として、持分の売買、登記の変更などを行うのは困難を伴うことが多いため、建替え棟の区分所有者に従前に属した共有部分や土地の共有持分の総量を建替え後も一切変更しないことを条件として、建替え後の建物の各区分所有者の土地共用持分を従前の総量を基本として専有部分面積比となるように当該棟内部で相互間で売買し、登記するという方法が考えられる」という表現に改めました。

    『資料M :売渡請求及び買取請求における「時価」の算定の考え方』について

    (頂いた御意見)

     建替え非賛成者及び権利変換計画非同意者に対する売渡し請求・買取り請求における従前権利の評価額については、「時価」を「現建物について近傍類似の取引価額からの比準による評価額とする。」、「住戸毎の配分」を「用途別・階層別・位置別の効用格差を考慮した評価とする。」とすべきである。
    (国土交通省の考え方)
     ・案に記述している時価の算定方法は、これまでの法律学者等の見解において共通する考え方や判例で採用されている考え方であることから一般的方法として紹介しており、適当であると考えています。
     ・一方、住戸毎の配分については、「用途別・階層別・位置別の効用格差を考慮した評価とする。」考え方は有力な考え方の一つであるが、その方法だけに限定してしまうことは実務上問題となることも予想されることから、「各住戸の専有面積比(敷地持分)による評価・配分」も列挙し、「それぞれのマンションの状況や当事者の意向等を踏まえ、適切な評価方法を採ることが重要であると考えられます。」と記述しています。


マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル(案)
に対する主なパブリックコメントとその対応

  1. 全体の構成について

    (頂いた御意見)

     最終的に建替えか修繕・改修かの判断がスムーズにできるよう、その比較の考え方が必要ではないか。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、新たに第3章を設け、建替えか修繕・改修かの総合判断の考え方を示しました。

  2. 管理組合による簡易判定について

    『建物の沈下、傾斜について』

    (頂いた御意見)

     通常、共用廊下は水勾配があるため、ビー玉が転がるのが当たり前である。従って水勾配のない部分で行う旨、適切な記載が必要ではないか。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、「本来勾配のない建物本体の床版(エントランスホールや階段室の踊り場等)にビー玉を置くと自然に転がるか」に修正致しました。

    『共用廊下や階段の幅員について』

    (頂いた御意見)

     基準法では共用廊下幅1200mm、階段幅900mm以上である(逆に記載)。また、廊下幅1600mm(両側廊下)、階段幅1200mm(避難階段、内部階段)の場合があることについての記載が必要ではないか。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、修正致しました。

    (頂いた御意見)
     表中「(共用廊下900・・・の場合は老朽)」の「老朽」は不適切ではないか。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、「問題あり」に修正致しました。

    (頂いた御意見)
     幅員について、「改善を行う際には現行の基準に適合させることが必要となります。」とあるが、これを「適合させることが望ましい。」に変えるべきではないか。
    (国土交通省の考え方)
     「問題がある」という表現のみに修正致しました。

    『隣戸または下階への避難について』

    (頂いた御意見)

     階段室型共同住宅では、隣戸に避難できるが、隣戸経由で隣の階段室に避難出来ない事例が存在する(階段室とバルコニーが同じ2戸1の組合せの場合)。その場合は、避難出来ないと判定できるよう、「隣経由で通常利用する階段以外を経由し下階の住宅に容易に避難できる」との表現が必要ではないか。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、「バルコニー側から隣の階段室の住戸または下階の住宅に容易に避難できるか」と修正致しました。

    『天井高さ、住戸の狭さについて』

    (頂いた御意見)

     天井高さ、住戸の狭さについては具体的な目安の明示が必要。たとえば天井高さ2400mm、住戸の広さ50u以上等。当初ファミリー向けマンションとして分譲されたものの中にも、住戸の広さが十分でなく単身向け賃貸マンションとなっている例もある。この場合、当初からの居住者は住戸の広さが不十分と考えるが、賃貸人は今の大きさで良いと考えるようになる。このような場合、当初からの居住者の意見がフィードバックできるよう、当初の居住者(少数派の場合が多い)の意見を無視しない仕組みが必要ではないか。
    (国土交通省の考え方)
     階高さについては専門家判断ではグレードを設けていますが、居住者判断では区分所有者のニーズによりとらえることが適切であると考えています。住戸面積についても一定の面積を基準として設けることは不可能であることから、居住者ニーズによるほかないと考えております。

    『音の苦情について』

    (頂いた御意見)

     現実に何十年も居住しているマンションでは音は苦情の形にならない。従って、もっと客観的な基準(例えばトイレの水を流す音が聞こえるとか)を明示する必要があるのではないか。
    (国土交通省の考え方)
     ご指摘の通り、修正致しました。

  3. 専門家による老朽度判定について

    『専門家向けの記入シートについて』

    (頂いた御意見)

     原案P11(P13からP16も同様)「チェックシートの・・注意点」の図中「実測の可否と実測値」はどのような条件で判断するのか?仕上げ材を取り除いたり、金を掛けたりすれば大抵のことは可能であるので、記載するのであればより具体的にする必要があるのではないか。
    (国土交通省の考え方)
     ご指摘の通り、専門家による老朽判定では殆どの場合、実測が可能であるため、「実測の可否」については削除することとしました。

    『グレードの考え方について』

    (頂いた御意見)

     ・原案P12表中「グレードB」及び「グレードC」の概要・考え方の記述は、「・・・回復させられるもの」と「修復・改修又は建替が必要なもの」に修正したほうが、後の記述、避難安全性等との整合性からよい。耐震診断で問題ありとされてグレードC判定されても殆どは改修によって対応可能であり、「性能回復の可能性に乏しい」との考え方は誤りである。
     ・P18「グレードB」及び「グレードC」の考え方がP12と整合性が取れていない。耐震診断で問題ありとされたものの殆どは耐震改修が可能ですので「グレードB」に該当する。従って、いきなりすべてを「グレードC」とするのは誤りではないか。
    (国土交通省の考え方)
     ・原案では、「構造安全性上問題があり、かつ、改修等による性能回復の可能性がないもの」をグレードCと位置づけており、改修対応が可能であれば、耐震改修で問題があってもグレードCにはなりません。
     ・しかし、老朽度判定の基準に改修の可能性を考慮することは分かりづらいため、老朽度判定基準は全て建物の性能のみで判定することとしました。各グレードの考え方は「概論」中で4頁に表を設けて整理しました。

    『構造安全性について』

    (頂いた御意見)

     実際には設計図書がない等、設計基準強度がわからない場合が多い。従って、建設時期毎の目安の明示が必要ではないか。また、耐震診断のグレードの指標が無い。Is値とグレードの関係を明示する必要がある。
    (国土交通省の考え方)
     ご指摘を踏まえ、建築時期の古い建物について、当時の一般的な設計基準強度の値を加えることとしました。また、耐震性の判断については、Is値とIso値との関係からグレード区分しました。

    (頂いた御意見)
     原案P17フロー図の上段「組合判断T」はすでに「問題ありの可能性大」であることが前提なので、右方向の点線の説明文は「全員が建替えを志向している場合」だけにすべきではないか。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、耐震性の判定フローを整理し直しました。簡易チェックを行い、問題有りは全て耐震診断を行うこととし、問題がない場合は材料劣化等の判定を行うこととしました。建替えか修繕・改修かの判断には、精確な修繕・改修費用を算定することが必要であるからです。

    (頂いた御意見)
     原案P18「耐震診断手法について」の簡易診断についての記述(初めの3行)については別途簡易診断法を示すことになるのか。仮にP9を簡易診断とされる場合は、かなり低い精度の診断しかできない。また、「簡易診断」を別の呼び方にする必要がある。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、「簡易チェック」とし、その例を挙げました。「公共住宅耐震診断・改修マニュアル」に基づく簡易チェックの方法を例示しました。

    (頂いた御意見)
     ・原案P18「耐震診断手法について」の詳細耐震診断についての記述のうち、最下行の「ただし・・・」以下を削除する必要がある。第1次診断は耐震性の良いものをあぶりだすための方法で「問題あり」を篩い分ける方法としては使えない。
     ・原案P12下から5・6行目「建築士及び特殊建築物等調査資格を有する専門家」を「1・2級建築士及び特殊建築物等調査資格者」に修正する必要がある。
     ・原案P18 下から2行目「2次診断」を「第2次診断」と修正する必要がある。
     ・原案P19の10〜11行目「・・参考に設定すれば・・としますが、コンクリートの・・」は「・・参考に設定することも可能ですが、できるだけ、特にコンクリートの・・」に修正する必要がある。設計強度に達しない事例が実際にしばしばありますので、コア抜きして調べることを原則とすべきである。
     ・P49表中構造耐震判定指標(Iso)の欄の「0.8」は「0.6」と修正する必要がある。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、修正しました。

    (頂いた御意見)
     原案P48表中「主に靱性型の補強」の中で、「スリット」に関する記述(3箇所)があるが、この工法は特殊な場合に使用する工法であるため、削除する必要がある。
    (国土交通省の考え方)
     ご指摘の通り、スリットは特殊な工法であるかもしれませんが、現実には使用されているケースがあり、ここでの趣旨は、修繕・改修の費用対改善効果を判断するために、適用可能な工法の適用性を示すことにあることから、(特殊とは言え)可能性のある一つの工法として挙げたいと考えます。

    (頂いた御意見)
     原案P13「3)非構造部の材料劣化等」の細項目として「鉄部の劣化」を加えて、外部鉄骨階段やバルコニー・共用廊下の鋼製手摺等の発錆や腐食の状況を捉えるべきではないか。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、加筆しました。

    『避難安全性について』

    (頂いた御意見)

     ・住戸と内部廊下が旧甲防区画されているかが最も重要な判断基準であるのに記載がない。昭和40年以前の建物は内部廊下に旧乙防サッシが取り付けられている事例が多々存在する。区画による延焼防止の項目が必要。
     ・上下階住戸の層間区画がとれているかも最も重要な判断基準であるのに記載がない。ダクトの区画、腰壁が無いことによる外部の区画等、区画による延焼防止の項目が必要。
    (国土交通省の考え方)
     「小屋裏及び天井裏の界壁」「面積区画」「竪穴区画」の項目を設け対応しました。

    (頂いた御意見)
     防煙性について、220号特例を受けていないものは不適格であるとはいえない。また、共用階段、共用廊下は現行の基準法では排煙設備は不要である。
    (国土交通省の考え方)
     220号特例を受けている場合がかなりの割合を占めていると考えられることから、階段室型住棟において避難経路となる共用階段における防煙性について、消防法における「共同住宅の特例基準(消防予第220号通知)」に適合しているか否かで評価する。ただし、「スプリンクラーが設置されており、220号特例を受けていない場合は、排煙設備は必要ないため、該当しないことに注意する必要がある。」との注釈を設けて、排煙設備を必要としないケースを示しました。

    『躯体に規定される居住性について』

    (頂いた御意見)

     原案P14「(3)1)共用部分」の「空間規模」の項は室内空間で捉えることとして15頁2)へ移行させる方が良いのではないか。
    (国土交通省の考え方)
     表現を「階高」と改め、躯体(スケルトン)に規定されるものであるため、共用部分のところで扱うことにします。

    (頂いた御意見)
     住戸面積について、居住水準等の比較根拠が必要ではないか。間取りについて客観的な判断は不可能。従って項目自体が不要ではないか。
    (国土交通省の考え方)
     住戸面積については、現在の新築マンションの一般的な水準を「参考資料1」で表示しています。間取りについては、ご指摘の通り、判断基準が不明確なため削除しました。

    『設備の水準について』

    (頂いた御意見)

     セントラル給湯・空調方式はランニングコスト(燃料代、修繕費)が問題になるため、何をもって問題があるか、ないかの基準の明示が必要ではないか。
    (国土交通省の考え方)
     ご趣旨を踏まえ、削除しました。

    『既存不適格の扱いについて』

    (頂いた御意見)

     老朽度判定基準の中に、既存不適格の有無を判定基準にしている箇所がいくつかあるが、いつ頃、どのような内容の法改正が行われたのかの経緯を示し、マンションの建設時期によって既存不適格かどうかを確認すべき内容を明確にする必要があるのではないか。
    (国土交通省の考え方)
     法改正の内容の変遷を本マニュアル内に示すことは、非常に煩雑となりますので、該当項目について、既存不適格かどうかをどのような観点から判断するのかについてのみ示すことで対応致しました。専門家による判定であることから、それのみで十分に対応していただけるものと考えております。


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