国土交通省
 「不動産鑑定評価制度の改正試案に関する意見の募集」の
 結果について
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平成16年3月2日
<連絡先>
土地・水資源局地価調査課
(内線30323)

電話:03-5253-8111(代表)


 

  国土交通省では、平成16年1月9日から同年1月30日までの期間において「不動産鑑定評価制度の改正試案に関する意見の募集」を行いました。その結果、44名(団体を含む。)の方から御意見を頂きました。
 頂いた御意見の概要及び国土交通省の考え方について、以下のとおり取りまとめましたので、公表いたします。


不動産鑑定評価制度の改正試案に関する
意見の概要と国土交通省の考え方

  1. 不動産鑑定士の資格取得制度の見直しについて

    (1)総論

    • 資格取得制度の簡素合理化に賛成である。
    • 現行制度を維持すべきである。
    • 合格者数については、需給バランスを考えて、慎重に検討すべき。
    • 合格者数は、現行第2次試験より大幅増とすべき。

    [国土交通省の考え方]
     資格取得制度の簡素合理化は、不動産鑑定士となる資質を持った優秀な人材を将来にわたって確保することを目的とするものであり、資格取得を目指す者の裾野を広げつつ、資格取得に求められる知識・能力のレベルについては維持することとしています。

    (2)実務修習(仮称)について

    • 十分実効性のある実務修習制度とすべき。
    • 無経験者の修習を前提としたカリキュラムとすべき。
    • 実務修習において、実務経験を組み込む等、実務に直結した内容とすべき。
    • 実務修習の内容は、金融工学や法律なども踏まえた内容とすべき。
    • 実務修習の中核は不動産鑑定業者における実習に置き、修習開始時及び期末に相当期間の集合研修を実施すべき。
    • 実務修習及び修了考査の厳格化を行うべき。
    • 職業倫理の基盤となる社会人としての一般教育も重視すべき。
    • 実務修習について、社会人や非首都圏在住者でも受講しやすいものとすることや、修習生の経済的負担の軽減などを行うべき。
    • 実務修習、修了考査、修習生の身分等について詳細をなるべく早期に明示すべき。
    • 独立の実務修習機関の設立を検討すべき。
    • 修習プログラムの基準については、行政において詳細に提示すべき。
    • 修習生の実習を受け入れる不動産鑑定業者や研修教官等について、その身分・位置付け等を明確にすべき。

    [国土交通省の考え方]
     実務修習(仮称)については、大枠としては、現行の実務補習を踏襲し、
    (1)実務に関する講義
    (2)基本演習
    (3)実地演習(通信実地演習を含む。)
    で構成されることを想定していますが、特に実地演習の実が上がるよう、その充実を図るとともに、実際に実務能力が身に付いたかを考査で確認することを考えています。
     また、実務経験の要件を廃止することから、それを踏まえたカリキュラムとなると考えています。
     なお、制度を設計・運営するに際しては、実務修習(仮称)を受ける者の時間的・経済的負担の合理化や実施体制に配慮すべきとの指摘が、昨年11月の国土審議会土地政策分科会不動産鑑定評価部会取りまとめ「今後の不動産鑑定評価のあり方」においてなされているところであり、これを踏まえ、施行に向けて検討することとしています。

    (3)試験の内容等について

    • 試験科目に統計学、建築、土木、都市工学、ファイナンス、金融工学等を加えるべき。
    • 論文試験における経済学・会計学の出題はそれぞれ1問にすべき。
    • 短答式試験への鑑定理論の導入は負担増なのでやめてほしい。導入する場合には論文試験における鑑定理論の配点、出題範囲等での負担減を行うべき。
    • 要因分析や手法適用に関する具体的な内容を問う出題を増やすべき。
    • 論文式試験における鑑定理論の科目について内容の充実が必要。
    • 口述試験あるいは修了考査における口述考査等の導入により人格的な評価を行うべき。
    • 弁護士・公認会計士等の有資格者や大学院修士課程修了者等に対する科目免除を設けるべき。
    • 試験の一部免除を設けることには反対。
    • 短答式試験合格者に対する短答式試験の免除を3年間にしてほしい。
    • 民法の試験に六法の貸与を行ってほしい。
    • 受験期間は現行どおり3日間とし、短答・論文同時期実施として、短答のみでの合否判定は行わないこととしてほしい。

    [国土交通省の考え方]
     学識の判定については、受験者の負担と必須の知識の確認のバランスを考慮し、現行の第2次試験と同じ科目で試験を行うことによることが適当であると考えています。この際、短答式試験では比較的基本的な知識を判定することとするため、行政法規と鑑定理論の基本的事項について出題することとしており、この短答式試験の合格者が論文試験を受験することができるものとすることとしています。なお、試験の科目免除については、現行と同程度のものとすることを想定しています。

    (4)移行措置・経過措置について

    • 現行の第2次試験の合格者を新試験の合格者とみなすべきではない。
    • 現行の第2次試験の合格者を新試験の合格者とみなすことに賛成。
    • 現行の第2次試験合格者が不利益を被らないよう十分に配慮してほしい。
    • 不動産鑑定士補が新制度下でどうなるのか明確に示してほしい。
    • 不動産鑑定士補について新制度下で安易に不動産鑑定士とすべきではない。
    • 新制度下で不動産鑑定士補は不動産鑑定士とすべき。
    • 現行の第2次試験合格者で既に実務経験を有する者等には、実務修習において一定の軽減措置を設けるべき。
    • 経過措置においては、現行の実務補習修了者が不動産鑑定士となる上で不利にならないよう十分配慮すべき。
    • 経過的に実施される第3次試験の実施期間等について明確にしてほしい。

    [国土交通省の考え方]
     経過措置により、不動産鑑定士補(資格を有する未登録者も含む。)の地位は保たれ、引き続き現行法における不動産鑑定士補としての職務を行うことができることとします。また、旧第2次試験と新試験の出題範囲がほぼ同じであることから、受験者の過度の負担を避けるため、旧第2次試験合格者は、新試験合格者とみなすこととし、不動産鑑定士となるためには実務修習(仮称)から始めればよいこととしています。なお、旧制度下で実務補習を修了した者については、新制度移行後も経過的に旧第3次試験を平成18年度から20年度まで3回実施することとしていることから、これに合格した場合にも、不動産鑑定士の資格が付与されることとしています。

    (5)その他

    • 資格取得後の研修プログラムの受講等を義務化すべき。
    • 研修の充実には賛成だが、単独での研修実施に困難が伴いがちな小規模な団体に対しては、全国を対象とする団体による支援を受けての研修実施の方法を認める等の方策も検討すべき。
    • 団体が実施しなければならない研修のプログラム基準を明示すべき。
    • 新人鑑定士育成のため鑑定士の研修機関をつくり地価公示等の仕事を行わせてはどうか。
    • 協会などでの高度な研修の実施を希望。

    [国土交通省の考え方]
     資格取得後の研鑽も重要と考えており、知識・能力の向上を図ることを奨励する趣旨の規定を置くこととしています。

  2. 隣接・周辺業務の位置付けと行政による監督
    • 隣接・周辺業務の位置付けについて賛成。
    • 隣接・周辺業務の位置付けと行政による監督について反対。
    • 隣接・周辺業務について、不動産鑑定士の独占業務とすべき。
    • 隣接・周辺業務について、行政の監督対象とするなら、不動産鑑定士の独占業務とすべき。
    • 隣接・周辺業務については、独占業務としないなら、検査や勧告等の措置にとどめるべき。
    • 隣接・周辺業務の範囲を限定・明確化すべき。
    • 隣接・周辺業務に係る行政の監督基準について明確化することが必要。
    • 隣接・周辺業務については、不動産鑑定士・鑑定業者以外の者に対しても、何らかの罰則規定を設けるべき。
    • 隣接・周辺業務における不動産鑑定士・鑑定業者の責任のあり方について明確にすべき。
    • 不動産鑑定評価法第36条が形骸化しており、きちんと対処してほしい。
    • コンサルティング業務の強化を図る制度方針を取り入れてほしい。

    [国土交通省の考え方]
     隣接・周辺業務については、具体的には、不動産の客観的価値に作用する諸要因に関して調査若しくは分析を行い、又は不動産の利用、取引若しくは投資に関する相談(コンサルティング)に応じることを業として行うものを対象とすることとしています。今回、これら隣接・周辺業務を不動産鑑定士等の業務として位置付け、行政による監督を可能とするのは、一義的には不動産鑑定士等・不動産鑑定業者に対する依頼者・第三者の信頼を保護することを目的とするものであり、このことを通じて不動産鑑定士等の専門能力に対する信頼性を向上させることを目指すものです。この目的を達成するために、これらの業務を不動産鑑定士等の独占業務とする必要はなく、このような経済活動に対する強い規制を創設することは適切ではないと考えています。

  3. その他
    • 試験制度の合理化より不動産鑑定の業界自体の合理化の方が緊急の課題。
    • 鑑定評価書の精度について、協会など第三者による審査制度を作ってほしい。
    • 改正試案については、2004年通常国会への提出を見送り、2〜3年程度全国的なレベルで広く意見交換の上、改めて改正案を作成されたい。
    • 不動産鑑定士の独立性と中立性の確保のため、金融機関、不動産会社、一般事業会社等の鑑定評価業務の兼業について、制限を付与されたい。
    • 鑑定業者のグループ化については、将来像のモデルやスケジュール等の具体的な内容を示した形で、広く意見交換の上、検討されたい。
    • 法第55条第1号に定める農地等の適用除外について再検討し、法制度に取り入れることを検討すべき。
    • 不動産鑑定士に課される責務を明示されることを期待。
    • 不動産鑑定士に対し強制設立の団体に強制加入する制度として、団体規律の下で業務の適正さや資質の向上を図るべき。
    • 不動産鑑定士への資質の向上の義務付けは、あえて法律事項とする必要はない。

    [国土交通省の考え方]
     不動産鑑定評価制度については、国土審議会土地政策分科会不動産鑑定評価部会において一昨年12月から慎重に検討が進められ、昨年11月「今後の不動産鑑定評価のあり方」が取りまとめられたところであり、これに示された方向性に沿って、行政として対応すべき事項について的確に対応してまいります。なお、提言は多岐にわたり、個々の不動産鑑定士、不動産鑑定業者あるいは不動産鑑定業界全体においてそれぞれの立場から主体的に取組みを進めていただく必要があると考えています。


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