報道・広報

国際海事機関(IMO)第102回法律委員会の結果について

平成27年4月27日

 4月14日から16日までの間、英国ロンドンにおいて、国際海事機関(IMO)第102回法律委員会が開催され、我が国からは、国土交通省、(公財)日本海事センター、(一社)日本船主協会等から構成される代表団が参加しました。
 今次会合における主な審議内容・結果は、以下のとおりです。

1.    地中海における移民問題
 関水IMO事務局長は、会議冒頭の挨拶の中で、近年の地中海における移民問題の深刻化について言及し、IMOとしての新たな取組みの必要性を示唆するとともに、国際機関間の連携と関係国の政治レベルでの決断が必要であるとの見解を示した。
 また、事務局より、本年3月4日及び5日にIMO本部にて開催された「海上における移民問題に関する関係機関ハイレベル会合」について、結果概要の説明が行われた。
 これに対して、イタリア、マルタ等の欧州地中海沿岸国より、関水事務局長のイニシアチブに謝意が示されるとともに、近年の当該地域における移民とその捜索救助活動の状況について説明が行われ、この問題への対応が喫緊の課題であることを強調するコメントが寄せられ、イタリア、マルタをコーディネーターとして会期の間で非公式会合が行われることになった。

2.    洋上石油開発による越境汚染損害に関する責任及び補償
 デンマークより、洋上石油開発による越境汚染損害に関する責任及び補償に関する非公式協議グループ(ICG)の活動について、本年4月13日の非公式会合の結果と、本件に関する二国間、地域間協定のガイドライン案作成へ向けた作業状況について報告等が行われた。
 今次会合では、過去にも同様の議論を行った結果として、国際条約の作成ではなく、二国間・地域間協定策定を支援する取組みを進めることとなった経緯を踏まえ、当面は、デンマーク及びインドネシアが中心になって行われている、ICGによる二国間・地域間協定のガイドライン策定作業を奨励することを決定した。

3.    外国での船舶の裁判上の売買の承認に関する国際条約案
 万国海法会(CMI)は、2014年6月の第41回CMI総会(ハンブルグ)で承認された、「外国での船舶の裁判上の売買の承認に関する国際条約案」を紹介し、次期2016―2017年の作業計画案への採用を提案した。これに対して、加盟国からは、CMIの提案を支持するコメントが寄せられる一方で、CMIに対して、本件について条約制定の差し迫った必要性及び本件をIMO法律委員会にて議論することの妥当性を示すことが要請されるとともに、他の関係する国際機関との連携を求める意見が述べられた。
 以上のコメントを受けて、今次会合では、CMI及び加盟国に対して、本件を法律委員会で取り上げるためには、次回会合において、上記要請に応じた情報を提供することを求めるとともに、事務局に対しては、本件提案について、他の国連機関とも適宜提携していくことを求めた。

4.    CLC及びHNS条約証書の発給権限の委任について
 フランスは、1992年CLC条約及び2010年HNS条約の解釈に関し、証書の発給権限を認定機関に委任することが可能かについて議論を提起した。我が国は、1992年CLC条約及び2010年HNS条約には、証書の発給権限を委任した場合の規定が存在しないことから、委任が行われた場合に発給された証書に基づく船舶の寄港を寄港国が容認することは困難である旨、懸念を表明した。一方で、他の加盟国からは、条約に証書の発給権限の委任に関する規定が存在しないことをもって委任を禁止したものと解釈するべきではないとの意見が述べられ、議論の結果、1992年CLC条約及び2010年HNS条約において証書の発給権限を委任することは可能だが、具体的な手法等については、今後の法律委員会においてより慎重な検討が必要であると結論づけられた。

5.    法律委員会が作成した条約及びその他の文書の現状の再調査
 事務局より、法律委員会が作成した各条約等の加盟国数、発効状況について報告が行われ、その後、我が国より「1976年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する1996年の議定書」に関し、責任限度額の引き上げに係る改正が本年6月8日に発効するため我が国では海事責任債権の制限に関する有識者の関心が高まっていることを紹介するとともに、同議定書の締約国は50箇国に過ぎないが、より多くの国が同議定書を締結することにより世界共通の海事債権に係る責任制限制度が導入されることが重要である点を指摘し、本委員会に対し同議定書の重要性を強調して、非締約国に対し同議定書締結についての検討を促して欲しい旨発言した。また、本件会合の開会時に関水事務局長からバラスト水管理条約の早期発効に向けて各国の批准を促す発言がなされたことを受け、我が国がバラスト水管理条約を昨年10月に批准したこと、同条約の発効まで約2%の船腹量の国の批准が求められていることを述べ、現在批准手続を行っている国について早期に批准手続を完了することを促す発言を併せて行った。

6.    2010年の危険物質及び有害物質の海上輸送に関連する損害についての責任並びに損害償及び補償に関する国際条約(2010年HNS条約)の発効促進
 カナダより、昨年の前回会合において立ち上げが了承された2010年HNS条約の発効促進に関するコレスポンデンスグループの活動について報告が行わるとともに、2010年HNS条約に対する理解を深めるための資料である「Understanding HNS Convention」及び「HNS Scenario」の作成並びに次回会合で審議を予定している2010年HNS条約発効促進のための決議案の検討を行うため、その活動期間を1年間延長する旨提案があり、了承された。

7.    次回の法律委員会の開催日程
 次回会合は、平成28年6月に3日間の会期で開催予定。

お問い合わせ先

国土交通省海事局総務課国際企画調整室 伊藤、佐藤
TEL:03-5253-8111 (内線45611) 直通 03-5253-8656 FAX:03-5253-1642

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