令和3年11月29日
11月22日~26日にかけて、国際海事機関(IMO)第77回海洋環境保護委員会(議長:斎藤英明 国土交通省参与)がWeb形式で開催されました。
国際海運の温室効果ガス(GHG)排出削減目標について、2018年に合意された2023年春の改定に当たって、現行の目標よりさらに野心的な目標を設定することで合意しました。 |
主な審議結果は以下の通りです。(詳細は別紙をご参照ください。)
(1)国際海運のGHG排出削減目標
(現在のGHG排出削減目標)
・IMOでは
2018年に「GHG削減戦略」を採択し、[1]2030年までにCO2排出量40%以上削減(輸送量あたり、2008年比)、[2]2050年までにGHG排出量50%以上削減(2008年比)、[3]今世紀中なるべく早期の排出ゼロ、という目標を設定するとともに、本戦略を2023 年春に改定することに合意しました。
(我が国等からの新目標の提案)
・我が国は、今次会合に対し、「GHG削減戦略」の改定に際して、「2050年までにGHG排出を全体としてゼロ(2050年カーボンニュートラル)」を新たな目標として掲げることを、米国、英国、ノルウェー及びコスタリカと文書で共同提案していました。
・またキリバス等は、2050年までにGHG排出ゼロとすることが必要との認識を決議するよう求めており、我が国は米国等とこれを支持していました。
(議場での各国意見)
・我が国を始めとする多くの国が
「2050年までにGHG排出を(全体として)ゼロ」を新目標とすることを主張する一方で、途上国は、
新たなGHG削減対策による貿易・経済への影響及び支援策を併せて議論すべきであると主張しました。
・上記キリバス等からの決議の提案については、我が国を始めとする多くの国が採択を支持する一方で、途上国からの反対意見に加え、一部先進国からも、今次会合の審議時間に限りがある中で、本決議に関する議論に多くの時間を割くべきではないとする意見が示されました。
(結論)
・審議の結果、上記決議案は採択されませんでしたが、我が国等が提案していた内容について議論が深まり、2018年に合意された2023年春の
「GHG削減戦略」の改定に当たっては、現行の目標よりも野心的な目標を設定することが合意されました。
(2)国際海運からのGHG排出削減に向けた更なる対策
・国際海運からのGHG排出削減を進めるためには、化石燃料を使用する従来型の船舶から、低・脱炭素燃料を使用する船舶への代替を促進するための更なる対策が必要です。
・2023年以降、更なる対策を順次導入すべく、第78回海洋環境保護委員会までに、各国が具体的な対策を検討し提案することとなっています。
・今次会合では、GHG排出削減に経済的なインセンティブを付与する制度とGHG排出量を強制的に規制する制度の併用が必要であるとの意見や、導入する対策による途上国への影響評価が必要であるとの意見が述べられました。
・どのような対策を導入するかについて、具体的な議論が今次会合から始まり、引き続き各国からの提案について、検討を重ねていくことになりました。
・船舶からの海洋プラスチックごみ対策、船舶バラスト水規制管理条約の適切な実効性を高める方法等について審議を行いました。
・議長選挙の結果、現在議長を務めている日本の斎藤英明氏(国土交通省参与)が2022年の海洋環境保護委員会議長に再選されました(2018年以降5期目)。
海洋環境保護委員会議長の斎藤英明氏(国土交通省参与、右) 参加する日本政府代表団の様子