報道・広報

国土交通省「公共事業コスト構造改革」(平成15年度~19年度)結果報告について

平成20年12月18日

 平成12年9月に公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議において、平成12年度以降の政府の新たな「公共工事コスト縮減対策に関する新行動指針」が策定され、国土交通省においても平成13年3月に新行動指針を踏まえた「公共工事コスト縮減対策に関する新行動計画」を策定しました。
 平成15年度からは、新行動指針及び新行動計画に加え、公共事業のすべてのプロセスをコストの観点から見直す、「コスト構造改革」に取り組むこととし、平成15年3月に、事業のスピードアップ、計画・設計から管理までの各段階における最適化、調達の最適化を見直しのポイントとした「国土交通省公共事業コスト構造改革プログラム」を策定しました。
 コスト構造改革の数値目標として、従来の工事コストの縮減に加え、規格の見直しによる工事コストの縮減、事業のスピードアップによる事業便益の早期発現、将来の維持管理費の縮減をも評価する「総合コスト縮減率」を設定し、平成15年度から5年間で、平成14年度の標準的な公共事業コストと比較して、15%の総合コスト縮減率を達成することとしています。
新行動指針および国土交通省公共事業コスト構造改革プログラムでは、「実施状況については、具体的施策の着実な推進を図る観点から、適切にフォローアップし、その結果を公表する。」こととしており、今回、同プログラムの最終年度における平成19年度の実施状況をとりまとめました。
 平成19年度については、国土交通省・関係機構等において、平成14年度の標準的な公共事業コストと比較した総合コスト縮減率は14.1%となりました。この数値から関連施策にかかる物価変動分のみを除いた場合には15.8%となります。また、物価や労務費等の全体的な物価変動を含めた場合には12.4%となります。
 今後は平成20年3月に新たに策定しました「国土交通省公共事業コスト構造改善プログラム」に基づき、総合的なコスト構造改善を推進して参ります。
 

1.これまでの経緯

 公共工事コスト縮減対策については、平成9年4月4日に策定された「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」に基づき、同行動指針の対象期間である平成9年度から11年度までの3年間、各省庁が一致協力して施策を推進し、一定の成果を得てきました。
 また、平成12年9月1日には、公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議において、平成12年度以降の新たな「公共工事コスト縮減対策に関する新行動指針」が策定され、これを踏まえ、平成13年1月6日の省庁再編に伴い、運輸省、建設省及び北海道開発庁において策定した新行動計画を統合し、平成13年3月30日に国土交通省におけるコスト縮減のための具体的施策を盛り込んだ新行動計画を策定しました。
 さらに、平成15年3月31日には、新行動指針だけでは、限界があることから、新行動指針を維持継続することに加え、公共事業のすべてのプロセスをコストの観点から見直す「コスト構造改革」に取組むこととし、国土交通省は、「国土交通省公共事業コスト構造改革プログラム」を策定し、[1]事業のスピードアップ、[2]計画・設計から管理までの各段階における最適化、[3]調達の最適化を見直しのポイントとし、各施策を実施しているところです。
 

2.コスト縮減の取り組みの成果

(1)平成19年度コスト縮減取組実績
 1)公共工事コスト縮減対策に関する新行動指針 (詳細は参考資料1)
   ・実施施策
   30施策 170項目(全項目数 174項目) 
   ・行動指針の項目をより具体化した行動計画の実施施策
   30施策 304項目(全項目数 312項目) 
 
 2)国土交通省公共事業コスト構造改革プログラム (詳細は参考資料2)
  ・実施施策
   34施策 (全施策数 34施策)
  
(2)平成19年度総合コスト縮減率 (詳細は別紙1) 
 数値目標は、公共事業のすべてのプロセスをコストの観点から見直す「コスト構造改革」の取り組みを適切に評価するため、従来からの
工事コストの縮減に加え、規格の見直しによるコストの縮減、事業のスピードアップが図られることによる便益の向上、将来の維持管理費
の縮減をも評価する「総合コスト縮減率」を設定し、平成15年度から5年間で、平成14年度における標準的な公共事業のコストを基準
として、15%の総合コスト縮減率を達成することを目標としています。
 平成19年度の総合コスト縮減率は、国土交通省・関係公団等合計で14.1%の低減となりました。
 
   ○ 国土交通省・関係機構等の平成19年度実績
    
     ●総合コスト縮減率 :14.1% 縮減額: 5,678億円
     ●物価等の変動を含めた縮減率:12.4% 縮減額: 5,141億円
      なお、これらの縮減額は、社会資本整備の推進に充当し、公共事業全体の進捗を図っています。
 
(3)平成19年度公共事業コスト縮減の取組事例 
 1)公共工事コスト縮減対策に関する新行動指針
  ※( )内の番号等は、新行動指針・新行動計画の施策番号一覧による
   
   ○  工事コストの低減    
    ● 新粗石コンクリート工法の採用によりコスト縮減 ([2]技術基準等の見直し)
     ・ 兎谷第1号床固工事において掘削土に含まれる粗石(φ80~1000mm)を床固工に有効活用することでコンクリート打設量の
       低減発生残土量の抑制を図り約15%のコスト縮減(縮減額 約18百万円)。
    ● 既設エプロンとの接続を端部増厚型にすることによるコスト縮減 ([3]設計方法の見直し)
     ・ 鹿児島空港エプロン誘導路改良工事において既設エプロンとの接続に端部増厚型を採用することにより約2%のコスト縮減
       (縮減額 約5百万円)。
     ● 橋梁区間の分割・縮小によるコスト縮減([3]設計方法の見直し) 
     ・ 一般国道404号長岡東西道路橋梁工事において橋脚部に土工区間を設けて橋梁を分割し橋脚と橋脚との間隔を縮小
             することにより約23%のコスト縮減(縮減額20億円)。
     ● 基礎免震+中間階免震併用工法の採用によりコスト縮減 ([3]設計方法の見直し)
     ・ 金沢広坂合同高層棟建築耐震改修工事において中間階免震併用工法を採用することにより地下掘削に伴う残土量の
             縮減を図り約17%のコスト縮減(縮減額 150百万円)。
     ● 砂防ソイルセメントを用いた工法の推進([4]技術開発の推進)
     ・ 広島西部山系上原2号砂防堰堤工事において普通コンクリートの代わりに現地発生土とセメントの混合した砂防ソイル
             セメントを用いることで、建設発生土の低減・有効活用が可能となり、普通コンクリートを使用した場合より、環境への負荷を
             軽減すると共に建設コスト約8.5%縮減(縮減額 46百万円)。
     ● 竹割り型構造物掘削工法の採用によりコスト縮減([4]技術開発の推進)
     ・ 一般国道44号釧路町オビラシケ川橋P3工事において竹割り型構造物掘削工法を採用することにより地山の掘削面積を
             最小限に抑え長大な人工斜面の維持・管理費が不要となり約23%のコスト縮減(縮減額 16百万円)。
    ● 価格交渉方式の実施([8]入札契約制度検討)
     ・平成16年4月の成田国際空港株式会社の発足に伴い、より徹底したコスト縮減を図るため価格交渉の実施により、平成
             19年度発注の全ての建設工事において、約6%のコスト縮減(縮減額3,649百万円)(成田国際空港株式会社) 
    ● 発生土砂の処分方法の見直しによるコスト縮減([17]建設副産物対策)
     ・ 大阪湾夢洲トンネル夢洲側アプローチ部築造工事において発生したセメント含有発生土砂を再利用することにより、建設
             副産物の発生を抑制し約5%のコスト縮減(縮減額 60百万円)。
 
   ○ ライフサイクルコストの低減(施設の品質の向上) 
    ● ステンレス鋼ライニングの採用による将来の維持管理費の縮減 (3)[1]施設の耐久性の向上)
     ・ 東京湾南部地区臨海道路防衝工製作・設置他工事において防衝工の構造をジャケット式に見直したことに伴い、耐用
              年数の長いステンレス鋼ライニングを採用することにより、将来の維持管理費となる塗装塗替え費を約21%縮減。
               (縮減額 366百万円/100年)
    ● ライフサイクルコスト低減技術を導入した橋梁を採用 (3)[1]施設の耐久性の向上)
     ・ 旭川紋別自動車道上川町上滝橋R上部工事において耐候性鋼材の採用により塗装の塗替が不要なため、ライフサイクル
              コストを約14%縮減。(縮減額 30百万円/40年)
    ● 航路標識用電源の見直しによるコスト縮減 (3)[2]施設の省資源化・省エネルギー化)
     ・ 航路標識事業において配電線路が不要な太陽電池装置を整備することにより維持管理コストを約75%縮減
        (縮減額2.4百万円/20年間)
 
 2)国土交通省公共事業コスト構造改革プログラム
  ※( )内の番号等は、国土交通省コスト構造改革プログラムの施策番号一覧による
 
   ○ 計画・設計から管理までの各段階における最適化 
     ● インターチェンジの構造の見直しによるコスト縮減 (【1】計画・設計の見直し)
     ・ 中部横断自動車道佐久南インターチェンジ(仮称)事業においてインターチェンジを簡易な平面Y型IC形式にする構造の
              見直しを行い約35%のコスト減額(縮減額11億円)。
     ● 付着オーバーレイ工法の採用によりコスト縮減 (【1】計画・設計の見直し)
     ・ 新千歳空港エプロン改良工事においてコンクリート版付着オーバーレイ工法を採用することにより嵩上箇所の既設コンクリート
              舗装を撤去する事なく有効活用し、必要舗装厚に増厚することが可能で、コンクリート殻の撤去、運搬、処分が不要となり
              約49%のコスト縮減 (縮減額 70百万円)
     ● 公共工事等における新技術活用システム (【2】新技術の活用)
     ・ 平成17年4月より試行的に運用してきた 「公共工事等における技術活用システム」 を、平成18年8月より、新技術の峻別
               による有用な新技術の活用促進と技術のスパイラルアップを目的として、事後評価に重点をおいた 『 公共工事等における
               新技術活用システム 』 として本格運用。
     ● 雪崩防護柵工にスノーネットを採用(【2】新技術の活用)
     ・ 奈良俣ダム管理用道路雪崩工事においてスノーネット工の採用により基礎工の費用、施工性が向上し約31%のコスト縮減
         (縮減額 約34百万円)
     ● 新技術を用いた既存の処理施設の高度処理化 (【2】新技術の活用)
     ・ 既存処理施設に新技術を用いて高度処理化を実現することにより既存施設を拡張せず高度処理化を実施しコスト縮減を図り
              約30%のコスト縮減(縮減額 4,780百万円)(日本下水道事業団)。
     ● 集草梱包機付き草刈り機の導入によりコスト縮減 (【2】新技術の活用)
     ・ 千曲川下流堤防除草作業において集草梱包機の導入により、刈ったその場で刈草の梱包が可能となり従来のように、梱包機が
              使用可能な平らな土地へ運ぶための積み込み、運搬及び敷き均しが不要なため、約7%のコスト縮減(縮減額 3百万円)。
 
   ○ 調達の最適化    
     ● 総合評価落札方式について (【1】入札・契約の見直し)
     ・ 価格のみによらず、工期、機能、安全性などの価格以外の要素を含めて総合的な価値による競争を推進することにより、談合等の
              不正防止が期待されるとともに、機能・品質の向上が見込まれる。平成20年度は全てで原則実施。
     ● ユニットプライス型積算方式について(【2】積算の見直し)
     ・ ユニットプライス型積算方式の導入に向け、平成18年度より舗装工(道路)について全面試行、前年度までの取組に加え、
              平成19年度より築堤護岸工、道路改良工について全面試行。また、平成20年度より、道路維持、道路修繕、河川維持、
              河川修繕工事において試行開始。
     ● 一括調達方式 (【2】積算の見直し)
     ・ 複数の工事で使用する資材を国土交通省が資材メーカーから直接購入、支給することにより、資材費を直接的に低減。
              平成19年度の試行結果では、ガードレール1800mを一括購入することにより、約12%のコスト縮減(縮減額1,744千円)。
 
 

お問い合わせ先

国土交通省大臣官房技術調査課事業評価・保全企画官 塩井 直彦
TEL:(03)5253-8111 (内線22353) 直通 (03)5253-8221
国土交通省大臣官房公共事業調査室専門官 温品 清司
TEL:(03)5253-8111 (内線24294) 直通 (03)5253-8258

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