報道・広報

平成20年度建設産業ノウハウ移転セミナーの開催について(結果概要)

平成21年3月26日

1.趣旨
 開発途上国における社会資本整備を支援するに当たって、その国の民間建設産業を育成していくことは、援助プロジェクトの円滑な実施につながるだけでなく、その国の経済発展にとっても極めて重要である。このような観点から、国土交通省では、開発途上国への協力として、我が国建設産業が持つ経験、技術、ノウハウの移転を図るためのセミナーを対象国に講師を派遣して開催している。
 本年度はネパールにおいてセミナーを開催した。同国では、国内の道路ネットワークの整備、既存道路の維持管理、首都における慢性的な交通渋滞、防災対策、またこれらに対処する建設業者の能力強化などが喫緊の課題となっている。こうしたニーズを踏まえ、本セミナーにおいて、我が方から、道路建設における工事管理、道路の維持管理、防災対策等に関して紹介した。
 本セミナーは平成7年度から毎年各国で実施しており、ネパールについては平成16年度に一度開催を予定していたものの、治安情勢の悪化に伴い直前になって中止した経緯があり、今回が初めての開催となった。
 
2.セミナー日程・開催場所
 平成21年3月13日(金)終日
 ソルティー・クラウン・プラザ・ホテル会議場(カトマンズ市(首都)) 
 
3.講師(発表順)
 ラム クマル ラムサール氏 公共事業計画省 道路局副局長
 西嶋 岳郎氏 株式会社間組 土木事業本部技術第一部長
 中原 大磯氏 日本道路株式会社 生産技術本部技術研究所 第一研究室主任研究員
 トゥラシ プラサド シタウラ氏 公共事業計画省 道路局長 
  
4.セミナーの概要
 セミナーはネパール政府(国家計画委員会シャルマ副議長、公共事業計画省カダリヤ次官等)、建設会社、コンサルタントなど50名を越える参加者を得て盛況に開催された。
 
(1)開会
 開会では、シャルマ副議長、カダリヤ次官及び水野駐ネパール特命全権大使から挨拶があった。シャルマ副議長及びカダリヤ次官からは、道路整備を初めとする日本の開発援助に対して感謝を述べるとともに、本セミナーの開催について感謝の意が述べられた。
 
(2)講演
 (イ)ラムサール道路副局長より、「Action Plans for Mitigation Disasters in Road Sector Nepal」のテーマで、気候、地質/地形の悪条件下、経済的基盤の弱いネパールにおいて、いかに道路災害を予防し対処していくかについて、安全/防災の観点をベースに、計画段階、設計段階、建設段階、維持修理段階、事後評価段階等、細かく分けた低減策の提案がなされた。
 
 (ロ)西嶋講師より、「Project Technology for Road Construction in Japan」のテーマで、自然災害に対処するために日本で使われている中~高度な技術に触れるとともに、ネパールで実際に使用されている日本の設計思想や技術について、施工中のシンズリ道路、バクタプール拡幅等の豊富な写真や図面を例示した説明、及び、ホンジュラスやラオスにおいて使用されている技術の紹介がなされた。
 
 (ハ)中原講師より、「Practical Technology for Construction, Maintenance, and Repair of Road in Japan」をテーマに、主として舗装技術の観点から、最初に戦後間もない未舗装道路の状態が写真入りで説明され、大量交通時代の舗装技術と設計思想について触れた後、日本で実際にどのような舗装工事がなされているかについて、多くの具体的工事書類を例示しながら、工程管理、品質管理、安全管理及び環境への配慮等の具体的説明がなされた。
 
 (ニ)シタウラ道路局長より、「Surface Transport Development in Nepal, Opportunities and Challenges」をテーマに、最初に簡単な道路開発の歴史や現状について数字を挙げての説明がなされた後、日本を初めとするドナー国のプロジェクト紹介に続いて、資金面、地質/地形面、人材の海外への流出等の視点からの道路開発の直面する課題について発表がなされた。特に技術的知識・経験を持たない地域住民による道路の乱開発を取り上げ、既存道路に与える悪影響について論じられた。他の代替輸送機関(鉄道等)や開発手段(トンネル等)が困難であることに触れ、新しい国づくりや発展、貧困の削減にとって、道路の開発が必須急務との結論が述べられた。
 
(3)ディスカッション・セッション
 ディスカッション・セッションでは、参加者から自然災害への対応事例や舗装技術に対して質問があった。これに対し、我が方講師から具体的な事例を引用しつつ、詳細な回答があり、熱心な応答がなされた。
 
 今後、本セミナーで紹介された我が国の建設産業ノウハウが同国におけるインフラ整備の参考になるとともに、こうした優れたノウハウ・技術を有する我が国の建設業に対する関心が両国においてさらに高まることが期待される。
 

お問い合わせ先

国土交通省総合政策局国際建設市場室 
TEL:(03)5253-8111 (内線25215)

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