1.日程:平成22年2月18日(木)、19日(金)
(1)セミナーセッション [ 2月19日(金) ]
・会 場:弘済会館(東京都千代田区)
(2)現地視察セッション [ 2月18日(木) ]
・視察箇所:首都高速道路 交通管制センター、東京湾アクアライン
2.主催:国土交通省、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)
3.目的:
1959年に始まったアジアハイウェイ・プロジェクトは、開始から50年が経過した 現在、参加32ヶ国、総延長14万kmにおよび、アジア地域の
社会・経済活動を支える重要な社会資本です。
そこで、この記念すべき年に本プロジェクトの半世紀を振り返りつつ、今後を展望 するセミナーを開催しました。
4.プログラム:別添参照
5.結果概要:
(1)基調講演
東京大学 新領域研究科 教授 吉田 恒昭
「シームレスアジアを目指して」
概要: [1]道とは、文明を運び、価値観を共有してきたもの
[2]アジアハイウェイの目的としては、短期的には経済促進だが、中長期的には文化や価値観の共有が重要になってくる
[3]アジア域内の文化や価値観の共有化の手段又は成果として、アジア ハイウェイ・プロジェクトを捉えたい
(2)UNESCAPからの報告
UNESCAP交通部 経済担当 マダン・レグミ
「アジアハイウェイ発展の経緯と現状」
概要:現状のミッシングリンクや現在の規格(グレード等)の他に、優先投資を選定する必要性と今後の課題
(アジアハイウェイ路線の改修、維持管理、アジアのシームレス化)について
(3)アジアハイウェイ・ユーザーからの報告
1)日本ロジテム株式会社 代表取締役 中西 弘毅
「インドシナ半島におけるロジテムグループの戦略 ~アジアハイウェイー東西回廊を利用して~」
概要:インドシナ半島域内における国際貨物陸上輸送の展開を踏まえ、
アジアハイウェイを利用した輸送の現状と課題、今後の展望について
2)ジャーナリスト、作家 大林 高士
「アジアハイウェイ走破の体験と提案」
概要:自身がアジアハイウェイ(タイ・カンボジア・ベトナム・韓国・中国・ミャンマー)を走破された体験について
(4)日本からの貢献
1)国土交通省 国土地理院 参事官 吉兼 秀典(元UNESCAP派遣専門家)
「日本からの貢献」
概要:日本が行ったアジアハイウェイ・プロジェクトへの資金面、技術的な貢献について、過去50年間のアジアハイウェイ・プロジェクトの
歴史を、黎明期、進展期(及び停滞期)、転換期、成熟期に分けて紹介
2)JICA経済基盤開発部 運輸交通・情報通信第一課長 小泉 幸弘
「アジアハイウェイとJICAの協力」
概要:政府開発援助を活用したアジアハイウェイの整備支援や、メコン川流域諸国における国境を越えた交通の研究について
(5)カントリーレポート
1)カンボジア王国 公共事業運輸省 道路インフラ部長 ヌ・ワタナ
「カンボジアにおけるアジアハイウェイの状況」
概要:カンボジア国内の道路整備の現状、マスタープラン及びアジアハイウェイの現状について
2)インド 道路交通省 技術課長 A.N.ドダプカール
「インドにおける道路インフラとアジアハイウェイの整備」
概要:インド国内の道路整備の現状、国道整備計画、アジアハイウェイの現状のほか、道路を利用した越境促進の取り組みとして、
国境での通関制度統合化の試行について
3)大韓民国 国土研究院 道路政策研究部 部長 チョン・イルホ
「韓国のアジアハイウェイ -現状及び展望」
概要:韓国国内でのアジアハイウェイの現状とアジアハイウェイ標識の設置 状況、日本を含む北東アジアでのアジアハイウェイの
将来展望、アジアハイウェイ・プロジェクト推進のための財源確保を図る手段としての 北東アジア開発銀行設立の提案について
(6)パネルディスカッション
テーマ「アジアハイウェイの将来展望」
東京大学 新領域研究科 教授 [司会] 吉田 恒昭
UNESCAP 交通部長 バリー・ケーブル
国土交通省 国土地理院 参事官(元UNESCAP派遣) 吉兼 秀典
日本ロジテム株式会社 代表取締役社長 中西 弘毅
カンボジア王国 公共事業運輸省道路インフラ部長 ヌ・ワタナ
インド 道路交通省 技術課長 A.N.ドダプカール
大韓民国 交通研究院 東北亞北韓センター長 クォン・ユンイン
吉田教授の司会により、各発表内容を確認した後、今後のアジアハイウェイへの期待と課題について幅広く議論がなされました。
主な議論は次の通り。
・アジアは古来より国境を越えた域内交易が盛んだが、根幹となるインフラの整備は各国のマスタープランにより投資先が選定され、
必ずしも国境を越えた広域的な視点で優先順位付けされていない。各国間で将来像を共有し、国境を越えてあらゆる手段を利用する
交通体系を整備し、越境手続きを効率化すれば、地域格差の是正、市場創出が期待できる。
・国境を跨ぐ物流を一気に活性化することは難しくても、文化交流を促進する観点から、アジアハイウェイ・プロジェクトには意義がある。
・越境手続き簡素化の試みとして、地域協力の枠組みの中での取り組み、通関制度統合化や車両の他国乗り入れ、
越境手続きの許可制などが試行されており、今後も各国の前向きな試みに期待する。
・日本の「道の駅」の仕組みは、地域活性化拠点として、アジア各国の参考事例となりうる。
・アジアハイウェイの整備促進への日本からの支援は、本邦企業の海外展開に おいても役立つ。
この他、聴講者からアジアハイウェイの整備促進への期待、他の国際広域幹線道路網との連絡や、各国への日本の道路技術移転への
期待などについて、コメントがありました。
最後に、司会の吉田教授がパネルディスカッションを次のようにまとめました。
・50年間、様々な経緯があったが、アジアハイウェイは、アジアの平和的共存という共通の大きな目的をもつ未来志向型の構想であり、
その意義の大きさを 再度確認した。
・日本は逼迫した財政にあっても、人材、知識、資金を活用してアジアハイウェイ・プロジェクトへ貢献すべきであり、日本の役割は依然大きい。
・このプロジェクトへの貢献は、アジアの国々のみならず、長期的には日本の国益にもかなう。