平成24年4月20日
沿線における人口の減少や少子高齢化の進展、高速道路の延伸等社会経済情勢の変化に伴い、地域鉄道の経営を取り巻く環境が厳しさを増すなかで、鉄道事業者においては地域コミュニティとの結び付きの強化・観光への取組等の利用促進策や合理化など様々な努力を続けています。昨年3月の東日本大震災は、鉄道に甚大な被害をもたらし、震災後も風評被害や自粛ムード等によって、東北地方の鉄道事業者は特に厳しい経営を余儀なくされています。
こうした状況を踏まえ、鉄道事業者によっては観光との連携など地域に根ざしたさまざまな活動を模索していますが、こうした地域鉄道の再生・活性化に向けた取組を大きな動きとしていくために、今後の講ずるべき施策などを検討することとし、第1回「地域鉄道の再生・活性化等研究会」を開催しました。
平成24年4月12日(木) 13:00~15:50
国土交通省 3号館 11階 特別会議室
別紙参照
(1)本調査の進め方について
(2)地域鉄道の現状と課題
(3)東北ローカル鉄道における現状と課題、地域鉄道における取組事例の紹介
・他地域でも地域鉄道が連携している動きはあるが、東北地方が最も充実した取組をしている。
・東北地方の場合、人口減少が激しく、自家用車保持率も高く、他地域よりも地域鉄道の状況が厳しい。そのため、昔から定期的に会合をしており、危機を共有し、協力してきている。
・携帯の位置情報を活用したゲームをきっかけに新規の顧客が増えた例もある現在の若者は、旅行が「目的」ではなく、目的を達成する結果が旅行となることもある。地域鉄道に乗車することにより、入手可能な限定ゲームアイテムを使ってゲームユーザーに働きかけた。
(4)委員による地域鉄道の取組事例の紹介
(5)日本観光振興協会と鉄道運輸機構が実施する調査内容
・日本観光振興協会:失敗要因も含め、事例の分析を行っていきたい。
・鉄道運輸機構:日本観光振興協会の調査を踏まえ、モデル事業につながるようなフレームを検討していきたい。
(6)意見交換
○学識経験者からのコメント(活性化のポイント、今後の調査について)
・成功の秘訣を分析することにより、パターン化できると思われる。どういう発想で地域に溶け込めるか。例えばいすみ鉄道の例は、人が動いて、市長を動かし、地域全体が動いている。調査のポイントは、成功事例を具体的にセグメント化すること。また地域鉄道の存在意義、例えば採算面や地域の足以外の地域活性化の核としての意義付けを結論とすることができたらよい。
・各社が工夫したイノベーションを行っているが、現在の地域鉄道の経営は様々な企画をしていても採算がとれず、厳しい状況という印象。地域鉄道のゴール、なりたい姿はどういうものなのか。収益性だけでなく、公益性をどう評価していくか。地域鉄道の収支の議論だけでなく地域を訪れた人による経済波及効果も確認していくことが必要。また成功モデルのスタンダードを業界の皆さんが認識した上で、全体基盤の底上げが重要。連携することでスケールメリットを活かしたプロモーション等も考えていけるのではないか。
・地域の鉄道ということを明確に位置づけるのであれば、その意義を地域に説明できるようにすることが大切。地域の他資源(例えば不動産など)と鉄道を絡ませて、相乗効果を出すような取組も大切。またマイカーから電車を使用してもらうよう切り替えるには、CO2の削減といった他の意義付けも必要ではないか。
・産業観光分野では、鉄道は産業として、技術・技能、運行システム等、それ自身が観光資源ともなる。・例えば、地方の小さな駅周辺では飲食店が開いていなかったことがあった。列車を運行させるなら、ちょっとしたお店が開いている等(こうした訪問客の受け入れに必要なことを、)簡単なことからでも、うまく地域と取組んでいくことが大事。
・高速移動(新幹線など)の利便性とスロー移動(地域鉄道)は相反するものでなく、現地までは便利に行って、スローな移動をすることで、その土地でゆっくり過ごせるものであり、その土地まで早くいける高速移動と共存していけると思う。両方が共存できる地域活性ができるとよい。また、「ご当地ならでは」というものといかに連動しているかが大事。最近では携帯などで写真を撮り、フェイスブックやツイッターで発信する人が多く、かなりPR効果があるのではないか。写真を撮りたくなる景観整備をすることで観光列車になっていくことは大いにある。また、観光客にとって「食」は重要なので、この列車に乗らないと食べられないものも発展していくとよい。
・事例報告を聞いて、「NOと言わない」という姿勢は、「もてなしの心」であり1つのキーワードであると感じた。成功例をセグメント化していくことも重要であるが、自分のところの強みはなにかを考えていくことを研究する必要がある。また個々の事業者の努力に加え、全国91の地域鉄道をつなぐにはどう連携していけるかを考えることも大切。
○その他委員からのコメント
・地域鉄道の存在意義や公益性の評価、地域と二次交通、鉄道会社の連携がキーワード。公共交通政策は単独ではうまくいかない。地域の都市政策等とも連携が必要。例えばドイツの列車では、列車の中に自転車を乗せてそのまま旅行ができる。人以外に人と一緒に他のものを運ぶという余地もあるのではないか。
・「活性化」と言った時に、それはなにかという定義を議論していく必要がある。
○まとめ(座長)
今研究会で実施する必要があるのは、まずは「地域鉄道の意義の再評価」、そして「地域鉄道は地域活性化の核・顔となり、地域への波及への起爆剤となるのか」という点について、公益性・社会性を何とか表現していき、地域の皆さんが一緒にやっていく合意形成ができればと思う。また、「成功のパターン分析」をすることにより成功モデルのスタンダードをある程度目安として持つことにより、押しつけになってはいけないが、地域・関係者の認識の輪を広げていくということを考えていかなければならない。
成功モデルの分析をすると、スケールメリットを活かすことやモーダル全体を考えるということが必要になるが、観光で人を呼ぶこと、また地元の方でも定期外流動の客を取り込むためにはどうやってオンリーワン作りができるのか、アジアからの需要をどう取り組んでいくのか、それらを含めて考え、継続性のあるビジネスに展開していくやり方を見つけていくことではないかと考えている。
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