水管理・国土保全局

第1回NIPPON防災資産認定式の開催概要 <令和6年9月5日>

斉藤大臣[当時]の挨拶 <抜粋して掲載>

今回が第1回の認定となりますので、私からは、この「NIPPON防災資産」認定制度の創設に至る経緯や今後への期待について、少しお話しさせていただきたいと思います。

皆様ご存じのとおり、近年、気候変動の影響により、水災害のリスクが高まっており、今年の夏も、7月に東北地方を襲った大雨や今般の台風10号などにより、全国各地で大きな被害が発生しました。

激甚化・頻発化する水災害から命を守り、被害を最小化するためには、河川整備や防災情報の提供などのハード面・ソフト面での対策はもちろんのこと、住民一人一人が水災害リスクを「自分事」として考え、主体的な避難行動や防災行動をとることが重要となります。

このような問題意識から、令和5年4月に有識者検討会を国土交通省に設置し、水災害の「自分事化」のための検討を始めました。そして、過去の災害の教訓を地域社会や後生に伝えていくことの重要性が提言されました。

この提言に加え、今年の元日に能登半島地震が発生したことなども踏まえ、内閣府と連携し、水災害に限らず、あらゆる自然災害を対象として、「地域で発生した災害の状況をわかりやすく伝える施設」や「災害の教訓を伝承する語り部といった活動」などを「NIPPON防災資産」として認定することとなった次第です。

本日ここにお集まりの皆様は、それぞれ色々な思いや経験を抱えながら、災害伝承や地域防災に関する活動に従事されてきたものと思います。その熱心な活動とこれまでのご功績に対し、改めて、心から敬意を表します。

今回創設した認定制度の名称を、「遺産」ではなく「資産」としましたのは、それぞれの活動が過去のものではなく、現在、そして未来において、価値を発揮し続けるものであってほしいという願いからであります。

今後も、皆様の活動によって、この「資産」の価値をさらに高めていただき、皆様の地域、そして我が国における防災力の向上をけん引いただくことを期待しております。
挨拶を述べる斉藤大臣[当時]
挨拶を述べる斉藤大臣[当時]

認定証を授与する斉藤大臣[当時]
認定証を授与する斉藤大臣[当時]

認定者との記念撮影
認定者との記念撮影

認定者代表の挨拶 <抜粋して掲載>(和歌山県土砂災害啓発センター)

【和歌山県土砂災害啓発センター 稲田健二所長】
和歌山県土砂災害啓発センターは、13年前の9月4日に発生した紀伊半島大水害を契機に設置されました。今回、被災体験を伝える語り部活動や啓発研修などの取り組みにつきまして、高いご評価をいただきました。この認定をはじめとして、実体験に基づき、これからも継続的に伝えていくために、啓発を受けられる皆さんに、自分事として防災を考えてもらえるよう工夫しながら、これまで以上に積極的に取り組んでまいりたいと決意を新たにしております。

それでは語り部活動をされている隣におられる久保榮子さんよりご挨拶させていただきます。紀伊半島大水害で夫をなくされ、ご自身も、九死に一生を得た久保さんは自ら作った紙芝居を通じて、被災体験を伝え続けられています。

【語り部 久保榮子さん】
昨日、紀伊半島大水害13回忌を迎えました。那智勝浦町で29人という尊い命を亡くしました。

本当に早めの避難をしていれば、みんな助かった命だったんです。それが悔しくてなりませんでした。私は水害に遭うまでは、本当にどこにでもいる普通のおばさんでした。

この水害で夫を亡くしたつらさ、その悲しみと苦しみの中で書いた原稿が町の広報誌に掲載されたことをきっかけに、私の語り部活動がスタートしました。記録書を読んだりしましたが、なかなかそれだけでは伝わらないと思いまして、紙芝居を一枚一枚増やしていき、現在33枚になりました。

隣近所の人たちの災害体験も、地域の人たちは自分のことで精一杯で知らないわけです。当時の話をお聞きしましたが、私以外の人は誰も知らないのです。私一人のものでは、もったいないと思いました。それで今、現在11枚しか書けておりませんけど、画用紙に描いて、これを地域の人たちに見ていただいて、「早めに避難してね、大切な命を守るんだよ」と訴えていきたいのです。本日は更に決意を改めました。命の続く限り、頑張ってまいりたいと思います。
認定者代表の挨拶の様子
認定者代表の挨拶の様子

意見交換会であった主な発言(今後の活動方針など)

和歌山県土砂災害啓発センター
子どもたちは将来地域の担い手になっていただく存在ですので、子どもたちからご両親、そして地域の防災意識を向上していけたらと思っています。子ども相手に語り部の紙芝居をやっていただいたり、地元の学生と一緒にプログラミングと防災を合わせた防災学習用コンテンツの開発(ロールプレイングゲームで防災を学ぶなど)をしたりと、新しい防災学習の試みを進めていきます。

洞爺湖有珠火山マイスター
次の噴火が起きても1名も犠牲者を出さないために、地元の子どもたち全員に教え続けることを実践しております。例えば毎年小学校6年生全員に教え続けたら、何十年後にはすごい数の方が防災の知識を持つことになります。それが目標です。

嬬恋村・天明三年浅間山噴火災害語り継ぎ活動
「日本のポンペイ」という異名を具現化し、全国の皆さんに見ていただけるような、公開目的の施設整備に着手しています。今回の防災資産の認定をいただき、語り継ぐ活動それぞれの団体間にさらに深い連携、それからが図られていくと考えております。

阪神淡路大震災記念人と防災未来センター
毎年5冊の防災絵本を出版し、世界各国でも使っていただこうと各国語に翻訳する計画を進めています。国連加盟の200カ国のうち、3分の1にあたる60カ国で災害が多発します。ほとんどは途上国です。海外でも防災の知恵を使っていただきたいということで、絵本とか紙芝居を使って普及させていきたいと思っています。100年後に、500冊の防災本ができるこれを目標にしています。

四国防災八十八話マップ
マップは令和3年から毎年1県ずつ発行しています。4年後にバトンを落としてしまわないように、今後も一生懸命取り組んでいきたいと思っております。

熊本地震 記憶の廻廊
後世に伝えていくためには、子供たちに知っていただくことがとても大事だと思います。多くの教育旅行等の取り組みとコラボしながら、防災意識の向上に努める取り組みを行っていきたいと思っております。

3.11伝承ロード
映像の記録化に力を入れ、市民の方が知らなかったような映像で、活動経緯を残すような映像アーカイブを作っています。今年やっと11本までできました。これらを積み重ねて、広げていく・深めていくことをやっていきたいと思っております。東日本大震災は本当に多くの教訓があります。認定を契機に、一生懸命また励んでいきたいと思っております。

えちごせきかわ大したもん蛇まつり
祭りには中学生が出席します。事前に羽越水害の状況、あるいはこの祭りがなぜできたかも重ねて説明した上で、担ぎ始めます。災害時には地域の学生、そして村外の仲間も復興の応援をしてくれるようになりました。災害伝承は大変なんですけども、37年間ということで、引き続き進めていきたいと思います。

稲むらの火の館
南海トラフの巨大地震が近づいていると言われる中で、1人でも多くの皆さんに「津波時には早く避難をする」ことを意識づける活動ということで、精一杯頑張っているところです。本日、この防災資産に認定されましたので、さらにみんなで一緒に、この活動を続けていきたいと考えています。

広島市豪雨災害伝承館
被災者として考えた防災プラン、復興プランを広島市に提案するまで、4年かかりました。今年も能登で災害が発生しました。我々がここ8、9年間でやってきたことが皆さんに伝わったら、これから4年かけて考えなくても、今日からでも新しい復旧ができるのではないかと思います。

黒潮町の防災ツーリズム
東日本大震災の1年後に南海トラフの巨大地震想定が出されました。高知県黒潮町は日本一の34.4mの津波高であるとの報告があり、本当に深刻でした。当時町長が1人の犠牲者も出さない、避難放棄者も作らないというスローガンを立てて、今まで取り組んでまいりました。私どもは、99.9%海の恵みをいただいております。「恵みと災い」、人と自然の付き合い方を考える黒潮町の防災ツーリズムに取り組んでおります。

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