グループ1: 各地のダムの働き
平成25年9月 台風18号「日吉ダム」(所在地:京都府)
データ
概 要
渡月橋付近の浸水個数を半減(推定)
平成25年9月15日から16日にかけて近畿地方に接近し、その後、東海地方に上陸した台風18号の影響により、近畿地方に記録的な豪雨が発生。桂川上流にある日吉ダム(水資源機構)では、計画規模を超える水の流入に対し、下流の浸水状況と今後の雨を見極め、できる限り水をため込む操作を行いました(経過を参照)。
ダムがなかった場合に比べ、下流の保津橋地点で約1.5m、嵐山地点では約0.5m最高水位を低下させ、渡月橋付近の浸水戸数をほぼ半減(208戸→93戸)させたと推定されています。
また、仮に日吉ダムがなく、鴨川と合流する地点の右岸側(久我橋下流:下図)で堤防が決壊した場合(ここは堤防の天端まで水位が上昇していた)、約13,000戸の家屋浸水、約1.2兆円の被害が生じていたと推定されています。
日吉ダムの紹介 >
経 過
9/15 22:34: 雨が降りつづき、「洪水調節」を開始(①の時点)
台風18号接近にともない、9/15の昼ごろから日吉ダム上流で雨が降り続き、22:34分より
洪水調節を開始。洪水をダムにため込みはじめました。
(渡月橋)
9/16 早朝: 河川水位が上昇、渡月橋周辺は浸水(②の時点)
しかし、桂川の支川から流れてくる量が大きく、京都市内の川の水位が上昇(桂川の水位図を参照)。渡月橋周辺が浸水(右写真)。
日吉ダムへの流入量は6:44に最大(1690m3/s)となり、計画(1510m3/s)を超える量が日吉ダムに流入。
この時点で、規則で定められている最大の貯水位(洪水時最高水位)を超えてしまうことが予測されましたが、渡月橋付近の浸水が続いており、さらにその下流でも堤防から水が一部あふれている状況でした。
9/16 午前: 通常の規則を超えて水をため込む(③の時点)
ここで、ダムの容量を使いきらないように、流入量と放流量を同じにして、それまでよりも放流量を増やしてしまうと、下流の浸水被害が拡大する恐れがあったこと、雨域が通過しつつあり今後大雨が降る見込がなかったことから、日吉ダム管理所(水資源機構)は関係機関と調整し、通常の規則で決められた最高水位(
EL.201.0m)を超えた場合でも、ダムの設計上、可能なところまで水をため込むことに決めました。実際、通常の規則で決められた水位を超えた後も水をため込み、放流量を増やす時間を遅らせました。
9/16 午後: 流入量=放流量に(④の時点)
下流の水位が低下していくことを見極めながら、12:00に放流量を増やし始め、ダムへの流入量と放流量を近づけていきましたが、最大放流量は約500m3/sにとどめました。
結果的に、ダムへの流入量と放流量を同じにする操作を、通常の規則で定められる場合よりも約1時間30分遅らせ、下流の水位が上がるのをおさえました。その分、ダムの最高水位は
EL.201.87mに達しました。