vol.11... まち全体で、みんなで水災害に備える

流域治水の推進


ダムの有効活用と粘り強い河川堤防

流域治水を進める上でも、河川施設の役割は依然として重要です。最近は、これまでつくられてきた施設を、最新の技術や知見を活用して効果的に使えるようにする取組が進んでいます。少し詳しく紹介します。



ダムの再生と活用

ダムの洪水調節機能を強化

ダムには、洪水を調節するための治水ダムと、農業、工業、水道用水や水力発電に利用するための利水ダムがあります。複数の機能をもつダムは多目的ダムといって、国土交通省が所管する多目的ダムは約570基あります。電力や農業用水などの利水ダムは約900基ありますが、洪水調節(流域治水No.2参照)のための貯水容量は、約3割(約55億m3)にとどまっています。(令和2年12月時点)

そのため、利水ダムでも事前放流を実施して洪水のための容量を空けておき、下流の水災害を防ぐ取組を拡大しています。しかしもし、事前放流した後に水位が回復しないと、逆に渇水になってしまう可能性があります。事前放流を実施するために、河川管理者とダム管理者、利水関係者が連携し、協定を結んで洪水調節に利用可能な利水容量や、事前放流の基準づくりが進みました。

事前放流を行う際には、気象庁の降雨予測を用いてあらかじめダム周辺に降る雨の量を予測し、ダムへの流入量を計算して必要となる容量を決めることが必要です。そのため、新たな気象レーダーや、AI技術を活用し、予測精度の向上を目指しています。

既存のダムを最大限活用して有効な洪水調節を行うため、長時間先のダム流入量と、下流河川の水位状況等の予測精度の向上にも取り組んでいます。



放流施設の増設・改良
放流能力が小さい利水ダムでは、放流管などの施設を増設し、放流できる水量を増やすことで洪水調節のための容量を増やしています。
出典:異常豪雨の頻発化に備えたダムの洪水調節機能に関する検討会
「ダムの洪水調節機能に関する現状と課題」(平成30年9月)
ダム堤体のかさ上げ
既存のダムを活用する方法はまだあります。ダムをかさ上げをすることで、ダムに貯める水の量を増やします。例えば、ダムをかさ上げすると、貯水容量を増やすことができます。



堤防強化

大雨によって川の水位が上昇すると、堤防がこわれてしまうことがあるため、浸透対策や侵食対策を実施しています。

浸透:降雨や川の水位上昇によって、堤防の中に水が浸透し、水が堤防の中を流れて土砂が流れ出てしまったり、弱くなってこわれることがあります。

侵食:川を流れる水が堤防に衝突し、少しずつ削られることでこわれることがあります。

越水:水が堤防をこえてあふれだすと、その水が堤防の裏側を削ることがあります。堤防がこわれる原因の多くは、この越水によるものです。



粘り強い堤防(堤防強化)の検討

越水によって堤防がこわれてしまうことを防ぐため、越水した場合でもこわれにくい、いわゆる粘り強い堤防について検討を進めます。こわれるまでの時間を延ばすことは、ひなんのための時間を確保することにもつながります。
出典:令和元年台風第19号の被災を踏まえた河川堤防に関する技術検討会
ダムの建設・再生や堤防強化について、 流域治水No.2流域治水No.10 で紹介しています。



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