1.スマートウェイの意義(スマートウェイの必要性)
 
 道路は、車の進化と相まって20世紀の「ハイ・モビリティ社会」を実現し、人々の豊かな暮らしと社会・経済の繁栄をもたらした。しかし、近年、交通需要の増加や国民ニーズの変化に道路はが質的・量的にも十分な対応ができない状況となっているできず。、このため、交通事故の多発、交通渋滞の激化、環境の悪化など道路交通問題が顕在化してきている生じている。今後早急にこれら問題を解決するとともに、21世紀に相応しい新しい価値を創出するため、先進の情報通信技術をダイナミックに統合して組み込んだ画期的な社会インフラの整備を推進していく必要がある。

[ITSの構成]
 このような時代の要請に応える社会インフラ、それがスマートウェイである。スマートウェイは、「スマートカー(知能化した自動車)」及び、スマートウェイとスマートカーの間の情報通信を円滑に行うための技術である「スマートゲートウェイ(知能通信)」と三位一体となって高度道路交通システム(ITS)の整備を推進する。

[スマートウェイの定義]
 スマートウェイは、車やドライバー、歩行者等多様な利用者との間で様々な情報のやりとりを可能とする道路であり、利用者の安全性や利便性の向上、円滑な交通の確保による環境保全等、多様なITSサービス展開の基盤さらには、快適で豊かな生活や社会の創出につながる基盤となるものである。
 具体的には、スマートウェイは、路車間の通信システム、センサー、光ファイバーネットワーク等の必要な施設が組み込まれている道路であり、かつこれら施設をITSの多様なサービスの提供に活用できるようにする仕組み(情報の共通利用や自由なやりとりを支えるための各種の決まり等(オープンプラットフォーム))を統合的に備えている道路である。
 スマートウェイはITSのバックボーンともなる光ファイバー等を装備するとともに、ITS実現のフィールドを提供するなど文字通りの根幹となるインフラであり、ITS推進の鍵を握るものと考えられる。スマートカーやスマートゲートウェイ技 術の進化を踏まえつつ、社会ニーズの高度化にも適応し、新しい社会システム実現の先導役となることが期待される。以下に、道路の機能に照らし合わせ、スマートウェイの意義を明示する。
 
(1) 人・モノ・情報の移動の効率化
<1>  道路は人々の交流の基盤として機能し、「みち」から「道路」へ、「道路」から「高速道路」へと進化しつつ、それぞれの時代において人・モノ・情報の移動の効率化を図り、社会・経済・生活の活動を支えてきた。昨今、情報化の急速な進展などにより社会状況が大きく変革してきたものの、道路スペックとしての進化は「高速道路」の域でとどまっており、様々な道路交通問題の顕在化を招いている。
<2>  具体的には、交通渋滞による社会損失は現在年間50億時間53億時間、12兆円に達しており、物流コストをはじめ、社会・経済の高コスト構造の大きな要因ともなっている。スマートウェイは先端的な情報通信技術を活用することにより、人・モノ・情報の移動の効率化を促進し、次代における持続的な社会・経済・生活の発展を支えるものである。
<3>  さらにスマートウェイは、次代の交通の中核として、効率的かつ便利で使いやすい交通システムを構築し、快適で活力ある都市活動を支えるものである。また、マルチモーダルを先導し、21世紀におけるわが国の健全な交通システムを構築し、国際競争力の確保等を図るものである。
 
(2) 快適な生活空間の実現
<1>  自動車交通の進展に伴い、交通事故による年間の死亡者数は1万人前後で推移し、負傷事故件数は約80万件と増加の一途をたどっている。その結果、確率的には全国民の半数が一生のうち、何らかの事故に遭遇する可能性があるといわれている。スマートウェイは、情報提供や運転支援等により交通事故を大幅に削減させ、道路利用者の安全性を向上させるものである。
<2>  21世紀の高齢化社会においては、高齢者や障害者といった交通弱者に対して自由に行動できる生活空間の提供を保証し、一般の道路利用者にとっても負担の少ない道路環境を提供することが必要である。スマートウェイは、走行支援や利用しやすい公共交通の支援等を通して高齢化社会におけるバリアフリー化を進展させるものである。
<3>  日本国内のCO2排出量のうち自動車部門における排出量は約19%を占め、ここ10年間で年平均4.3%ずつ増加している。また、沿道の人々の生活環境を保全し、同時に社会経済のためのモビリティが確保された社会を構築していくことが必要である。スマートウェイは道路交通の円滑化を通して、良好な環境を保全・形成させるものである。
<4>  高度情報通信社会の進展にもかかわらず、道路上においては情報通信が限定されており、21世紀を控え多様な情報の受発信を可能にするシームレスな情報通信環境を実現することが求められている。スマートウェイは、道路空間を高度な情報空間として実現するものである。
 
(3) 安全で安心な国土の形成
<1>  日本の国土は狭隘な地形に稠密な社会が形成され、生活や経済が営まれており、災害等に脆弱な性質を持っている。全国に張り巡らされた道路ネットワークは、こうした国土の特性を踏まえた国土管理や国土利用を可能としてきた。
<2>  21世紀に向け、国土全体の総合的かつ効率的な利用を促進していくためには、全国各地において様々な制約条件を克服し、それぞれの特性を活かした地域社会を実現していくことが求められている。スマートウェイは、地域の情報ネットワークの形成等により地域内外の交流を活発化させ、活力ある地域社会の構築を支えるものである。
<3>  また、スマートウェイをはじめとした情報インフラは、全国各地において情報格差を解消するとともに、全国各地間の距離に拘わらないコミュニケーションの実現により、国土構造の改編、新たな地域社会の形成を支えるものである。
<4>  さらにまた、これまで以上に安全で安心な国土の形成していくためには、先端技術を活用して、災害情報等の迅速な把握・伝達や、避難路・迂回路等の情報提供を支える災害に強い社会インフラを形成していくことが必要である。スマートウェイは、このような社会インフラとして国土管理の面で大きな威力を発揮するものである。
 
(4) 世界的な課題に対する国際貢献
<1>  安全で安心な社会の構築や環境問題の解消、地域社会における活動の高度化モビリティの高度化などは、我が国に限らず、世界的に対応が求められている喫緊の課題である。
<2>  日本はこれまで、諸外国の社会システムを積極的に取り入れ、活用することにより発展を遂げてきた。世界的課題に対応した新たなコンセプトの社会システムであるスマートウェイは、その実現を通じて、国際社会に対して大きく貢献することが期待されるものである。特に枢密な社会を形成する我が国における先行的な整備は、都市化の進む世界各地における豊かな社会構築に大きく貢献することになるであろう。
<3>  同時に我が国は、自動車、電気・電子、通信、機械、土木等スマートウェイの根幹となる技術分野において優れた技術や知見を有しており、スマートウェイを軸とした技術交流の面でも国際的にな貢献できるを可能とする。

INDEX | 前のページへ | 次のページへ