我が国における本格的な有料道路制度は、財政上の制約の下で遅れていた道路整備を促進することを目的として、国又は地方公共団体が道路を整備するにあたり財政投融資資金等の借入を行い、道路の利用者から料金を徴収してその返済に充てる制度として昭和27年に創設された。
昭和31年には、事業の効率的運営を図るとともに広く民間資金を活用するため日本道路公団が設立されるなど、道路整備特別措置法等による現在の制度の骨格が整えられた。以来、この制度は逐次拡充されながら、国・地方公共団体の少ない負担での幹線道路の早期整備に貢献し、道路特定財源制度と相まって、我が国の道路整備を着実に進展させてきた。
道路整備特別措置法に基づく有料道路には、高速自動車国道、都市高速道路、本州四国連絡道路及び一般有料道路の4種類がある。
高速自動車国道は、全国的な自動車交通網の枢要部分を構成し、政治・経済・文化上特に重要な地域を連絡するもので、全国的組織である日本道路公団により整備されている。
これに対し、都市高速道路は、首都、阪神、名古屋等の各都市圏における自動車交通の円滑化、都市機能の維持・増進を図ることを目的とし、首都高速道路公団、阪神高速道路公団及び各指定都市の地方道路公社により整備されている。
首都圏、阪神圏については、大規模な事業を短期間に整備する必要があることや、大都市圏の総合的整備という国家的観点からの必要性も踏まえ、それぞれ独立した公団が設立されている。
本州四国連絡道路は、本州と四国を結ぶ一般国道であり、既に児島・坂出ルートが供用され、神戸・鳴門ルート、尾道・今治ルートについても、平成11年春までに概成する予定である。これらは、国土の均衡ある発展に資することを目的とした、世界的規模の橋梁を含む大事業であり、地域開発効果も大きいことから、本州四国連絡橋公団が、関係地域の資金も活用しつつ整備を行っている。
以上の有料道路事業のうち、高速自動車国道については建設大臣の施行命令、首都・阪神の都市高速道路、本州四国連絡道路については建設大臣による基本計画の指示に基づき、各公団が整備するしくみとなっている。
一方、一般有料道路は、一般道路事業による道路整備を補完するものとして、日本道路公団、地方道路公社又は道路管理者が個別の路線ごとに申請し、建設大臣の許可を受けて整備するしくみとなっている。日本道路公団は主として国の利害に特に関係する幹線道路を、地方道路公社、道路管理者は地方の幹線道路をそれぞれ整備するという役割分担が図られている。
現在、高規格幹線道路等の自動車専用道路網を形成する路線から、離島架橋のように単独で機能する路線まで、多様な路線が一般有料道路として整備されてきている。
平成8年4月現在、高速自動車国道5,930q、都市高速道路552q、本州四国連絡道路108q、一般有料道路1,970q、合計8,560qの有料道路が供用されており、都道府県道以上の延長の5%を占めている。これらの路線を利用する交通量は一日約870万台にのぼり、都道府県道以上における総走行台キロの17%を分担している。
国土の均衡ある発展や地域の活性化等を実現する上で、我が国の道路整備の現状は不十分であり、全国的な高規格幹線道路網の整備や大都市圏等に集中する交通需要への対応等、有料道路制度を活用した幹線道路網の拡充は緊急の課題となっている。
さらに有料道路は、高速性、快適性など一般の道路に比べて高度なサービスを提供するほか、特に大規模な事業の場合には大きな国土・地域開発効果をもたらすなど、国民生活や経済活動を支える上での重要な役割を担っている。
我が国は、急速な経済成長を遂げた戦後半世紀から、より高次な成熟経済社会への転換期を迎えている。
今日、経済の低成長、物価の安定化の中で、公共料金に対する国民の関心が高まっているほか、有料道路事業についても、一層の効率化と透明性の向上、利用者ニーズへの適切な対応が強く求められている。
一方で、現在建設中あるいは計画中の都市高速道路、本州四国連絡道路及び一般有料道路については、上にみたようにいずれも重要な役割を果たすものであるが、地形上の制約や環境への配慮等から、従来にも増して厳しい条件の下での建設となり、多額の事業費を必要とする状況にある。
有料道路制度を活用するに当たっては、以上のような変化を踏まえ、都市高速道路、本州四国連絡道路及び一般有料道路のそれぞれが有している課題に適切に対応していく必要がある。その際、有料道路制度は建設に要する費用を一定期間内の料金収入で償還するための特別措置であるという現在の考え方を基本としつつ、より長期的かつ広範な視点から制度・運用のあり方について検討を行うことが必要である。
我が国の経済、文化等の面で重要な役割を果たしている大都市圏においては、人口・産業の著しい集積と周辺地域の急激な都市化により、都心部から周辺部まで渋滞が慢性化し、円滑な自動車交通が確保されているとはいえない状況にある。
大都市圏における都市機能を維持・増進するためには、都心部へ流入する交通の分散を図るとともに、集中している機能の適正な配置にも資するため、環状道路等の自動車専用道路網の整備が求められている。こうした環状道路等の整備は欧米の大都市においても特に重点的に進められてきているものである。
大都市圏における自動車専用道路については、大規模な投資が必要なことに加え、早期整備が求められるため、集中投資が可能な都市高速道路や一般有料道路による整備が進められてきた。
例えば首都高速道路の場合、昭和37年の最初の供用以来、約30年間に248Kmが供用されており、一日約115万台が利用している。東京都区内でみれば、幹線道路を通行している自動車交通の28%、貨物輸送量の38%を分担しており、交通の大動脈となっている。
都市高速道路のネットワーク機能をさらに高めるため、現在、環状道路等の整備が進められている。これらの路線は、渋滞解消には大きな効果があるものの、既存路線の利用者からの転換が多いことから、新たな利用者による収入の大幅な増加は期待できない。一方で、沿道土地利用との整合を図る上でのトンネル等の特別な構造の採用、工事の複雑化や環境対策の拡充等によるコスト増、用地取得の長期化による利息負担の増大等により、その整備には多額の事業費を必要としている。このため、現行の制度・運用のままでは、供用時点で料金の大幅な改定が避けられない。
これらの路線が、一般道路の混雑緩和にも大きく寄与するほか、都市機能の維持・増進といった広範な社会経済的効果を長期にわたりもたらすことを踏まえれば、その整備に要する費用の適正な負担のあり方について、あらためて検討を行う必要がある。 →(3.適正な負担のあり方)
また、今後の新たな路線の整備についても、事業の進め方も含めて、検討する必要がある。
→((4)開かれた事業の実施) (3.適正な負担のあり方)
本州四国連絡道路は、3つのルートにより本州と四国を結ぶ新たな交通動脈として、海上交通に依存する従来の交通体系を画期的に改善し、交通の高速化・円滑化を図ることにより、近畿・中国・四国地方など西日本地域の発展を促し、均衡ある国土の発展に寄与するものである。
このほか、神戸・鳴門ルートについては関西経済圏と四国を直結する役割、また、児島・坂出ルートについては日本海側から太平洋側までの連絡を促進する役割、さらに尾道・今治ルートについては西瀬戸経済圏の地域開発、観光開発に資する役割も有しており、平成11年春にはこの3ルートが概成する予定である。
本州四国連絡道路については、近年の社会経済情勢の変化により、十分な利用交通量に至らず、採算の確保が厳しい状況にある。しかし、国土の均衡ある発展のために同道路の持つ意義は大きく、管理の一層の効率化を図るとともに、この資産を十分活用した地域開発を進めて利用を促進するなど、安定した償還のための方策を検討する必要がある。 →(3)管理段階における支援)
一般有料道路事業は、利用者の便益が著しい区間について、一般道路事業を補完しながら進められてきており、今日まで、高規格幹線道路、大規模バイパス、観光道路等、様々なニーズに対応した路線の早期整備に寄与している。
現在は事業の実施に当たって、一般有料道路の採算の確保を図り、併せて道路網全体の効率的な整備を推進するため、一般有料道路事業と一般道路事業を組み合わせる、いわゆる「合併施行方式」が活用されている。
この場合、高規格幹線道路の整備に取り組むなど事業も大規模化し、多額の事業費が必要となっていることから、一般道路事業に財政的制約がある中で早期整備を図るため、総事業費のうちで有料道路事業として分担できる部分を拡大する方策を検討する必要がある。
→(1)償還期間のあり方、(3)プール制の適用、(4)国・地方公共団体の役割)
有料道路事業については、その役割や整備効果等に対して一定の理解が得られていると考えられる。しかし、利用者あるいは広く国民から以下のような意見が寄せられていることを厳しく受けとめ、事業の実施にあたっては、その必要性、妥当性、効率性等について十分検討した上で、国民や利用者の理解を得ながら進めていくことが重要である。 →(2.効率的で開かれた事業の実施)
料金改定の際には、利用者から厳しい意見が寄せられることが多い。特に圏域別均一料金のプール制(均一料金プール制)を採用している都市高速道路では、新規路線の供用の際に料金が改定される場合が多いが、新規路線をすべての人が利用するわけではなく、また、慢性的な渋滞が料金の割高感につながっていることもあって、多額の事業費に対する負担のあり方、あるいは均一料金プール制の妥当性を問う意見がある。
また、計画や料金を決定する過程が透明性に欠けるとの指摘もなされている。
厳しい経済状況下において民間企業が経営合理化を進めている中、公団等有料道路の事業主体は、株主によるチェックを受けないこと、市場原理が働かないことなどから、事業の効率化に向けたインセンティブに乏しく、民間企業と比べて経営合理化の努力が不足しているのではないか、また、それがコスト高につながっているのではないかとの意見がある。
管理に関しても、料金収受、交通管理、保守点検、維持修繕等の契約に際し、競争性が不足しているとの指摘もある。
また、各事業主体の経営状況を透明にすることにより、効率化を促進する必要があるとの意見も多い。
近年は、地域の環境問題や渋滞問題等の解決のため、既存の道路網を効率的に活用する観点から、自動車利用者の交通行動の変更を促す交通需要マネジメント(TDM)の施策が求められている。
これに対応し、有料道路においても、料金設定の工夫など現行の制度を活用した各種施策を実施することが考えられる。さらに、整備に要する費用の償還という現在の有料制度の考え方にとどまらず、こうした交通需要マネジメントも含め、国民生活の質的向上に資する総合的政策の一環として、ロードプライシング等交通誘導を目的とした料金に関する施策について、今後、幅広い議論と検討が必要であろう。
→((3)総合的な渋滞対策の推進 (4)環境対策のための有料道路の活用)
現在建設中あるいは計画中の有料道路が、既に供用中の道路とともに国民生活、経済活動に果たす重要な役割を考えれば、今日の厳しい財政状況の下で、上にあげたような課題に対応した制度・運用の改善を図りつつ、有料道路制度を活用していくことの意義は、なお大きいものと考えられる。
このため、本審議会では、今後の都市高速道路、本州四国連絡道路及び一般有料道路に係る制度のあり方について、有料道路を取り巻く状況の変化に対応しつつ、国民や利用者の理解を得ながら、適正な負担のもとでの着実な整備と利用者ニーズへの対応を進めることを基本的な視点として検討を行った。
有料道路は、利用者による料金負担と、国・地方公共団体による出資金等の負担との組み合わせにより整備されることから、適正な負担の下、事業が効率的に実施されるとともに国民や利用者に対して開かれた形で、理解を得ながら進められることが重要である。
事業主体である公団等は、国民や利用者の期待に応え、路線の整備による効果を早期に発揮させるよう、事業期間の短縮に努めることが求められる。このことは、建設中利息を含む事業費全体の節減にもつながることとなる。
建設費について公団等は、設計・施工に関する技術開発を進めるとともに、廉価な資材の調達や民間の新技術の導入も含め、コスト節減に向けた取り組みを一層進めることが重要である。
また、管理業務についても契約の競争性・透明性を一層高める工夫を行うとともに、これまでに行われてきた料金所の入口発券の機械化や夜間料金徴収の無人化等、合理化に向けた努力を今後も積極的に行う必要がある。
公団等は、従来より建設費、管理費の節減に向けた努力を続けてきているが、既に述べたような有料道路事業の効率性に関する指摘に応え、事業の効率化を一層進めるとともに、その取組状況を明らかにして利用者の理解を得るよう努めることが重要である。
このため、建設費、管理費のコスト構造を体系的に分析した上で、具体的目標を明確にした節減計画を立て、その計画を組織的に実施することが必要である。
公団等がこうした計画を策定するに当たっては、民間の経営ノウハウを活用するためにも、民間経営者等を含めた委員会等で検討することが望ましい。また、策定した計画及びその達成状況を公表することも必要である。
公団等は、建設、管理の各段階に応じ、組織体制を最も効率的なものとなるよう弾力的に変更していく必要がある。
特に、本州四国連絡橋公団については、効率的な維持管理を基本とし、利用促進のための営業努力も重視して、現行の組織形態を見直す必要がある。
公団等は効率的な事業実施のため、組織体制の効率化を含め、自主性を発揮し、責任をもって経営努力を行うことが重要である。このために必要となる制度や運用の改善については、積極的に検討がなされることが望ましい。
国・地方公共団体が路線計画を策定する際には、事業予定者としての公団等は、建設から管理まで見通した事業費の節減のために、可能な限り早い段階から積極的に参画するとともに経営上の観点から意見を述べるなど、自主性を発揮する必要がある。国・地方公共団体においても、このような観点からの公団等の意見を踏まえて適切に対応することが望ましい。
有料道路事業においては、支払利息の節減が採算向上に及ぼす効果が大きいことに鑑み、公団等は、金利動向に配慮しつつ、より有利な民間資金があればそれを活用するなど、資金調達に一層の工夫を行う必要がある。
公団等は、利用者の多様なニーズに対応し、例えば地域のイベントにあわせた特別割引や季節別料金の設定など、地域の状況や利用実態等に即した料金設定を行い、有料道路の利用促進と増収のための努力を行うことが重要である。
地域独占により複数の事業者による直接的な競争が成り立たない公益事業分野においては、事業の効率化へ向けたインセンティブを働かせるため、複数の事業者を比較することにより非効率な分野の改善を求める「ヤードスティック競争」を導入している例がある。
公団等の有料道路事業者についても、それぞれの特性を踏まえた業績評価の指標を設定し、事業の効率性を客観的に計測した上で、これらを事業者間あるいは事業者内の部局間で相互に比較することにより効率化に向けた競争を促すなどの工夫が必要である。
こうした業績評価等については、広く多方面から客観的評価を受けられるよう一般に公表するとともに、そのフォローアップを行うことが重要である。
また、事業者によるコスト節減が経営努力として評価されるような仕組みが検討されることが望ましい。
有料道路が供用されるまでには、路線計画の決定、有料道路事業の活用による建設の進め方の決定、料金の決定の3つの主な意思決定が必要となる。
路線計画の決定については、多くの場合、都市計画決定や環境アセスメントが行われる際に、計画の必要性、妥当性等に関する議論がなされている。
しかし、その後は、路線計画に従って建設が進められ、供用直前に、建設に要した費用に基づき料金が決定される仕組みとなっている。料金の決定に際しては、平成元年度から首都・阪神の都市高速道路において公聴会が実施されているが、国民や利用者の理解を得るためには、計画から料金の決定に至る各意思決定段階での透明性を一層高めることが重要である。
特に、建設の進め方に関する意思決定を行う際には、有料道路事業の範囲と内容、事業の効果、利用者負担と公的負担の考え方、料金の見通しが明らかにされ、十分な議論が行われて、国民や利用者の視点に立つ意見が適切に反映される必要がある。
なかでも都市高速道路は、均一料金プール制であることから、事業の実施による混雑緩和など既存区間への効果と料金への影響について、わかりやすい形で国民や利用者に明らかにされることが重要である。
一方、事業者である公団等による経営上の観点からの意見も、各段階において適切に反映される必要がある。
公団等は、有料道路の建設に着手した後も、例えば都市高速道路については緊急課題である渋滞対策への様々な取り組みとそれらの完成目標など、実施中の事業の内容や効果、進捗状況等について一層の情報提供に努め、事業に関する理解を得る必要がある。
また、予算、決算(貸借対照表・損益計算書)等の経営情報の公開はこれまでにも行われているが、公団等は、今後さらに、建設費・管理費、契約に関する情報等も含め、よりわかりやすい形での公開に努め、国民や利用者の理解と信頼を得ることが重要である。
この際、例えばパーキングエリア等を広報の場として活用する、あるいはインターネットを利用するなど情報へのアクセスを容易にすることも考えられる。
こうしたことにより、公開された情報等に基づく各事業主体間の比較が可能となり、国民や利用者からの意見や指摘を踏まえた、経営効率化への一層の努力が期待される。
既にみたように、整備に要する費用が多額となっている都市高速道路においては、現行の制度・運用のままでは、現在の利用者に大きな負担を求めなければ、採算の確保が困難となることが予想される。また、本州四国連絡道路については、十分な利用交通量に至らず、採算の確保が厳しい状況にある。一般有料道路についても、事業が大規模化する中で早期整備が求められている。こうした観点から、これら有料道路の整備に要する費用の適正な負担のあり方について検討を行った。
料金、建設の進め方、国や地方公共団体による出資金等の負担は、相互に関連しており、独立的に定まるものではない。また、償還制度の内容やプール制の適用によって、この相互関係も異なったものとなる。適正な負担のあり方について検討する際には、これらを総合的に考える必要がある。
この場合、有料道路事業を、限られた期間、区間における完結した事業ととらえるのではなく、より長期的、あるいは広域的な幹線道路網整備という視点から考えることが重要である。
道路は世代をこえて長期間にわたり利用されるものであるため、世代間負担の公平性確保を図る観点からの検討が必要である。また、直接の利用者の便益だけではなく、幅広い社会経済効果も適切に評価し、一般道路も含めた道路網全体の効率的な整備という視点から、国や地方公共団体の負担のあり方について考える必要がある。
また、具体の路線における建設の進め方については、これらの検討を踏まえ、2.(4)で述べたように、有料道路事業の範囲と内容、事業の効果、料金の見通しや公的負担の考え方等について明らかにした上で決定される必要がある。
なお、建設費を償還した後の維持管理に係る費用負担のあり方についても、検討する必要がある。
道路整備特別措置法では、料金の額の基準として、まず、新設、改築等に要する費用を償うものであること、さらに、都市高速道路については公正妥当なものであること、本州四国連絡道路及び一般有料道路については、当該道路の通行又は利用により通常受ける利益(便益)の限度をこえないものであることと定められている。
また、物価上昇等の経済事情の変動や供用後の改良費・防災対策費の増加等の理由により、当該道路の採算が悪化し、現行料金の額では償還が困難となった場合には、料金改定、料金徴収期間の変更等の必要な措置をとることとされている。
有料道路整備に要する費用が多額となる中で、現行の償還期間では、その期間の利用者に対して過度の負担を求めることになるとの意見がある。
平成7年11月の高速自動車国道についての中間答申では、施設の建設に要する費用の償還については、当該施設を利用する各世代が等しく負担すべきであるという、世代間負担の公平性確保の観点から検討する必要があるとした。さらに、償還期間後は無料化し、国が税により維持・更新を行うというこれまでの考え方から、維持・更新に係る費用については償還期間後も引き続き料金に求めていく考え方への転換を勘案すれば、施設に係る償還期間については、高速自動車国道全体の平均的耐用年数を基本とすることが望ましいとした。
都市高速道路、本州四国連絡道路及び高規格幹線道路等の自動車専用道路網を形成する一般有料道路については、多額の事業費を要することなどから、適正な料金水準の下で採算を確保しつつ整備を推進し、あわせて世代間の負担の公平性確保にも資するため、適切な範囲内で償還期間を延長することを検討する必要がある。その際、高速自動車国道についての考え方を踏まえれば、償還期間については、各道路を構成する諸施設全体の平均的耐用年数を基本とすることが望ましいと考えられる。なお、具体的な償還期間については、有償資金を活用していることも勘案して総合的に検討を進める必要がある。
特に、高規格幹線道路等の自動車専用道路網を形成する一般有料道路については、他の一般有料道路と同様、路線ごとの採算の確保が原則であることから、将来に対する危険負担の分散という性格を有する損失補てん引当金の引当率引き上げと併せて、償還期間の延長を考える必要がある。
こうした一般有料道路については、償還期間を延長することにより、一般道路事業との合併施行を行う場合に有料道路として投資できる事業費が増加することから、一般道路事業の財政的制約の中で、事業全体の整備進捗を図ることが可能となる。
なお、上記以外の一般有料道路については、離島架橋のように単独で機能するものもあり、事業の規模や路線の性格に応じて償還期間を設定することが望ましい。
本審議会においては、用地は建設費の償還後も現存し、そのまま道路施設として機能しうる状態が維持されているものであることから、その費用について利用者に料金負担を求めることが適当であるかが議論され、事業費が多額となる中で、適正な料金水準の下で採算を確保しつつ有料道路制度を活用するためには、用地費についての負担軽減策を検討する必要があるとしてきた。
都市高速道路及び本州四国連絡道路については、用地の持つ資産としての性格と料金負担に対する軽減策の必要性を勘案すれば、平成7年11月の高速自動車国道についての中間答申で示したと同様に、用地費元本については償還対象経費から除外する方策が認容されうる。
その場合、除外する用地費の処理についても、同中間答申と同様に、本来の道路管理者である国・地方公共団体が、今後の用地取得と併せ公的資金を充当する又は建設費の償還後負債を引き取る方策、建設費の償還後に料金により負債を返済する方策及び将来にわたり負債として持ち続ける方策が考えられるが、これらの方策については、今後の財政事情の見通しや有償資金を活用していること、建設費の償還後の維持管理のあり方も踏まえ、総合的に検討する必要がある。
なお、この考え方は一般有料道路についても同様であるが、多くの場合、合併施行として用地費相当額以上の公的資金が充当されており、用地費は実質的に償還対象経費から除外されていると考えることができる。
1)、2)を選択するに当たっては、交通量減少や金利上昇等償還条件と実態が乖離した場合、採算の確保方策が必要となるため、例えば料金への影響を及ぼさないような方策や、物価上昇による維持・更新費用の見直しと併せ、必要に応じて、交通量・金利変動等に対応した料金の見直しを行う方策等、引き続き、将来の採算の安定性を確保する具体的方策を検討しておく必要がある。また、上に述べた償還制度の見直しの検討と併せ、具体的料金算定方法や経理処理方法についても明確にする必要がある。
有料道路として建設された複数の路線の収支を一つの償還対象とする、いわゆる料金プール制については、次のような理由から採用されている。
都市高速道路については、既にみたように、新規路線の供用時の料金改定に際し、すべての人が新規路線を利用するわけではない等、均一料金プール制に対する様々な意見がある。
現在整備中の環状道路を中心とする路線は、いずれも、既存の路線と一体の道路網を形成し、既存路線の利用者は、新たな路線を直接利用しなくとも混雑緩和等の便益を受けられるものであり、明らかな密接関連性が認められる。逆に個別採算とすると負担の公平性から問題が生じるほか、償還の安定性の観点からも、新たな路線も含めたネットワーク全体をプールによる合併採算とすることは合理的であると考えられる。
なお、圏域別の均一料金制に関しては、後述するようにノンストップ自動料金収受システム(ETC)の開発状況を踏まえ、新たな料金体系について検討を進める必要がある。
本州四国連絡道路についても、各路線が、本州四国間の交通の円滑化を図り、近畿・中国・四国地域の発展に資するという共通の目的と機能を持ち、利用者にほぼ同質のサービスを提供する一体的な施設であり、相互に代替的な関係にあるという密接関連性を有し、負担の公平性及び償還の安定性も考えれば、現在の3ルートプール制に基づく料金設定を行うことが適当である。
一般有料道路については、現に料金を徴収している2以上の路線について密接関連性が認められる場合に、関連道路プール制を採用することができる。また、既にプールされている路線についても、その機能を増進するような改築・延伸が認められる。ただし、その改築・延伸の範囲については、利用者の適正な受益と負担という観点から、地域や利用者の理解を得つつ事業を進めることが重要である。
有料道路の整備に要する費用については、利用者の料金収入で償うことを原則としつつ、国・地方公共団体は、これまでも各有料道路事業主体において計画的な事業執行や安定した償還が可能となるよう、出資金や貸付金あるいは合併施行における一般道路事業の導入等の形で建設費の一部を負担してきた。
有料道路の整備により、国民生活や都市機能の向上、さらには地域の開発など広く外部経済効果が生じることから、国・地方公共団体には、相応の資金を出資金等の形で有料道路事業に投入することにより、適正な料金水準の下で国土・地域整備上必要な事業の採算を確保するという役割がある。
また、有料道路事業と一般道路事業とを適切に組み合わせた整備を行い、道路網全体として最も効果的に交通混雑緩和や安全性の向上等を図るという役割がある。
近年は、これらに加え、災害発生時の緊急輸送路確保のための構造物の強化や沿道土地利用との整合のための特別な構造の採用等の行政的なニーズと、利用者による負担との調和を図る役割も期待される。
既にみたように、有料道路の建設に要する費用が増大し、建設期間も長期化する中で、採算の確保が一層重要な課題となっており、現行の制度・運用の下で利用者負担を中心として実施可能な事業には限界が生じている。
このような状況の下で、国土・地域の経営主体としての、また一般道路も含めた道路網の管理者としての国・地方公共団体の担う役割は従来にも増して重要なものとなっている。
国・地方公共団体は、有料道路の整備に当たって、その道路が国土・地域や道路網に与える効果、建設に要する費用と利用者の受益の程度等を総合的に勘案して、以下のような施策を実施することが望まれる。
国・地方公共団体は、有料道路事業に対する適正な水準の出資等を行い、資金コスト、すなわち事業費に係る利息負担の割合を低く抑えることによって、国民生活や都市機能の向上等に必要な事業の採算を確保することができる。
現在、本州四国連絡道路事業では資金コストを一定の水準に引き下げるような出資が行われ、また日本道路公団の一般有料道路では一定利率以上の有利子借入金に係る利息負担に対し利子補給が行われることによって、建設・償還期間全体にわたる資金コストは一定以下に抑えられている。
一方で、首都・阪神の都市高速道路事業においては、建設期間中は年度ごとの建設費に応じた出資がなされるが、全体として有利子資金の割合が大きく、また、事業資金の資金コストを一定水準以下に抑える措置も講じられていない。償還対象額に占める利息負担の割合が高く、さらに金利変動リスクを見込むことが料金水準に大きな影響を与えることを考えれば、国・地方公共団体は、適正な水準の出資と併せて、建設・償還期間全体にわたって資金コストを一定の水準以下に抑えるための措置を講ずることが望ましい。
また、一般有料道路事業についても、資金コストをより低い水準に抑える措置を講ずれば、収入のうち建設投資の償還に充当できる部分が増大し、合併施行の中で有料道路事業として分担できる事業費を拡大して、整備の促進を図ることができる。
さらに本州四国連絡道路については、安定した償還を確保するという観点から、資金コストを適正な水準に抑える必要がある。
一般有料道路事業については、採算の確保を図り、あわせて道路網全体の効率的な整備を推進するため、合併施行方式が活用されている。
都市高速道路の整備は、これまで有料道路事業のみによって進められてきたが、多額の事業費を要するため、都市高速道路として早期整備が必要とされながら採算の確保が困難な路線については、今後は、本来道路管理者による一般道路事業と連携して整備することが考えられる。
この場合、一般有料道路事業とは異なり、都市高速道路事業では、プール制が採用されていることから、一般道路事業との連携を行う範囲について、考え方を整理する必要がある。
連携の手法としては、例えば、既述のように用地費について負担軽減策の検討が必要とされていることや、用地取得が事業期間長期化の要因となり建設中の利息への影響が大きいことを総合的に勘案すれば、まず用地について本来道路管理者が取得することが考えられる。また、都市高速道路の導入空間となる一般道路の整備に要する費用の負担についても、見直す必要がある。
道路網全体の整備のための役割分担という観点からは、周辺地域に与える効果が明確なランプ等の整備については、接続する道路との事業区分を見直す等工夫を凝らした整備を行うことが考えられる。
管理段階の有料道路が、その整備効果を十分に発揮し続けるためには、安定した経営基盤の下での良好な維持管理が不可欠である。
景気の後退や地域開発の遅れ等により計画通りの利用交通量に至らない有料道路については、損失補てん引当金を活用することが考えられるが、それのみでは十分でない場合、事業主体への出資者である国・地方公共団体が、必要に応じて出資や低利融資などの支援を行うことが考えられる。
特に、3ルートの概成を迎える本州四国連絡道路については、今後の採算の厳しさに鑑み、公団は、組織形態の見直し、維持管理の一層の合理化と効率化による管理費の節減や、積極的な顧客開拓による利用促進等の経営努力に全力をあげて取り組むことが重要である。公団のこうした努力を前提として、国・地方公共団体は、公団の経営基盤強化のための協力のあり方について検討するとともに、出資の増大等適切な対応を行う必要がある。
都市高速道路及び高規格幹線道路等の自動車専用道路網を形成する一般有料道路については、安全な高速走行を確保するという観点から、高水準の路面補修やパトロール等維持管理業務の的確な実施が求められる。さらに騒音対策等の環境対策を実施するほか、道路交通情報通信システム(VICS)やノンストップ自動料金収受システム(ETC)の導入等、利用者ニーズに対応したサービスの拡充を行うことも必要である。
これらの高度な管理は一般道路に比べ多額の費用を要し、それは利用者の料金によって賄われている。また、都市高速道路については、高度なサービスを有料で提供することが、一般道路との適正な交通分担にも寄与していると考えられる。
高速走行の確保や安全性・快適性の維持・向上のための管理は、高度なサービスが求められる限り継続して対応しなければならない課題である。また、供用延長の増大や、施設の老朽化、利用者ニーズに対応したサービスの拡充等に伴って、維持管理費は更に増大せざるを得ない状況にある。
今後の維持管理費の増加、高度なサービスの受益と負担の公平を勘案すれば、建設のための借入金を償還した後は、維持管理のための財源として料金を徴収することが考えられる。
この場合の料金は、維持管理を賄うためのものであり、建設費の償還期間中の料金に比べ大幅に低減することとなる。
しかし、このような方式は、建設費の償還後の維持管理は税により賄うという考え方からの転換となるものであり、今後、幅広い議論を通じて、国民のコンセンサスを得るよう努める必要がある。
なお、本州四国連絡道路については、現行法において、供用後の維持管理に特に多額の費用を要する等と認められる場合は、償還期間後も料金により維持管理を行い得ることが定められている。
また、一般有料道路のうち高規格幹線道路等の自動車専用道路網を形成する路線以外は、特に維持管理に多額の費用を要する場合等を除き、建設費の償還後は従来どおりの扱いとすることが妥当と考えられる。
現在、都市高速道路、本州四国連絡道路及び一般有料道路においては、それぞれ利用形態に応じた多様な料金体系が採用されているが、負担の公平性を確保しつつ、利用者のニーズに一層対応できる料金体系とする必要がある。
都市高速道路については、以下の理由から均一料金制が採用されている。
しかしながら、道路の利用者が利用の程度に応じて建設費・管理費等を負担するという公平負担の観点からは、ネットワークの拡大に伴い、現行の均一料金圏の再編、さらには対距離料金制の導入が望ましいという考え方がある。また、負担の公平という観点から、現在の2車種区分を見直すことについて、かねてより検討すべき課題としているところである。
これらについては、新たな料金徴収技術として実用化に向けた研究開発が進められているノンストップ自動料金収受システム(ETC)の導入により対応が可能となるものである。
したがって同システムの開発状況を踏まえ、ETC対応車と非対応車とが混在する状況での料金徴収方法や各利用者間の負担の公平を考えた料金設定など今後解決するべき課題について、具体的な検討を進めることが必要である。
なお、均一料金制の下では、例えば、現在整備中の首都高速道路大宮線のように、既存のネットワークの料金圏に含めるとすると、同一の料金圏内における利用距離に著しい違いが生じる路線については、独立した料金圏を設定することが適当と考えられる。
本州四国連絡道路の料金については、本審議会の昭和53年11月の答申で、全路線画一対距離料金制を採用すること及び建設費・便益を考慮し陸上部・海峡部ごとに異なる料率を適用することが適当と考えられ、海峡部においても特に多額の建設費を要し、かつ便益が著しく高い区間については、割増の料率を適用することが妥当と考えられるとした。このような考え方をとる際の根拠になった、利用者の負担の公平感が得られやすいこと、料金プール制になじみやすいこと等が現時点でも妥当であることから、引き続きこの考え方を維持することが適当であると考えられる。
車種区分については、本州四国連絡道路が高速自動車国道と接続し、一体的に利用できるようになることから、現行の4車種区分から、高速自動車国道と同様の5車種区分とすることが妥当と考えられる。その場合の車種間料金比率については、高速自動車国道と一体的に利用される場合の整合性を勘案するとともに、海峡部においては、長大橋を主体とする本州四国連絡道路の特性を考慮して、増分費用及び受益の相違等を反映した比率を基本に決定することが適当と考えられる。
高規格幹線道路網を構成する一般有料道路の料金については、個別の償還主義及び便益主義によることが基本であるが、高速自動車国道と同様の高速交通サービスを提供するものであることから、高速自動車国道との整合性を持たせることが望ましい。
例えば、こうした一般有料道路等については、路線の特性に応じて、高速自動車国道と同様に、料金を定額部分(いわゆるターミナルチャージ)と利用距離に応じて課す部分から成るものとして設定することが考えられる。
割引制度については、それぞれの道路の料金体系を基本とし、利用者間の公平性に留意した上で、その目的の合理性と割引による効果等を総合的に勘案して導入されるべきである。
各事業主体は、利用者のニーズや利用実態、地域の事情等にきめ細かく配慮したマーケットリサーチを行い、積極的な顧客開拓等一層の営業努力を行うことが重要である。その際、周遊券割引や季節別料金等、地域特性を活かし利用層に応じた利用促進と増収に資する割引を積極的に企画することが望まれる。
例えば、一般的に有料道路の供用直後は、利用者の定着と利用層拡大の必要性が特に高いことから、割引券を供用前に発売する前売割引の導入等、利用促進のための新たな措置を行うことが考えられる。
本州四国連絡道路については、地域や路線の特性を活かした新たな割引制度の導入について、関係地方公共団体と連携しつつ具体的な検討を進めることが望ましい。
なお、利用者の定着と利用層の拡大を図ることを目的に、本州四国連絡道路の瀬戸中央自動車道において暫定措置として導入されている往復割引については、本州四国連絡橋公団において、その効果について十分な調査分析を行うとともに、同路線の利用実態等を把握した上で、採算に与える影響や他の割引制度とのバランス等も総合的に勘案しつつ、そのあり方について検討することが必要である。
こうした事業主体の創意工夫に基づく取り組みを支援するため、一定の範囲内における割引については、規制緩和の観点から、許可又は認可ではなく、届出とするなど制度・運用の改善が必要と考えられる。
渋滞対策が急務となっている都市高速道路等においては、抜本的対策としてネットワーク整備及びボトルネック部分の改築を進めることと併せて、以下のような対策を総合的に推進する必要がある。
都市内や渋滞が頻繁に発生している路線においては、渋滞・所要時間・工事等の各種情報提供の充実により、交通流を適切に分散させ、道路交通の安全性や円滑性の向上を図る必要がある。
路上工事の実施に当たっては、工事渋滞を極力発生させないよう、交通実態に照らし、曜日、時間帯を厳しく制限する等、集約化・短期化のためのきめ細かい配慮が求められる。
また、有料道路における料金所渋滞の解消等を目的とするノンストップ自動料金収受システム(ETC)の技術開発が実用化段階に達していることから、試験的導入を経て早期本格導入を図る必要がある。
新たに、料金を利用した交通誘導によりピーク時の都市高速の渋滞を緩和する方策として、渋滞時間帯には割増料金とし、一方で閑散時間帯には割引料金とする等の時間帯別料金制を導入することが考えられる。
これについては、
等の点を踏まえ、総合的な渋滞対策の一環として、施策の妥当性・効果や実施上の課題等についての広範な議論を経て、その試行的実施も含めて検討がなされることが望ましい。
なお、 ETCが導入されれば、きめ細かい割引・割増や、路線・区間ごとの特性を踏まえた料金設定なども可能となるため、交通需要マネジメント(TDM)を行う場合の有力な手法として、その普及方策も含め幅広く検討を進める必要がある。
道路整備における環境対策については、適切な環境対策を施したバイパス等を整備して居住地域内の既設道路から通過交通を分離することにより、交通特性と沿道土地利用との調和を図ることを基本方針としている。
しかし、バイパス等として整備された有料道路の中には、既設道路からの交通転換が十分には図られず、沿道環境の改善が進んでいないものがある。このような場合には、有料道路を活用して、既設道路の沿道環境の改善を図る施策が求められる。
本審議会においては、昭和58年6月の答申で、環境対策のため通行料金の割引等により大型トラック等の転換を図ることについて、
等を基本的な課題として指摘した。
このような課題を踏まえた上で、地方公共団体等が、現状における沿道環境改善の重要性、緊急性に鑑み、割引等の通行料金に係る施策を既設道路の環境対策・交通対策と併せて、総合的な環境対策として実施しようとする場合には、試行的な実施も含め、積極的に検討されることが望ましい。
その際、料金に係る施策により減収が生じる場合には、他の利用者の負担とせず、適切に補てんする措置が不可欠であり、これが円滑に行われるよう必要な検討がなされるべきである。
有料道路の建設、管理に当たっては、以下のような利用者へのサービス向上の対応が求められる。
現在、政府をあげて高度情報通信社会実現に向け、基盤整備と技術開発が推進されており、次世代の総合的な高度道路交通システム(ITS)の研究開発も世界各国とともに積極的に進められている。
その第一歩として、既に東京・大阪地区と東名高速道路で一部実用化がなされている道路交通情報通信システム(VICS)を、利用者サービスの向上、交通渋滞の緩和、交通事故の削減の観点から、全国の高規格幹線道路、都市高速道路等に展開することが望ましい。
料金体系が異なることにより、繰り返し料金所で停止を余儀なくされることを極力避けるため、料金の一体的な徴収等をさらに進める必要がある。また、ETCをこのための方策として活用することが考えられる。
ハイウェイカード、クレジットカードの利用可能範囲の拡大等は利用者のニーズも大きく、さらに積極的に取り組むべき課題であると考えられる。
サービスエリアやパーキングエリアでの各種サービスの提供について、一層の競争性を導入して、利用者のニーズに対応したより多様で充実したものとなるよう工夫を行うことが必要である。
なお、公団等は、具体的にどのようなサービス向上策を実施するかについては、その費用が利用者の料金により賄われるものであることを念頭において、費用対効果の分析を十分行う必要がある。
一般有料道路事業は、個々に事業主体が申請し建設大臣の許可を受けて実施されており、高速自動車国道等の独自のネットワークを有する他の有料道路事業に比べ、多様なニーズに弾力的に対応できる順応性を有している。
例えば、高速自動車国道の追加インターチェンジをアクセス道路とともに一般有料道路として整備するなど、地域が自主性を発揮し、一般有料道路の特性を活かした多様な活用方策について検討されることが望ましい。