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1.新道路五箇年計画策定の背景
(3)道路整備の現状と課題


1. 道路整備の着実な実施
11次にわたる五箇年計画によって道路は着実に整備され、我が国の経済成長と国民生活の向上に寄与してきた。


図 高規格幹線道路の車線数別道路網図



図 高速自動車道等の整備の推移
<資料>建設省

2. 予想を上回る車社会の進展
道路整備は着実に進んでいるが、予想を上回る車社会の進展には十分対応できていない。

〜改良済み延長:52,600km(S34) → 256,000km(H7):4.9倍
〜自動車保有台数:1,854千台(S34) → 66,950千台(H7):36.1倍






図 大型車のすれ違い可能な道路延長と自動車台数の変化

注)改良済延長は国道、県道、市町村道を対象とする。伸びは昭和34年を1.0とした伸び。
<資料>建設省

3. 求められる社会空間としての道路
日本の都市における社会空間(社会の共有空間)である道路の面積の割合は、欧米の都市に比べて大変低い。






図 都市の道路面積割合の国際比較
参考)多摩ニュータウン19.5%、港北ニュータウン22.0%
<資料>建設省

4. 輸送コストの縮減には、移動の効率化が大きく寄与
広域幹線道路網の整備や渋滞の解消などによる移動の効率化がドライバ−の労働時間短縮、物流コストの縮減等に大きく寄与する。

〜物流コストにおける輸送業の比率:35%(1975年)→64%(1996年)

図 物流コスト構成比の推移

図 道路貨物輸送業のコスト構造

<資料>総務庁「平成2年産業連関表」

注1) 輸送費には、外部へ委託した場合の支払運賃やトラック賃借料、社内における減価償却費、人件費、経費等が含まれる。

2)

保管費には、営業用倉庫の入出庫料、保管料、自社倉庫の委託に要する入出庫料・保管料等が含まれる。

3)

その他には、包装費や荷役費等が含まれる。
<資料>(社)日本ロジスティクスシステム協会「業種別物流コスト実態調査報告書」1996年
5. 高速交通網の体系的な整備の遅れ
高速道路の整備水準、空港・港湾と高速道路網のアクセス状況は、欧米と比べて依然低い水準にある。

表 高速道路の整備水準の国際比較

       アメリカ ドイツ イギリス フランス イタリア 日 本
延長(km) 73,271 11,143 3,141 9,000 6,301 7,265
延長/人口(km/万人) 2.83 1.37 0.56 1.56 1.11 0.58
延長/自動車保有台数(km/万台) 3.78 2.64 1.38 3.01 2.05 1.12
延長/面積(km/万ku) 75 312 137 163 209 192
延長/√人口・面積 14.6 20.7 8.7 15.9 15.2 10.6
注) アメリカ、ドイツ、フランス1994年、イギリス1993年、イタリア1991年、日本1998年3月予定(人数、台数は1994年)。
上記の他、イギリスには準高速道路が3489km、フランスには準高速道路が1500kmがある。




表 空港・港湾と高速道路網とのアクセス状況

        アメリカ 欧州(独、英、仏、伊) 日 本
国 際 空 港 98% (94/96) 72% (79/110) 57% (12/26)
国 際 港 湾 93% (52/56) 93% (26/28) 33% (12/36)

注1)

高規格幹線道路等のインターチェンジなどから10分以内に到着可能な施設数/対象施設数。

2)

日本/平成8年度末、アメリカ/空港1995年、港湾1993年、ヨーロッパ/空港1995年、港湾1992年。

3)

対象空港は国際定期便が就航している空港。
対象港湾はヨーロッパについては総貨物取扱量年間1000万トン以上、アメリカ、日本については総貨物取扱量が500万トン以上の港湾。
6. 厳しい交通渋滞は大きな問題
交通渋滞による時間損失は年間で国民一人当たり約42時間、金額に換算すると全体で12兆円におよぶ。

〜平均旅行速度:東京23区:19km/h、一般国道:36km/h

表 渋滞の現状

混雑している道路(都道府県道以上の幹線道路) 全国で31,000km(全体の18%)
一般国道における平均旅行速度
(東京23区における平均旅行速度)
時速36km (平成6年度道路交通センサス)
時速19km (平成6年度道路交通センサス)
交通渋滞による時間損失 国民一人あたり年間約42時間
全体で金額換算約12兆円 (平成6年度道路交通センサスより推計)
主要渋滞ポイント 全国で約3,200箇所 (平成9年調査)
注)主要渋滞ポイントとは、

一般道路(DID内):

渋滞長が1,000m以上または通過時間が10分以上。

一般道路(DID外):

渋滞長が500m以上または通過時間が5分以上。

高速自動車国道 :

渋滞回数30回/年以上または平均渋滞長2km以上。
首都高速道路・阪神高速道路: 平均渋滞長が概ね4km以上。
等の箇所。
7. 中心市街地の空洞化
道路、駐車場などの都市基盤整備の遅れ、商業施設の郊外展開等により、中心市街地の空洞化が進行している。

〜中心商業地の衰退の理由:道路や駐車場の未整備による自動車交通に対応できない:78%








図 在来中心商業地の地盤沈下の理由
注)人口2万人以上の全自治体を対象として実施。
<資料>民間都市開発機構「商店街の実態に関するアンケート調査結果」(平成3年)より建設省作成

8. 地域の自立的発展の基礎条件の整備が課題
県庁所在都市や高度医療機関へのアクセス性など自立的発展のための基礎的条件の整備が、多くの県において課題となっている。

〜県庁所在都市まで1時間以上かかる市町村の比率が40%以上の都道府県の数:41
〜高度医療機関まで1時間以上かかる市町村の比率が40%以上の都道府県の数:29

図 県庁所在都市まで1時間以上かかる
市町村比率別都道府県数

図 高度医療機関まで1時間以上かかる
市町村比率別都道府県数

注)H6道路交通センサス。本島と道路で結ばれていない離島を除く。
<資料>建設省

9. 日常生活の基盤となる道路整備についても課題が多い
都市の環状道路、国道クラスの4車線道路等、日常生活の基盤となる道路整備も、欧米に対して依然として遅れている。

図 都市の環状道路整備水準の国際比較 図 国道クラスの4車化率の国際比較
注)1.欧州・アメリカは人口10万人以上の都市を対象
日本の都市は3大都市圏外の人口20万人以上の都市及び県庁所在地を対象
2.欧州は1991年、米国は1992年、日本は1995年のデータ
注)イギリスは1993年、フランス、アメリカは1992年、日本は1997年

<資料>建設省

10. 公共公益施設整備を支えることも重要な役割
空港・鉄道等の大規模プロジェクトや学校、病院等の公共公益施設の整備の際には、本体の事業費を大幅に上回る関連道路が必要になる。

〜関連道路整備費/施設整備費  関西国際空港:1.7、常磐新線:1.8




図 施設整備費と関連道路整備費の比率
<資料>建設省

11. 電線類の地中化等道路空間の活用も課題
安全で快適な都市空間の形成のためには、道路空間の活用が課題であるが、日本における電線類の地中化率は欧米主要都市と比較して著しく低い。

〜電線類地中化率:パリ・ロンドン:100%、ベルリン:99.2%、東京23区:35.3%


図 電線地中化率の国際比較

注:コペンハーゲンストックホルムは1993年、その他の海外の都市は1977年、日本国内の都市は1990年の状況。
<資料>電気事業連合会調べ

12. 依然として多発する交通事故
近年の交通事故死者数は1万人レベルで推移するなど交通の安全を取りまく環境は極めて厳しい状況である。
自動車走行台キロ当たりの死者数で見ると、英米の約2倍前後の事故率であり、緊急に改善を図っていく必要がある。

〜走行台キロ当たりの死者数対英米倍率:英2.13、米:1.71
図 交通事故死者数の推移

<資料>警察庁「交通統計」
図走行台キロ当たり死者数の対英米倍率

<資料>国際道路交通事故データベース
13. 歩道の整備は立ち遅れている状況
歩道の整備状況は、必要延長量の半分強に過ぎない。
特に、市街地において様々な人が安心して通行できる幅員3m以上の幅の広い歩道等の整備に至っては、未だ、必要延長量の4分の1程度に過ぎない。

〜歩道等の設置率     約53%(必要延長約26万km)
〜幅の広い歩道等の設置率 約28%(必要延長約13万km)




図 歩道等の整備状況(平成9年度末推計)
<資料>建設省

14. 大気汚染や騒音等の沿道環境は依然厳しい状況
自動車交通の集中やそれに伴う渋滞のために、沿道騒音環境基準の達成や二酸化窒素環境基準の達成は依然厳しい状況にある。

〜沿道騒音環境基準(夜間):非達成65.7%(H8)
〜沿道騒音要請限度(夜間):非達成26.5%(H8)
〜二酸化窒素環境基準:非達成35.4%(H8)



図 大気汚染と騒音の基準達成状況

<資料>環境庁「平成8年 自動車交通騒音実態調査報告」
環境庁「平成8年度自動車排ガス測定局 測定結果報告」

15. 厳しい自然条件下で多発する道路災害 道路災害の発生件数や通行止延時間は依然として多く、防災対策の一層の推進が求められる。〜道路災害:約6200件、通行止延時間:約121万時間(H7)






図 近年の道路災害の現状

<資料>建設省「道路交通管理統計」





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