T 業績予算の導入
予算の決定要因を全て定量的に表現し、目標や達成度に基づき、機械的に予算を立てることは不可能である。しかし目標や達成度は、予算の設定にあたっての総合的な判断に際して、重要な判断材料の一つである。
そこで、平成16年度概算要求から、予算の要求段階から成果目標を提示し、見込まれる成果に対して予算を配分して、事後の評価結果を以降の予算に反映するため、「成果買取型」の予算要求を行った。
また、平成16年度からは、渋滞の緩和や交通安全などの成果目標に対応した予算を明らかにするため、従来の「道路種別予算」から、成果に対応した「業績予算」を導入した。
「道路種別予算」
一般国道直轄改修費
一般国道改修費補助
地方道改修費補助
街路事業費補助 等
「業績予算」
交通円滑化事業費
地域連携推進事業費
沿道環境改善事業費
交通安全施設等整備事業費 等
図6 「業績予算」の概要
U 「地方道路整備臨時交付金制度への成果主義」の導入
地方道路整備臨時交付金について、地方にとってより使い勝手がよく、かつ高い成果をあげられる制度に改善するため、個別事業内容の事前審査からパッケージの目標達成度に対する事後評価へ転換するとともに、個別事業への配分を地方の自由裁量に委ねる。
従
来
型
○毎年度、個別事業内容を審査
・
個別事業の事業規模要件(個別事業の 全体事業費の下限1億円等)への適合等
○国が個別事業に対して配分
↓
目
標
達
成
型
○
地方がパッケージごとに整備目標、B/C を公表し、国は目標の達成度を事後評価
○
毎年度、国はパッケージ全体の目標達成に要する事業費により配分し、個別事業については地方が自由に配分
図7 目標達成型への転換
(4)指標やデータ収集分析手法の改善
T 効率的なデータ収集・分析
合理的な成果目標を決定し、その成果を客観的に評価するためには、正確でコスト意識を持ったデータ収集が必要である。このため今後とも、効率的な収集体制を確立し、体系的なデータを整備していく。
例えば、渋滞状況の把握に関しては、時刻と位置を記録する装置がついたバス等を一種のセンサーとして使う「プローブカー」等を用いた情報収集体制の確立を進めている。このデータを用いて毎年度実測を行っている「渋滞モニタリング区間」に関しては、全国の渋滞の傾向を見るというデータの利用目的に対して、実測できているデータの取得頻度や範囲等から判断すると、今後の改善が必要である。
図8 プローブカー調査のイメージ図
U 指標の継続的な見直し
新たな政策テーマに対応した新たな指標の採用、達成状況の把握やマネジメントに使いにくい指標のメリハリ付けを継続的に行う。
本報告書・計画書でも、「NO2 環境目標達成率、SPM 環境目標達成率」の定義を変更した。これは、昨年の計画書では、自治体が設置し環境省へ報告している自動車排出ガス測定局のデータを用いて評価することとしていたが、データ入手に数ヶ月を要するため、国土交通省が整備を進めている常時観測局のデータを用いることとし、効果的な対策の立案・実施に向けた迅速な状況把握を行い、毎年度のマネジメントへの活用を図る。
V 施策の効果が発揮されるまでのタイムラグの存在
道路整備は成果を得るために一定の時間を必要とするため、成果の発揮を確認できるまでに一定の測定期間が必要となるものもある。また、データ取得時期やデータの解析の期間によるタイムラグは、十分に注意しなければならない。実際のマネジメントに際しては、これらのタイムラグの存在を踏まえ、関連する施策の進捗を示す指標等を用いて評価を行う必要がある。今後とも、改善努力が必要である。
W 外部要因を考慮
現実的な行政マネジメントを実施するため、外部要因の影響が大きい成果目標については、その目標の達成にある程度寄与する道路行政の進捗状況などを用いた中間的なアウトカム指標を設定し、それぞれの要因による寄与度等を分析し、確実に内部の執行の管理が可能な仕組みを確立することが課題である。
(5)国民と行政のパートナーシップの確立
T 情報開示の徹底
業績計画書や達成度報告書は、対話型の行政運営のための重要なツールである。これを公表することで、国民と行政の間で課題や目標を共有し、目標設定の妥当性や施策や事業の妥当性について、国民の視点からのチェックを行うことを可能とする。
この平成15 年度達成度報告書・平成16 年度業績計画書では、1年前に宣言した成果の目標を、達成したか、達成しなかったかということを、成果を表す指標の実績値とともに、公表している。
これまでは全国値でしか公表されていなかったものも、施策を実施したところやそうでないところの比較や、都道府県や国道事務所別などの指標のランキングなどのデータも公表。各主体の達成度を公表することにより、施策や事業の責任主体が明確になる。