(1) 詳細調査の概要
詳細調査においては、つくば・土浦地区で発生した交通事故について、「人」・「道」・「車」の観点から総合的に調査し、ひとつひとつの事故について1,000項目以上にも及ぶ詳細データを収集・蓄積している。(つくば・土浦地区で発生している事故の約10%をカバー)
また、詳細調査によって得られた詳細データを、「人」・「道」・「車」の総合的観点から分析するため、学識経験者・交通安全関係の研究機関等の研究者及び、技術者から構成される「総合的調査に関する調査分析検討会」(以下、検討会)を設置すると共に、「人分科会」「道路環境分科会」「車両分科会」「人体傷害に関する分科会」の4分科会を設け、精力的な分析・研究を行っている。
道路環境分科会においては、毎年度、2〜3テーマずつ分析の視点を設定し、詳細データを詳細に分析している。
(2) 夜間の歩行者事故に関する分析
(背 景)
- 従前の道路照明と交通事故との関連に関する調査研究の多くは、事故発生割合と道路照明の有無との関係を求めたマクロ的視点の研究
- 詳細データを用いて、夜間事故の発生メカニズムを解明する必要性
(研究概要)
- 詳細データを検討し、「事故発生現場付近において道路照明等の環境に問題があるのではないか?」と、推測できる夜間の歩行者事故を2件抽出
(何れも近隣に横断歩道等の横断施設があるにもかかわらず、歩行者がそれを利用せずに乱横断した事故例)
- 事故発生場所周辺において、道路照明の設置状況や、夜間における路面の明るさ等について現地調査を実施
- 事故と光の関係を、運転者・歩行者の両視点から詳細に検討
(結 論)
- 道路照明やの周辺の生活光により、横断歩行者にとっては周辺が明るく感じられることから、「自分は車両運転者に見られている」と認識してしまうが、車両運転者にとっては横断歩行者の背景となる道路が暗く横断歩行者を発見しづらいようなところが存在する
- 横断歩行者の服装が暗い色で車両運転者から発見しづらいと考えられる例が多い
(3) 構造物端部衝突事故に関する分析
(背 景)
- 分離帯・安全島、防護柵、橋梁・橋脚への衝突事故は、件数割合は低いものの事故の重度は重い
(研究概要)
- 詳細データを検討し、構造物の端部に衝突した事故を10件抽出
- 事故発生場所周辺において、構造物の設置状況等について現地調査
- 事故防止・被害軽減の両視点から構造物端部衝突事故防止対策を検討
(結 論)
- 何れの事故も、飲酒等が原因の脇見・居眠り運転によって発生している
- 発生している事故形態としては、以下の3つに分類できる
1.カーブの途中にガードレール端部がきているもの
2.ガードレール端部の視認性が悪いもの
3.直線区間でカードレールが細切れに存在しているもの
(4) 高齢者が運転する二輪車の事故に関する分析
(背 景)
- 社会の急速な高齢化等により、高齢者が運転する二輪車による事故の増加が予想されている
(研究概要)
- 詳細データを検討し、高齢二輪車事故を8件抽出
- 事故発生場所周辺において現地調査を実施
- 高齢二輪車事故の発生要因を検討
(結 論)
- 高齢二輪運転者の特徴として、以下の3つを見出した
1.安全確認を適切に行っていない、或いは、適切なタイミングで行っていない可能性がある
2.交通環境の変化を適切に把握していない可能性がある
3.運転時に判断ミスしている可能性がある
- 高齢二輪車事故に繋がる背景要因として、四輪運転者の側が高齢二輪運転者の行動特性を把握していないことが挙げられる(高齢二輪車がとる特異な行動を予測できていない)
平成7年度及び平成9年度の夜間事故の研究から、夜間における人対車両事故の発生要因の一端を明らかにすることが出来た。
分析センターとしては、今後、1.で述べた結論に基づいた交通安全対策を積極的に提案すると共に、実際に対策が打たれた箇所に対する効果評価を行う等して、詳細データの最大限の活用と社会への還元を進めていく予定である。
また、本年度の道路環境分科会においては、「非幹線系道路の事故」および「雨天時の事故」の2テーマを取り上げ、分析研究を進めていく予定である。
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