第2章 道路占用許可申請手続の現状と新たなシステムの位置付け


第1節 道路占用許可申請手続の現状

 道路占用許可申請手続の業務の流れ、申請手続に必要な書類及びその作成について現状把握を行った。

(1)調査対象

  • 占用事業者 日本電信電話株式会社、東京電力株式会社、東京ガス株式会社、東京都水道局、東京都下水道局
  • 道路管理者 関東地方建設局東京国道工事事務所、同相武国道工事事務所

(2)道路占用許可申請手続の流れと申請手続に必要な書類
 調査対象先での標準的な業務フローを図2−1に示す。

図2−1 調査対象先での標準的な業務フロー
図2−1 調査対象先での標準的な業務フロー



 また、調査対象先での標準的な業務フローの下での、道路占用許可申請手続に必要な書類を表2−1のとおり整理した。

表2−1 調査対象先における道路占用許可申請手続に必要な書類
手続道路占用許可申請手続に必要な書類
道路工事調整会議○各社工事計画書、調整調書
○調整決定書(道路図面+スケジュール)
道路占用許可申請 ○道路占用許可申請書
○内訳書
○位置図、平面図、断面図
△占用理由書
△施工計画書、概要書(工程、保安施設)
△現況写真
警察署協議×協議書
道路占用許可○道路占用許可書
○条件書、指示書等
道路使用許可申請○道路使用許可申請書
○位置図、道路使用状況図
△誓約書
△道路占用許可書写し
道路使用許可○道路使用許可書
○許可条件書
道路情報通報△道路交通情報通報
△道路情報整理票
△道路情報調査表
着手届○工事着手届
△道路占用許可書写し
△道路使用許可書写し
○施工計画書
安全パトロール点検
進捗状況報告
×安全パトロール点検表
△進捗状況報告書
本復旧影響範囲立会
復旧面積決定報告
△復旧面積決定報告書
△構造図、平面図、計算書
完了届○工事完了届
○復旧報告書
注)○:いずれの占用事業者からも提供された申請手続書類
  △:一部の占用事業者から提供された申請手続書類
  ×:業務手順には定められているが、提供されなかった申請手続書類



 システムによる業務を行っている東京国道工事事務所、手作業による業務処理を行っている相武国道工事事務所のいずれの道路管理者も、図2−1に示した業務フローで手続を行っている。しかし、道路占用許可申請手続に必要な書類については、工事規模の相違等により異なっていた。

(3)申請手続書類の作成の現状
 調査対象先では、申請書、届出書及び申請添付図書のうち、調書、図面、施工計画書等の一部に、システムを利用したものもみられたが、申請手続のための図面等の作成の大部分はシステム化が図られておらず、手書きにより作成されているのが現状である。
 その理由は、以下のとおり整理できる。

  • 近年、デジタル地図が整備されつつあるが未だ整備途上であり、かつ高価であったため、位置図は市販地図をコピーして占用位置にマーキングを行っている場合が多い。
  • 道路占用許可申請手続の申請を目的に、CAD等により図面の電子化を図ることは経済的でなく、平面図や断面図は手書きの工事設計図面を利用している場合が多い。また、図面を電子化している場合でも、CADで工事設計を行った出力図面に、申請手続に必要な情報を手書きで書き足している場合が多い。
  • 平面図や断面図では、新設、撤去の区別をするための色分けが必要であり、色分けが行える出力機器が高価である。



第2節 道路占用許可申請手続のシステム化の現状

 現在、道路占用許可申請手続に係るシステム化として、一般占用物件については「道路占用許可システム」、公益物件については「道路管理システム」が運用されている。
 両システムの概要については、さらに参考資料2に示す。

■道路占用許可システム
 占用許可申請書の受理から道路占用工事の完了までの一連の事務について、占用者からの申請情報及び道路管理者の処理状況を道路管理者がデータ入力し、調書ベースにより処理及び管理を行うクライアント・サーバ方式の国のシステムである。
■道路管理システム
 道路占用物件の密集区域である政令指定都市域内(一部例外あり)を対象として、道路工事計画の調整、占用の申請と許可、占用物件の管理に至る一連の事務について、オンラインにより占用事業者及び道路管理者の双方から入力されたデータに基づき、各々が調書ベース及び図面ベースにより処理及び管理を行うシステムであり、図面を基礎とした高精度のコンピュータ・マッピングシステムである。
 現状、これらの既存システムが対象としている範囲は表2−2に示すとおりである。

表2−2 既存システムの対象範囲
手続道路管理者の支援占用事業者の支援
政令指定都市域内公益物件
道路管理システム

道路管理システム
一般物件
道路占用許可システム
×
政令指定都市域外公益物件××
一般物件
道路占用許可システム
×
○:既存システムの対象範囲 ×:既存システムが対象としていない範囲



第3節 道路占用許可申請手続における新たなシステムの位置付け項

(1)新たなシステムの位置付け
 政令指定都市域内外の間では、申請件数等に大きな格差があり、多数の申請を安定、確実に処理するには比較的大規模なシステムが必要であり、一方、少数の申請を処理するには、「安くて軽い」システムが求められる。
 また、公益物件は、占用事業者が比較的少数で特定されており、業務の反復・継続性、定量性という特徴がある。一般物件は、占用事業者が不特定多数で、業務が単発的かつ占用事業者毎の申請件数が少ないという特徴がある。
 行政情報化推進基本計画等を踏まえ、全国的な道路占用許可申請手続の電子化を図るために、以上を考慮すると、一つのシステムですべての状況に効果的に利用できるシステム構築を図ることは現実的ではなく、当面、適材適所にシステムを利用することを基本的な考え方とする必要がある。
 したがって、道路占用許可システム及び道路管理システムとのすみ分けをし、政令指定都市域外に適用する「安くて軽い」システムの構築を目指すべきである。また、システム導入効果が高く、現在の技術レベルでセキュリティ確保が容易な公益物件に対応するシステムとすべきである。
 「安くて軽い」システム(以下「簡易システム」という。)とは、申請手続の電子化による占用事業者の負担軽減という効果を損なうことなく、低コストで電子化を実現できるような仕組みでなければならない。すなわち、簡易システムの構築は、その適用範囲において、汎用ソフトの利用によるイニシャルコストの低減と電子化の対象となる申請手続書類の統一によるシステムの保守コストの低減を目指す必要がある。

(2)電子化の対象とする業務の範囲
 簡易システムの構築に当たっては、道路占用許可申請手続の電子化への的確な対応とコスト低減が要請されるが、コスト低減に重点を置き過ぎると、現状の情報通信環境においては、システムの機能が制限され、すべての業務を網羅的に電子化することが困難となる。このため、必要最低限の機能を具備することとし、簡易システムが対象とする業務の範囲を明確に定めることが必要である。
 道路占用許可申請手続に係る業務を表2−3のとおり区分した。

表2−3 道路占用許可申請手続の業務区分
 道路占用許可申請から工事完了までの業務その他の業務
占用事業者処理道路管理者処理
業務内容・申請書作成・提出
・道路使用許可申請
・着手届、完了届作成・提出
・受理・審査・占用料計算
・許可処理
・占用台帳管理
・処理進捗管理
・道路工事調整業務
・事前協議
・占用物件管理業務



 この業務区分のうち「その他の業務」については、占用物件管理業務には1/500相当精度のデジタル地形データが必要になるとともに、道路工事調整業務においては複数者間での調整処理をオンラインで実現することが難しく、さらに調整情報の特性から厳密な情報セキュリティが要求される。このため、システムが高価かつ大規模となることが予想される。
 一方、「道路占用許可申請から工事完了までの業務」については、インターネットなどの低廉な情報交換方法が利用でき、利用者の特定によってセキュリティを確保できる。また、位置図の作成処理も廉価な小縮尺デジタル地形データを利用でき、さらに平面図の取り扱いについても大きな図面の処理に課題があるものの、図面サイズの制限(図面の縮小)とイメージ画像への変換により申請手続の電子化が可能となる。
 以上のことから、電子化の対象とする業務の範囲を、「道路占用許可申請から工事完了までの業務」とする必要がある。

(3)簡易システムの業務の対象範囲
 以上のような検討結果から、表2−4に示すとおり、当面、簡易システムは、政令指定都市域外における公益物件について、道路占用許可申請から工事完了までの業務を対象とすべきである。ただし、道路管理者内の審査手続及び占用料の納付に係る業務については、当面は解決すべき課題が多いことから、対象から除外すべきである。
 なお、一般物件の取り扱いについては、今後、道路占用許可システム等との整合を図ることが必要である。
 また、対象とする道路は、当初、全国の直轄国道とし、システム導入・運用のために必要となる諸要件の整備状況等を踏まえて、順次、都道府県道、市町村道へと拡大を図る必要がある。



表2−4 簡易システムの業務対象範囲
手続道路管理者の支援占用事業者の支援
政令指定都市域内公益物件道路管理システム道路管理システム
一般物件道路占用許可システム 
政令指定都市域外公益物件簡易システムの業務対象
(道路占用許可申請から工事完了までの業務)
一般物件道路占用許可システム 



第4節 電子化の効果

 申請手続の電子化により、データの再利用ができることや、申請手続書類の持ち運びがなくなること等から生じる占用事業者及び道路管理者のメリットを以下のように挙げることができる。

(1)占用事業者のメリット

  • 申請データの保存・再利用の促進により、同種申請における申請書作成が容易になる。
  • パターン化しているデータ一覧表からの選択形式とすることにより、入力操作が簡素化される。
  • 申請書提出、許可書受取、着手届提出、完了届提出の都度、道路管理者の窓口まで往復することが不要となるばかりでなく、24時間提出も可能となる。
  • 申請書を複数部数コピーする必要がなくなる。
  • 全国的に標準化されることにより、道路管理者別の対応をする必要がなくなる。
  • 占用事業者内の工事計画関係システムとの連動も可能となる。

(2)道路管理者のメリット

  • 申請データの保存・再利用の促進により、同種申請における申請書作成が容易になる。
  • 電子化率が向上すれば、申請受付窓口業務の効率化が図られる。
  • 事務簡素化、標準化の推進と電子決裁の普及・定着により、事務処理期間の短縮化等が図られる。
  • 申請データを利用した占用料計算が可能となる。
  • 占用事業者からの着手届、完了届に連動し、進捗管理が容易にできるようになる。




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