第5章 道路占用許可申請手続の電子化の検討


 第4章に記述した簡易システムの検討結果及びパイロット実証実験における評価を踏まえ、道路占用許可申請手続の電子化の検討を行った。

第1節 申請書等の電子化方法の検討

 道路占用許可申請における申請書等の電子化について、文書の電子化、図面の取り扱い、地図データの取り扱いについて検討を行った。

(1)道路占用許可申請における電子文書フォーマットの検討
 道路占用許可申請手続における電子文書のフォーマットについては、電子文書の交換の標準化に向けた国の取り組みを参考にし、電子文書フォーマットの特徴や簡易システムの機能要件等から、総合的に検討を行う必要がある。
 国の文書交換に必要とされる電子文書の標準化については、「電子行政文書の標準化の検討の方向について(検討状況)」(平成9年12月 総務庁行政管理局)が発表されている。この中で電子行政文書の標準化の目的として、以下の点が挙げられている。

  • 電子行政文書の再利用、保存・検索及び省庁間流通を効率的に行う。
  • 電子行政文書の規格を統一し、送受信者間での電子行政文書の互換性を確保する。
  • 省庁間電子文書交換システムや省庁内文書管理システムにおける電子行政文書の効率的運用を実現する。

 さらに、標準化目的を実現するための標準規格として、以下の理由によりSGML等の文書構造を有する規格の採用が最適であるとしている。

  • 標準となる規格は、省庁間で交換され、様々なプラットフォームで利用されなければならない。SGML規格は、ワープロ文書等と違い、プラットフォームに依存しない規格である。
  • 電子行政文書は、文書の再利用や、情報検索が容易であることが望ましい。 SGML規格は、要素単位で文書構造を保存できるので、文書内容の詳細な検索及び再利用が容易である。
  • 電子行政文書は、様々に応用することができ、再現性も保証されることが望ましい。SGML規格は、文書が構造化されており、文書を様々な媒体で多面的に応用することが可能である。
  • 電子行政文書は、長期にわたって再現、利用可能な状態を保たなければならない。SGML規格に従って作成された電子行政文書は、プラットフォームに依存しない形式で記録され、構造が管理されているので、長期にわたって再現、利用することが可能である。
  • 行政情報化推進基本計画において、国際的な標準に準拠した製品を導入することとされている。SGMLは、ISOによる国際標準かつJIS規格であるため、 公開された普遍性の高い規格である。

 また、道路占用許可申請における簡易システムの公文書フォーマットに係わる機能要件を以下のとおり整理した。

  • インターネットとの親和性が優れていること。
  • 長期的な行政情報の電子化の視点から、標準化またはデファクトスタンダードなフォーマットであること。また、仕様が一般に公開されていること。
  • 業務系処理とのデータ連携が可能な構造化文書であること。

 道路占用許可申請における電子文書フォーマットについては、標準化、インターネットとの親和性、構造化文書等の視点から、SGML、XML、PDFを候補に検討を行った。SGML、XML、PDFについては、参考資料7に示す。

 以上の検討結果から、道路占用許可申請における電子文書フォーマットの採用として、以下のとおり整理した。

  • 簡易システムの機能要件とSGMLが国際標準規格であること、国における事例から、SGMLが最も有力な電子文書フォーマットと判断し、道路占用許可申請における電子文書フォーマットとして採用することとするべきである。
  • XMLについては、SGMLに比べてインターネットとの親和性が高くその扱いも容易であること、ツール類が豊富に取り揃えることができること、文字コードの再現性が保証されていることから、将来の行政情報化の中で広く採用されていくものと期待されている。現に「行政情報化推進計画の改定について」や「電子行政文書の標準化の検討の方向について(検討状況)」などでは、電子文書等の標準化について、SGML「等」という文言を使っており、これは国際標準であるSGMLのほか、XMLを念頭に置いたものである。XMLはSGMLのサブセット言語であることから、SGMLからの移行が容易であり、当面はSGMLを簡易システムの電子文書フォーマットとして採用し、他省庁の動向等を踏まえながらXMLへの転換を検討していくことが望ましい。
  • PDFについては、あらゆる種類の電子文書をオリジナルデザインをほぼ保ったまま再現可能なことから、業務系処理とのデータ連携が不要な文書や図面等の電子化については適しており、文書や図面の用途に合わせた適用を図ることとするべきである。

(2)図面の技術的な取り扱いの検討
 図面を取り扱う電子データフォーマットには様々な標準があるが、簡易システムにおいては当面イメージデータまたは簡易CADデータとして取り扱うこととするべきである。

ア.図面サイズ
 図面の電子化に対応していくためには、申請者、道路管理者ともにコンピュータの画面上で自由に閲覧できることが必要である。汎用的なパソコンを用いて、高度なCAD機能を持たない簡易システムにおいて表示できる図面サイズは、大きくてもA3サイズが限度であると考えられる。また、イメージスキャナによる画像取り込みの観点からも、図面サイズが大きくなれば読取原稿サイズの大きなイメージスキャナやプリンタが必要となり、必要設備の価格面からも簡易システムとしての実現性が低くなる。
 こうしたことから図面サイズはA3サイズを基本とするべきである。

イ.図面データ
 図面をイメージデータのほかにCADデータとして取り扱うことも可能であるが、この場合、CADデータのフォーマットを統一することが必要である。既に、CADシステムを導入している申請者にとっては当該システムが取り扱うことのできるフォーマットにより申請が行えることが望ましいが、申請者毎に異なるフォーマットをすべて道路管理者が受け入れることは設備面、運用面等から困難である。
 このため、当面はCADデータの業界標準であるDXF形式、あるいはJWC形式による図面データの受け渡しを実現するべきである。また、将来的には建設省の「建設CALS/ECアクションプログラム」に基づき作成されたCADデータ交換標準仕様書(SCADEC)に対応していく方向で図面データの取り扱いを適宜見直していくこととするべきである。

ウ.カラー表示
 現状の道路占用許可申請手続では、申請書に添付する図面は、撤去物件を黄色、新設物件を赤色で表示するものとして運用しているが、イメージスキャナで読み取る際、256色のカラー対応ファイルとして保存すれば、1色の場合に比べ8倍のファイルサイズとなってしまうため、送信時間を長くする原因となる。
 したがって、カラー表示とする場合は、色圧縮及び通常の圧縮技術を採用することとするべきである。

 図面の技術的な取り扱いについては、第4章で記述したパイロット実証実験を通じてより詳細な検討を行い、以下のとおり図面の取り扱いに関する問題点と解決策を表5−1のとおり整理した。
 また、パイロット実証実験を基本にしつつ、図面の取り扱いについては以下のとおり申請者の協力を求めていくこととするべきである。

  • 設計図をそのままコピーするのではなく、A4サイズの制約を考慮し、設計図のサイズをA3サイズで統一する、あるいは2種類作成する。
  • 延長の長い工事についてもA3サイズで分割する、あるいはA3サイズの枠を図面上にいれる。
  • 縮小することを前提として、文字を大きくし、太くする。また、占用位置についても太線とするなど見やすくする。
  • イメージスキャナにより図面データを作成する際は、読み取り解像度を300dpi程度とする。

表5−1 図面の取り扱いに関する問題点と解決策
項目設計図(現状申請図)電子申請に係る図面移行における問題点解決策
サイズ 部分的な工事の場合A3もあるが、通常A2あるいはA1が多い。 イメージスキャナ等の制約からA4としている。 そのままコピーしてもA3でA4 2枚になり、それ以上の大きさの図面ではかなりの枚数となる。また、同一種類の図面が分割される場合、繋ぎ部分を考慮する必要がある。 部分的な工事でA4に収まるもの以外は縮小コピーを行い枚数を減らす。縮小しやすいように元図面のサイズはA3が好ましい。
図面種類 工事延長が長い場合、平面図、断面図など種類別に別葉の場合が多いが、それ以外は1枚にまとめられている場合が多い。(占用事業者により異なる) 図面種類毎に図面を取り込む方法としている。 すべてが1枚の場合、種類毎に分けてコピーする必要がある。 設計図を図面種類毎に分割して作成する。
複数枚図面 相当距離の工事については、図面が複数枚にわたる場合がある。平面図では接続線あるいは図面番号により前後の繋ぎが分かるようにしている。 イメージスキャナでそのまま読みとれば左と状況は同じ。 設計図1枚をA3またはA4に縮小しきれない場合、別途の接続線が必要となる。 設計図のサイズをA3とする。あるいはA3の枠を入れてあらかじめ接続線を入れておく。
文字 通常の文字の大きさ(10.5ポイント)程度が多い。 拡大は可能である。 拡大は可能であるが、前段階の縮小による文字が薄いと文字が見にくくなる。 特に占用数量に係る文字は、縮小を考慮して太く大きくする。
占用位置などを見やすくするため赤色などで着色する場合が多い。 容量を押さえるため白黒で対応。 白黒とすると占用位置が一見して分かりにくくなる。 占用位置を太線とする。
縮尺 平面図は、1/500または1/300が多く、断面図は1/100がほとんどである。 拡大、縮小が自由に行えるため縮尺にはこだわらない。 縮尺表示があれば数字が入っていなくともスケールをあてて目安の数字が分かる。 管理上必要な数量は記載されている前提。

(3)地図データの取り扱いの検討
 現在、1/500相当の精度の詳細な地図データについては全国的な整備がなされていない。そのため、簡易システムでは平面図の背景として詳細な地図データは利用せず、申請者が作成する図面をイメージデータまたはCADデータとして取り込むこととする。また、位置図としての地図データは、国土地理院の1/25,000数値地図等を利用することとする。この数値地図を申請者及び道路管理者で共通に利用することにより、位置図自体をイメージデータとして送信するのではなく、位置に関する情報のみを送信することとなり、送信時間の短縮化が可能となる。
 なお、G−XMLの採用についても検討するべきである。

(4)電子文書の原本性確保の検討
 道路占用許可申請手続が電子文書により行われる場合、申請者から道路管理者に送信された電子文書(申請書、届出書、添付図書等)については、書類と同様に道路管理者側に保存する義務が生じる。電子文書を保存する場合には、外部からの物理的な不正アクセスを防止すること、道路管理者側の利用者による論理的な不正アクセスを防止すること、記録媒体の経年劣化等による内容の消失等を防止することなど、「電子文書の原本性確保」の対策が必要である。
 電子文書の原本性確保については、総務庁の「共通課題研究会中間報告−電子文書の原本性確保方策を中心として−」(平成11年4月 共通課題研究会)を参考に、その具体策の検討を行った。「共通課題研究会中間報告−電子文書の原本性確保方策を中心として−」では、以下のように電子文書の原本性確保の要件を整理している。

■完全性
 電子文書が確定的なものとして作成され、または取得された一定の時点以降、記録媒体の経年劣化等による電子文書の消失及び変化を防ぐとともに、電子文書に対する改変履歴を記録すること等により、電子文書の改ざん等を未然に防止し、かつ、改ざん等の事実の有無が検証できるような形態で、保存・管理されること。
■機密性
 電子文書へのアクセスを制限すること、アクセス履歴を記録すること等により、アクセスを許されない者からの電子文書へのアクセスを防止し、電子文書の盗難、漏えい、盗み見等を未然に防止する形態で、保存・管理されること。
■見読性
 電子文書の内容が必要に応じ電子計算機その他の機器を用いて直ちに表示できるよう措置されること。

 これらを参考に、道路占用許可申請手続の電子化における原本性確保のための具体策を以下のとおり整理した。

ア.組織体制
  • 申請書、届出書、添付図書等の電子文書を保存・管理する事務所及び出張所単位に電子文書の管理責任者を定める必要がある。
  • 電子文書を保管するコンピュータに、電子文書の保存、参照、更新、複写、廃棄等のアクセス状況の日時及び実施者を記録するログ取得機能を実現する必要がある。
  • 道路管理者内に、電子文書を記録した媒体を保管する制度として「電子媒体保管基準(仮称)」を定める必要がある。

イ.アクセス管理等
  • 電子文書を保管するコンピュータにアクセスする者を、ID、パスワードによって識別・認証するアクセス管理機能と、アクセス権限の設定が行える機能を実現する必要がある。
  • 電子文書を保管するコンピュータに、電子文書の保存、参照、更新、複写、廃棄等のアクセス状況の日時及び実施者を記録するログ取得機能を実現する必要がある。
  • 道路管理者内に、電子文書を記録した媒体を保管する制度として「電子媒体保管基準(仮称)」を定める必要がある。

ウ.記録媒体及びバックアップ
  • 道路管理者内に、電子文書の定期的なバックアップを実施すること、保管状況及びデータの内容が正常であることを点検することなどを制度化する「電子文書バックアップ基準(仮称)」を定める必要がある。
  • 電子文書を保管するコンピュータの磁気ディスク装置に、データの信頼性・安全性を向上させるディスクアレイ・システムを採用するとともに、スケジュール設定が可能な自動バックアップ機能を実現する必要がある。

エ.ウイルス対策
  • 電子文書を保管するコンピュータに、入出力データの常駐監視を行うウイルスチェックソフトを採用する必要がある。

オ.見読対策
  • 道路管理者側のシステムに、電子文書をディスプレイに表示する機能、印刷を行う機能を実現する必要がある。

カ.その他
  • 電子文書を保管するコンピュータについて、保守、点検、改造のための「運用・保守管理基準(仮称)」を定める必要がある。
  • 停電時あるいは電源トラブル時に、電子文書を保管するコンピュータへ一定時間電源を供給できる無停電電源装置の採用と、停電である旨を通知する機能、システムを安全に自動シャットダウンする機能、電源回復時に自動リブートする機能を実現する必要がある。



第2節 簡易システムの運用方法の検討

 簡易システムの運用に当たっての役割分担、システムの効率的な運用形態、必要となる設備について検討した。

(1)システムの運用方式
 簡易システムの運用に当たっては、表5−2に示す役割分担が考えられる。

表5−2 システム運用の役割分担
項目管理運用担当
申請者登録関連データ保守道路管理者が一元的に管理
地図データ保守(国土地理院の数値地図等利用)すべての申請者がローカルに実施
道路管理者内処理用データ保守道路管理者
申請書作成用申請者固有データ保守申請者
申請データ保守道路管理者
申請者間のデータ相互参照当面不可

 申請者登録関連データについては、複数の道路管理者に対して道路占用許可申請を行う可能性のある申請者の負担を軽減するために、申請受付の際のユーザID、パスワード等を道路管理者によらず統一することが望ましい。
 また、通信方法及びシステムの安全性に関して検討を行ったように、当面の電子化対象とする直轄国道を管理する地方建設局のセキュリティポリシーに従えば、特定のプロトコルによる通信手順のみを許している。このため、地方建設局内のLANに接続されたサーバに申請者からWWWによって送信されたデータを直接受信することができない。したがって、ファイル交換機能を有するインターネットに直結した申請受付サーバ及びファイアウォールを介して道路管理者内のLANに接続された申請データ保管サーバの少なくとも二つのサーバを用意することが必要である。
 これらのうち、申請受付サーバは、申請者を支援する機能と道路管理者を支援する機能とを直接接続せず、両者の間に入り処理の仲介を行う役割を持つことになる。これにより、道路管理者外部からの不正アクセス、不正データの申請による道路管理者内の申請データ保管サーバへの影響を回避するとともに、申請データの形式変換、配信を行うことで、電子データ交換の安全性を確保し、管理を行うものである。この運用・管理機能は道路管理者に共通な機能であるため、各道路管理者に配備するよりも申請者登録と同様に共通かつ統一的な形態をとることが効率的である。

(2)申請受付サーバの運用形態
 道路占用許可申請手続の電子化がインターネットを活用したシステム方式であることから、申請受付サーバの運用形態は道路管理者に共通かつ統一的な運用形態をとることが可能である。
 申請受付サーバの運用形態として、全国共用方式、地域共用方式、道路管理者単独運用方式の三つの形態が考えられる。

ア.全国共用方式
 全国的に共用する申請受付サーバを1ヶ所に設置する運用形態である。建設省関係機関あるいは民間の指定機関(以下「第三者機関」という。)に申請受付サーバを設置し、運用に当たる。

イ.地域共用方式
 地域ブロック毎に複数の道路管理者が共用の申請受付サーバを設置する運用形態である。仮に、全国8ヶ所の地方建設局並びに北海道開発局及び沖縄総合事務局を地域ブロックとした場合、全国に10ヶ所の申請受付サーバが設置され、運用に当たる。
 第三者機関の活用も想定できる。

ウ.道路管理者単独運用方式
 道路管理者(またはその第三者機関)毎に申請受付サーバを設置する形態である。各道路管理者が、道路管理の管轄地域における道路占用許可申請の受付のための申請受付サーバを設置し、運用に当たる。

 申請受付サーバの運用形態について、運用管理面、コスト面から比較した結果を表5−3に示す。
 この表から分かるとおり、全国の道路管理者が簡易システムを共通かつ統一的な運用形態とすることを前提とした場合、全国的に共用する申請受付サーバを1ヶ所に設置する「全国共用方式」の運用形態が、運用管理面、コスト面から、他の方式に比べ優れていることが分かる。
 これらの検討結果から、申請受付サーバの運用形態として「全国共用方式」を採用することが望ましい。ただし、申請受付サーバを1ヶ所集中管理する運用機関の選定、必要整備の費用負担等の問題の解決が必要である。

表5−3 申請受付サーバの運用形態の比較
運用形態運用拠点数運用管理コスト
全国共用方式 1ヶ所 申請受付サーバの1ヶ所集中により他の方式に比べ運用負荷は格段に小さい。申請者にとっても、申請者登録が1ヶ所で済むことや、占用場所に依存せずに申請が行えるなどのメリットがある。 1ヶ所の申請受付サーバで全国の申請データを処理するため、高性能なサーバや大容量の通信回線容量が必要になる。しかし運用拠点が1ヶ所なため、他の運用方式に比べ格段に初期コスト、運用コストが小さい。
地域共用方式 約10ヶ所地域ブロック毎に申請受付サーバの運用が必要で、そのための体制維持が必要。申請者のメリットは全国共用方式と同様に享受できる。 全国共用方式と道路管理者単独運用方式の中間の設備と初期コスト、運用コストが掛かる。
道路管理者単独運用方式 数十ヶ所〜数百ヶ所 申請受付サーバの運用が道路管理者毎に必要。申請者は占用場所により申請受付サーバ(WWWサーバ)の選択の必要がある。また申請者は道路管理者毎に申請者登録が必要になることや、占用場所に依って申請先(申請受付サーバ)を選択する必要がある。 各運用拠点におけるサーバ規模や通信回線容量は小さいが、運用拠点数だけ設備が必要になり、全体の初期コストと運用コストは膨大になる。

(3)申請受付サーバの運用支援組織
 申請受付サーバの運用形態を「全国共用方式」とした場合、1ヶ所の申請受付サーバに全国の申請データが集中するため、その処理に当たっては、大きな負荷がかかることが想定される。また、将来的な地方自治体への展開についても見据えるべきであり、そのためには、申請受付サーバの運用を支援する組織・機能の活用について検討すべきである。

(4)オフライン申請
 電子化を進めるに当たり申請者が電子化に対応できない場合を考慮し、従来どおり紙による申請もできるようにする必要がある。

(5)簡易システムの開発・運用
 簡易システムの開発・運用に当たり、以下のような対応が必要となる。

ア.全国版標準システムの開発

イ.必要な設備等の整備
  1. 申請者
    • ハードウェア(PC、イメージスキャナ、プリンタ、モデム等)
       ※イメージスキャナはA3サイズ対応が基本
    • ソフトウェア(WWWブラウザ、Acrobat Reader)
    • 位置図:国土地理院数値地図(必要地域のみ)、その他を利用することも可能
    • インターネット接続環境
  2. 道路管理者
    • ハードウェア(申請データ保管サーバ、プリンタ、審査用PC、LAN環境)
       ※プリンタはA3サイズ対応が基本
    • ソフトウェア(WWWブラウザ、Acrobat Reader)
    • 位置図:国土地理院の数値地図(管轄地域のみ)
    • インターネット接続環境
  3. 申請受付サーバの運用機関
    • ハードウェア(申請受付サーバ、メンテナンス用PC、LAN環境)
    • ソフトウェア(DBMS、他)
    • セキュリティ設備(ファイアウォール、監視システム等)
    • インターネット接続環境

ウ.システムの運用
  1. 申請者
    • ハードウェア保守
    • ソフトウェア保守
    • 位置図更新
    • インターネット接続環境の維持
  2. 道路管理者
    • ハードウェア保守
    • ソフトウェア保守
    • 位置図更新
    • インターネット接続環境の維持
  3. 申請受付サーバの運用機関
    • 申請受付の運用
    • ハードウェア保守
    • ソフトウェア保守
    • 継続的なセキュリティ対策
    • インターネット接続環境の維持



第3節 セキュリティ対策の検討

 道路占用許可申請手続の電子化及びオンライン化によって、道路占用許可申請に係る重要な情報が脅威にさらされる可能性がある。そのため、発生し得る脅威とそれにより想定される被害からセキュリティレベルを見積り適切なセキュリティ対策を講じる必要がある。
 この観点から、簡易システムのセキュリティ対策について検討を行った。

(1)電子化に伴う脅威と被害
 道路占用許可申請手続の電子化により、インターネット上で申請者と道路管理者間でやり取りされる道路占用許可申請書、添付図書、道路占用許可書の写し、進捗管理簿、着手届、完了届、補正要求、不許可処分などの重要情報は、「盗聴」「盗み見」「改ざん」「偽造」「消去」「複製」「悪意あるコードの混入」などの脅威にさらされることになる。
 電子化に伴い発生し得る脅威により想定される被害を表5−4に示す。

表5−4 電子化に伴い発生し得る脅威と想定される被害
脅威想定される被害
盗聴・盗み見・複製  道路占用許可申請書等の盗聴・盗み見・複製は、道路占用許可に関する情報が事前に第三者に漏洩することになる。
改ざん・偽造威  道路占用許可申請書や道路占用許可書の写しの改ざんは、申請者と道路管理者との間で情報の不一致が生じ、工事の実施に混乱をきたす可能性がある。また、着手届・完了届の改ざんは道路管理者に占用状況の誤認識を生じさせる可能性がある。
消去  道路占用許可申請書・道路占用許可書の写し・進捗管理簿等の消去は、道路の占用を不可能にしたり混乱させる可能性がある。また、着手届や完了届の消去は、道路管理者に届出の有無を誤認識させる可能性がある。
悪意あるコードの混入  悪意あるコード(ウイルス・トロイの木馬など)が混入された場合、重要データを扱う申請受付サーバや申請者クライアントPCが処理不能になる可能性がある。

(2)推奨されるセキュリティ対策レベル
 電子化に伴い発生し得る脅威と想定される被害を検討した結果、道路管理者内だけではなく申請者にまで及ぶ影響範囲を考慮すると、簡易システムといえども高いレベルのセキュリティ対策を講じることが望ましい。
 以下にセキュリティ対策の検討結果を示す。(図5−1)

図5−1 セキュリティ対策
セキュリティ対策

ア.セキュリティ対策
 電子化に伴い発生し得る脅威に対するセキュリティ対策を表5−5に示す。

表5−5 セキュリティ対策の要点
脅威セキュリティ対策
ネットワーク上での盗聴・改ざん・偽造・なりすまし通信の安全性確保
侵入を伴う盗み見・複製・改ざん・偽造・消去コンピュータウイルスの侵入申請受付サーバの安全性確保

  1. 通信の安全性確保の検討
     通信の安全性確保に関して発生し得る脅威と必要とされるセキュリティ対策についてその概要を表5−6に示す。

    表5−6 通信の安全性確保
    脅威セキュリティ対策
    盗聴・(改ざん)・(偽造)・(なりすまし)認証局の機能を利用した通信の暗号化
    なりすましパスワードによる認証と監視システムの導入
    改ざん・偽造認証局の機能を利用した不正行為の防止
    ( )のものは間接的効果

    ■認証局の機能を利用した通信の暗号化、不正行為の防止

     認証局から発行される公開鍵証明書を申請受付サーバが利用し、インターネット上において申請者の端末と申請受付サーバとの間に暗号通信を実現し、改ざんや偽造に対しても自動的にチェックをかけることを可能とする機構を導入するべきである。
    ■パスワードによる認証と監視システムの導入
     厳密な本人確認を実現するためにユーザIDとパスワードによって認証を行うが、パスワードの強度チェック、厳密なパスワードの更新管理、パスワード入力ログのチェックの実施に加え、監視システムによってコンピュータの稼動状況、アクセスログを常時監視する機構を導入するべきである。

  2. 申請受付サーバの安全性確保の検討
     申請受付サーバの安全性確保に関して発生し得る脅威とセキュリティ対策についてその概要を表5−7に示す。

    表5−7 申請受付サーバの安全性確保
    脅威セキュリティ対策
    侵入を伴う盗み見・複製・改ざん・偽造・消去ファイアウォールによるアクセス制御
    申請受付サーバの要塞化の実施
    不正アクセス検知体制の整備
    コンピュータウイルスの侵入ウイルス検知

    ■ファイアウォールによるアクセス制御

     申請受付サーバへのアクセスは適切な構成がとられたファイアウォールにより制御され、不正なアドレスからのアクセスや業務に関連しないサービスの利用は禁止される機能を導入するべきである。
     具体的には、図5−1のシステムでいえば、申請者端末からは申請受付サーバA(Webサーバ)にのみアクセスを許可し、申請受付サーバB(データベース)へのアクセスは申請受付サーバA(Webサーバ)からのみ許可する。
    ■申請受付サーバの要塞化の実施
     申請受付サーバ上で提供されているサービス・コマンド・ツールなどを制限し、要塞化手順に従って申請受付サーバのセキュリティレベルを向上させる。また、セキュリティ監査ツールを利用し、申請受付サーバの弱点を発見し、セキュリティ対策を実施する。このセキュリティ監査は定期的に実施し、弱点の早期発見と対策の実施を行う機能を導入するべきである。
    ■不正アクセス検知体制の整備
     申請受付サーバの利用に関する監査ログを継続的に収集して、それらについて定期的な精査を実施し、弱点の把握・対処を迅速に行うことができる機能を導入するべきである。
    ■ウイルス検知
     申請受付サーバにアクセスするデータをすべてウイルス検知ツールによりチェックし、ウイルスやトロイの木馬のような悪意あるコードの申請受付サーバへの混入を防止する機能を導入するべきである。

(3)運用面における対応
 簡易システムはインターネットを利用したシステムであることから、運用面におけるセキュリティに関する対応については、当面、以下のようなことが求められると考えられる。

  1. オンライン申請・通知の到達確認システム(手続)を構築する。
  2. 一般占用のオンライン申請は行わない。
  3. 道路管理者から申請者への通知文書(書面)は、許可の真正性を担保するものとして継続する。(申請者への交付を原則とするが、オンラインによる通知を行う場合に申請者が交付を希望しないのであれば道路管理者が保管し、申請者が必要とする際に交付する等の手続の簡素化は可能。)



第4節 システム開発及び運用に当たっての必要整備負担の検討

 システム開発及び運用に当たっての必要整備に関しては、占用事業者の設備及びその保守等は占用事業者が負担し、道路管理者の設備及びその保守等は道路管理者が負担することが当然と考えるべきである。
 また、システム開発費や、全国共用される申請受付サーバの運用における必要整備費用、その運用・保守等の費用負担については、道路占用許可申請手続の電子化が進展した段階にあっては、関係する道路管理者の共同負担とすることを検討するべきである。



第5節 法令面の検討

(1)オンラインによる電子化のための措置
 従来の紙媒体による申請手続をオンラインによる電子的手続にするための法令面の措置について検討を行った。
 他省庁における最近の動向等からして、道路占用許可申請手続のオンラインによる電子化に当たっては、法改正はせず、省令レベルでそれが可能である旨を確認的に規定する方向で検討を進めることでよいと考えられる。
 省令に規定する場合、追加する規定は概ね下記の事項であると考えられる。

  • 電子情報処理組織(行政のコンピュータと申請者のコンピュータとの間のオンラインシステム)の定義
  • 電子情報処理組織の使用によることができる手続
  • 電子情報処理組織を使用する場合の文書の到達時点

また、占用許可制度は道路管理者が行う許可であるため、手続の詳細については、所管地域の事情を踏まえ、各管理者の条例、規則、通達等により定められる必要がある。

(2)FDによる電子的手続
 本研究会は、道路占用許可申請手続のオンラインによる電子化について検討してきたが、FDによる電子化についても別途検討されるべきである。



第6節 今後のシステムの展開

(1)道路管理業務に係るシステム間の連携
 道路占用許可申請手続だけでなく、将来的に電子化対象範囲を道路工事調整や占用物件管理へ拡大しようとすれば、道路管理システムのようなスタイルへの移行が重要な位置付けとなってくる。しかし、これを実現するためには、すべての占用物件に関するデータ整備及び全国的な道路地図データの整備が必要となり、いずれも膨大なデータ量となることが推定され、電子化を可能とする範囲内で順次段階的に実施せざるを得ない。将来的に道路占用に係るシステムを充実させていくため引き続き検討を行うことが必要である

(2)道路台帳のデジタル化
 多くの地方自治体においては、地理情報システム(GIS)の導入が進められつつあり、防災対策、都市計画、土地登記簿管理等に利用するために、デジタル地図データ整備の気運が高まっている。
 道路管理については、道路台帳図がデジタル化され、頻繁にデータ更新がなされれば、道路占用許可申請手続の電子化において課題となっている詳細地図データの整備コスト等の問題が解決され、道路工事調整や占用物件管理での利用も可能となる。
 このようなことから、道路占用許可申請手続の電子化の進展の一方、道路台帳のデジタル化が推進され、将来的に双方の連携が図られ、道路管理の高度化が実現されることが望ましい。

(3)電子決裁
 行政情報化においては、りん議決裁のシステム化、行政情報のデータベース化等による意思決定の迅速化、的確な情報管理等行政運営の高度化を推進することが求められている。
 道路占用許可申請手続の電子化においても、申請処理の短期間化等が期待できるため、将来的なグループウエアの活用等を図りつつ電子決裁を行うよう引き続き検討を行うことが必要である。

(4)電子決済
 行政情報化においては、電子商取引の実現の動き等国の内外の情報化の進展に対応して、調達手続及び歳入歳出の電子化の民間部門との整合性のとれた推進が要請されており、官庁会計事務データ通信システムの導入による統一的な処理体系の早期確立が求められている。
 道路占用許可申請手続の電子化においても、道路占用料の支払いについて、債権発生通知から道路占用料の納入までを電子化できるよう引き続き検討を行うことが必要である。

(5)道路使用許可申請手続との連携
 道路占用に当たっては、通常、道路使用許可申請も行う必要があるため、これらの手続をワンストップで実施できるようにすることが適切である。しかし、道路占用許可申請は占用物件を管理する者が申請し、道路使用許可は占用工事に当たる施工業者が申請するのが通例である。また、道路占用許可申請先である道路管理者の管轄区域と道路使用許可申請先である警察署の管轄区域とは一般的には異なっている。これらの状況等ワンストップサービス実現のためには解決すべき課題が多い。
 したがって、今後の道路占用許可申請処理のためのシステム及び道路使用許可申請処理のためのシステムの開発、運用を通じ、双方のシステムの相互連携に向け、引き続き関係機関の情報交換と協力を行うことが適切である。




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