Q3−1 取組を進めようにも、予算がない。

様々な工夫を行えば、予算がなくても色々できる。
 @国・県の補助制度の活用による財源の確保。
 A職員自らの作業と委託の適切な組み合わせ(コンサルタントとの役割分担)。
 B交通事業者や住民との役割分担(人・モノ・カネすべてを自治体で負担しない)。
 C民間の資金・活力の活用 など。

 効果的な計画を策定し実施するためには、ニーズを的確に把握・分析して、これに合った計画を策定する必要がある。そのための調査・分析、計画の策定に費用がかかったとしても、期待通りの効果が出ることで、トータル(全体)で費用の低減や、より効果的な使い方につなげることができれば、それはムダを防止するための投資となる。
 国・県の補助制度の活用による財源の確保や、職員自らの作業と委託の適切な組み合わせ(コンサルタントとの役割分担)、交通事業者や住民との役割分担(人・モノ・カネすべてを自治体で負担しない)、民間の資金・活力の活用など様々な工夫を行いながら、地域交通体系の充実に向けた取組を進めている自治体等もある。
 地域交通に活用できる制度としては、環境対策や地域活性化のために活用できる補助制度もあることから、幅広く情報を集めることが重要である。
 また、調査や計画の策定のための作業も、職員自らの作業と委託を組み合わせて、職員ではできない部分(専門的な技術・知識が必要な部分)だけをコンサルタント等に委託することで、費用を縮減することができる。
 交通事業者や住民との役割分担を行うことも有効である。費用負担を求めることが難しい場合でも、マンパワーを提供してもらうことなどが考えられる。
 民間の資金・活力としては、例えば、広告費などとして地域の企業に資金提供を依頼することなどが考えられる。

  外部への委託は最小限にとどめ、直営で実施

・大分県宇佐市では、市町村合併後の新市の公共交通体系の再編を検討するため、地域交通計画の策定に着手した。
・この際、GISを活用した作業は専門のコンサルタントに委託したものの、アンケート調査の設計・実施から計画立案まで基本的に担当課が主体となって実施した。
・このように、コンサルタントとの役割分担を工夫することにより、限られた調査費を有効に活用することができる。
・また、京都府京丹後市では、市民に路線バスを知ってもらうための施策として、すべてのバス停が掲載された時刻表を作成し、全戸配布した。
・時刻表は年に2回の頻度で更新、発行している。原稿の作成にあたっては、自治体職員が自らレイアウト等の編集を行い、印刷のみを委託している。


  調査、実施、運営に至るまで多様な財源・資金を活用

・大分市では、公共交通に投入できる財源が限られているなか、何ができるかを検討した結果、モビリティマネジメントに行き着いた。
・必要な資金は、国の有利な補助制度を活用した。平成17年度は国土交通省の国土創発調査、平成18年度からは2ヵ年、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金を活用した。
・大分市の現状は、バスサービスの内容が市民によくわからない状況であったため、バスを「知ってもらう」取組と「利用を働きかける」取組を同時並行で進めることとした。
・バスを「知ってもらう」取組としては、複数のバス事業者の間で系統番号を統一した新たなバスマップを作成した。
・補助金で作成したバスマップの原版を活用して、2年目以降は協賛広告を財源に印刷会社が主体となって発行している。協賛広告が集めやすいよう、行政と民間の協働での取り組みであることを明示し、行政が配布場所を提供するなどの支援を行っている。
・限られた財源でできるだけ多くの部数を発行するため、4月中の発行にこだわらず、印刷会社の業務の閑散期に印刷するなどの細かな工夫を行っている。



 Q3−2 計画で他の機関や部局で対応が必要となっても、それを担保する術がない。

実施段階で協議・調整、協力が必要な関係部局、機関は、当初から情報を共有することが重要。
制度的に協議結果を担保する手法としては、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づく法定協議会を活用。
首長レベルの政策課題に位置づけることで、いわゆるトップ営業や庁内での強力な推進体制を構築することもできる。

 例えば、交通担当部局が、総合的なバス交通の利便性の方策を検討し、その中でバスの走行環境の改善が重要な課題となり、バス路線の道路改良が必要になったとする。
 道路改良を実現するためには、土木部局との協議・調整が必要となるが、仮に土木部局が当初の検討に加わっていなければ、協議・調整が難航することも想定される。
 「Q2−1」にあるように、取組の実施に当たり協議・調整、協力が必要な関係部局、機関は、当初から情報を共有しておくことが、検討が円滑に進むポイントである。
 関係者の合意形成に関しては、「Q2−10 合意形成や調整を進めるに当たって留意すべきこと、調整を円滑に進めるためのコツは何か。」も参考とされたい。
 また、制度的に協議結果を担保する手法としては、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づく法定協議会を活用することが考えられる。法定協議会において協議が調った事項については、法定協議会の構成員はその協議の結果を尊重しなければならないとされている。
 さらに、他の機関や部局で対応をお願いするには、首長の役割も大きい。いわゆるトップ営業で他の機関の了解を取り付けたり、庁内においても、リーダーシップの発揮により、予算の確保も含めて、全庁的な推進体制を整えたりすることができる。


 Q3−3 モビリティ確保に向けた取組を対象とした予算制度には、どのようなものがあるか。

国土交通省の支援制度だけでなく、環境省や経済産業省、総務省など、多様な支援制度がある。


 本調査で実施したアンケート結果を見ると、国土交通省の支援制度だけでなく、環境省や経済産業省、総務省など、多様な支援制度を活用している(国土交通省の支援制度は「X.支援制度」を参照のこと)。