T.小都市と周辺地域を結ぶ交通施策の必要性

1.小都市と周辺地域を結ぶ交通施策の必要性

 「小都市とその周辺地域」とは、概ね人口10万人未満の都市と、その周辺の農山漁村からなる「広域市町村圏」程度の広がりを持った圏域を指します。  小都市は、圏域の中核として商業、医療等の都市的サービスを周辺地域に提供していくことが期待されていますが、こうした地域では一般に交通サービスの利便性が低いことから、交通手段は自家用車に依存しています。一方、全国平均と比較して高齢化が進展しており、自家用車を利用できない高齢者や身障者等が都市的サービスを享受するためには、小都市と周辺地域を結ぶ交通サービスを充実させる必要があります。  また、近年では高齢者の運転免許保有率が高まり、高齢ドライバーも増加しつつあることから、身体的機能の低下に対する安全性の確保など、高齢ドライバー対策も求められるようになってきています。
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2.交通サービスに関連する規制・制度の現状

(1)バス・タクシーの現行事業制度

 現行の事業制度では、乗合バスは、いわゆる需給調整規制のもとで免許を受けた事業者のみが運行でき、貸切バス事業者やタクシー事業者が乗合バス事業を行うことや、自家用自動車を用いて運送事業を行うことは、原則として認められません。ただし、地域の実情に応じた交通サービスの提供を可能とするため、以下に示すように、法の例外規定の適用などによる弾力的な運用が行われています。
 

(2)バス事業等に対する現行補助制度

@運営補助制度
 国による地方バス生活路線維持のための現行補助制度では、平均乗車密度の低い第3種生活路線は、原則として3年で補助が打ち切られ、市町村等による代替バスの運行もしくは路線の廃止を迫られることになります。また、黒字事業者においては内部補助により路線が維持される仕組みとなっています。
 
A施設整備等に対する補助制度
 主に施設整備等を対象とした国の助成制度として「バス利用促進等総合対策補助制度」があります。  また、バス事業と類似した交通サービスに対する国の補助制度のうち、スクールバス(へき地児童生徒援助費等補助金)については、補助金の交付を受けた場合においても、地域住民を対象とした有償・無償の運送が認められています。
 

(3)規制緩和の動向

 交通事業全般について需給調整規制が原則として廃止されることとなり、乗合バス事業の需給調整規制は、生活路線の維持方策の確立を前提として、平成13年度までに廃止されることとなっています。併せて、運賃規制は、これまでの認可制から上限の認可を受けた範囲内で適用する運賃を届け出る上限認可制となります。
 乗合バス事業における生活路線の確保方策については、運輸政策審議会答申において、内部補助を前提としない新たな仕組みが必要であり、国・地方公共団体が責任を分担する中で、地方公共団体がより主体的に関与していくことが適当とされています。補助制度や地域協議会のあり方は、平成13年度の実施に向けて検討されています。
 

(4)交通バリアフリー化に関する法制度

 平成12年5月に交通バリアフリー法が成立し、公共交通事業者は鉄道駅等の旅客施設の新設・大改良、車両の新規導入の際、法律に基づいて定められるバリアフリー基準への適合が義務づけられることになりました。


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