2.住民負担によるバス運行−福井県勝山市−

ポイント
■交通サービスの維持には、受益者である住民の負担が必要との合意に基づき、沿線世 帯が回数券購入によって費用負担している。
■バス路線維持に向けた関係者間の検討において、行政はその調整役を努める一方、住 民の合意形成や実際の費用徴収では、区長が中心的な役割を担っている。
■当初はバス路線廃止に対する住民の危機意識が住民負担によるバス運行実現の方向に働いていたが、約10年の経過の中で、受益者負担の意識の継続と浸透が重要な課題となっている。
 

(1)地域交通の状況と施策のねらい

@地域概況
・福井市より京福電鉄越前線で所要時間約50分を要する勝山市は、人口29,287人(平成10年)であり、隣接する大野市(人口40,627人)、和泉村(同828人)の2市1町により大野・勝山地区広域市町村圏を形成している。
A導入の経緯
・10数年前、市内を運行していた乗合バス路線のうち2路線が、第2種生活路線から第3種生活路線に転落、廃止の危機に直面したため、危機感を募らせた地元区長会、学校、事業者および行政が、バス路線維持のための協議を重ねた。
・路線維持に対しては、行政や事業者のみが負担するのではなく、受益者となる地元住民が協力し、負担することが同意され、平成2年に最初の住民負担による代替バスが運行された。

(2)施策内容

@交通サービスの概要
・路線延長が長いことから、全区間を直通する急行バス(トイレ付)と、各市町村において通学時間に合わせた時間調整を行う普通バスが運行されている。
運営主体 勝山市 運行委託先/京福バス梶i平成12年4月1日名称変更)
実施場所 勝山市(北谷、野向、鹿谷)
導入時期 平成2年
施策内容
 
車両/59人乗バス 路線数・延長/3路線
運行頻度/各路線3往復(平日・休日とも)
導入時 初期費用 なし(既存路線バスから移行)
負担者
(補助制度)
 
運営時 運営費用 4,048 万円(うち運賃収入933万円)
負担者
(補助制度)
県補助330万円(地方バス路線維持費補助金)、市補助2,462万円(過疎バス路線維持費補助金)、地域住民の負担323万円
A住民負担のしくみ
・住民の負担は、現在年4,000円/世帯。対象となる3路線の沿線世帯は、運行協力乗車券(金額式乗車券)を購入することによって負担する。この運行協力乗車券は、路線ごとに発行されるものであり、当該路線以外の区間での使用はできない。
・運行協力乗車券の販売に際しては、生活保護世帯など徴収対象外の判断は、区長の一任によっている。
・乗車券の購入(料金徴収)方法は図2-3に示すとおりである。
図2-3 住民負担乗車券の料金徴収方法
 

(3)工夫した点・苦労した点

・住民の合意形成にあたっては、区長会が重要な役割を果たし、運用面でも各世帯から費用を徴収する役割を担っている。
・住民負担によるバス運行方式を採用してから10年の歳月を経、バス路線の必要性についての地域住民の意識が薄れ、また区長自体も代変わりしたこと等により、バス路線維持に対する地区・世帯による温度差があり、運行協力乗車券購入を拒否する世帯があるなど世帯全てから徴収できる状況ではなく、バス路線維持においては、住民の受益者負担の意識を浸透させる努力が必要とされている。

(4)施策の実施効果

・地域住民の移動手段としてバスが存続したことが最大の効果である。
・費用負担していない市民の多くは、住民負担による路線維持の努力の存在すら知らないのに対し、沿線住民は、当然これを認識しているが、利用者増につながっていない。

(5)今後の展望と課題

・高齢者の交通手段を確保するために、平成12年度から県の補助事業で商店街、病院、市役所を巡回する福祉バスの運行を予定している。
・一方、第2種路線維持、廃止路線代替バス運行に加え、鉄道存続に膨大な財政負担を行っており、平成13年度から規制緩和による事業者の撤退も想定されることから、総合的な交通施策を検討する必要に迫られている。


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