2.小都市と周辺地域間の交通サービス利用に関する施策
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(1)乗合型交通サービス利用に関する施策
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@多様な主体の参画と住民参加の促進
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平成13年度に予定される乗合バス事業の需給調整規制廃止後は、効率的な経営に向けた事業者の自助努力が求められる一方、事業者には不採算路線からの退出の自由が認められることになるため、地域に必要な交通サービスを維持・提供していくには、地方公共団体(市町村、都道府県)、地域住民、事業者等、地域にかかわる多様な主体が参画して取り組んでいくことが求められます。
【多様な主体の参画と住民参加の促進に関する施策】
■地方公共団体等による自主運行バスの運営
■住民による交通サービスの運営/住民による費用負担
■民間事業者への業務委託
■住民の送迎・相乗りの促進
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- 住民に最も身近な行政機関である市町村は、従来からの廃止路線代替バスの運行に加え、今後は新規の交通サービス提供も含め、総合的な見地から自主運行バスの導入を検討していくことが必要と考えられます。
- 一方、自主運行バスのほとんどは、運賃収入だけでは運営費用を賄えず、行政の財政負担によって成り立っていることから、交通サービスの充実には財政上の制約があります。そこで、交通サービス提供の主な受益者となる地域住民においても、交通サービスの運営費用の一部を負担したり、あるいは自治会などの住民組織自体が交通サービスの運営主体となるなど、その参加を促進する必要があると考えられます。
- 不採算路線における事業者の役割としては、市町村や地域住民の要請に応じて実際の交通サービスの運行を請け負うことが考えられます。その際には、交通事業のプロとして、市町村などに積極的な改善提案などを行っていくことが求められます。
- また、人口規模が少なく、乗合型の交通サービスが成立しないような地域においては、自家用車による地域住民の互助的な相乗りや送迎に頼らざるを得ない場合もあります。海外ではこれらを交通サービスの一部として認知し、促進している場合もあり、わが国でもその必要性やあり方について今後検討する必要があると考えられます。
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(主要施策の概要)
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■地方公共団体等による自主運行バスの運営
<導入のねらいと施策概要>
・廃止された民間事業者のバス路線を引き継いで廃止路線代替バスを運行したり、新たに乗合型の交通サービスを提供することにより、住民生活に不可欠な交通手段の確保、高齢者・身障者の社会参加促進、中心市街地活性化などを図る。なお、地方公共団体が地域密着型の交通サービスとして自主運行する、いわゆる「コミュニティバス」のうち、都市と周辺地域を結ぶ形態のものがこれに該当する。
<具体的な実施形態等>
・自主運行バス(乗合タクシー含む)を運営するには、表4-1に示す形態がある。有償の場合、道路運送法に基づく許可が必要となるが、これには自らが運行主体となる形態(80条バス)とバス事業者が運行主体となる形態(21条バス)がある。
・地方公共団体が運行主体となる場合でも、有償・無償を問わず、実運行業務を事業者等に委託することが可能である。
・自主運行バスの運行経費は、実負担額の60%(廃止路線代替バスの場合は車両購入費も含めて実負担額の80%)が特別交付税額の算定対象となる。
<実施時の留意点>
・交通事業者が運営する既存の乗合バスやタクシーへの影響を十分考慮し、これらの事業活動を妨げないようする配慮することが必要であることに加え、地域の交通体系全般における位置づけを考慮し、既存の交通サービスと併せて総体として最適な交通サービスが提供されるようなサービス内容とすることが求められる。
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表4-1 自主運行バスの形態
運賃収受 | 運行主体 | 道路運送法に基づく許可 | 実運行業務 | 許可等の条件(注1) |
無償 | 市町村等 | 不要
(自家用運送) | 市町村等直営 | ・限定された地域住民等を無償で運送する場合
・既存の乗合バス路線との競合がないか、競合があっても影響が軽微である |
事業者等に委託 |
有償 | 市町村等 (注2) | 第80条第1項 (自家用自動車の有償運送) | 市町村等直営 | 以下のいずれかを満たす
・廃止路線代替バス
・既存の乗合バス路線との競合がないか、競合があっても影響が軽微である、もしくは影響を及ぼさない |
事業者等に委託 |
事業者 (注3) | 第21条第2項 (貸切事業者の乗合運送) | 事業者 |
注1) | いずれも過疎地域や一部の都市地域などの交通空白地帯での運行であることが条件。 |
注2) | 主に都市部において、地方公共団体がいわゆる公営交通として運営しているバスは、道路運送法第4条による免許を受けたバス事業者として運営するものであり、本表には該当しない。
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注3) | 乗合バス事業者が道路運送法第4条に基づいて運行主体となることも可能。
乗合タクシーの場合、事業者は貸切事業免許を取得の上、同法第21条を適用。 |
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■住民による交通サービスの運営/住民による費用負担
<導入のねらいと施策概要>
・地域住民自らが、交通サービスの運営主体となったり、交通サービス提供にかかる費用の一部を一律的に負担することにより、地域住民が自らの問題として関心を深め、本当に必要な交通サービスのみを提供することが可能となりやすい。
<具体的な実施形態等>
・地域住民が交通サービスを運営する場合、自治会、協議会等の住民組織が運営主体となり、実際の運行は交通事業者に外部委託することが考えられる。
・地域住民による費用負担の方法として、各世帯ごとに年間もしくは月間等の負担額を決定し、負担金もしくは回数券の購入といった形態で負担することが考えられる。
・運賃収入や地域住民による負担金収入で費用を賄いきれない場合、市町村が運営主体となる自治会等に対して間接的な費用負担を行うことが想定される。
<実施時の留意点>
・既存事業者への影響や総体として最適な交通サービスを提供することについて、必要に応じて市町村等が助言・調整等を行うことが求められる。
・交通サービスの運営や費用負担に対する住民の合意形成や実際の負担金徴収にあたっては、自治会長、区長等によるリーダーシップの発揮が求められる。
・廃止路線代替バスへの移行時や新たな交通サービスの導入時には、住民の関心が高まり、合意が成立しやすいが、その後継続的に住民が負担の意識を持ち続けるためには、住民の参加する協議会を定期的に開催するなどの仕掛けづくりが求められる。
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■民間事業者への業務委託
<導入のねらいと施策概要>
・地方公共団体や地域住民が乗合型交通サービスを運営しようとする際、民間事業者に業務を委託し、その経営ノウハウや自助努力を活用することにより、交通サービス提供にかかる運営の効率化が期待される。
<具体的な実施形態等>
・道路運送法21条に基づき貸切バス事業者が運行主体となる形態、同法4条に基づき乗合バス事業者が運行主体となる形態、同法80条に基づき地方公共団体が運行主体となりながらも実運行業務やその一部を民間事業者に委託する形態といった多様な形態が考えられ、具体的な委託形態はケースバイケースで判断する必要がある。
<実施時の留意点>
・委託先の選定にあたっては、複数の事業者から運行計画や経費見積を提出させるなどして競争原理を一部導入し、業務の効率化を促進することも必要と考えられる。
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