2.小都市と周辺地域間の交通サービス利用に関する施策
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(1)乗合型交通サービス利用に関する施策
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A交通サービスの提供形態の最適化、異分野連携の推進
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- 交通サービスの提供形態の最適化として、具体的には、バス路線網の再編やデマンド制・フリー乗降制など運行形態の柔軟化、地域の交通需要に応じたバス車両の小型化や乗合タクシーへの切り替え、均一運賃制や長距離区間の運賃低減など利用しやすい運賃体系の導入といったことがあげられます。高齢者や身障者の利用を促進するという意味では、低床車両やスロープ付き車両など利用しやすい車両の導入も必要となります。
- 異分野連携については、スクールバス、福祉バス、患者輸送バスなどと一般の乗合バスを統合したり、住民が病院への通院日を特定の曜日に合わせ、その曜日にのみバスや乗合タクシーを運行させることなどが想定されます。
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(主要施策の概要)
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■バス路線網の再編
<導入のねらいと施策概要>
・バス路線網を地域の実情に応じて再編することにより、利用者のニーズに適切に対応することに加え、定時性向上や最適な車両の選択による効率性向上等が図られる。
<具体的な実施形態等>
・基本的にはバス路線網を幹線系統と支線系統に整理し、長距離路線は極力なくす方向で再編することにより、各路線の延長が短縮され、定時性が確保しやすくなり、また、幹線には大型バス、支線には小型バスやワゴンタクシーというように、輸送需要に応じた最適な車両の選択も可能となる。
<実施時の留意点>
・幹線系統と支線系統の接続をいかに円滑にできるかがポイントであり、ダイヤ(待ち時間の最小化)、運賃(ゾーン運賃、乗継割引等の導入)、ターミナル(待合室の設置等)、情報(乗り継ぎのわかりやすさ)の各面にわたる乗り継ぎ抵抗の軽減が求められる。
・小都市地域内ではターミナルのみならず、商店街・大規模小売店、総合病院、福祉施設等まで路線を延伸したり、迂回したりすることにより、都市内循環バスとしての機能を持たせる可能性についても検討する必要がある。
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■デマンド制、フリー乗降制の導入等運行形態の柔軟化
<導入のねらいと施策概要>
・定時・定路線型のサービスである乗合バス・乗合タクシーにおいて、デマンド制(需要に応じて路線を一部変更もしくは休止する)、フリー乗降制(指定区間ではバス停以外のどこでも乗降可能)の導入により、よりドアツードアに近いサービスを提供し、利便性の向上や運行の効率化を図る。
<具体的な実施形態等>
・デマンド制については、特に路線終端部をデマンド化することにより、当該区間の利用者がいないときに運転手の労働時間短縮や車両走行距離の短縮を実現できる。
・病院等の施設内に呼び出し装置を設置したり、インターネットや携帯電話のデータ通信機能等IT技術(Information Technology)を活用することにより、より柔軟性の高い運行体系を実現できる可能性が高まるものと考えられる。
・目的地を病院等に限定した交通サービスであれば、事前予約制の採用やIT技術の活用などにより、乗合型であっても各利用者宅を巡回し、ドアツードア型に近い交通サービスを提供することが十分可能と考えられる。
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■乗合タクシー・小型バス車両の導入
<導入のねらいと施策概要>
・地域の交通需要に応じて、乗車定員10人以下(運転手含む)のワゴンタクシーや乗車定員11〜20人程度の小型バス車両を導入し、運行の効率化を図る。
<具体的な実施形態等>
・輸送需要の小さい地域において、需要に応じた小型車両を用いることにより、車両購入費や燃料・油脂費などの運行経費が削減されるほか、幅員の狭い道路にも乗り入れることが可能となるなどのメリットがある。
・乗合タクシーは、タクシー事業者が貸切事業免許を取得した上で、道路運送法第21条に基づく許可を得ることにより運行が可能である。また、普通二種免許で運転可能なことから、バスと比較して運転手確保が容易になる。
<実施時の留意点>
・乗車定員11〜20人程度のバス車両は国内で市販されている車種が少なく、かえって車両費が高額となる場合もあることから、自動車メーカーにおいて、小型バス車両のさらなる開発・商品化が期待される。
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■高齢者・身障者にも利用しやすい車両の導入
<導入のねらいと施策概要>
・バス・乗合タクシー等の車両に、高齢者・身障者にも利用しやすい低床車両、リフト・スロープ付き車両等を導入する。
<具体的な実施形態等>
・リフト付車両は車両費が高価となることから、ノンステップバス、ワンステップバスにスロープを設置した車両の導入を促進していくことが現実的と考えられる。
<実施時の留意点>
・2000年5月に成立した「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)により、車両の新規導入の際には、バリアフリー基準への適合が義務づけられる(既存の車両については努力義務)。
・小型ノンステップバスの開発・導入は遅れていることから、事業者における導入促進に加え、自動車メーカーにおける積極的な開発・商品化が期待される。
・車いすの乗降にあたっては、バス停に十分な幅員のあること、車両床面との高低差が極力少ないことが求められ、こうした施設整備面での対応も併せて行うことが必要である。
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■利用しやすい運賃体系の導入
<導入のねらいと施策概要>
・均一運賃制の導入、短距離区間の運賃引き下げ、長距離区間における上限運賃制の導入、高齢者定期券の発売など、運賃体系を利用しやすいものとすることで、乗合バス・乗合タクシーの利用促進を図る。
<具体的な実施形態等>
・均一運賃制は一定のゾーン内で運賃を定額とするものであるが、運行区間がより広域に及ぶ場合には、いくつかのゾーンを設定し、ゾーン内や同一ゾーン間において運賃を定額とするゾーン制運賃の導入が考えられる。
・短距離区間の運賃引き下げについては、これまでバスを利用するには距離が近すぎて割高と考えられていた区間において、100円、150円といった運賃設定を行うことにより、バス利用者の増加が期待される。
・上限運賃制は、区間運賃に上限を設け、山間部等の運行距離の長い路線において、一定距離以上の区間の運賃を一定とすることにより、長距離利用者にとって運賃の高さが利用の制約とならないように配慮するものである。
・高齢者定期券は、高齢者のバス利用を促進するため、一般よりも割引率の高い定期券を発売するものである。
<実施時の留意点>
・利用者増加による増収よりも運賃の引き下げに伴う減収の方が大きければ、利便性の向上には寄与しても、事業採算性は悪化することとなるため、運賃改定に伴う効果・影響について十分に検討し、あるいは一定の試行期間を設けた上で、実施することが適当と考えられる。
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■異分野の交通サービスの統合
<導入のねらいと施策概要>
・スクールバスについては、市町村が運営するスクールバスに限って、登下校等の利用に支障のないこと等を条件として、住民利用(スクールバスへの一般乗客の混乗、間合い使用による乗合バスの運行等)が認められている。なお、無償の場合は文部大臣への届出、有償の場合には文部大臣の承認および道路運送法第80条に基づく運輸大臣の許可が必要である。
<具体的な実施形態等>
・リフト付車両は車両費が高価となることから、ノンステップバス、ワンステップバスにスロープを設置した車両の導入を促進していくことが現実的と考えられる。
<実施時の留意点>
・医療・福祉分野において国の補助を受けて購入した車両は、目的外使用が認められていない。
・複数の交通サービスを統合する際には、運転手等の人員削減を伴い、地域における雇用機会の減少が想定されるため、従来の運転手の退職時を契機とする等の配慮が求められる。
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■医療・福祉施設等の業務時間や地域住民の利用日・利用時間の調整
<導入のねらいと施策概要>
・病院・診療所等の医療施設や福祉施設等の業務時間と交通サービスの運行ルート・ダイヤを調整したり、これらの施設を利用する曜日・時間帯等を地域住民が調整することにより、交通サービスの輸送需要の拡大や集約化が期待される。
<具体的な実施形態等>
・鉄道や他のバス路線と接続する路線や複数の医療施設・福祉施設等を経由する路線においては、乗合バス等のルート・ダイヤを医療施設・福祉施設等の業務時間(診察開始時間等)に合わせるだけでなく、医療施設・福祉施設等に協力を求め、業務時間を調整することにより、効率的な運行ルート・ダイヤの設定が可能となる。
・これらの施設を利用する曜日・時間帯等を地域住民が調整し、これに合わせて乗合バス等の交通サービスの運行することにより、輸送需要を集約化し、交通サービスの提供に必要な輸送需要を確保することが可能となる。
<実施時の留意点>
・時間調整の対象となる医療施設・福祉施設や地域住民の合意形成と協力体制の構築が前提となる。
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