国土交通省
 国土審議会調査改革部会
 第5回地域の自立・安定小委員会・議事概要

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  1. 日時
     平成15年9月11日(木)18:00〜20:20

  2. 場所
     中央合同庁舎3号館11階特別会議室

  3. 出席委員(50音順)
     荒井委員、池上委員、江崎委員、大西委員長、岡部委員、古川委員、山岸委員
    オブザーバー
     中村部会長

  4. 議事
     (1)開会
     (2)1「地域の自立」(神野直彦東京大学教授よりプレゼンテーション)
      <ポイント>
    • 1990年代に入り、国家と国民が分化するなど、1つの時代が終わったが、日本はそれを確認できていない。その中で、ローカル化に失敗し、地域経済が崩壊し、地方での人間の生活の場が喪失。それぞれの地域が岩のようにまとまり、その強固な岩の上に国民国家が形成されていないとグローバル化した経済に対応できない。
    • 自立的な地域とは人間が生活していく機能が包括的にそのエリアにそなわり、生活が完結できる地域。その機能が喪失すると人口の流出が起こる。パリでは20区あるが、それぞれその区の中で生活機能が完結している。ヨーロッパでは文化=生活様式に誇りをもち、守られているため、人口集中がおこならい。一方、同じ生活様式を求めると人口移動・集中がおきてしまう。
    • 発展とは、内在していたものを解きほどくという意味であり、したがって、自立的な発展か、内在的な発展しかありえない。その中で、コモンズ=人間の絆と人間の生活の場を再生することが重要。
    • 自立的地域の構築に関する研究会で提言した「ほどよいまち」は中心部と周辺部がほどよくつながることで人間の生活の場を復活するもの。
       プレゼンテーション後、質疑応答
       2「ほどよいまち」づくりについて
        1地域の現状をふまえ、今後どのような地域づくりを目指せばよいのか。
        2その際、国と地方公共団体が担う役割は何か。
        3アウトカム指標は何か
       事務局より説明後、議論。
     (3)その他
     (4)閉会

  5. 主な発言内容(順不同)
    (1)地域の自立について
    • 地域の自立を考えた場合、現在は情報通信・交通が発達しているため、人の行き来や、住み替えは地域の内外で起こっている。地域に生活機能が揃っており、日常生活を送ることは充分に可能になると地方でも昔と比べ交易や交流の度合いが高くなるのではないか。
    • 情報とはそもそも人やものを動かさなくてもよくするためのものである。それにより、人は動かなくなり、人間と人間の絆は強まる。よって、情報化が進めば進むほど、コモンズが再興し、地域の自立につながっていく。
    • 情報が発達すれば、フェイスtoフェイスの関係が重要となる。その際、継続的関係と非継続的な関係があるが、どちらかと言えば継続的関係への欲求が深まり、人と人とのつながりが強まっていくのではないか。
    • 日本の中央に集中した国民経済は世界経済に直結していることにより、地域が不安定となっているとのことだが、地域もそれぞれ世界経済に直結しているのではないか。
    • それぞれの地域がそれぞれの生活様式を発展させる必要がある。地域経済の基盤が失われた状態では中央に集中した金融だけの経済は崩れていく。
    • スウェーデンが復活した理由は産業構造を大転換したため。日本は、1次産業が減少し、3次産業が増え、工業製品を輸出し、農産物を輸入していることで成り立っていた国民経済であり、現在は自動車産業にのみ頼っている。しかし、このまま工業品輸出が立ちゆかなければ、食料も輸入できなくなる。食料輸入の多さを解消すべき。
    • 生活様式を昔に戻すのではなく、発展させることが重要。生活様式を身の丈にあわせればよい。
    • 日本経済は重厚長大から軽薄短小になってきたが、近年、情報、バイオ、ナノテク等重点4分野に集中して構造転換を図っている。またまだ、自動車産業はリーディング産業だが、それだけに頼ってはいない。
    • 日本は情報、バイオ、ナノテク等の分野ですでに世界と比べて遅れてしまっている。日本は自動車や家電に足を引っ張られ、重点4分野の投資額が少ない。
    • 人口が少ない国は大量生産大量消費ができないため、恐怖感をもっており、工夫をし、知識への転換を行った。日本は大量生産大量消費の時代のルールに引きずられている。
    • 地域のレベルは人間の生活が完結しているエリアであり、人為的につくるものではなく、もともと出来上がっていたもの。それが、現在、完結した機能をもちえなくなっており、崩壊していることが問題となっている。
    • 現にある、あったエリアであったとしても、そのエリアは歴史的には動いているのではないか。現在、どこを中心に考えたらよいのか。
    • 自然村が生活細胞であり、その生活細胞が集まったものが「器官」となり、それが1つのエリアと考えられる。
    • グローバル化に呼応して、地域が浮き上がってきている。そのよりどころとして、昔からの生活様式がある。グローバル化とローカル化は一対となっている。ヨーロッパの人口が少ない国は地域としてグローバルの中で地域の自立を考えていた。農村と都会と国の3つの中で資金をまわしていた状態から脱して、農村と都会でまわしてくことにより、それが地域という単位になり、グローバル化と呼応することと理解できるのではないか。  
    • 日本では都会と農村の一体的エリアが崩れている問題がある。

    (2)「ほどよいまち」づくりについて
     1地域の現状をふまえ、今後どのような地域づくりを目指せばよいのか。

    • 「ほどよい」とは目指すべき指標ではなく、結果としてでてくるものでなないか。
    • 地域は少子化により、人口減となり、転換期にあるが、人口の規模は絶対的な問題ではなく、それぞれの人口のレベルでの地域の作り方がある。よって、人口減少の変化に対応した地域の作り方が必要である。
    • 地域が目指すべき単位は、慣れ親しんだコミュニティではなく、それぞれの地域で人の生活が成り立っており、1人1人が自己実現を図るために渡り歩くことが日本人の望むべき姿ではないか。よって、地域の単位は自己実現が出きる経済圏域=ブロックのような広い単位と考えるべき。かつ、経済圏域が複合化、重層化しており、交流が頻繁にあり、情報通信、交通がスムーズに行われていることにより、たえず、レベルアップが図られることが必要。
    • それぞれの地域の中で行財政、個人、経済、社会活動の自己決定的な仕組みが存在していることが必要であり、そういう意味で地域の分権、自治、自立は重要な要素。
    • 地域づくりの目指すべき視点として「ハッピー」が重要。今までは目指すべきターゲットが自明であったが、今後は違う形のハッピーさを提案する必要がある。それは、それぞれ場所に対する誇りやアイデンティではないか。その地域に住んでいてハッピーとなるものが必要であり、それは遊びや愛着の中から選び取ってくるもの。
    • NPO等を住民自治組織の復活ととらえるのはいかがなものか。両者は連携することはあったとしても別物である。
    • 市民の社会参加によって、新しい地域をつくっていくのがNPOの活動であり、多様な他分野にまたがる総合的な改革のために住民の積極的な社会参加が行われている。「ほどほど」という言葉では積極的な活動を否定的に捉えられる。
    • 右肩上がりの時代には1割の成功している地域にあこがれ、残りの地域が成功した地域を目標にして追いかけることでハッピーと感じられた。しかし、現在の何も先の見えない中、いくら追いかけてもハッピーになれずにいる状況。そのため、「あこがれ」よりも「ほどよいまち」を目指すというような発想の転換が必要であり、いくつもの目指すべき目標があるのが今の時代。
    • 10万人以下の地域で自立することはそもそも可能なのかという問題がある。現在の若い人の生活スケールは広がっており、ローカル化とは反対の動きもある。親のすねをかじりつくすまで、危機意識は薄い中では、早く身の丈にあった生活に転換する必要性を教育するような理念の教育が必要である。
    • ほどよいまちを人口単位で考えると固定的となってしまうので望ましくない。
    • 「ほどよい」は結果であり、それを日常生活を主体とした圏域の中で人生の選択=職業(職種)の選択ができることで得られるのではないか。

     2国と地方公共団体が担う役割は何か。

    • 地方公共団体がやれないことを国がカバーする仕組みが必要である。
    • 行政には、誇りやアイデンティティをもてる地域づくりができる仕組みづくりが重要。
    • 若い時に都会等で暮らしていてU,Iターンをしてくる人物が地域づくりには重要である。Uターンできる土壌として、親の面倒をみることへの支援拡充等が重要ではないか。
    • 地域における地方公共団体は最大の企業体であり、地域に与える影響は大きく、その役割を大きく考えるべきである。
    • 我が国ではNPO活動自治体職員が一市民としてやっているか否かをあいまいにしているため、悪い影響が出ている。
    • 地方公共団体はそれぞれ、いくつもの方向を目指して、その牽引役となる役割があり、国はそれに対して、指針や見晴らしの良いプラットホームのような地方がいくつもの方向を目指せる枠組みを作ることが必要。
    • 地域ごとに福祉・医療・教育等社会サービスをコーディネートすることが地方公共団体の役割であり、雇用保険、年金等の社会保障の充実をさせることや国境管理による地域の安全を守ることが国の役割である。
    • 地域づくりは画一的でなく、いろいろな方法がある。よって、国には多様なモデルと方法論、ロードマップの作り方などを示して、それを各地域が選択していく仕組みづくりが必要である。
    • 日本では「市民社会」が重視されてこなかったが、「市民社会」を重視して、国と地方公共団体にはボトムアップ型の仕組みを国民国家の原理としていくことが必要。

     3アウトカム指標は何か

    • 指標をつくると風化するおそれがあり、指標が人の意識とどうつながっているかをチェックをする仕組みが必要である。
    • 顧客満足度(ハッピーさ)のような指標が必要であるが、これは従来型の経済的なアウトカムではない。
    • 右肩上がり時代のような指標ではなく、発想の転換を示すものが必要。人口、経済規模、土地利用は一定であったとしてもそれがどう配分され、どれだけ満足につながっているかを示せるとよい。例えば、自分の一年の時間をどう配分して、暮らしていき、どれだけ満足を得ているかというものを定量的に計れる指標が考えられる。
    • 職種の多様化の度合いが指標になる。
    • 人間の欲求には所有欲求と存在欲求があり、存在(関係)により得られる精神的満足度を計る必要がある。
    • 地域の潜在能力=「いろいろなことに対応できる能力」を図る指標が必要である。

    (3)その他

    • 現在、地方はいろいろな面で苦しんでいるが、その解決策が見つからないため、方向を示してもらいたい。そのため、形而上的な議論でなく、具体的かつ系統的な方向を示すような議論をしてもらいたい。 
    • 地方の都市の中心部の空洞化は深刻であり、構造的な改革の方向を示す必要がある。都市の発展戦略には、いままで使っていない戦略がまだまだ残っており、具体的な議論をして欲しい。

(速報のため事後修正の可能性あり)


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