国土交通省
 国土審議会調査改革部会
 第3回持続可能な国土の創造小委員会・議事概要

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  1. 日時
     平成15年8月21日(木) 14:00〜16:30

  2. 場所
     中央合同庁舎3号館 11階共用会議室

  3. 出席委員(敬称略)
     武内委員長、小田切委員、小池委員、志賀委員、中井委員、三野委員、鷲谷委員

  4. 議事概要
    (1)開会
    (2)多自然居住地域の現状と課題について
     (事務局より資料説明後、質疑応答。)
    (3)自然災害に強い国土づくりの現状と課題について
     (事務局より資料説明後、質疑応答。)
    (4)国土資源の管理の現状と課題について
     (事務局より資料説明後、質疑応答。)
    (5)閉会

  5. 主な発言内容
    (1)多自然居住地域の現状と課題について
    • 観光面に関する地域資源としては、自然資源と歴史文化資源があるが、日本では明治期までの魅力が失われてしまった。イギリスでは、人と自然とのかかわりを大切にしており、観光客も非常に多い。日本でも、今から魅力ある地域づくりをすることが必要であり、居住性を上げるという便利さと固有の魅力を守ることは両立するはず。
    • 観光という言葉と、今の観光旅行にはズレがあり、国土計画では新たないい言葉も必要。
    • 多自然居住は対象とする場所と居住の形態についての議論が必要。一方でコンパクト化の議論がある中、どのように居住の秩序を作るかが重要。限界を超えて人口が減る地域においては、少ない人口を地域でシェアすることが大事であり、交流人口、マルチハビテーション等の観点が重要。
    • 多自然居住地域は、従来型の農林業政策に対する新たな切り口としてできた。農村の非農家・非林家の観点や、インフラ整備の観点から地方都市との連携を考えたもの。
    • 人口に関しては、UIターンの分析、さらには、統計上把握できない市町村内の人口移動をより細かく見ていく必要がある。
    • 限界集落に関する把握はとても難しく一律に判断できるものではないが、現在は、例えば中山間地域の直接支払制度等、内発的な発展を支援する施策が出てきている。直接支払いという支援を受けるための集落協定さえ締結できないというところがあるなら、それは限界集落を特定化する1つの指標となるのではないか。
    • 多自然居住地域政策が目指したとおりには実態はなっておらず、その理由を精査をすることが必要。また、多自然居住の政策を推進のためのコストと得られるアウトプット(利益)が不明確であり、両者のバランスが取れるのか検討することが必要。
    • 中・大都市の居住者は、モビリティの向上によって容易に多自然居住地域に行くことが可能になっており、多自然居住地域の「居住」という概念が適切なのかどうか検討が必要。
    • 多自然居住地域は、20世紀の成長・豊かさを前提としたライフスタイルの行き着く先としては優れた概念。しかし、今後所得水準が低下した場合、都市の生活レベルが支えられなくなり、都市から出て行かざるをえないという可能性もあるのではないか。
    • 多自然居住地域の検討の起点は、農林業の衰退であったが、農林業が本当にダメなのか芽があるのか、もう一度検証することが必要。農山村地域の今後の振興の方向としては、ひとつは観光の観点で、もうひとつは、水・土地・森・空気といった自然資源論の観点から、例えばIT産業はそういう所では生産性が上がるといったことが無いのかどうか。一方、数字で評価できない豊かさもあり、兼業農家とはクラインガルテン(市民農園)を所有しているようなものとも考えられる。
    • 所得格差をジニ係数等で把握してはどうか。また、所得以外のもの、自然、精神的豊かさ等も評価軸に加えれば、多自然居住地域の満足度が高い可能性もある。人々がどの価値を重視するかで多自然居住地域の評価は異なる。
    • 林業就業者については、10年前のIターン者が、限界集落で地域のリーダーになっている例がある。林業については、人材育成の体制を整えることと、働き甲斐を重視することも必要。
    • 一定規模以上の外国人を労働力として受け入れるという考え方については、今後議論すべき課題ではないか。

    (2)自然災害に強い国土づくりの現状と課題について

    • 防災対策は、人口密度の高い都市地域とそれ以外の地域を区別するなど人口密度の程度によって対策を考える必要がある。災害により被害を受けることが予想される地域からは撤退することも必要。
    • 以前は水防組合のような地域の共同体組織が災害対策を支えていたが、現在では「公」が「私」の肩代わりをしている。「公」と「私」だけでなく「共」が重要であり、ボランティアなどの組織化を支援する対応が必要。
    • 「共」の考え方は大事で里山の問題への対応に通じる。空間を共有しながら社会をどう再構築していくのかという問題は大きな課題。
    • 地方分権の時代、、参加と連携を軸におく流れが始まったといった時代の大きな変曲点にいることを認識し、方向性を明確化することが必要。水に係わる情報は莫大で多様であるが、これらを国民にどのようにシェアするかが必要。
    • 災害と情報公開はたいへん重要なテーマ。富士山のハザードマップを作成した際に、当初は地元からは反発があったが、きちっとした災害情報を出すことにより住民や観光客に信頼感を与えることが行政の役割だと認識されてきている。
    • 高密度居住地域では集中投資をし、積極的にスーパー堤防の整備を進めるべきだと考える。また、都市と河川を一緒に考える必要がある。
    • 防災について全て国が役割を負うのではなく、私、共、地方公共団体等との役割分担が重要。この場合、災害リスクを評価するのために必要な情報がリスクを判断する人へ伝わることが大切。基本的な情報整備をGISを活用するなどして国土計画の観点から支援することも非常に重要。
    • 災害をソフトに受け止める社会システムの整備を強調すべき。国土計画の中に災害マネジメントをビルトインする考え方が必要。

    (3)国土資源の管理の現状と課題について

    • 「健全な水循環」とは何か、量・質の面から定量的に明らかにしておくことが必要。量の問題としては、水資源は今後余るのか、足りなくなるのか、はっきりとしたメッセージを出すことが必要。質の問題としては、ボトルウォーターがこれだけ普及してくるのであれば、飲み水の供給の考え方も検討する時期に来ているのではないか。
    • 指標に関しては、量は把握できるはずであり、量的に健全か不健全か判断しようと思えば可能であるが、全ての流域できちんと把握する努力がされていないため、現状では量的に健全・不健全を判断するのは難しい。
    • これまで水循環を水資源・河川管理の視点から捉えてきたが、これからは、物質循環の一つとして水循環を考える必要があるのではないか。「物質循環の健全さ」は色々な視点で整理し直すことが必要で、人工的な都市型・社会型の循環と自然型の循環とをどう整合させるかが国土全体の循環型・持続型社会の課題であり、その中の指標として健全な水循環を考えていくべき。
    • 水質に関しては、環境基準の達成の他に農薬起源等の化学物質の問題もある。
    • 森林管理の問題点として、小規模私有林に注目しているが、取組の成果から考えても公有林や大規模社有林への対応も重要。また、日本では、林業就業者について現場の労働者から、森林づくりをマネジメントする立場へキャリア・アップする仕組みがないことが問題。
    • 森林の機能分類による管理については、国は地域に適した管理を支える大まかな目安的な考え方の提示にとどめ、地域に適した森林管理を地域地域でマネジメントしていく仕組みを創ることが必要。
    • 日本では「森林」という言葉でPlantation(植林地)もCoppice(雑木林)もForest(森)もと、まったく異質なものを一括りにして考えられている。手入れが必要なもの、手入れが不要なもの、伐採して管理するものなど機能と性格の面で区分することが必要。
    • 森林の公的管理に関して、水源税が西日本では大きなうねりになっている。森林管理と所有を分離して考えることが必要。
    • 総合的土砂管理については、土砂のかつての供給パターンと今の供給パターンを比較し、土砂をかつて移動していた場所に戻す必要があるのか、戻すとしたらどういう手法が適切かということを検討することが必要。

(速報のため事後修正の可能性があります。)


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