国土交通省
 国土審議会調査改革部会
 第5回持続可能な国土の創造小委員会・議事概要

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  1. 日時
     平成15年10月27日(月) 10:00〜12:00

  2. 場所
     中央合同庁舎3号館 11階共用会議室

  3. 出席委員(敬称略)
     武内委員長、小田切委員、小池委員、志賀委員、中井委員、三野委員、鷲谷委員

  4. 議事概要
    (1)開会
    (2)京都府美山町現地調査報告
     (事務局より現地調査について報告)
    (3)国土利用の再編、美しい国土づくりのあり方(その2)
     (事務局より資料説明後、質疑応答)
    (4)多自然居住地域・国土資源管理の今後の展開方向
     (事務局より資料説明後、質疑応答)
    (5)第2回企画運営委員会での議論について
     (事務局より前回の議論の状況説明後、自由討論)
    (6)閉会

  5. 主な発言内容
    (3)国土利用の再編、美しい国土づくりのあり方(その2)
    • 国土の環境を五感で感じ取ったものが国土の美しさであり、音やにおいなど五感で感じ取られる快適さ、美しさについても広く捉えた方が望ましいのではないか。
    • 国土計画で取りあげる景観は、市町村を超える広域的な部分が中心であり、広域的な地域のシンボルや地形が変化する地点の美観を維持することは美しい国土づくりに活用できるのではないか。
    • 国土計画では、書いたことをどのように実現手段に繋げていくかがポイントである。市町村・都道府県の条例を国土利用計画でどのように位置付けるのか、ということが重要。
    • 地方公共団体が公共施設を美しく作っていくことも重要。景観に対して良くないものを取り除くだけでなく、新しいものを意識して美しく作るべき。
    • 質の高い美しさは、自然的意味や文化的意味がどれくらい感じられるかに関わってくる。
    • 美しさには、調和がとれている、感覚を過度に刺激しすぎるものがない、という二点が重要であって、美しい地形や文化的な遺跡があるだけでなく、それらと調和しないものが少しでも少ないことが重要。
    • 日本では景観は外観という捉え方が定着しているが、ランドスケープという言葉はもう少し多義的で地域的・文化的多様性を内在する言葉であり、ランドスケープという言葉を使うことを検討いただきたい。
    • 住んでいる人が景観形成にどのように参加できるかが重要。
    • 多自然居住地域は、自らの地域の美しさを意識していないことが多く、これを地域住民が共有化するための運動論も重要。
    • 公共施設を美しく作るというのは効果的であるが、現在、このようなものを作ろうとしても作り手が不足しており、作る体制のための人材育成や社会投資が必要。
    • 「秩序ある土地利用の実現」というのは、これまで違う意味で使われてきた感がある。日本的な景観には、庶民的で混在した魅力的な空間もあり、秩序ある整理でこれらが失われつつある。間違えた使い方をしないように気を付けていただきたい。
    • 公共施設に関しては、作り手の不足も問題であるが、システムの問題もある。最近は、公共事業にもコスト意識が強いため、コストと両立させて品質を高めていく仕組みがないと難しく、景観アセスメントのようなものが必要ではないか。
    • 水辺などの地形の接点部分は、責任がそれぞれの側で別々になっている。国土計画で美しさについて記述する際は、この接点部分について記述するべき。
    • ドイツの国土計画は、国土計画とランドスケープ計画が対となった体系となっており、そのようなものを大きな目標として考えていく必要がある。個別法を超えた広い網掛けを行うことが必要。

    (4)多自然居住地域・国土資源管理の今後の展開方向

    • 多自然居住地域のキーワードとして、「対流」という言葉が欠かせない。今後は、ライフスタイル、ライフステージに応じた住み替えが行われていくのではないか。多自然居住地域としてもそのような動きを受け止めるような対応が必要であり、「対流定住」「準定住」といった方向性が考えられる。
    • 多自然居住地域では、集落に関する様々な情報を収集し、とりまとめる人が不足している。集落をめぐる情報を国、地方自治体、住民が共有する仕組みを作ることが第一歩。それらがあった上で、地域が集落再編をするか、交流を進めるか等を選ぶことができる。
    • 都市や郊外、中山間地域など、居住地域ごとに多自然居住のあるべき姿、居住の秩序に関するイメージを書き分けて出すべき。中小都市では、中心部分の密度を上げる、郊外の問題の解決、そしてもっと低密度な所は、ある程度地域責任、自己責任といったところ。
    • 「国土経営」の中身が捉えにくい。行政とNPOなどの間にシンクタンクなど何らかのオーガナイザーが介在し調整するような仕組みが重要。ビジネスチャンスがあって初めて市場メカニズムが働く。そういった仕組みに関するキーワードとして入れておく必要がある。
    • NPO・NGOに期待できる面もあるが、水利用など実態とずれており、中央集権的なものではない流域全体を視野に入れて科学的にマネジメントができるような、かなり強力なコーディネイター役が必要。NPOなどではスケールの大きい調整は不可能であり、利害関係者間の調整などの解決方法を検討いただければと思う。
    • 地域における水の争い、上流から下流まで一貫した治水対策の視点から、本来地域ごとにあった河川管理のガバナンスを、中央集権的に国が行ってきたが、1997年の河川法の改正で治水・利水の他に環境が目的となったことにより、地域のガバナンスの復活が求められており、流域圏が意味を持つようになってきた。
    • 里地・里山という言葉があるが、みんなで手を入れて管理する「里川」という言葉があっても良い。
    • 農地、森林など多面的機能に関する法的整備が整ってきており、国土計画は、これらを束ねて流域をまとめていく機能を発揮すべき。
    • 物質が上流から下流に単にフローするだけではなく、人が住むことにより、その中で物質をどう管理し、利活用するかを考えでいくべき。
    • 森林における公的サイドの関与は、地域ごとの管理の視点が重要。また、林業就業者が森林を含めた国土管理の担い手的な立場にキャリア・アップできるような枠組みと、そのような人が行政とNPOの間をつなぐような仕組みが必要である。

    (5)第2回企画運営委員会での議論について

    • 「均衡ある発展」という言葉は、全て平等に発展することを意味しているわけではなく、国土計画としては長年親しんだ言葉で、数少ない一貫した主義主張であり、この旗を下げるべきではないと思っている。
    • 「国土の均衡ある発展」「国土の総合管理」「コンパクト化」のそれぞれに一つずつ欠けていると思われる視点がある。「国土の均衡ある発展」では、「均衡」と「発展」という言葉を国土計画中心に据えてきて、具体的に何が問題だったのかはっきり見えない。「国土の総合管理」の意義は、今後人口が減少していく時代の変革期にあるとき、どのような長期的見通しを持って導こうとしているのか。「コンパクト化」の議論は、全体的に見てネガティブな議論に陥っている部分がある。コンパクト化によって新たな活力が生まれるといった議論が必要。
    • 「国土の均衡ある発展」とは、個性ある発展とは受け取られにくいニュアンスがある。「国土」とは、国全体、空間全体を指向したワーディングであるが、今行っている議論は、ほとんどが活力や地域の産業のような話で、地域をどうしていくのかという議論。
    • 「発展」とは、今まで大部分経済的成長を意味する言葉として使われてきたが、「発展」は必ずしも経済的発展だけではない。今議論していることは生活の質をどう高めていくのかということであり、「発展」の中身が相当変質しつつあるということを強調すべき時期に来ている。
    • 国土計画の単位をどう考えるのかはコンパクト化と大きな関係があり、60分圏がコンパクトの単位として適切かどうか。また、コンパクト化して機能をどうつなげるのか組織や仕組みの議論をする必要がある。
    • 「均衡」という言葉は暗に社会経済的均衡を指しているが、循環型社会を指向するとなると物質循環の均衡も重要であり、資源的均衡と環境的均衡等について論じておく必要がある。
    • 中山間地域の問題は、人、土地、村の3つの空洞化であり、これらを一貫して「誇り」の空洞化が貫いていた。これに対して国土計画でどう対応できるのかが大きなポイントである。
    • 地域の発展を単一の物差しで測るのではなく、多様な物差しを掲げ、多様な物差しに応じて均衡ある発展を図るべきではないか。また、現在の市町村合併が誇りの空洞化を進めることに働いていないか、コンパクト化と市町村合併は両立するのかどうか議論する必要がある。
    • 多様な物差しを使った均衡ある発展では、「均衡」を何で測るのかとなってしまい、多様な物差しの存在を認める意図が伝わらない懸念がある。

    (速報のため、事後修正の可能性があります。)


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