- 日時
平成18年2月13日(月)15:30〜17:30
- 場所
東海大学校友会館富士の間
- 出席委員(敬称略)
奥野委員長、森野委員長代理、秋岡、上山、梅川、大垣、岡島、小川、小田切、清水(哲)、関根、松田
- 議事
(1)地域的な資金循環の形成等について
(2)地域資源等を活用した地域活性化の方向性
- 委員からの説明
(1)地域的な資金循環の形成等について(松田委員)
- 米国と比較して、日本の地域金融は地域企業(借手側)の開示情報と地域金融機関(貸手側)の評価技術の双方が不足しているため、地域密着型融資がうまく機能していない。
- カナダでは、協同組合型の金融機関が存在しており、中央組織による技術や人材育成等の支援、各地域による独自サービスの実施等により、地域金融がうまく機能している。
- イタリアでは、CONFIDIという同業者組合主体で設立された相互補償コンソーシアムが全国に1,000機関以上あり、同業者による相互監視によりリスクを低減している。
- 欧米の地域金融の取組みからの示唆としては、
情報の非対称性を埋めること、
テクニカル・アシスタンスなどリスク低減策の工夫、
地域金融機関を支援する仕組みづくり、
コミュニテイを活かした金融手法の活用、が挙げられる。
- 我が国の今後の地域金融に関する課題は、情報の非対称性を埋め、地域の課題と可能性を的確に把握することである。また、リスク低減策としてのテクニカル・アシスタンスや、地域金融を支援する仕組みづくりも必要。
(2)地域資源等を活用した地域活性化の方向性(森野委員長代理)
- 金山町では、金山杉と金山型住宅という内部資源と、東京芸術大学関係者という外部資源を活かし、建設省(昭和50〜60年代当時)が推進した地域住宅(HOPE)計画も利用して、金山型住宅を基調とした美しいまちなみづくりの取り組みが始まった。まち中心部の景観は見事に金山型住宅で統一され、交流者増加等の成果がみられるが、今後の課題は町が支出している金山型住宅建築に関する助成金の予算と効果の循環性の確保である。
- 長井市では、市内の家庭から出る生ゴミを資源として堆肥化し、それを農業に利用することにより、“循環”と“食の安心”を中心としたまちづくり「レインボープラン」に取り組んでいる。生活系可燃ゴミの減量効果をあげているが、堆肥づくりのためのコンポストセンターの赤字縮小のため、レインボープラン農産物の販路拡大などが課題。
- 山形県では、山形鋳物や木工などの伝統技術と、山形市出身の世界的アーティストを人材として活かし、新たな山形ブランド商品を生み出して地場産業の振興を図る「カロッツェリア
・プロジェクト」に取り組んでいる。海外の評判も上場で、今後は国内での販売促進が課題。
- 主な発言内容
(1)地域的な資金循環の形成等について
- 中小企業は設備投資より個々の営業資金の調達が困難なことが多く、このような問題はコミュニティ・バンキングでは解決できない。
- 地方銀行はこれまで不動産担保の含み益で貸していたために事業の審査能力が十分でなく、大企業の下請けなど地方の優良企業にしか貸したがらない。
- アメリカにはコミュニティ・ビジネス・レンダーズという、専門家が審査も含めて貸出を代行する法人がある。ウォールストリートのバンカーが自分の町に帰ってこのような事業を行っている。例えば日本政策投資銀行が東京の金融の専門家を集めてコミュニテイ・ビジネス・レンダーズの立上げ・支援をするようなことが考えられるのではないか。
- 一般論として、地域のことは地域でと言うことだが、リスクマネージメントはむしろ中央集権的にやるべきであり、ローカルで解決できるか疑問。
- 商工中金は、公的金融機関ゆえの情報力を通じて審査能力を持ち、地域への融資ができるようになった。一地域金融機関だけによる地域への融資は審査力の点で困難で、日本政策投資銀行や信金中央金庫とのネットワーク化、集権化が必要。
- まちづくりファンドの例として、京町家を守るために地元企業・住民から資金が集まるファンドや高知県の山村を守る公益信託などがあり、ハードから対象を拡大しつつ、このような形で自立のための支援ができるとよい。
- 農山漁村では資金の受け手・担い手の像がはっきりしない。共生経済の観点から、農山漁村で生活、福祉等を担うビジネスや地域産業を興す事業体をどう支えるかが重要。
- 企業が公益性のあるものに税を通じずに直接地域に貢献する仕組みが重要。タイでは、CSRを法制化している。日本の実態に合わせてこのような仕組みの構築を考えるべき。
- 地方でも世界を相手にするビジネスがあり、地域を超えた資金ニーズに応えられる金融機関が必要ではないか。
- 地方債は許可制から協議制に変わることで出せる自治体は出しやすくなる一方、出しにくくなる自治体が出てくると考えられる。
- 地域を超えた資金ニーズについては、リレーションシップバンキングだけでは不完全で、全国規模・専門的な金融機関が必要。いろいろな金融機関の役割分担がなされるべき。
- 過疎地でもできるビジネスは介護と金融。地方の農家の資産の運用機関・運用先がないのが問題。地域のお金は地域でとはよく言われることだが、例えば秋田のお金がマレーシアの事業に使われるような仕組みも考えるべき。
- ミニ公募債のように地域の人が地域の企業の株を志をもって買うことを促進する仕組みも必要。
- 金融の議論については、ターゲットとしている地域のイメージに開きがある。集権制と専門家を必要とする大きな金融のほかに、追加所得を月数万円得るなどの小さな経済を興すためのマイクロファイナンスも必要。これらは分けて議論すべき。
(2)地域資源等を活用した地域活性化の方向性
- 景観を向上させる、資源を枯渇させないなど、「地域資源を磨く」という視点を盛り込むべき。
- 地方都市よりも過疎地域の自立の議論がもっとあってよい。自然体験やアウトドアにより、高齢者に生き甲斐+αを与えることができないか。例えば自然学校の実現のためには、縦割りを排除し、ペーパーにあるような信用の確保、ランキング、指導者など幅広い施策が必要。
- 地域活性化において、社会的な活性化は重要だが、最後は経済的な効果がないと継続しない。
- 地域資源は磨いて、商品化することまではできるが、販売の段階がうまくいかないことが多い。一見さん、リピーター、ファン、サポーターのうちのどの層を狙うかによって戦略が異なる。
- 地方都市、過疎地域、中間地など、ターゲットとする地域ごとに整理してみてはどうか。
- 交流とそれを支える交通の視点が重要。地域資源には、単体ものと周辺のものとの組み合わせにより活かせるものとがあり、単体で勝負できる資源を活かすには海外を視野に入れ交通面を考える必要があり、組み合わせの必要がある地域資源のためにはアクセスが必要で、これを広域の交通体系としてどう考えていくかが重要。
- 住んでいる人がもっとハッピーになるという視点。高齢者がハッピーになるという観点からは、ユニバーサルデザインの考え方をQOLに関連させて入れることが重要。佐賀県では、三世代が楽しく過ごせる町という視点で「ファミリー・ツーリズム」という考え方を提唱している。
- 地域資源には素晴らしいものが沢山あるのに、それを知らない人が多いので、情報発信が必要。地域の中でしかできない情報発信があるので、地域でできる産業として、介護、金融のほか情報発信の視点が大事。
- 役所で地域振興の話をすると、地域の類型別に取組みをまとめたマトリックスになってしまい、これでは解決のフレームにならない。
- 解決のフレームとなるためには、担い手と資金循環の形を示すべき。担い手については、
高齢者など個人、
農協・漁協などの既存組織、
アントレプレナーという各単位で、お金については、
過疎地の循環(高齢者の住民の中で回る関係など)
域内での循環(盛岡周辺の地域が盛岡から人を呼ぶ関係など)
都市の富裕層の財布を掴む(馬路村のケースが典型)という単位で、きめ細かく深堀りすることが必要。
- これからはマッチングの時代になるだろう。例えば、長崎県の対馬では、西友の仕入れ部長、銀行マン等を外部から招聘し椛ホ馬物産開発を立ち上げ、地域特産品の販売効果を上げている。誰をどうマッチングさせるかが成功の鍵である。
(速報のため、事後修正の可能性があります。)
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