- 日時
平成17年11月14日(月)、10:00〜12:00
- 場所
国土交通省11階共用会議室
- 出席委員
小林委員長、武内委員長代理、麻生委員、有田委員、磯部委員、沖委員、後藤委員、千田委員、辻本委員、根本委員、速水委員、星野委員、牧委員、鷲谷委員
- 概要
(1)開会
(2)議事
水と緑のネットワークの形成を通じた自然環境の保全・再生
自然環境と人間活動が調和するランドスケープの形成
その他
(3) 閉会
- 主な発言内容
(1) 水と緑のネットワークを通じた自然の保全・再生に向けた論点
- 計画部会から、「水と緑のネットワークを通じた自然の保全・再生」が地域ブロック単位で考える上での重要な課題の一つであるとの指摘を受けている。
- 水と緑のネットワークは、世界的に議論されているが、日本の場合実効性が担保されていない。米国やドイツでは、開発で失われる自然を再生するといった、開発と自然環境の保全が対になった制度があるが、我が国の現状の社会システムの中では、自然再生を進めるためのインセンティブがない。このため、例えば都市計画、農業振興地域の中に、開発と自然再生を関連づけるといったことが重要であり、そこを議論しないと現状の延長になってしまう。
- 水と緑のネットワークを検討する上で、地球規模の気候変動にも目配りする必要がある。また、暮らしを支えている地域は領土を超えており、国際的な視点も盛り込む必要がある。
- 水と緑のネットワークを考える場合、生態的視点と人・情報の視点を分けて考えることが重要。また、水と緑がつながっていればいいという情緒的な範疇にとどまらず、土砂・水といった物理、科学のメカニズムや生態系のメカニズムを明示しなければ現実性が担保されない。
- わが国では、自然再生に関する科学的なデータが十分ではなく、また一般の関心も低いために政策上重要視されてこなかった。他方、欧米諸国では自然再生を社会経済的な観点から重要視している。
- 国土計画において、数値目標を設定して、100年後の姿をきっちりと描くことが重要。このため、行政はデータを整備して、市民が簡単に見られるなど支援することが重要。
- 国土計画を現実化する上で、国が方針を決めて取り組んでいくことも大切だが、地域の自発性に任せて、先進的な取組を他の自治体がまねをするというやり方もあるのではないか。
- 開発によって失われる自然のミティゲーションについては、地域によって意識の違いがあるため、実効性を上げるためにはミティゲーションを義務づけることも必要ではないか。今後の森林の管理形態については、人手をかけないというだけではなく、大量の木材、紙を消費していることからも、環境保全の観点からも国際的な責任を果たすことが重要。
- 事業者が自然再生を行う際に、土地の価格が上昇したり、住民が移住してくるといった経済的メリットが、自治体ではなく事業者に還元されるような仕組みが必要である。
- わが国においても、2、3年前と比較して、自然再生に対する関心は高まっている。
- ネットワークに関して、地域住民の自由で自発的なものがいいという記述があるが、市民サイドだけでネットワークを構築していくのは多大な労力がかかるため難しい。行政側からのバックアップは安心感、励みになるため必要。
- 水については量だけではなく、有機物栄養塩、汚濁負荷という質の観点も重要。また、プロジェクトを推進していく上で、問題点は分かっているが方法論の知見が十分ではない。合意形成や順応的管理などの必要性等を盛り込んでいくべきではないか。
- 企業が環境問題にどれだけ積極的に取り組んでいるかによって、助成をするような仕組みがあればいいのではないか。大きな開発だけではなく、中小の業者を含めて、インセンティブが働くようにすることが重要。
(2) 環境と人間活動が調和するランドスケープの形成
- 「ランドスケープ」という概念は、要するにエコロジーの考え方とビジュアルな景観という考え方の両面を並列に考えるということ。そういう意味で、ランドスケープと水と緑のネットワークは切り離すべきではない。ランドスケープエコロジーは欧米では普通の概念になっているにも拘わらず、日本では「ランドスケープ」が風景に限定されて扱われている。
国の議論として重要なのは、持続可能な社会の形成の中で、地域の文化的、自然的多様性をどのように保持するべきかであり、こうした議論は、21世紀の国土計画において極めて重要。
ランドスケープの議論は、自らの地域に誇りを持つことから始まるものであり、その中からランドスケープを守る動きが出てくるもの。国土計画としては、例えばランドスケープ基本法というものをやるべきと書けば意味があるのではないか。また、中山間地域の耕作放棄地や都市の衰退の問題等、わが国では施策毎にばらばらに取り組んでいるが、これらを繋げることによりポジティブな解があり、その辺りに国土計画らしい打ち出しがあるのではないか。
- ランドスケープは、本質的には生態系複合の持つ機能美である。国際的に通用するランドスケープの概念にするべき。
- 水と緑のネットワークとランドスケープは重なる部分も多く、一体のものとして考えるべき。
- 自然環境の保全もランドスケープも、人間活動のユニットを日本の風土の中にどう配置するかという議論であるが、ランドスケープの議論は自然環境の保全と比較して熟度が低いので、最終的に一体となるにしても、いったんは別々に考えるべきではないか。
- 「ランドスケープ」イコール景観のイメージが一般的であり、ここで一体にしてしまうと、人間主体の議論ばかり先行して持続可能性、生態系の議論が疎かになってしまう恐れがある。
- 水と緑のネットワークとランドスケープは、いったんは分けて考えるべき。
- 本日の議論は、どちらかというと見る側、受益者側に立った議論であるが、生産者側、担い手側の観点も重要である。
- 「美しいランドスケープ」が本当に良いのか。住みやすさ、快適性ということが最初にあるのではないか。
- 「美しい」というキーワードがミスリードする恐れがある。ランドスケープについては、基本は「アメニティ」の観点から捉え、その上で景観や生態系をどう捉えるかを議論すべく。
- 当面は、水と緑のネットワークとランドスケープは分けて議論を行う。最終的にはまとめていく方向ではないか。
(速報版のため、修正があり得ます。)
(以上)
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