国土交通省
 「国土の将来展望と新しい国土計画制度のあり方」(ポイント)
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1部 国土の将来展望と国土計画の新たな課題

  1. 国土の将来展望と課題

    (1)人口減少、少子・高齢化の下での地域人口の展望と活力ある地域社会の形成

    •  我が国全体の人口が減少する中で、特に中枢・中核都市から遠隔地にあって都市的なサービスの享受機会に恵まれない地域では、大幅な人口減少の可能性。(参考資料1、2)

    今後50年間で、全国人口は約2割の減少、地方圏における中枢・中核都市1時間圏外では、約4割の減少。

    •  人口減少下にあっても、広域的な地域連携と役割分担により生活関連サービスの維持・向上が可能。また、地域社会の担い手として多様な価値観と能力を持った女性・高齢者の参加が重要。(参考資料3〜5)

    (2)投資制約と社会資本の整備・管理

    •  2002年1月に閣議決定された「構造改革と経済財政の中期展望」で示された公共投資の目安とすべき水準等を踏まえると、今後の社会資本投資は財政の厳しい制約を受けることになる。
    •  加えて、既存社会資本ストックの更新投資需要の増大による新規投資余地の縮小も大きな制約要因。(参考資料6、7)

    2001年度以降の25年間は、更新投資の累積額が過去25年間の約4倍に増加するため、公的固定資本形成の累積額をかなりの幅(600〜900兆円)をもって想定したとしても、更新投資を除く新規投資額の累積額は180〜480兆円にとどまり、過去25年間(685兆円)に比べて大幅に減少。

    •  こうした制約に対応して、社会資本の整備・管理の徹底した効率化(適切な維持管理による社会資本の耐用年数の延長、コスト縮減等)が重要。(参考資料8)

    社会資本ストックを今後25年間に実質的に100兆円(200兆円)増加させるには、耐用年数を14%程度(33%程度)延長、又は、今後7年間毎年2%前後(3〜4%程度)のコスト縮減、等の対応が必要。

    (3)経済社会の新たな潮流と地域発展の展望

    •  我が国は、グローバル化・IT革命への対応の立ち後れにより、国際的な競争力・魅力の面で諸外国よりも劣っている分野が少なくない。加えて、国内的には地域差が大きく、東京等に比べて他の地域ではグローバル化、IT化への適応力は総じて弱い。(参考資料9、10)
    •  一方で、各地域は知的資本を始めとして、次代の発展に向けて活用すべき特色ある地域資源を有しており、視野をより広域に拡げれば、足らざる資源を広域連携により相互補完することが可能。(参考資料11〜13)
    •  今後の構造改革の進展の下で、経営資源や人的資源等が流動化していくが、各地域はこうした機会を好機として捉え、地域資源を広域的視点に立って最適に組み合わせ、有効活用することを基本にした地域発展を目指すことが重要。

    (4)循環型・環境共生型の国土形成

    •  我が国の環境は良好な状態にはなく、地球的規模の環境変化の影響も懸念され、将来世代に健全で恵み豊かな環境を継承していくことが重要な課題。(参考資料14、15)
    •  このため、資源やエネルギー利用面での効率化等が図られる環境負荷が少ない循環型の国土づくり、一体性・連続性を重視した自然環境の維持・回復が図られる自然と人間が共生する国土づくりを、地域の実情に応じ広域的視点をも踏まえて進めていくことが重要。

    (5)安全な国土の形成

    •  国土の安全の面では、高齢化に伴う災害弱者の増加や老朽密集市街地の存在等の地域防災上の課題、諸機能の集中した首都圏への高い依存構造や基幹的交通施設と断層の近接に伴う被災時の被害の他地域への影響といった全国的な課題が存在。(参考資料16、17)
    •  安全な国土の形成に向けて、災害の防止対策に加え、自らの身は自らが守るという考え方に立って、総合的なハザードマップ等の提供や、広域的な被害想定に基づく地域づくりなど、生じる被害を最小化する視点に立った減災対策が重要。(参考資料18)

  2. 国土計画における新たな対応

    (1)地域が主体となった地域資源の有効活用と個性ある地域づくり

    •  地域が主体となって地域資源を有効活用し、ITを始めとする技術を活かした知恵と創意工夫による地域づくり、個性的な観光資源、歴史的・文化的資源、美しい景観や豊かな自然環境などを活かした地域づくりが重要。(参考資料19)
    •  国は、こうした地域の取組への支援のほか、戦略的に対応すべき課題の明確化とそれに対応した新たな目標の設定、全国的視点からのハード・ソフトの基盤整備の基本方針等を国土計画で提示。

    (2)モビリティの向上と広域的な対応

    •  経済社会の潮流に対応した地域づくりに際しては、モビリティの向上を図るとともに、行政区域を越えた広域レベルでの対応が重要。この場合、地域の実情に応じて、以下の二層の広域圏を念頭に、機能分担と相互補完に基づく対応が基本。
       1人口30〜50万人程度以上、時間距離1〜1.5時間程度を目安とした生活圏域
       2人口600〜1,000万人程度以上の地域ブロック
       防災や環境保全等の課題に対しても広域連携が重要であり、その場合の圏域は地域の実情に応じて柔軟に設定。
    •  自然的社会的条件等により上記@の規模の生活圏域での広域連携が困難な地域に対しては、別途の対応が必要。 

    (3)社会資本の整備・管理におけるハード施策・ソフト施策の適切な組合せ

    •  厳しい投資制約の下では、以下の対応が重要。
       1国土計画における国として戦略的に取り組むべき重要課題の明確化と、それに対応した社会資本整備の一層の重点化
       2アウトカム的な目標の重視
       3計画策定過程や評価の十分な情報公開等による社会資本整備の重点に関する国民の合意形成と、情勢の変化に応じた整備目標の適時適切な見直し
       4既存ストックの有効活用、耐用年数の延長、ライフサイクルコストの縮減、分野間・地域間の連携、PFIや民間投資の活用等を通じた一層の効率化

    (4)積極的な情報公開に基づく合意形成と多様な主体の参加

    •  国、地方公共団体による積極的な情報公開を前提に、国土や地域のあるべき姿についての国民の合意形成と、地域住民、NPO、事業者等の多様な主体の責任ある参加による国土づくり、地域づくりが重要。

2部 国土計画体系の改革

  1. 国土計画の改革のねらい

    (1)国土計画の新たな役割:良好な国土の継承への総合的国土管理指針
     「開発」を重視した計画から、利用、開発、保全の「総合的かつ基本的な国土管理の指針」へ

    •  今後の国土計画の基本目標
       1各地域の生活、文化、自然等を生かした、多様性に富み、かつ、安全で美しい国土をつくる
       2地域の自立と個性ある発展を実現する国土をつくる
       3地球社会の持続可能な発展と調和した国土をつくる
       4そのような、より良い国土を次世代に継承していく
    •  「全国総合開発計画」と「国土利用計画(全国計画)」の統合

    (2)地方分権の推進

    •  国と地方の協力の強化:広域ブロック計画の策定・推進への地元関係者の参加等

    (3)指針性の充実

    •  開発構想提案型の国土計画から、国土計画のマネジメントサイクルの確立により、成果を重視する目標管理型の国土計画へ

  2. 国土計画のマネジメントサイクル

    (1)計画内容

    •  国が策定する計画は、国家が戦略的に行うべき事項、効果や影響の及ぶ範囲が全国的、広域的な事項等に計画内容を重点化。
    •  国土計画の関連計画策定等の参照フレームとして、マクロフレームを提示。
    •  計画目標の体系化を図り、可能な限り定量的かつアウトカム的な指標を設定、提示。

    (2)計画策定手続

    •  地方公共団体からの意見聴取の制度化と多様な主体の参加、パブリック・インボルブメントの仕組みを導入。

    (3)計画評価

    •  定期的に計画目標の達成度評価を行い、関係行政部局、地方公共団体等に提言。
    •  計画評価の結果を広く国民に公表し、計画推進のための施策への合意を形成。
    •  定期的に計画の妥当性を点検し、計画をリボルビング(個別目標や政策指針等を計画期間にとらわれず随時、修正等を行う)する制度を整備。

    (4)国土のモニタリング、情報の収集・分析と共有・公開

    (5)分野別長期計画や各主体による施策実施等への反映

    •  望ましい国土を実現する観点からの総合的で分野横断的な指針を提示。関係各分野へ反映。

  3. 広域計画のあり方

    (1)広域ブロック計画の課題
     1都府県をまたがる一体的な経済圏の整備、観光や国際交流での広域な圏域での一体的対応の必要性
     2人口減少の進行、財政制約の強まりによる、広域的な連携・協力での効率的・効果的な地域整備の必要性
     3環境保全や安全の面における複数都府県を一体とした対応の必要性(生態系ネットワークの保全、流域の一体的管理、防災における広域協力)

    (2)マネジメントサイクルの導入
     マネジメントサイクルの導入による関係主体への指針性の向上と特定の広域的課題への対応策の提示。
     全国計画と広域ブロック計画の機能分担の明確化(全国計画は、基本的な指針や全国的な観点から国が期待する役割などを提示することとし、地域ブロック別の整備について詳述しない)
     広域ブロック計画におけるマネジメントサイクルの検討
     1大都市圏整備計画の整備計画等及び事業計画の機能の見直し
     2広域計画の総合性・具体性を向上するための図面を作成、公表

    (3)策定主体
     関係地方公共団体を中心とした地元地域の各主体が参加・協議して原案を作成し、その上で国が計画決定する仕組みとする。

    (4)計画圏域
     計画圏域が他の計画圏域に完全包含されている重複関係をはじめとする計画圏域のあり方について、地域の意向を踏まえつつ、検討すべき。

    (5)課題に応じた自発的な連携による広域計画
     特定の課題ごとに都道府県等が自発的に連携し策定する広域計画については、一律に国の制度として取り扱うこととはしないが、地域が原案を作成する広域ブロック計画に位置付けることにより、取組を促進する。
     なお、複数の広域ブロックに跨る課題等国として一定の役割を果たすべきものについての制度的な扱いについては、さらに検討すべき。

  4. 土地利用に関する計画制度

    (1)基本認識

    •  工業用地等の開発需要が沈静化する一方で、大都市における低・未利用地の活用など地域の課題に応じた適正かつ合理的な土地利用の推進が引き続き必要。
    •  土地基本法の「公共の福祉優先」原則に基づき、「公共の精神」の醸成が重要。
    •  地域の土地利用上の課題に的確かつ円滑な対応が行われ、個性ある地域づくりが更に推進されるよう、使いやすく、実効性のある枠組みが必要。

    (2)新たな国土計画(全国計画)における土地利用の指針

    •  国土計画(全国計画)は、土地利用の指針を提示。
    •  地目別の面積目標に限定せずに、時代の要請に応じた目標を提示できる柔軟な制度へ。

    (3)地方公共団体の土地利用に関する計画

    •  新たな計画の名称は、極力「指針」「構想」等とする。条例を含む土地利用に関する各種制度が選択的・統合的に運用されることを目指す。
    •  地域の実状に応じてより即地性のあるきめ細かな土地利用の構想を示すとともに、当該構想が住民等により共有され、実践活動に結びつくことが必要。市町村には、実質的な土地利用調整を図り、望ましい土地利用の実現が期待される。
    •  「美しい景観の形成」「安全な国土」等地域のあり方を示す事項を計画に反映。
    •  現行の国土利用計画(都道府県)にある計画事項を拡充し、土地利用基本計画との連携を強化する制度を目指す。土地利用基本計画図の電子化等を推進。
    •  現行の国土利用計画(市町村)にある計画事項を拡充し、地区単位等に分割して図面により土地利用の構想を明記。計画策定における住民参加を推進。


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