日時:平成18年2月13日(月) 15時00分〜17時30分
場所:中央合同庁舎第2号館11階土地・水資源局会議室
議案:
(1) |
国土審議会土地政策分科会第15回企画部会(社会資本整備審議会産業分科会第3回不動産部会との共同開催)の報告について |
(2) |
不動産投資市場の裾野を広げるための環境整備について |
(3) |
その他 |
配布資料:
資料1 |
国土審議会土地政策分科会第15回企画部会(社会資本整備審議会産業分科会第3回不動産部会との共同開催)の報告について |
資料2 |
中間整理参考資料抜粋 |
資料3 |
中間整理の背景にある考え方 |
資料4 |
バブル期と現在の比較 |
資料5 |
エリア別イールドギャップの推移等 |
資料6 |
エリア別不動産投資収益率の推移 |
資料7 |
土地政策における「市場重視型行政」概観図 |
資料8 |
巻島委員資料「第二期中期事業計画(平成18年度〜平成20年度)素案」 |
資料9 |
清水委員資料「透明で中立的な不動産投資市場の構築にむけて」 |
資料10 |
赤井委員資料「わが国CMBS(不動産デットの証券化)市場の現状と課題 |
概要: |
議案(1)について、藤井土地・水資源局土地政策課土地市場企画室長から、資料1〜6を用いて説明。 |
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議案(2)について、藤井室長から資料7を用いて説明後、巻島委員から資料8について、清水委員から資料9について、赤井委員から資料10について説明。 |
<バブル期と現在の比較について>
- 実際にインカムゲイン重視の投資が行われており、それが良好な市場の形成につながっていると思う。最近のキャピタルゲインは、賃料収入の増加を伴う健全なものであり、バブル期のような単純な資産価格の上昇とは違う。
- 地価が過熱した1988、89年の収益率の推移を見ると、キャピタルゲインの過熱は市場ではすでに収まっており、その後に発動された政府の総量規制・税制等の施策が現実経済の動きとズレを生じてしまったことは皮肉だ。後から見ればということになるかもしれないが、市場にまかせたままにしておけば良かったのかもしれない。
- バブル期と現在では、不動産投資の形態が変化している。バブル期は、自己勘定で不動産投資を行っていたが、現在では、複数の関係者によるチェックが行われ、不動産価格の自律的調整メカニズムが働きやすくなっている。
<不動産とマクロ経済の相関性について>
- 不動産がマクロ経済とは独立に動くという考え方は一般的な考え方か。ラグをもって相関するのではないか?不動産は本当に魅力ある投資財なのか?
- データから見れば、相関性は低いものと承知している。また、インカム収益率も3%程度で長期間安定しており、不動産はそこそこの利回りを求める投資家にとっては魅力ある投資財ではないか。
- Jリートの投資口価格とは相関するのではないか?
- 投資家は他の金融商品との比較の上で投資を決定するからこそ裁定が働くのであり、そういう意味で相関があるのではないか。
- 他の金融商品との比較という意味での相関はゼロではないと思う。
- 不動産のファンダメンタルに関係の薄いリートの投資口価格との相関はゼロではないが、株や債権に比べて相関の程度は低いと思う。投資の際に重要なのは、株や債権と比較した際の相関の程度の差である。
- リートとTOPIXは相関しているのではないか?
- 規模によるが、市場全体の動向に流されるものもある。
- 株式市場において、電機、自動車等の業種があるのと同様に、不動産においても、住宅、オフィス、物流等いろいろ種類がある。それぞれの商品について相関は異なる。
- 投資家が金利等との比較において投資を行っているという意味では、不動産と他の金融商品との相関は大きいと言える。だからこそ、市場の自律的機能が働くのではないか。
<ビークルのあり方について>
- 私募型のファンドでもっとわかりやすいビークルの組成ができるようにすべきとの提案は賛成だが、それは具体的には、全く新しい制度を創設すべきということなのか、今の制度の改善ということなのか。
- 私募ファンドで複数の物件を組み込んだものの場合、物件毎に投資のタイミングが違うため、投資の度にビークルを組成し、各ビークルを合わせてマザーファンドを組成することとなる。これが、投資家からはわかりにくくなっているのではないかということであり、一つのビークルで 複数の実物不動産を扱える簡単なスキーム組成のために、不動産特定共同事業法の改正はありうると思う。
- この問題については、どのような議論があり得るのかいずれ論点整理をした方が良いと思う。
- 年金等長期資金の運用に対応した大規模ファンドが必要との意見があったが、最近は、キャピタルゲイン狙いのファンド、いわゆるプレリートと呼ばれるファンドが多く見られる。各ファンドの運用期間は5年以内、平均で2〜3年くらいであり、年金のような長期資金を運用する機関投資家には投資しにくい。そのため、現状では、不動産へのポートフォリオを組むという目的で本来個人投資家向けのJリートを買っているということ。
- 従って、不動産の特性を理解した投資家の育成も重要であるが、永久保有を前提としたビークルの出現など、ビークルの商品構成を変えていくことが必要である。
<不動産分析項目の統一について>
- 不動産に関する基礎的な情報項目の統一に関しては、不動産証券化協会、鑑定士協会が連携すべきと考えるが可能か。
- 両者の連携は重要と考える。例えば、ARGUSはアメリカの鑑定士も利用している。不動産分析ソフトの作成に当たっては、グローバルに通用するソフトでないと普及しない点に留意すべきである。
- 不動産分析に必要な項目を検討するだけでなく、鑑定士のコンサルティング能力の充実が求められる。
- 契約書類の標準化は、不動産の場合、土壌汚染等の個別特性が強いゆえに難しい問題である。
<不動産鑑定評価について>
- 不動産鑑定評価にバイアスがあるとのことだが、地価公示にバイアスがあるというのか、個別の不動産鑑定評価にバイアスがあるというのか、どちらか。
- バイアスには2つあると考えている。当方の論文では、地価公示のバイアスを扱った。市場価格と公示価格とのタイムラグ、鑑定評価価格の平準化が問題である。
- もう一つは、個別の不動産鑑定評価における問題で、アメリカやイギリスでは、依頼人の意向によるバイアスが働くとの指摘がなされているところ。
- マーケットが動いており、正確な不動産価格を出すのは難しいのではないか。
- 不動産鑑定は絶対的に正確な不動産価格を出すものではない。不安であれば、投資家が複数の鑑定評価をとり、比較・検討すればよい。
<不動産投資市場の過熱感について>
- 不動産に過剰な資金が入っているという実感はあるか?
- 過剰だとは考えていない。むしろ、適切な買い手(ナチュラルバイヤー)のポートフォリオを考えると過少ではないかと考える。
- 一部過熱感があるとの声もあるが。
- 「過熱感」は、実務者の苦労が現れたもの。簡単にファンドを組成できていた頃と比べると競争状態に入っただけで、むしろ健全な状態である。現在の健全な競争状態をもって「過熱」と感じる実務者は、正直努力不足なだけだと思う。現在は、証券化を始めた世代から次の世代へと世代交代の時期ではないか。
<CMBSについて>
- CMBSは年金の資金運用としてどうか?
- アメリカと比較すると、日本でももっとCMBSを保有すべきだとは思う。ただ、CMBSは、不動産資産として扱うのか、国債等と同様の債券として扱うのか、議論がまだなされていない感はある。もっと不動産証券化商品に慣れた年金運用者の出現が望まれる。
- CMBSの一般化が進まない理由は何だと考えるか?銀行がノンリコースローンのまま保有していたいという考えはあるのか?
- 一部の銀行では、間接金融でしか勝負ができないところもある。そういう銀行にとっては、CMBSにすれば競争に負けてしまうことになる。
- 現状では、形はノンリコースローンだが、実質は不動産担保ローンというものが少なくなく、不動産証券化市場の発展は未だ不完全であるといえる。このため、スキーム等の透明性の確保が重要であるとともに、国際的な不動産市場の構築という視点を持つことが重要である。
- 間接金融か直接金融か、税制上課税対象者は誰なのか等、契約書で明確にしておくべきであり、金融商品化した場合、契約書上の不備のリスクが大きい。
- 最近は金融サイドからの規制を感じており、資金調達面での間接金融とのリスク遮断という意見には賛成である。
<その他>
- 不動産証券化の公共プロジェクトへの導入という意見があったが、具体的にどのようなものか?
- 例えば、URによる宅地の信託化のような形で、賃貸住宅、商業施設等において民間では取れない、開発リスク、政策・税制変更リスク等のリスクを持つプロジェクトを考えている。こうした公共プロジェクトを行うことによって、民間が取れるリスクと行政が取れるリスクの差分から、行政コストが明らかになってくるのではないか。
- 最近ではPFIに変わって、大学と地方の連携が行われている。
- 有価証券に比べて、不動産証券化はキャピタル課税が重いのではないか。
- 規制のあり方については、 プロ私募の場合は原則自由化とし、アマチュアを対象とする場合のみ投資家保護の観点から検討が必要であると考える。
- 私募ファンドについての情報開示は重要と思う。
- 短期転売についてモニタリングを行うべきであり、特に値付けに差があるときは重要である。
(本日の議論は、今後の小委員会の議論に適宜反映させていくこととされた。)

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