2.内航海運を取り巻く環境の変化 2.内航海運を取り巻く環境の変化

(1)経済環境の変化等と内航海運に係る輸送需要の見通し

 今後は、我が国経済は低成長で推移し、かつてのような右肩上がりの経済成長は想定できない。そのような中で、内航海運の大宗貨物である基礎素材物資輸送は、大きな増加は期待できないものの今後とも安定した輸送需要が想定される。一方、モーダルシフトの対象貨物である雑貨輸送等については、今後とも増加が期待できるが、これをトラック等と競争して内航海運にどの程度取り込めるかは、今後の内航海運の対応をはじめ、それに必要となる競争条件の改善如何による。

 なお、経済のボーダーレス化、円高等による近隣諸国との国際競争関係の激化、内外価格差の是正要請等を背景に、製品輸入の増加、荷主業界における生産拠点の海外展開等や物流コスト削減を目的とした荷主企業間の製品ジョイントバーター等が予想されるが、これらは内航海運に対し少なからぬ影響を与えるものであり、その動向に留意する必要がある。

(2)内航船員確保問題等の深刻化

 内航船員確保の環境については、今後の生産人口の減少等という事情に加え、水産業等の構造変化に伴って余剰となった漁船や外航の船員が内航船員不足を補完する供給源となっていたが、今後はその転入が多くは期待できないことから、若年船員の確保を中心にさらに厳しさが増すものと考えられる。また、300総トン未満の小型船の担い手である小規模な事業者においては、後継者確保がさらに深刻化するものと考えられる。

(3)内航海運の輸送効率化に対する要請の強化

 国際競争関係の激化、内外価格差是正の要請等を背景に、荷主側はより一層の経営合理化等の推進が求められている等、その経営環境は一段と厳しさを増している。このため、内航海運サービスに対しても、良質な輸送サービスの安定的な提供を前提に、物流コストの削減に直結する輸送効率化への要請がさらに強化されるものと考えられる。

(4)船舶関係の技術開発の進展

 平成元年度に開始したテクノスーパーライナーに係る研究開発は、要素技術に関する研究を終了し、実海域模型船による実験を行っている段階であり、今後の早い時期での実用化が期待されている。また、省力化等に資する船舶近代化、荷役合理化等に係る研究開発が今後とも進展し、順次実用化されていく見込みである。

(5)モーダルシフト推進に対する社会的期待の強化

 地球環境問題、道路交通混雑の悪化、トラックの人手不足問題等の事情に対応し、長距離幹線の物流をトラックから、より効率的な大量輸送機関である海運等にシフトさせるというモーダルシフトについては、近年の景気低迷の中で関心が一時的に低下しているかに見えるが、今後は、物流コストの削減、トラックに偏り過ぎた物流体系の是正等の観点から、その推進に対する社会的期待は着実に高まっていくものと考えられる。

(6)市場原理を活用した競争促進政策の進展

 今後の経済政策は、産業の活性化、消費者利益の実現等を図るため、従来の産業保護的な政策から市場原理を活用した競争促進政策に転換していくこととし、その観点から規制緩和、個別法に基づく独占禁止法適用除外カルテル等制度の見直し等が進められることになっている。また、産業界においてもその認識が浸透しており、内航海運業においても自己責任原則に基づく事業経営が強く求められていくものと考えられる。


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