3.内航海運における今後の課題 3.内航海運における今後の課題

 以上を踏まえると、内航海運対策は、以下の事項を今後の最重要課題として取り組んでいく必要がある。

(1)良質な輸送サービスの安定的かつ効率的な提供

 内航海運の輸送サービスは、直接の荷主のみならず、広く国民生活にとって必要不可欠なものであり、良質な輸送サービスの安定的かつ効率的な提供は、内航海運の基本的かつ究極的な使命である。このためには、利用者ニーズを踏まえ、輸送需要の量及び質に対応した船舶の安定的な整備・提供と同時に、これを運航する良質な内航船員の安定的な確保等が必要不可欠である。

(2)船舶のタイムリーかつ安定的な整備・提供

 船舶については、輸送需要の量に応ずることはもちろんのこと、物流効率化の推進、新しい輸送需要への対応、船内労働環境の改善等に適したものをタイムリーかつ安定的に整備・提供していく必要がある。

(3)良質な内航船員等の安定的な確保

 良質な内航船員の確保問題は、さらに深刻度を増していくことから、今後の内航海運における構造的課題として位置付け、若年船員の安定的な採用及び教育訓練、処遇改善等の対策について、内航海運関係者の総力を挙げて取り組む必要がある。また、小規模な事業者に係る後継者不足問題に的確に対処していく必要がある。

(4)内航海運の輸送効率化の一層の推進

 今後は、物流コストの削減に直結する内航輸送のなお一層の効率化が強く求められており、このため、船舶、荷役機器、港湾施設等のハード面とともに、情報システム、運航方法等のソフト面に係る改善措置を推進する必要がある。

(5)モーダルシフト等の新規分野への積極的な取組み

 今後の内航海運の発展には、基礎素材物資をベースカーゴとしつつ、雑貨品等のモーダルシフトに適した貨物分野に積極的に取り組むとともに、これに必要となる港湾機能の改善等をはじめとした環境整備を推進する必要がある。また、テクノスーパーライナーの早期実用化とその活用方法等に関する検討の深度化を図る必要がある。

(6)運賃及び用船料に係るコスト負担の適正化

 船舶の安定的整備や良質な内航船員の安定的確保等を図るには、それを賄えるだけの運賃及び用船料収入の確保が必要不可欠であり、このため、内航海運の輸送効率化を推進しつつ、運賃及び用船料に係るコスト負担の適正化を図る必要がある。

(7)経営基盤の強化を目的とした抜本的な構造改善の推進

 内航海運業者の大半は、財務体質、経営体質等の経営基盤が脆弱な中小企業であり、今後とも中小零細性を克服できない場合は、内航船員の安定的確保をはじめ上記の諸課題に的確に対処することが困難となり、その結果として良質な輸送サービスの安定的かつ効率的な提供という内航海運の使命に重大な支障を及ぼすおそれがある。そこで、内航船舶貸渡業者を中心に、小規模な事業者の集約合併、協業化等による事業規模の拡大、円滑な転廃業等を通じて経営基盤強化を目的とした抜本的な構造改善を推進していく必要がある。


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