2.船腹調整事業の見直しと一体的に措置すべき事項 2.船腹調整事業の見直しと一体的に措置すべき事項

 船腹調整事業の見直しに当たっては、内航海運業者による同事業への依存の計画的解消が円滑に進むよう、以下のとおり事業環境の変化に係る激変緩和に配慮しつつ構造改善等による経営基盤の強化に向けた措置を一体的かつ強力に推進していくことが不可欠である。

(1)船舶のタイムリーかつ安定的な整備・提供

(ア)船腹需給の適正化措置等

 内航海運業法の適切な運用により投機的な船舶建造の防止、毎年度の適正船腹量の公示とともに、船腹過剰が想定される場合は最高限度量を設定する。その場合、適正船腹量の制度を補完するものとして、日本内航海運組合総連合会及び荷主団体において、物資別のきめの細かい船腹需給見通しについて相互認識を図る必要がある。また、船腹過剰になった場合は、内航海運組合法に基づく船腹調整事業の発動等により、船腹需給の適正化を図るものとする。

(イ)船舶整備公団機能の充実及び租税特別措置の活用

 内航海運業者の多くは、事業意欲がありながら資金調達能力が不十分という実態にあることから、今後とも船舶共有建造方式等の船舶整備公団機能を活用することとし、そのための必要な資金量を確保するとともに、内航海運業者の船舶近代化等に関する技術支援の内容の充実を図る必要がある。併せて、船舶、荷役自動化装置等に係る特別償却制度等の租税特別措置の活用を図る。

(ウ)日本内航海運組合総連合会による債務保証業務の実施

 船腹調整事業の見直しに伴い、船舶建造資金等の融資に必要となる担保力が不足する者が増加すると想定されることから、日本内航海運組合総連合会において債務保証業務を実施することにより、資金調達の円滑化を図る必要がある。

(2)経営基盤の強化を目的とした抜本的な構造改善の推進

(ア)集約合併、協業化等による構造改善の推進

 小規模な事業者のうち特に内航船舶貸渡業者については、集約合併、協業化等の方法により事業規模を拡大し、当面3隻以上の船舶所有を目指すとともに、自己資本を充実し、財務体質の強化を進める等経営基盤の強化を図る必要がある。この場合、各内航海運組合は、日本内航海運組合総連合会と共同で、そのための措置内容、スケジュール等を明記した構造改善のための具体的な実施計画を作成するとともに、個々の内航海運業者に対する相談業務の充実等により、構造改善を着実に実施していく必要がある。

(イ)日本内航海運組合総連合会による構造改善の促進措置

 日本内航海運組合総連合会は、抜本的な構造改善の推進を促進する観点から、転廃業を行う者に対する助成金の充実を図るとともに、集約合併、協業化等を行う者に対する促進給付金の充実等の措置を講ずる必要がある。

(ウ)日本内航海運組合総連合会の事業に要する財源確保

 日本内航海運組合総連合会は、債務保証制度、転廃業助成金、集約合併等促進給付金、船員確保等の事業に充てる財源確保を図るため、組合員による適切な負担措置を講ずる必要がある。

(エ)行政による支援措置

 行政においては、集約合併、協業化等の構造改善促進の観点から、内航海運業法の許可基準の弾力的運用、税制措置の充実等について検討するとともに、地方運輸局単位の構造改善連絡会の活用等により内航海運組合等に対する指導の充実強化を図る。

(3)運賃及び用船料に係るコスト負担の適正化

(ア)内航海運業界の努力と荷主業界の協力

 今後の内航海運は、船員の労働条件の改善等を進めるとともに、経営基盤の強化を図ることが要求されている。そこで、内航海運業界は、輸送効率化等によるコスト削減努力を前提に、荷主との相互理解を深めることにより運賃及び用船料に係るコスト負担の適正化に向けた努力を行うこととし、特に、荷主と内航船舶貸渡業者の双方と契約関係にある元請の内航運送業者は、内航海運のコーディネーターとして用船料等の適正化に努力する必要がある。また、荷主側においても、コスト負担の適正化が内航輸送サービスの安定的提供を通じて自らの利益にも合致するとの認識を持つとともに、内航海運業者との取引関係で優越的地位をいたずらに利用することのないよう留意する必要がある。

(イ)内航海運業界内の取引関係の簡素化等

 内航海運の用船市場においては、元請の内航運送業者から実際に運航を行う内航船舶貸渡業者に至るまでの取引関係に多数の者が介在することによる取引関係の複雑化が見られるので、これを簡素化すること等により、用船料の適正化を図る必要がある。また、今後は、意欲のある内航船舶貸渡業者が、内航運送業者に転換することが容易になるよう内航海運業法の許可基準の弾力的運用を図る必要がある。

(4)内航海運業界と荷主業界との定期協議機関の設置

 以上指摘してきたように、今後の内航海運対策については、これまで以上に内航海運業界と荷主業界とが、運命共同体として相互の抱えている課題等を正確に理解し合い、懸案解決を図る必要がある。そこで、今後は、内航海運組合又は日本内航海運組合総連合会と荷主団体との間に、内航運送業者、内航船舶貸渡業者及び荷主が参加する物資別の定期協議機関を設置し、運賃及び用船料に係るコスト負担適正化のあり方、公平な取引関係の確立、船腹調整事業の運用のあり方、輸送効率化、構造改善対策、船員確保対策等について、その発展的な解決に向けて協議していくことが必要である。


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