3.その他の内航海運対策 3.その他の内航海運対策

 現在の船腹調整制度の見直しに併せて措置すべき事項は、上記 −2のとおりであるが、それとともに、今後の内航海運の課題を達成していく観点から以下の対策を推進する必要がある。

(1)良質な内航船員等の安定的な確保

(ア)内航海運業の事業としての魅力の向上

 内航海運業の健全な発展のためには、意欲的な後継者の出現と良質な内航船員の安定的確保が絶対的な条件である。そのためには事業規模の拡大、収益構造の改善等により経営基盤を強化し、事業としての魅力を向上していくことが必要不可欠であることから、小規模な事業者を中心に集約合併、協業化等の構造改善を積極的に推進するとともに、運賃及び用船料に係るコスト負担の適正化等を実現していく必要がある。

(イ)労働条件、労働環境等の改善

 良質な内航船員の確保については、海上労働の特殊性のわりには十分でない賃金、休日等の労働条件や荷役作業、船内居住環境等の労働環境等の改善を図るとともに、リクルート対策の強化が必要不可欠である。このため、「内航船員不足問題を考える懇談会」報告(平成5年:運輸省海上技術安全局長の主催する懇談会)で指摘されている具体的な対策を、引き続き内航海運業者、荷主等の関係者が一丸となって着実に推進する必要がある。

(ウ)内航船員の安定的採用、教育訓練体制の整備等

 今後は、漁船等からの乗船経験者の転入が期待できないことから、内航海運業者は、船員経験のある高年齢者等の活用を図るとともに、新人船員の安定的採用及び教育訓練を実施するための体制を整備していく必要がある。この場合、個々の事業者単位での実施が困難なものについては、事業者間で共同して行うものとし、内航海運組合等においても船員職業紹介事業、船員教育訓練等の実施を検討する必要がある。また、行政も、引き続き海員学校等における船員教育内容の整備充実を図るものとする。
 なお、内航海運では、船員配乗を内航船舶貸渡業者等のマンニングに依存する形態があるが、今後は、適切な労務管理、船員確保等に資する観点から、健全なマンニングの育成について検討する必要がある。

(2)内航海運における輸送効率化の一層の推進

(ア)船舶の近代化、荷役機器の整備等ハード面の施策

 内航輸送の効率化には、積載率、船舶回転率等の改善により運航効率を向上するとともに、運航の省力化等を進める必要がある。そこで、ハード面の施策としては、荷主ニーズに応じて船舶の大型化、近代化等を進めるとともに、荷役の省力化、迅速化等に資するよう船内及び積地揚地における荷役機器の整備及び近代化、全天候バースの整備等を推進する必要がある。

(イ)情報システム化、商取引慣習の見直し等ソフト面の施策

 運航効率を向上するには、ハード面の施策とともに、貨物の発着地と輸送量、港湾の使用状況、船舶の稼働状況等に関する情報の把握、適切な配船計画の策定、関係者との円滑な連絡等を迅速かつ総合的に行う必要があり、そのためには、コンピューター・ネットワークを利用した貨物追跡システム、EDI(電子デ−タ交換: Electronic Data Interchange)等の情報システムの構築及びその高度化を推進していく必要がある。また、配船、船員配乗等については、事業者間で共同して行える体制を整備すること等によりスケールメリットを実現するのが効果的である。この場合、荷主側においても、取引先等の協力を得て、商取引慣習の見直し等により出荷波動の平準化、出荷ロットの大型化等を推進していくことが強く求められる。

(ウ)安全関係規制の見直し検討

 運航コスト等と関係の深い船舶、船員等に係る安全関係規制については、近年の船舶関係に係る技術進歩、内航船における海難や労働実態等を踏まえ、時代に即したものとなるよう、安全確保との調和を前提に可能なものから規制内容の見直しを検討する必要がある。

(3)モーダルシフト等の新規需要分野への積極的な対応

(ア)モーダルシフトに向けた輸送システムの構築等

 モーダルシフトの推進には、高速船等の輸送ニーズに適した船舶を整備し、定時定路線を前提とした輸送ルート、運航ダイヤ、運航頻度等に関する輸送システムを構築するとともに、トラック事業者等の陸上部門との連携強化により積極的な荷主開拓を展開する必要がある。また、モーダルシフトを担う内航海運業者においては、利用者利便の向上等の観点から共同運航等を行うとともに、資本力、企画力、営業力等を高めること等により、海陸の複合一貫輸送を行う総合物流業を目指した営業展開を志向することが期待される。併せて、モーダルシフトに必要となる港湾機能の整備・改善、テクノスーパーライナーの早期実用化を目指した研究開発の促進等を図る必要がある。

(イ)自動車航送貨物定期航路事業(貨物フェリー)の取扱いの見直し

 現在、海上運送法に規定する自動車航送貨物定期航路事業のうち長距離輸送を行うものについては、内航RORO船との類似性が強く、内航RORO船に係る船腹調整事業の関係等から、新規の運航が事実上認められていない。そこで、自動車航送貨物定期航路事業については、その位置付けと取扱いを見直す必要がある。

(4)内航海運の発展に資する港湾機能の整備及び改善

 内航海運における船舶の大型化、モーダルシフトの進展等に対応して、それに最も適した内貿ユニットロードターミナル等のバースの計画的な整備を推進するとともに、内航海運、トラック等との円滑な連携を確保するためのアクセス道路、複合貨物ターミナル等の整備を推進する必要がある。また、物流形態の変化に対応した効率的な荷役が行われるよう、港湾荷役に係る諸課題の解決に向けた関係者の取リ組みを促す必要がある。

(5)テクノスーパーライナーの早期実用化等

 官民の協力の下に、テクノスーパーライナーの早期実用化を目指した研究開発の促進を図るとともに、それに必要となる港湾機能、輸送サービスのあり方、事業採算性等に関する調査を深度化し、その実用化に合わせた輸送システムの構築について検討する。また、内航海運業界等のニーズを的確に把握した上で、船舶の省力化、船内荷役の効率化、船内居住環境の改善等に資する技術開発をさらに推進する必要がある。


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